「薄紅の誘戯」ピッツェル

主人公「うーん。」

メルク「なかなか難しいのですよ。」

ピッツェル「あら、主人公にメルクじゃなーい！　しかめっ面してどうしたの？」

メルク「みゅ、ピッツェルさん！」

主人公「実は本をもらったんだけど、内容が難しくてわからないんだ。よかったら、ちょっと見てくれないか？」

ピッツェル「へ、へえ～。でも、そういうことはこのピッツェルちゃんが直々にやるほどのことじゃないわね。」

ピッツェル「エードルフ！　あたしの代わりに教えてあげて……、」

メルク「エードルフさんは休暇中ではなかったのですよ？」

ピッツェル「そうだった……。」

主人公「あ、ピッツェルにもわからないなら別の人に聞くから大丈夫なんだけど……。」

ピッツェル「はあ？　わかるに決まってるでしょ～。この大天使ピッツェルちゃんに任せなさいな。」

ピッツェル「えーと、なになに？」

ピッツェル「……。」

ピッツェル「……。」

ピッツェル「ふう。今日はあたし、用事があったのよね。それじゃ、また！」

メルク「わからないなら、そう言ってくれていいのですよ！？」

ピッツェル「……。」

ピッツェル「あーあ。こういうのはエードルフの方が得意なのよね～。地上だから言っちゃうケド。」

主人公「地上だから？」

ピッツェル「そーそー、あたしが住んでる都市だと、大天使なら大抵のことはできて当たり前だと思われてるのよね～。」

ピッツェル「翼の大きさが才能を示すとかナントカ。そんなことあるわけないのに。だっていくら勉強してもわかる気しないしィ。」

メルク「それで勉強ができるふりを……！」

ピッツェル「いつものはエードルフに押し付けてるからどうにかなるんだけど、今日は油断しちゃったぁ。ま、地上だからいいけど～。」

主人公「もしかして、それでいつもエードルフさんを連れてるのか？」

主人公「堅物だって文句を言う前にいつ見ても一緒にいるから本当は仲がいいのかなって思ってたけど……。」

ピッツェル「なっ、そっ、そんなわけないでしょ！　あんたの言う通り、面倒ごとを押し付けるためよ！　堅物だけど、まあ、そのっ、仕事はできるし！」

主人公「あっ、そ、そうなんだ。」

ピッツェル「……。」

ピッツェル「ま、まあ、この超絶かわいいピッツェルちゃんが主なわけだし、エードルフの方はお近づきになりたいだろうけど～。」

ピッツェル「とはいえ、あいつとは趣味が合わないっていうか～、噂だと休日は本を読むか、鍛錬するかって聞くしィ、やっぱり堅物すぎてツマンナイっていうかね～。」

ピッツェル「四六時中、黙って後ろに控えてるし、口を開けば、諫める言葉ばっかりでうるさいし～、だからその、あたしは別に何とも思ってないわけ。」

主人公「そ、そっか……。」

ピッツェル「ちょっと、なによその目は～！　ホントなんだから。今だってエードルフがいなくてすっきりしてるくらい……、」

ピッツェル「あっ、そうだ！　ねえねえ、これから遊びに行きましょ！」

主人公「えっ？」

メルク「それはいいのですが、いきなりなのですよ。」

ピッツェル「アハ、思い立ったのが今だから～。せっかくあの堅物がいないんだから、自由を謳歌して、羽目を外さなきゃ！」

（場面転換・町）

ピッツェル「あたし、１度は地上の民と遊んでみたかったのよね～。他の都市とか……、それこそ聖都の人たちならありえないって言うだろうケド、」

ピッツェル「あっ、おにいさーん！　そこのもひとつ、頂戴な～。」

ピッツェル「でも、あたしは地上の民に触れたからって神の加護が失われる、なんてことは信じてないのよ。信じられるのは自分が体験したことだけってね。」

ピッツェル「だって、大天使なら何でもできるって言われてるのに勉強なんてさっぱりだし、たしかに魔法の力は強いけど、細かい調整は苦手だしィ。」

ピッツェル「あっ、ここからここまで全部ね～。」

メルク「ピッツェルさん、さすがに羽目を外しすぎなのでは……。」

主人公「大天使ってお金持ちなんだな。」

ピッツェル「アハハ、いいじゃない！　今日はあのうるさいのがいないんだし～。あーあ、エードルフがいないって気楽～！」

ピッツェル「あっ、次はあの店に行くわよ！」

メルク「ま、まだ買うのですよ！？」

主人公「しょうがない……。こうなったらとことん付き合うか。」

メルク「なのですよ・それにしても……、買ってるものの半分は本なのです。」

主人公「本人は本なんて読まないって言ってたのになあ。いったい誰のところにいく本なんだろうなあ。そういえば、休日に読書してる人がいるって言ってたなあ。」

メルク「そこまでにしておいてあげるのです。乙女心は複雑なのですよ。」