「君臨する鞭撻」オルガ

＜宿泊先の部屋＞

オルガ「……。」

「にゃぁおう……。（オルガ様の朝は早い。朝は５時に起床、洗顔の後はハーブティーを一杯）」

オルガ「ふう……。」

「にゃふふぅ……。（故郷の名茶葉を使用したハーブティーで心を落ち着けた後……）」

オルガ「……。」

「にゃぉぉん。（朝食後の運動のお時間。おもむろに宿泊先のカーテンを開け……）

猫縛り＆猫縛り「ニャフォァァアアーッ！」

オルガ「ふん。」

「ニャッ！」

オルガ「ふん。」

「ニャバッ！」

オルガ「目障りです。」

「ニャフォァァアアアアーッ！」

オルガ「……今日のしなり具合は悪くありませんね。」

「ニャッファァァアアンッ！（オルガ様の朝のムチ体操！それすなわち、全猫縛りの無上の喜びなりィィイ！）」

「ニャフゥゥッ……、ニャフォフォオ！（羨ましいッ！　羨ましいぞ同士ッ！　だが我々は、己に鞭打ち崇高なる使命を全うするッ！）」

「ニャファファファファァ！（オルガ様の優雅な一日を記録するという、崇高な使命を……！）」

＜街道＞

「にゃふふぅ。（朝のムチ体操の後は、馬車で移動。その間もオルガ様はお忙しくしている）」

「にゃんにゃん……、（オルガ様は元々、この世界のお金のない人間たちをビシバシ教育したり……）」

「にゃぁぁん。（そのような人間たちに、ご自身のお金も貸していたという）」

「ンニャァアアッ！（そして今もなお、馬車の中で部下たちの書いた書類に目を通しているのだ！）」

オルガ「借金返済に遅れですか。あとで始末書を書かせなければなりませんね。」

オルガ「こちらは以前の催促状が届いていないのですか。羽虫の考えることです、大方どこかに雲隠れでもしたのでしょうが……、」

オルガ「このわたしから逃れられるとは、思い上がったものですね。身の程を知らない愚かな虫には、わたしが手ずから、取り立てに行かねばなりません。」

「ニャフォフォフォフォ！（さすがオルガ様ッ！　容赦ないッ！　そこが最高ッ！）」

オルガ「……、ああ、もうそろそろですか。」

オルガ「ここで降ります。ご苦労様でした。」

「にゃにゃっ！（あっ、オルガ様が！　いかんいかん、追いかけねば！）」

＜カッツェ村＞

ネコ「にゃにゃっ？」

オルガ「その資材はこちらの家にお願いします。壊れた柵を直すために使いますから。」

オルガ「ええ、レンガはすべて煙突の修繕用です。金額はこちらに。」

「……にゃぁん。（オルガ様……、カッツェ村の村長の座を降りてなお、村民を思い行動されている）」

「……。（オルガ様は『自らの不始末故』と頑な

キモネコ「ニャブァァ！？」

オルガ「何食わぬ顔をしてごまかそうとしても無駄です。返済期限が過ぎていますよ。」

キモネコ「ニャァアアアン！」

「ニャニャァン……。（そして、普段のサディスティックなオルガ様もやっぱり素敵だよね……と）」

＜夜の町＞

「にゃあん……。（午後六時……オルガ様は昼間同様、馬車で村を離れ、王国で宿泊されている町に戻られる）」

「にゃぁぁ。（朝から晩まで移動とお仕事……。その合間には経営関連の読書で自己研鑽）」

「にゃふん……。（オルガ様はさも当たり前のように、このスケジュールをコンスタントにこなしているが……）」

「にゃぁん？（それにしても、今日はややお帰りが早いし懐中時計を何度か気にする素振りも見られたな……）」

「いえーい！モリーちゃん、颯爽とーじょー！」

モリー「お姉ちゃーん！」

「にゃごおおんっ！？（お姉ちゃんッ！？）」

オルガ「元気そうですね、モリー。」

モリー「もっちろん！お姉ちゃんに会いに王国まで来たんだもーん！」

「にゃぉぉん……。（オルガ様の妹か……。色々な意味でうらやましい）」

モリー「ねえねえっ、お姉ちゃんが言ってたお店ってどこどこー？私おなかぺっこぺこー！」

オルガ「あまりはしゃぐと近所迷惑ですよ、モリー。」

モリー「うぅ……。ご、ごめんなさあい。」

オルガ「分かればよいのです。ですが、何度も同じ失敗を繰り返すのはもうそろそろ終わりにするべきですよ。」

モリー「うーん……。」

「にゃにゃにゃっ！（オルガ様がムチを使っていない！それにかける言葉も何となく優しい感じがする！）」

「……ニャップ。（……ギャップ）」

オルガ「この店です。予約は取っていますから、少し待っていてください。」

モリー「ほんと！？」

モリー「わーい！お姉ちゃんありがとう！　大好きーっ！」

「ニャァァ～ンッ！（分かるぅ～！）」

オルガ「ですが、その前に。」

モリー「あれれ？」

オルガ「……。」

「にゃっふぁ！？」

オルガ「ネコごときがわたしにつきまとったところで、鬱陶しいとすら感じないものですが。妹にもとなると話は別です。」

オルガ「今日は丁度、哀れに逃げ惑い泣き叫ぶネコをこのムチで叩きのめしたいと思っていたのですよ。」

＜夜空＞

「にゃぉぉぉぉおおおん！」

「……にゃぉぉぉおん……。」

「ぉぉぉん……。」

猫縛り「（……後始末、自己研鑽、そしてご家族への思いやり）」

猫縛り「（さすが、我々の、オルガ様、だ……）」

「ニャガフッ。」

＜紹介所＞

猫縛り「にゃんにゃかにゃんにゃぁあ。」

モリー「へーっ、あなたたちってこんなのまとめてたんだ。おもしろーい！」

主人公「それ以前に終わり方がものすごく不穏だった気がするんだけど……。」

オルガ「そもそも、わたしはあなたたち底辺ネコのものではありませんが。」

「ニャゴファァ！」

主人公「ひぎゃぁあ！」

猫縛り「ニャガフッ。」

オルガ「わたし以外の人間のプライバシーを覗き見ようとする気など、二度と起こさないことですね。」

猫縛り「ニャッサァァ！」

モリー「わーい！お姉ちゃん、かっこいいー！」

主人公「今の、かっこいいのかなぁ！」

モリー「当たり前だよっ！オルガ様お姉ちゃんはね、モリーがもの……、」

モリー「ものもの……、えーと、ものものしいころ？」

主人公「物心？」

モリー「あっ、多分それっ！」

モリー「つまりねっ、お姉ちゃんはモノゴコロついた時から、いっつもかっこいいの！借金もいっぱい集めてたんだもん！」

主人公「かっこいいのかなあ……。」

モリー「でもねでもねっ、お姉ちゃんはどんどんかっこよくなってくからもっとかっこいいの！」

モリー「お姉ちゃんは、モリーの憧れなのっ！いえーい、しゃっきんしゃっきーん！」

主人公「そ、そうか……。」

主人公「……でも、そういえばオルガさんって結局はいつも、相手のためになることをしてくれてるよなぁ。」

主人公「それって確かに、格好いいのかも……？」

オルガ「自分で資金繰りもできずわたしに泣きついてきた限りなく社会の底辺に近い存在の分際で、何を語っているのですか？」

主人公「ごめんなさい！」

オルガ「それに、モリーの話したことはわたしに限ったことではないでしょう。」

モリー「えーっ、そうなの？」

オルガ「ええ。」

オルガ「成長の機会があるというのに、研鑽を積まないのは、ただの怠慢です。わたしはその機会を、日々積み重ねているだけですから。」

主人公「……。」

猫縛り「にゃぁん？」

主人公「いや……。オルガさんって、とにかく他人に厳しく見えるけどさ。」

主人公「もしかしたら、誰よりも自分に厳しかったりするのかもしれないなって。」

オルガ「今、羽虫の羽音が聞こえたような気がしましたね。」

主人公「……まず他人に、本当に限りなく厳しいけど。」