「恋慕の夢想者」フリエール

紹介所のお姉さん「フリエールちゃん、今日もお手伝いありがとう。」

フリエール「ううん。お姉さんのお手伝いができて、わたし嬉しいよ。」

紹介所のお姉さん「フリエールちゃんは本当にいい子ねえ。」

町のお姉さん「フリエール。この間私のハンカチを拾って届けてくれてありがとうね。」

町のお姉さん「はい、これお礼。」

フリエール「わーい、お菓子だ～！」

フリエール「えへへ、お姉さんたちに優しくしてもらえるの幸せだなあ。」

メルク「みゅ～！フリエールさんがすっかりみんなに気に入られているのですよー。」

主人公「フリエールは優しいからな。そんな子が、俺たちの仲間になってくれるなんてありがたいな！」

(暗転)

フリエール「ふふふ、もうここには誰もいないよね……！」

フリエール「はあ……、ティルアお兄様からのお手紙！ようやく読める～！」

フリエール「『フリエールへ　お元気ですか、ぼくは主さまと……』」

フリエール「ふふ、ふふふ。ティルアお兄さまって本当にすごい！」

フリエール「この芸術的な文字！私には難しすぎて続きが読めないけど、きっとこれが大天使さまに仕える方の教養の証なのね！」

フリエール「ふふふ、これで私とお兄さまの妄想日記がはかどる～！」

フリエール「ふふーんふーん♪」

フリエール「わたしは……、そう。お城に住むお姫さまなの。でも悪い継母に閉じ込められてしまって……。」

フリエール「そこへ颯爽と登場する、ティルアお兄さま！」

フリエール「わたしを助け出してくれた後、ふたりは永遠の愛を誓う！」

フリエール「そしてそこで……、きゃ～！」

主人公「……。」

メルク「……。」

フリエール「るる～♪」

フリエール「る……。」

主人公「あ、あのさ、フリエール……。」

フリエール「……。」

主人公「ご、ごめん！夢中になってるみたいだったから声をかけづらくて……！」

フリエール「うわあああああああん！」

メルク「みゅ～！主人公さん、だから私は言ったのですよ！」

主人公「わー！本当ごめん！メルクの言う通り早めに声をかければよかった！」

フリエール「うっうっ……。ど、どこから聞いてたの……？」

主人公「……、えっと『わたしとお兄さまの妄想日記が……』あたりから……。」

フリエール「ほどんど聞いてるじゃない！もう！主人公ったら本当にもう！」

主人公「え、もしかして俺だけ責められてる！？」

メルク「フリエールさん、主人公さんが悪かったのです、許してほしいのですよ……！」

主人公「なっ……、メルクも一緒に聞いてただろ……！？」

フリエール「ぐすっ、この日記は誰にも見られないようにしてたのに……！」

主人公「その『妄想日記』って一体な……。」

フリエール「だめ！これはぜーったい誰にも見せないんだから！」

主人公「(うわ、あれ鍵が付いてるぞ……)」

メルク「(乙女には隠したいことの１つや２つあるのですよ！主人公さんはデリカシーがなさすぎなのです！)」

主人公「(ひどいな！？)」

フリエール「お、お願いだから今のは見なかったことにして……！ううっ……！」

主人公「わかった、わかったから！フリエール、泣かないでくれー！」

メルク「みゅ？フリエールさん、日記の間から何か紙のようなものが落ちたのですよ……？」

フリエール「あっ、それは……！」

主人公「『フリエールへ　ティルアより』」

フリエール「うわあああああああん！」

主人公「か、勝手に読んでごめん……！」

フリエール「ううっ、ぐすっ。」

メルク「フリエールさん、ごめんなさいなのです。」

メルク「私、優しいフリエールさんの笑顔が大好きなのです。だから、泣き止んで欲しいのですよ……。」

フリエール「……ごめんね、泣いてばっかりで。」

主人公「いや、俺の方こそ悪かったよ。」

フリエール「ううん。主人公は悪くないの。でも、日記のことは秘密ね……！」

主人公「わ、わかった……！」

主人公「(フリエールの目が怖い……！)」

メルク「手紙に会ったティルアさんというのは、フリエールさんのお兄さんなのですよ？」

フリエール「ううん。ティルアお兄さまはわたしの恩人なの。」

メルク「みゅ？」

フリエール「地上に来るずっと前、うっかり怪我をしてしまったわたしをティルアお兄さまが手当してくれたの。」

フリエール「それからこうして文通をしてて……。」

メルク「みゅ～！そのティルアさんという方はとっても優しいのですね！」

メルク「素敵なお話なのですよー！」

フリエール「そう！ティルアお兄さまはとっても優しくて聡明な方なの！」

フリエール「なんていったって、大天使さまにお仕えしてるんだもの！」

主人公「へえ……！それはすごいな！」

フリエール「でしょ！？ティルアお兄さまのすばらしさを分かち合える人に初めて会えた……！」

主人公「(きゅ、急に泣き止んだぞ……？)」

メルク「(恋する乙女は立ち直りも早いのです！)」

フリエール「嬉しい！特別に主人公とメルクにはこの手紙を見せてあげる……！」

主人公「え、いいのか？」

メルク「みゅ～！乙女の秘密を知るのはドキドキなのです！」

フリエール「えへへ～！今日だけ特別なんだからねっ！はい、これ。」

主人公＆メルク「……。」

メルク「(ミミズがのたくったような字なのですよ……！)」

主人公「(ミミズがのたくったような絵だな……)」

フリエール「ふふふ、ティルアお兄さまの文字と絵は、芸術的センスに溢れてるよね！」

主人公「そ、そうだな！すごいすごい！」

メルク「すごすぎてなんとも言葉で表し難いのですよ～！」

フリエール「だよね！」

フリエール「よーし、わたしもティルアお兄さまのような字が書けるように頑張ろう！」

主人公「そ、それはやめた方がいいんじゃないか……！？」