「揺れ踊る散光」プリズム

プリズム「ふふ～んふ～ん♪ふふ～ん♪」

プリズム「ここでエレノアさんのベースの低音が鳴り響く！ミサリサさんのドラムに、コリンさんの伴奏！ウィステルさんのギターがギュイーンと鳴ったら……！」

プリズム「それに合わせてボクは クロスステップ！」

プリズム「からのターン！」

プリズム「そうして最後は、ゲイルさんと一緒に、決め台詞『人生を楽しめ！』を言う！」

プリズム「うーん！いいね！ やっぱりタイムキラーズは最高だなあっ！シグナルさんの作る曲はどれも素晴らしいし……！」

プリズム「ああ、いつになったらボクは彼らと共演できるんだろう……！」

村の女の子「うう、ぐすん。」

プリズム「おや。」

村の女の子「うっ、うう。」

プリズム「こんなところで泣いて、どうしたんだい、お嬢さん。」

村の女の子「……なんでもないわ。」

プリズム「そうは見えないけど。」

村の女の子「本当に、なんでもないの。それじゃあ。」

プリズム「……足が痛むんだね。」

村の女の子「えっ。どうしてわかったの？」

プリズム「左足をかばうように引きずっているからさ。」

村の女の子「……。」

プリズム「そのまま放置しておいたら悪化するかもしれない。簡単な手当てくらいなら今できるから、足を貸してくれないかい？」

村の女の子「……わかったわ。」

（暗転）

プリズム「はい、これでもう大丈夫だ。」

村の女の子「……ありがとう。」

プリズム「数日は安静にして、ダンスの練習は控えるんだよ。」

村の女の子「え？」

プリズム「それじゃあ。」

村の女の子「ま、待って！えっと、あなたは……、」

プリズム「ボクはプリズム。」

村の女の子「その、プリズムさんは魔法使いか何かなの？」

プリズム「どうしてそう思うんだい。」

村の女の子「だって……、私がダンスをしてるって知っていたから。」

プリズム「あははっ。それは面白い発想だ。」

村の女の子「違うの？」

プリズム「ああ。実はボクはダンサーをしてるんだ。キミと一緒さ。」

プリズム「だから怪我の具合をみて、すぐにキミがダンスをしているとわかった。それだけのことだよ。」

村の女の子「……一緒じゃないわ。プリズムさんと私は、きっと全然違うの。」

プリズム「なぜ。キミもダンスをするんだろう？」

村の女の子「そうだけど……。でも、いくら練習しても、全然上手くならないから、私、恥ずかしくて……。」

プリズム「だから、人目が少ないここで練習をしていたのかい。」

村の女の子「ええ。……今度、大会があるの。」

村の女の子「でも、そこで結果が出せなかったら、ダンスは辞めようと思って。」

村の女の子「このことは、まだ誰にも言ってないから、内緒ね。」

プリズム「わかった。……まさか、ここまで一致するとはねえ。」

村の女の子「え、何の話？」

プリズム「いいや、ひとりごとさ。」

プリズム「ねえ、お嬢さん。」

村の女の子「なあに？」

プリズム「ボク、なんだか今、とっても踊りたいんだ。お嬢さん、観客としてボクのダンスを観ていてくれないかい？」

村の女の子「え、ええ。私でよければ……。」

プリズム「ありがとう。」

プリズム「それじゃあ、手拍子をよろしく頼むよ！ボクはそれに合わせて踊るから！」

村の女の子「こ、こうかしら？」

プリズム「うん、良いね！ノってきたよ！はい、キックターン！」

村の女の子「わあ、綺麗なターン！」

プリズム「もう1回転！」

村の女の子「プリズムさんってすごいのね！」

プリズム「ありがとう。よし次はシャッフルだ！」

村の女の子「うわあ～！このステップ、私もできるようになりたいわ！」

プリズム「はははっ、キミは素晴らしい観客だね。お礼にとっておきを観せてあげよう。」

村の女の子「とっておき？」

プリズム「よっ……、」

プリズム「……っと！」

村の女の子「すごい！バク転！」

プリズム「はい、ショーはこれでおしまいさ。ご覧くださり、ありがとうございました。」

村の女の子「カッコよかったわ、プリズムさん！なんだか私まで踊りたくなってきちゃった。」

村の女の子「さっきまでの、ダンスを辞めたいって気持ちが嘘みたい。」

プリズム「それならよかった。元気が出たみたいだね。」

村の女の子「ええ。」

プリズム「……キミが、今後、ダンスを続けるのも辞めるのも自由だとは思うけど。」

プリズム「これだけは忘れないで。どんなことも、楽しむことができれば、それが1つの強みになるってこと。」

村の女の子「楽しむことが、強み……？」

プリズム「ああ、そうさ。まあこれはとある人たちから教えてもらったことなんだけどね。」

プリズム「今はわからなくても、いつかきっとわかる日がくるはずだから。」

村の女の子「そう、なのかしら？」

プリズム「ああ、きっとね。」

プリズム「それじゃあまた、どこかでね。小さなダンサーさん。」

（暗転）

プリズム「ふふ～んふ～ん♪ふふ～ん♪」

主人公「プリズムさん、それって何の歌なんですか？出会った時からずっと口ずさんでますけど。」

プリズム「ああ、これかい？これはね、ボクに生きがいを与えてくれる、とあるバンドの曲さ。」

主人公「へえ……！なんだか明るくて楽しそうな曲ですね。」

プリズム「そうだね、曲調は明るいよ。でも歌詞はなかなかに暗いんだ。」

主人公「そうなんですか？」

プリズム「ダンサーを目指す女の子が、挫折をして、夢を諦めようとする歌なんだよ。」

主人公「えっ。」

プリズム「でも大丈夫。歌詞の中で女の子は同じダンサーの男の子にこう言われて、再びダンサーを目指し始めるのさ。」

プリズム「『どんなことも、楽しむことができれば、それが1つの強みになる』ってね。」