「淙ぎ舞う旅雫」エルピス

＜紹介所＞

エルピス「むぅ……。」

エルピス「むぅぅ……。」

エルピス「むぅぅぅん……。」

ヘスペラ「うぉるるる……。」

主人公「エルピス、どうかしたのか。」

メルク「みゅ！　この前の服なのですね。いつ見ても綺麗なのですよ～。」

エルピス「そう、とても綺麗。この世のビューティフォーを詰め込んだといっても、過言ではないほどの服。」

エルピス「過言ではないほどの……。」

メルク「ど、どうしたのです？　随分と歯切れが悪いのですが……。」

エルピス「うん、実はとても困っている。この服が美という概念の結晶である……それゆえに。」

主人公（どんどんグレードアップしていくな……）

エルピス「そう。スペシャル感がありすぎて。ありすぎて……！」

エルピス「普段使いが！　できないんだ！」

主人公「あ～……。」

メルク「確かに普段からこの服で過ごすのは、ちょっと難しそうなのですよ……。」

エルピス「そう。だけど私はもっとこの服を着たい。せっかくレクルスがプレゼントしてくれて……。」

エルピス（エクシがくれた石もつけたのに……）

主人公「うーん、そうだな。普通ならパーティーの時とかに、着ていくんだろうけど……、」

メルク「旅する私たちが、ピンポイントでそんな状況に巡り合うのは、なかなか難しいのですよ……。」

エルピス「ということはもう二度と、この服を着ることができない……！？」

主人公「そこまでは言ってないぞ！？」

メルク「みゅ～、普段から着るには難しい特別な服……。かといって、着られる時はいつ訪れるかわからない……。そんな服をどう着るのか……。」

メルク「……みゅ！　そうなのです！」

エルピス「何か思いついた？」

メルク「みゅっふっふ……！　エルピスはその服に着替えるのですよ！」

メルク「それから、もっと広々と動ける場所が必要なのです……。みゅ！　町の広場がいいのですよ！　よく大道芸人さんが芸を披露している、あそこなのです！」

メルク「さぁ、善は急げなのです！　テオたちにも声をかけるのですよ～！」

エルピス「えっ？　えっ？」

主人公「な、何をするつもりなんだ？」

メルク「みゅふふふ、決まっているのです。」

メルク「その服を着られる、特別な日を作るのですよ！」

＜町の広場＞

街の少年「わ～い！　あはははは！」

街の少女「ま、待ってよ～！」

街の少女「はぶっ！」

「あ、ごめん。大丈夫？」

街の少女「だ、大丈夫。お姉さんは……、」

街の少女「……わぁ。」

エルピス「平気だよ、ありがとう。」

街の少女「……お姉さん。お姫様なの？」

エルピス「いや、お姫様はレクルスだよ。私にお姫様要素はないよ。皆無さ。」

街の少女「そ、そうなのね……。（妙なところで自信満々なお姉さんだわ……）」

ムディア「エルピス様、準備ができました。」

エルピス「ありがとう、ムディア。じゃあ、そろそろ始めようか。」

ムディア「はい。」

街の少女「始めるって……何かするの？」

エルピス「うん、よければ見ていて。きっと楽しいから。」

街の少女「楽しい……？」

エルピス「すぅ……、はぁ……。じゃあみんな……、」

エルピス「よろしく！」

街の少女「わぁああ……っ！」

街の少年「おーい、何やって……、」

街の少女「見て見て！　お姉ちゃん、すっごいの！」

街の少年「え？　わぁ……！」

「なんだ、なんだ。旅芸人か？」

「いやぁ、素人の演奏だよ。……ただ。」

エルピス「～♪」

「楽しそうだ。」

ヘスペラ「うぉるるる！」

メルク「みゅふふふ、いい感じなのですよ～！」

主人公「なるほど……。服を着られるタイミングに心当たりがないなら、自分たちで作ればいいってことか。」

メルク「なのですよ！　あれは元々、ダンスをするための服。」

メルク「だったらこうして、みんなで音楽を奏でればいいのですよ～！」

主人公「うぉお、俺のトライアングルが火を噴くぜ！」

トト「きゅきゅきゅ～！」

テオ「ヘーい、ヘーい！」

トゥルータ「お、うまいな魔女っ子さん！　本当にタンバリン初めてか？」

テオ「えへへ～！　トゥル兄のヴァイオリンも上手ね！」

りょうば「よっしゃ、もっと激しくいこうか！　エッちゃん、いけるかい？」

エルピス「任せて！」

レイヤー「ま、ま、待って待って待って～！」

フラウレイン「くるるるぅ！」

エルピス「ふふ……。」

エルピス（……なんだか、不思議な気分）

エルピス（初めて王都に来た時も、こうしてレクルスから貰った服を着ていて……）

エルピス（だけど、あの時は一人で。メルクとまた会えるか不安でいっぱいだった）

エルピス（なのに、今は……）

エルピス「……。」

エルピス「ヘスペラ！」

ヘスペラ「うぉるるるる！」

「おおっ！？」

「と、飛んだあ！」

＜上空＞

エルピス「……私は知らなかったよ、ヘスペラ。」

エルピス「こんな景色があるなんて。こんなにも胸躍ることがあるなんて。こんなに素敵な人たちがいるなんて。」

エルピス「そしてそれがまだ、世界のほんの一部でしかないんだって。」

ヘスペラ「……うぉるる。」

エルピス「だから私は……もっと旅をしたい。」

エルピス「辛いことも、悲しいこともきっとある。だけど、それもひっくるめて知りたいんだ。」

エルピス「私が見たいものは、きっと、その先にあるから……。」

エルピス「ヘスペラ、ついてきてくれる……、」

エルピス「……ううん、聞くのはおかしいね。」

ヘスペラ「うぉるる？」

エルピス「行こう、一緒に！　これからも。」

ヘスペラ「うぉるるる！」

<町の広場>

メルク「みゅ！　戻ってきたのです！」

メルク「って、待つのですよ、エルピス！　そこで身を乗り出したら危ない……！」

エルピス「とぉーう！」

主人公＆メルク「わぁああああ！？」

「くるくるくる……、」

エルピス「しゅたっ！」

「……。」

「わぁああああああ！」

レイヤー「び、びっくりさせないでよぉ！」

エルピス「ごめん、ついテンションあがって。」

主人公「そういうところは本当に変わらないな……。」

エルピス「へへへ。」

メルク「みゅふふ、満足できたのです？」

エルピス「うん。ありがとう、みんな。おかげで満足……、」

街の少女「お姉ちゃん、もう終わりなの！？」

エルピス「え？」

街の少女「今度は私も混ぜて！　いいでしょ？」

街の少年「さっきのクルクルってやつ、もう１回やって！」

りょうば「ヒヒッ、どうやらこっちが満足するだけじゃあ、許してもらえんらしいぜ、エッちゃんよ。」

メルク「どうするのです～、エルピス？」

エルピス「……そうだね。」

エルピス「みんなでやるしかないね、こりゃ！」

「わぁあああああ！」

エルピス「それじゃあ、踊りたい人は集まって。演奏してくれる人も大歓迎だよ。」

＜場面転換＞

メティエ「……だってよ、船長。」

リベルディ「ははは、気が乗ったらな。」

メティエ「だと思ったぜ。」

メティエ「……エルピスに顔を見せてやらなくていいのかよ。」

リベルディ「それも気が乗ったら、だ。」

メティエ「ハ、いつになるのやら。」

リベルディ「さあな。だが、別にいつだっていいさ。顔を見るだけでわかる。」

「あいつが本物を見つけたってのはな。」