「泥傀儡の花姫」ニュンプゥ

＜紹介所＞

村のお兄さん「困ったな～。ああ～、困ったな、困ったなあ。ちらっ、ちらっ。」

主人公「のっけから、めちゃくちゃアピールしてきますね!?」

メルク「いったい何をそんなに困ってるのです?」

村のお兄さん「ややっ、聞いてくれるんですか!?」

主人公「しらじらしい!」

村のお兄さん「何を隠そう、癒術士のキミに頼みたいことがあるんですよ。実は最近、癒されてないモンスターが近くの山に巣をつくってしまって……、」

「巣を壊したぁっ!?」

メルク「な、なにごとなのですよ!?」

＜村＞

ニュンプゥ「うんっ!　これで山にある巣には困らないでしょ～?」

村のおじさん「困らないったって、癒術士に癒すのを頼むつもりだったんだ!　壊しなんてしたらモンスターが……、」

「クルルアアァッ!」

村のおじさん「うわああっ!　やっぱり怒って襲ってきたぞ!」

ニュンプゥ「うー?」

村の子ども「きゃああっ、助けて!」

村のお姉さん「逃げるのよ!」

村のおじさん「お嬢ちゃん!　説教は後だ、まずは安全なところに……、」

ニュンプゥ「わかったわ、助ける～。」

メルク「みゅっ!?　泥人形が動いたのですよ!?」

主人公「まずい、モンスターたちに向かってるぞ!　あの子が襲われる前に癒さないと……!」

スピッツ「クルルアアアッ!」

ニュンプゥ「ノーくん、ごお!」

「クルアアアッ!?」

主人公「ええええーっ!?　な、なにが起きたんだ!?」

メルク「ど、泥人形から花が咲いて……、それがモンスターを突き飛ばしたのです!　すさまじい力なのですよ!」

主人公「しかも、踏み込んだ部分は地面に穴が……、」

ニュンプゥ「ノーくん、もっとごお!」

メルク「さらなる追い打ちをかけるのです!?」

主人公「わーっ、後は俺が癒すから……、」

ニュンプゥ「うー?」

メルク「首を傾げつつも、止まらないのですよー!　い、急いで先回りして癒すのです!」

主人公「今っ、今、癒すから!　うわああっ、スピッツ!　は、早く逃げてくれーっ!」

「くるるああーっ!」

メルク「よ、よかったのです。癒術が間に合ったのですよ……!」

主人公「一安心だな……。」

主人公「って、あれ?　あの子がいない!」

「あわーっ!　やめてくれーっ!　うちの畑がーっ!」

メルク「みゅーっ!?　今度は畑を踏み荒らしてるのですよ!?」

主人公「突然の凶行すぎる!」

村の子ども「や、やめてっ!　どうしてこんなことするの!?」

ニュンプゥ「だって、お花が欲しかったんでしょ～?」

村の子ども「え?」

村のおじさん「うわあっ!　野菜畑から花の芽が……、ぐんぐん伸びてくぞ!」

メルク「あ、あっという間に一面、お花畑になってしまったのですよ……。」

主人公「あっ、村の子の手元……、つぶれた花がある。さっきの騒ぎで落としてつぶしちゃったんだな……。もしかして、それで花が欲しいって言ったのか?」

村の子ども「わーんっ!　だからってどうして野菜畑を壊しちゃったの!?　せっかくあたしも手伝って育ててたのに……!」

ニュンプゥ「うー、野菜畑を戻したらいいのかしら?」

村のおじさん「わーっ、これ以上はもうやめてくれ!　あっちに行ってくれー!」

ニュンプゥ「……、」

ニュンプゥ「うんっ、わかったわ～!」

村のおじさん「……、」

メルク「す、素直に行ってしまったのですよ。」

主人公「……、」

村のお兄さん「あの子もきっとよかれとやったことだったのに、なんだかかわいそうでしたね。」

主人公「……えーっと、そういうあなたは今までどこに?」

村のお兄さん「怖かったんで、隠れてました!」

主人公「それでしれっと出てこられる方が怖いよ!」

＜花畑＞

主人公「花が……!」

メルク「この辺りにはこんな花畑、なかったはずなのです!　ということはこの先に……、」

ニュンプゥ「らんるらんるらーん♪　花のお姫さまは～、蔦の衛士に守られて～、いつか夢見た～、王子さまと出会うでしょう～♪」

メルク「みゅっ、いたので……、」

ニュンプゥ「ノーくん、あっちってどこまでかしら～。もっとずっと向こうかしら?」

メルク&主人公「……、」

ニュンプゥ「えへへ。このお願い事は2回目だから、きっとうまく叶えられるわ～。」

ニュンプゥ「そしたら、きっと、よくできましたって言ってもらえるから、その時は、どういたしましてって言えるのね～!」

ニュンプゥ「よーし、ノーくん!　もっと、ご……、」

主人公「ちょっと待ったぁああっ!」

ニュンプゥ「わあっ!　ぷ～、驚かさないで～!　わたしになにかご用なの～?」

メルク「みゅっ、ごめんなさいなのです!　え、えーっと……、その、手伝ってほしいことがあるのですよ!」

ニュンプゥ「……、」

ニュンプゥ「うん、いいわよ～!」

＜山＞

主人公「そう!　その感じ!　いいぞ～っ、ゆっくり～……、」

主人公「ストップ!」

ニュンプゥ「ノーくん、すとっぷ!」

スピッツ「くるるうっ!」

メルク「みゅっ、これで元通りなのですよ!　次は村へ戻るのです!」

ニュンプゥ「うー、うん?」

＜村＞

村のお兄さん「わあっ!　その泥人形、花だけじゃなく野菜も育てられるんですね!」

ニュンプゥ「うんっ!　ノーくんが咲かせた花はねえ、きらって光って、落ちたらねえ、他の植物が育つのを応援してくれるのよ～。」

主人公「応援ってレベルじゃないけど……。」

メルク「みるみるうちに種から育って、すっかり元の野菜畑に戻ったのですよ……。」

村のお兄さん「ほら、親父さん!　言いたいこと、あるんでしょ!」

村のおじさん「うおっ、押すな押すな!」

ニュンプゥ「うー?」

村のおじさん「その、なんだ……、さっきは言い過ぎたよ。やり方は行き過ぎてたが、お前さんは俺たちの願いを叶えてくれてたんだよな。」

村の子ども「モンスターたちの住処も野菜畑も元通りにしてくれたし……、酷いこと言ってごめんね。それから、お花もありがとう……!」

ニュンプゥ「……、」

ニュンプゥ「……?」

メルク「ど、どうしてこちらを見るのですよ!?」

主人公「そこは、どういたしましてでいいんだぞ?」

ニュンプゥ「えっ!?　わあっ、本当!?」

ニュンプゥ「どっ、どういたしまして!」

村のおじさん「おう!　ありがとな!」

村のお兄さん「いやー、本当に助かりましたよ!　ノーくんという泥人形も便利ですし、うちの畑を広げる手伝いをしてもらいたいくらいです!」

ニュンプゥ「お願いごとっ!?　わかった、わたし頑張るわ～!　ノーくん、ごお!」

「……!」

メルク&主人公「あっ。」

村のお兄さん「あーっ!　僕の家がーっ!」

＜村・夕方＞

メルク「ど、どうにか家も直ってよかったのです。」

主人公「ツリーハウスとなったけどな……。」

主人公「けどお疲れ様、ニュンプゥ。その、よくできました。」

ニュンプゥ「う?」

主人公「うぐっ!　頭を撫でようと思ったけど、手が届かない!」

メルク「主人公さん!　私を掲げるのです!　代わりに私が……!」

ニュンプゥ「ノーくん、だうん!」

メルク「みゅっ、その泥人形さんは座ることもできたのですね……。」

ニュンプゥ「わたしの動きに合わせてノーくんも動くのよ～。手と足にお花がついてるでしょ～?　これを動かすとノーくんも動いてくれるの～!」

主人公「ハ、ハイテクな植物だなあ!　ええと、じゃあ、改めて……、」

主人公「手伝ってくれてありがとう、よくできました。」

ニュンプゥ「……、」

主人公「あ、頭を撫でられるのは嫌だったか?」

ニュンプゥ「うー……、ううん!　えへへ、どういたしまして!」

ニュンプゥ「やったねえ、ノーくん。今まで1度も言えなかったのに、今日だけで2回も言えちゃったわ!」

メルク「ニュンプゥさんは、人のお願い事を叶えるのが好きなのですね。」

ニュンプゥ「うん!　困ってる人を助けるのよ!　ノーくんがいれば、わたしはなんだってできるんだもの。」

ニュンプゥ「でも、村にいた頃はねえ、誰もわたしにお願いごとをしてくれなかったの。皆はなんでもしてくれるのに。」

ニュンプゥ「わたしが上手にできないからだったのかしら。村の外に出て、お願い事を叶えようとしても、いつも、よくできましたって言ってもらえないの～。」

主人公「そっか……。けど、今日は言ってもらえただろ?　どうしてかわかるか?」

ニュンプゥ「わかんない。」

主人公「そっかー、わかんないかー!」

ニュンプゥ「でも……、」

主人公「わっ、と!」

ニュンプゥ「メルクちゃんにも～!」

メルク「ど、どうしたのです?」

ニュンプゥ「お姫さまはね～、お礼をする時、ほっぺにちゅーするのよ!」

ニュンプゥ「えへへ、理由はわかんないけど、どういたしましてって言えたのは、メルクちゃんたちのおかげだから。」

メルク「みゅっ、ニュンプゥさん……!」

ニュンプゥ「だからね、あのね、メルクちゃんたちともっと一緒にいてもいいかしら?」

メルク「みゅ?」

ニュンプゥ「わたしにそんな風にしてくれたの、メルクちゃんたちが初めてでね。だから、その……、」

ニュンプゥ「よくできましたって言ってもらえるコツをわたしにも教えてくださいなっ!」

メルク＆主人公「……、」

ニュンプゥ「だ、だめ……?」

主人公「だめじゃない!」

メルク「一緒に頑張るのですよぉ～!」

ニュンプゥ「ほんとっ!?　やったあっ、ありがとう～っ!」

ニュンプゥ「うれしいねえ、ノーくん!　これでもっと、どういたしましてって言えるようになるねえ!　それにもしかしたら、お揃いのリボンはないけど……、」

ニュンプゥ「主人公くんたちが、夢に見た王子さまなのかもしれないわ～!」