【白猫】怪盗ピアナと贋作王の壷 Story2
開催日:2018年8月14日
目次
登場人物
story
pえっと、モネリーゼは……あった!
<廊下の奥の壁に飾られた一枚は、他の絵画とは違う存在感を放っていた。>
p……じゃあ、盗んで、帰ろう。壷が盗まれたら、必ず返すから。
<ピアナが大きく一歩を踏み出すと……>
pたんま。なんだろう、あの絵……少し右に傾いてる。
あっちの絵も……こっちもだ。
まるで何かを避けてるような……そっか!罠だ!
おそらく、この通路には触れると警報装置が作動する、肉眼では見えない光の線が張り巡らされてる……
光の熱で絵が劣化する恐れがあるから、当たらないように傾けてあるんだ……
だったらその角度を計算して歩いていけば……
<ピアナは光の線をかしながら、廊下の奥にあるモネリーゼの前にたどり着いた。>
p近くで見ると、すごい迫力……絵の中に吸い込まれそう……
……それでは、拝借します。
ん?床の足跡、不自然に切れてる。落とし穴かな。
モネリーゼを無理に外せば、作動する、かな。
なら解除方法はたぶん、点検しやすいように……
<ピアナがモネリーゼを左に2回、右に1回、軽く傾けると……>
pよし、解除成功。
……それでは、今度こそ拝借します。
ごめんなさい。全部終わったら、必ず、返します。
<ピアナはモネリーゼを取り壁から外し、用意した袋に包む。>
ごめんなさい……
…………
……
pはっ!はっ!急いで、帰らなきゃ!
fほう。俺の仕掛けた罠をこうも簡単に……
pどおおおっ!?
fなに?pててて……なんでここにバナナの皮が……転んじゃったよもう!fそれは俺じゃない。
story
rううむ……tなにを真剣に読んでるんですか?r俺が独自に集めた奴についての調査資料だ。tそういえば自分、あの怪盗についてよく知りません。rいくらこっちに配属されて間もないとはいえ、たるんどるぞ。t今、教えていただければ覚える所存です。rったく、お前は……まあいい。
……奴は怪盗一家の生まれで、才能は歴代の中でもトップクラス。
嘘か真か、生まれてすぐ母親に抱かれたとき、奴は結婚指輪を盗んだそうだ。t赤ん坊のときから怪盗だったんですね。r奴にとって盗むことは呼吸と同じ。なんの感情も湧かなかったらしい。
だが、あることをきっかけに変わってしまった。tなんです?r誤って贋作を盗んでしまったんだ。
本物は別の場所に隠してあった。つまり盗みに失敗したんだ。
奴にとっては初めての失態。才能を踏みにじられた思いだったろう。tそれが悔しくてヤケに……r逆だ。喜んでいたそうだ。
本物だと信じて疑わなかったモノが偽物だと知ったとき……
己の価値観は揺さぶられ、今までに感じたことのない感覚が全身を駆け巡ったそうだ。
それから奴の盗みは変わった。他人の価値観を揺さぶるようになったんだ。
おそらく、奴はそこに美学を感じている。t美学ですか?r怪盗ってのは小さな盗みをやることに抵抗があるもんだ。
だが奴は関係ない。その証拠にこの前、ニボシを盗んだだろ?t確かにあのときは価値観を揺さぶられましたね……rただそれだけに、奴が何を盗むかは皆目見当つかん。t要するに逮捕する手がかりはないってことですよね。rそうでもないさ。奴が盗んだ贋作……それはあの贋作王メイヘルンの作品だった。tメイヘルンといえば、絵画から彫刻、ジャンルを問わずありとあらゆる贋作を生み出し、世界を騙し続けた男……t現在は指名手配犯として逃亡中。消息も不明でしたよね……r……ああ。そして、その贋作王の娘があの美術館で働いている。tそ、それってこの前の……じゃあ、あの子が?r奴とメイヘルンには深い因縁がある……
いずれ、あの子と接触するときが来るだろう。tそのときが勝負ってわけですね……r……それにしても、贋作王の娘か。向こうは俺のことを覚えていないようだったが……
――! もしかすると、奴の狙いは――
story 正真正銘の悪
<――真夜中。美術館、ギャラ・リ・ランテ。
ピアナは盗んだモネリーゼを抱きかかえ、一人途方にくれていた。>
p今までもじゅうぶん悪者だったけど、これで正真正銘……
別に、いいけどね。自分のことなんか。みんなを、笑顔にできれば。
<部屋の中央に飾られた、優美な模様の壷が目に入る。>
p秘密がバレる前にこの壷さえ、なくなっちゃえば……
…………
掃除でもして気を紛らわそ。
ホウキはっと……あったあった。
ん?絵が傾いてる?
これだけ傾いてると壷じゃなくて絵に視線が……直さなきゃ。
えっと、左に2度……いや、3……4……5……やっぱり2……
<…………>
p……よし!この絵は外すことにしよう!
さっ、掃除の続きを……と思ったけど、綺麗すぎてその必要はなさそう……ふふ、さすがおばちゃんだね。
あれ?何か落ちてる?
<そこには『モネリーゼはいただいた』と書かれていた。>
pこ、これって怪盗さんの……!来てくれたんだ……
……モネリーゼ?
ない!モネリーゼがない!
私が、絵を動かしてる間に盗まれて――
壷は……
<部屋の中央に飾られた、優美な模様の壷が目に入る。>
p……壷はある。
そんな――
これじゃ、私は――本当に私が――盗んだことに……
f……さあ、どうでる?贋作王メイヘルンの娘。
楽しみだ。
story
pどうしよう……モネリーゼといえば世界屈指の名画……
それを怪盗さんに盗まれちゃうなんて……
どうしよう……どうしよう、どうしよう!?
怪盗さんから絵を取り返す!?無理だよそんなの!
明日になったら、全部バレちゃう!そんなことになったら!
!
バレなければ――、いいのかな?
<ピアナはドリンの壷に視線を送った。>
お父さんの贋作づくり……ずっと、手伝ってきた……
――できる。私なら。
でも、偽物なんか――それが大嫌いだったのに――
私は!私は――!!
……私は。
…………
……
ははは、再現できちゃった。
たった、数時間でね。記憶を頼りに描いたから、99%のデキかな。
こんな才能、あったんだね。私。
……最低だよ。
<ピアナの視界に、ドリンの壷が入ってくる。>
……お父さん。
そうだ。贋作は悪いこと……悪いことなんだ。そんなこと、しちゃ、ダメだ。
真実を知られるのが怖くて……逃げて……
……卑怯者だ。
私は、卑怯者だ。
怪盗さんに盗ませようと……罪をなすりつけようとして……
自分のことしか考えてなくて……
私が真実を話せばすむことなのに……
<モネリーゼの贋作をピアナは睨みつける。>
この絵は私そのものだ。嘘で塗り固められた弱い自分……
あさましくて、下劣で、薄つべらくて、不道徳で、さもしくて、ちんけで。ぼうぞくで、寒頂来の素っ頓狂の頓珍漢のボンクラチビマヌケの……
……クソ野郎だあああああっ!!!!
<ピアナはパレットナイフを振り抜き、モネリーゼの贋作を突き破った。>
はあ……はあ……
逃げない。私はお父さんみたいに、逃げない。
…………
……
<―早朝。美術館、アダムス・メポロ。>
p失礼します。
zあーダメダメ。まだ開館時間じゃありませ……
あ、あなたはピアナさん!?どうして……
p謝罪にきました。
z謝罪?pすでに周知の事実かと思いますが昨夜、こちらのモネリーゼが何者かによって盗まれました。
犯人は、私です。
zええっ!?
pお金で解決できない問題だと、わかっています。
何でもします!ー生かけて償います!すみませんでした……!
zま、待ってください!
p止めないでください!
zそうじゃなくて。なんのことを言ってるんです?
pですからモネリーゼの……
zありますよ。いつもの場所に。
pえ!?
<ピアナは急ぎ、モネリーゼの飾ってある場所へと向かった。>
pこの黄金比は間違いなく本物……
でも、どうして……?
「ごちそうさま。」
「あの、カキフライが全部残ってますけど……」
「それが?」
「いえ、カキフライ定食を頼んだのに、なぜ……」
「その反応を見たくて残した。」
「はい?」
「いや、すまない。子供じみたイタズラだな。
柄にもなく、俺は興奮を抑えられない。」
(この人、何を言ってるの!?)
「楽しみだな、ピアナ。」
story むきあえ
<怪盗さんがなぜあんなことをしたのかわからないまま……
私はいつものように仕事をしていた。>
cまた来ちゃったわ。もう一度壷を見るわよ!x力二カマ模様が気に入ったんだね♪p(たくさんのお客様が、楽しみにしてくれている。
私は、欺き続けている。
今日も、ドリンの壷が欝陶しいくらい、視界を占拠する。
偽物の、壷が……けれど、その偽物が――)
怪盗さんの、おかげだね……
私、気づいたよ、お父さん。
<ピアナは呆然と、立ち尽くす。>
pずっと真実から逃げていたんだ。
隠していたって、何も変わらないこと。だから、言わなくちゃ。
――真実を。
…………
……みなさん、聞いてください。Oピアナくん?pみなさん、聞いてください!
(言うんだ!ここで!壷は、偽物だって!)O急にどうしたの!?今は開館中だよ!pな、なに!?急に霧が……cブルブル……寒いし、前が見えない……Oこれはまさか……x霧が晴れていくわ……Oし、しまった……!cぎにゃー!?壷がなくなってるー!x見て!力ードが置いてあるわ!
v!<カードには『壷はいただいた』と書いてある。>p怪盗さんの仕業だ……!Oなんてことだ……壷が……!p今まで盗まなかったのに、どうして……!
なんで、今さら――!
story