「盤上の騎士王」レオ

レオ「♪～♪～♪」

レオ「わはははっ☆おれの脳内で無限の物語が紡がれていく♪」

レオ「霊感(インスピレーション)が止まらない♪珠玉のオペラがどんどん産声を上げてっ、おれにひとときの休息すら許してくれない☆」

レオ「あぁ、どうしようっ？ふたつの腕だけじゃぜんぜん間に合わない！湧きあふれるメロディを、書き留めきれないぞ～♪」

レオ「んんっ？わっ、五線紙もそろそろ底を尽きそうだ！」

レオ「わははっ、どうしてだろうな～？こんなときにかきって、運命がイタズラをする♪」

(暗転)

レオ「♪～♪～♪」

主人公「なんだ、やっぱりレオだったのか。妙な笑い声が聞こえてきたから、誰かと思ったけど。」

レオ「わははっ、おまえらか♪ふふん、りょうどいいところに来たな～？」

メルク「あのっ、レオさん？こ、これはいったい……？」

レオ「ひとまず誰かに見てもらいたかったんだよ。ん～っと、そういえば、ふたりは楽譜を読めたっけ？」

メルク「たっ、大変なのですっ！？床や壁が落書きだらけなのですよ～！」

レオ「そりゃまぁ、だって殴り書きだし？あるていど、ごちゃごちゃしてるのは仕方ないだろ。」

レオ「いちおう、読めるものにはなってるんだからなっ？まだ日の目は見てないけど、とびっきりのやつだ☆」

メルク「そ、そんなことを言っている場合ではないのですっ。この惨状を紹介所のお姉さんが目にしたら、きっとただでは済まされないのですよ～！」

レオ「わははっ、おおげさだなぁ♪おれの作曲を妨げるやつはいったいどこのどいつだ～♪」

主人公「メルク、ついてるぞ……！見たところ、ちょうど席を外してるみたいだっ！」

メルク「いましかないのですよ、主人公さん！帰ってくるまえに綺麗さっぱり片づけてしまうのですっ！」

レオ「んんっ、おまえら……？雑巾なんか持ってきて、いきなりどうしたんだっ？」

メルク「清掃開始なのです！てきぱきとやっつけるのですよ～！」

主人公「ああ、もちろん！あんまりうかうかしてもいられないからなっ。」

レオ「お～い？おれの話にも耳をかたむけろ～？」

レオ「むむっ？なんだなんだっ、床を勢いよく擦りつけて……？」

レオ「ぎゃあああっ！？せっかく書いた譜面があっという間に消えていくっ！？や、やめろっ、頭がおかしくなったのかおまえら……！？」

レオ「このアホどもっ！まだどこにも書き写してないのにっ！？世界でたったひとつだけの楽譜なんだぞ～！？」

メルク「いい調子なのですよ、主人公さんっ！床を終えたらつぎは壁をぴかぴかにするのです！」

レオ「聞いてないしっ！？なんだっ、出る杭は打とうってわけか！？さてはおまえら、モーツァルトのまわしものだなっ！？」

レオ「ふふんっ、おもしろいな～♪おれの作曲活動を妨げようたって、そうはさせないぞっ！」

メルク「レオさん……！？い、いったいなんの話をしているのですよ！？」

レオ「以前までは行き詰って手が止まることもあったけど、最近は試行錯誤する余裕もないくらいに絶好調だからな♪」

レオ「わははははっ！おれは『Knights』の『王さま』だ！」

レオ「モーツァルトの陰謀だろうと関係あるか！運命だろうと大宇宙の法則だろうとあらがって、なんどでも刻み込んでやるっ、おれたちの物語を……☆」

主人公「ぎゃあああっ！？ようやく消し終えたところにまた落書きをっ！？」

レオ「♪～♪～♪」

レオ「ふふん♪湧いてきた湧いてきた霊感(インスピレーション)が☆」

主人公「や、やめろ～っ！いますぐ作曲をやめないと大変なことになるぞ！」

レオ「余白なんていくらあっても足りない！この無限大の感性がちっぽけな五線紙に収まるか！」

レオ「だからおれは床に、壁に、天井に、書き記そう☆後世に伝え残すべき、騎士の奏でるアンサンブルをっ☆」

(暗転)

メルク「以上が、ことの顛末なのですよ。」

紹介所のお姉さん「ふ～ん？それで、肝心の『王さま』はどこにいるのかしら。」

メルク「ま、町に出かけていったのですよ。ここにはもう、書けるところがなくなったので。」

メルク「主人公さんはあとを追いかけていったのです。も、もちろんレオさんの作曲活動を制止しようとっ！」

紹介所のお姉さん「いい度胸をしているわね、ふたりとも。この私に落書きの後始末までさせておいて、ただで済むと思っているのかしら、ふふふっ。」

メルク「ひいぃっ！？」