「堰楯の鎧騎士」ヴェルデ

ヴェルデ「……君が主人公？オレ、ヴェルデだけど。」

主人公「あ、ヴェルデさん！これからよろしくお願いしま……、」

主人公「って、デカッ！」

ヴェルデ「ああ、ごめんね。よいしょ。」

主人公「あっ、なんかすいません。わざわざ座ってもらっちゃって……。」

ヴェルデ「いいよ、立ってるの面倒だし。ああ～、座ったら今日の仕事、もう終わった感じする。出発は先にして、しばらくだらだらしない？」

主人公「そういうわけには……、」

ヴェルデ「そこを見てよ。あんなにアリが必死に歩いてる。だから、代わりにオレがだらだらしてもよくない？」

主人公「いや、よくないですよ。」

ヴェルデ「だめか、ちぇっ。」

主人公「こんなにやる気のない騎士の人初めて見ました。」

ヴェルデ「よく死んだ魚の目をしてるって言われるよ。」

主人公「言われても直す気はないんですね……。」

ヴェルデ「うん。」

主人公「すがすがしいまでの肯定だ……！」

主人公「……ん？ヴェルデさん、もしかして今、なにか食べてます？マフラーの下がもごもごしてるような……。」

ヴェルデ「さっき子どもから巻き上げたおやつ食べてる。」

主人公「子どもから巻き上げた！？」

ヴェルデ「おっと、ギブアンドテイク。略して、ギブ。」

主人公「略し方が雑！」

主人公「それより、ギブアンドテイクってどういう……、」

町の子供1「あーっ、のっぽマンだ！」

町の子供2「いたぞーっ、取り囲めーっ！」

主人公「うわっ！な、なんだ！？まさか、巻き上げられたおやつを取り返しに！？」

主人公「……にしては、様子がおかしいな。」

町の子供1「立ってよ、のっぽマン～っ！今度こそグルグルやってもらうんだから！」

ヴェルデ「……、」

主人公「まさかの無視！」

主人公「ヴェルデさん、よくわかんないですけど、純粋に遊びたいみたいですし、ちょっとは相手をしてあげたら……、」

ヴェルデ「起立ニハ、クッキー1枚ガ必要デス。」

主人公「そういうシステム！？」

町の子供2「そういうと思って、さっき母ちゃんから調達してきたんだぜ！はい、クッキー！」

ヴェルデ「カパッ。」

主人公「しかも食べさせてもらうのか……。」

ヴェルデ「もちゃもちゃ……。」

町の子供1「わーいっ、のっぽマンが立ったー！」

町の子供2「なあ、またグルグルやってよーっ！オレの手ぇつかんで、足が浮くくらい回転するやつ！」

ヴェルデ「回転ニハ、クッキー3枚ガ必要デス。」

町の子供2「くっ、しょうがない！グルグルのためだ！はい、クッキー！」

主人公「近衛騎士とは思えぬ、巻き上げっぷりだな！？」

主人公（でも、ヴェルデさんってかなりの面倒くさがりっぽいし、そんな人がお菓子と引き換えとはいえ、ちゃんと遊んであげてるんだよな）

主人公（のっぽマンなんてあだ名つけられても、気にしてないみたいだし）

主人公（根はやさしい人なのか……。なんだかんだでうまくやっていけそうだな）

主人公「って、ん？」

町の子供1「のっぽマンがまた座っちゃったー！」

町の子供2「ほら、クッキーならまだあるから立ってよー！」

ヴェルデ「タダイマ、休眠モードデス。起床ニハ、のっぽマンノヤル気カ、近衛騎士団長ノ命令ガ必要デス。」

主人公「根の優しさに、面倒くささが勝ったか……。」