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【黒ウィズ】アーサー&アリオテス編 (4000万DL)Story2

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作成者: にゃん
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story3



「なんでこんな奴に苦戦するんだよ? 下手な壷ばっかり造ってたせいで、腕が鈍ったんじゃねぇのか!?」

アーサーの打ち込みをアリオテスは両手に握った(双蛇剣)で受け止め、いなす。

だが哀しいかな体重が軽すぎる。

崖を転がる落石のような破壊力を持つアーサーの一撃は、受け止めるだけで限界だった。


「戦いに入ってくるんじゃねえよチビ! 引っ込んでな!」

「だらしなくて見てらんないから助太刀に来てやってんだ! 感謝ぐらいしろよ!」

アーサーが、続けて剣をふるう。それを今度はアシュタルが受け止めて、アリオテスを守った。

「なにが助太刀だ! さっきから邪魔にしかなってねえぞ!」

隙が生じたアーサーにアリオテスが、剣を突き出す。

だが、アーサーの闇の覇眼は、それを苦もなく受け止めた。


「喧嘩か? 余裕なんだか、ふざけてるのか、わからないな。」

覇眼に制御された心が、アーサーに薄暗い笑みを浮かべさせた。そしてアーサーが攻撃に転じる。

アリオテスでは一度や二度、相手の剣を跳ね返せても、連続で打ち込まれる剣には対処できない。

「さがってな!」

アリオテスを庇いながら、アシュタルはアーサーの剣をすべて片手で弾く。

その反応速度、先ほどの比ではない。

複雑怪奇な剣の軌道をすべて先読みしたアシュタルの剣は、アリオテスに傷ひとつ付けない。

「ほう。なかなかやるな?」

やや子どもじみた笑みを浮かべながら、アーサーはさらに剣を繰り出す。

アリオテスが受け止めた。アシュタルが、その隙に斬りつける。

アーサーは、交わして剣を振り抜く。再度、受け止めようとするアリオテス。

アシュタルは、無理やり手で押しのけて、身の安全を守ってやる。

「危ねえぞ。真っ二つになる趣味でもあんのかよ?」

「いまの隙に反撃しろよ! せっかく攻撃の機会を作つてやったのになにやってんだよ!?」

「いま突っ込んでいったら、斬られていたのは、間違いなくチビのほうだぜ?

はは~ん。読めたぜ、チビの魂胆が。わざと俺の邪魔して、あいつに俺を斬らせるつもりだろ?」

「それはいい案だな。親父の仇、ここでとらせてもらおうかな。」


「仇? お前、あいつに父を殺されたのか?」

「ああ、そうだ。悪いかよ!?」

アリオテスがアーサーに斬りかかる。

「面白い奴らだな。なんだか、お前たちに興味が湧いたぞ。


そのような半端な剣など易々と払いのけるアーサーだったが――

その隙を突いて、アシュタルの乱暴な蹴りが、脇から襲った。


「くっ!?」

「や……やった!」


「なんだいまの剣さばきは!? 教えたことの半分もできてねえじゃねえか!

まったく、物の覚えの悪い弟子だぜ。見てろ、剣ってのはこう扱うんだ。」

弟子を押しのけて、アシュタルは剣をアーサーに向けて突きつける。

自然体から繰り出された音のない神剣。それが、2度3度と繰り出される。

それらをすべて、アーサーは身体を捻ってなんとか避けた。

 (いまの剣……これまでとは、全然違う鋭さだった)


先ほど1対1で戦っていた時とはまるで別人。アシュタルの動きは、間違いなく変化していた。

アリオテスという庇護対象がいるのは、アシュタルにとって動きを制限される上に意識も奪われる。

本来なら、不利な条件のはずだが。



「師匠の教え方が悪いから、俺はちっとも上達しねえんだよ!」

「なんだと? 文句言うんなら、もう2度と剣を教えねえぞ!?」

「じゃあ、俺も壷作りは手伝わねえ! ルミアひとりじゃ大変だろうなあ?」

「このチビ! それで俺の弱みを握ったつもりかよ。」



アーサーは、なんだか蚊帳の外に置かれている気分になってきた。

 (こいつらとは、もっとちゃんとした勝負をしたかった。俺の左眼さえこんなんじゃなかったら……)

左眼の光は、まだ輝きつづけている。

闇の覇眼は、狙いを先はどからアリオテスに集中させているが、アシュタルという壁がずっと立ちはだかっている。

 (エクスカリバーは、先ほどから俺の呼びかけに答えない。左眼が聖剣を押さえ込んでいるみたいだ。

つまり、いまの俺には、エクスカリバーを持つ資格がないってことなのか)

本来覇眼は、この大陸に存在する聖剣の力を増幅させると言われている。

しかし、アーサーのエクスカリバーは、そのような気配を見せない。

 (ようするに俺の左眼は、ちゃんとした覇眼じゃないってことか……)

一瞬、アーサーの意識が戦いから逸れた。

その心の隙を衝くように、重たい衝撃が、右手に持った聖剣を弾き飛ばす。

「しまっ……。」

「これで勝負ありだ。どこのどいつかしらねえが、これ以上、手間かけさせんな。

俺もいい加減……昔の自分に戻っちまいそうだぜ。」


アーサーは、野生の獣のような冷たい視線を向けられた。

凍えるような殺気を感じて、影を縫い付けられたようにその場で動けなくなる。


「それが君の本性か? 戦場で出会いたくないね。

わかった、負けを認めるよ。元から戦いなんて望んでいなかった。ただ、この左眼が俺の身体を操るんだ。」


聖剣本来の力を失ったエクスカリバーが、虚しく地上に落ちている。

左眼は、宿主であるアーサーにその剣を拾わせて、戦いの続きを行わせようとしている。


「やめろ……。俺は戦いたくない……。俺は負けを認めたんだ……。」

「ごめん。俺が、覇眼をちゃんと使えれば、助けてあげられたんだけど………。」

「だったらしょうがねえ。俺が、こいつの左眼を斬って――」


「その必要はありません。」


「姉上! メンジャル、よく姉上を連れてきてくれた!」

(やべっ……)


リラは、弟との挨拶もそこそこにアーサーの左眼に宿る覇眼を見て、納得したようにうなずいた。

「暗い覇眼を宿した若き剣士殿。私たちを頼ってこの島に来たのは正解でしたね?」

「つまり、この眼を元どおりにできるのか? 頼む……なんとかしてくれ。もう……抑え込むのも限界なんだ。」

戦いを再開させようとする覇眼をなんとか制御しながら、アーサーは懇願するように頭を下げた。

「私とアリオテスは、原初の覇眼を受け継ぐゲーの一族。

お互い、まだ半人前ですが、ふたりの力を合わせれば、あなたの左眼から、不要な光を取り除くことは可能です。」

「姉上と一緒なら、ジミー殿を救った時のように覇眼の暴走を抑えることができるかもしれません。」


アリオテスとリラ。ふたりは手を繋いで並んで立つ。

そして同時にふたりの右眼に光が宿った。原初の覇眼が発動したのだ。


「やはり覇眼の王は、この島にいたのだな。だが、こんなに若いふたりだったとは……驚きだ。」


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story3-2



戦の趨勢は、リヴェーダが率いる《同盟軍》の一方的な勝利に終わった。

《グラン・ファランクス》の騎馬突撃によって、あっさりと蹴散らされ。

敵対する《領主連合》は、あっけなく崩壊した。所詮敵は、山賊紛いの集団。


「左眼から熱が消えた。身体も動く。よかった……。ふたりには礼を言う。ありがとう。」

覇眼から解放されたアーサーは、自由になった喜びを噛みしめるように両手で自分の身体を抱きしめた。

「そして、君と君の家臣たちに剣を向けたこと、本当に申し訳なく思っている。」

「気にすんな! アーサー殿が悪いんじゃない。悪いのは、あんたを操っていた覇眼だ。

それよりも、アーサー殿に覇眼を植えつけた奴のこと教えてくれよ。」

「この島の住人ではないと思いますが……。」

「俺は、ここから海を渡った北にある《ブレタニク》という大陸から来た。

自慢するわけじゃないが、これでも小さな国の王なんだぜ。」

「え? あんた王様だったのか? その割りには、全然偉そうに見えないな。」

「うちの国は、周辺の国から領土を狙われている。王の俺が先頭に立って王土と民を守らなければいけないというのに。

王である俺が、覇眼なんぞに心を乗っ取られてしまうとは。本当に情けない。

自分の手で家臣たちを殺すわけにもいかないから、ひとり船に乗って覇眼の王がいるこの島にやってきたんだ。」

「私たちを覇眼の王などと、どなたが言ったのでしょう?」

「マイアという剣士を知ってるか? アイツから聞いたんだ。」

「なるほど。あの人か。」

「で……そうそう。俺に覇眼を植えつけた奴のことだったな?

そいつは、不思議な雰囲気をした少女だった。とある戦場で偶然出会ったんだが……。

いや、あれは偶然じゃなかった。はじめから俺を狙って覇眼の光を植えつけたんだろうな。

「どんな見た目たった?

「白い髪の少女だった……。自分の背丈以上の大剣を背負い、頭に花の髪飾りをつけていた。

「うーん。そんな覇眼の戦士は、知らないな。姉上はどうです?

「私もそのような人物は知りません。

「あんたらが知らないとなると、この島の奴じゃないのかもな。

「……。

リラはなにかを感じたような難しい顔をしていた。

「覇眼の戦士がこのケルド島以外にいるなんて、聞いたことないな。ひょっとして、人工的に移植された偽の覇眼なのかも。」

「マイアが言っていた。覇眼は、聖剣本来の力を引き出すと――

そして、さっきまで俺は、己の聖剣を使いこなせなかった。

やはり、あの眼は、偽の覇眼だったのかもしれないな。」

「聖剣? あの剣、並の剣じゃないと思ってたけど、まさか聖剣なのか!?

見せて、見せて!」

「あ……ああ。」


「うおおおおおおおーーー格好いい! 強そう! 姉上、凄いですよ!

「こら、人様の剣を見てはしゃぐんじゃありません! すいません、本当に……。

「いえ、お構いなく。己の剣を褒められて、気を悪くする剣士はいない。

「なあ、なあ、なにか1発ぶっ放してくれよ? 聖剣らしいところ見たいなー! 見たいなー!

「わがまま言ってはいけません!

「いや、恩人の頼みなら断れない。特別に見せてあげよう。少し離れていろ。


アーサーはエクスカリバーをつかむと、背中まで振りかぶってから、なにもない空間を切り裂いた。

剣風は、唸りを上げてつむじ風を巻き起こす。

剣先で切り裂いたのは虚空。

だが、エクスカリバーは、空を切り裂くだけでなく、なにもない大気中に輝く光の切断跡を生みだした。

猛烈な風が吹きすさび、周辺のあらゆる物体が、閃光の切断跡へ吸い込まれていく。

その信じられない様を唖然と見つめるアリオテスたち。


「す……すげえ。これが、あんたの持つ聖剣の力なのか?

「俺の腕じゃ、まだこんなもんだ。もっと修行して、100万の大軍をひとりで倒せるようになるつもりだ。

王が強くならないと民を守れないからな。

「アーサー殿も大変だな。王様ってのは、こんな島の領主なんかよりも責任がでかいだろうしな……。

「アリオテスは、我がゲー家の跡継ぎです。わずかな領地しかありませんが、家臣も民も背負う重さは、きっと同じでしょう。

アリオテス、剣はアシュタル殿に学ぶべきですが、統治者としての心構えは、このアーサー殿に学ぶべきかもしれませんね。

「いや、俺も人に教えられるほどちゃんとできちゃいないさ。家臣のトリスタンたちに迷惑かけてばかりだ。

「俺だって、メンジャルたちがいるから領主っぽく振る舞っていられるだけで……全然だ。

「……おっと、あまり長く国をあけてられない。そろそろ戻らないと。

「あなたに覇眼を植えつけた少女のこと、なにか判ったら教えてください。

「当然だ。ふたりは、俺の命と国を救ってくれた恩人だ。いつか必ず、この恩に報いる。

「気にすんな。


「そういえば、あの仮面を着けていた剣士はどこに行った? 彼には悪いことをした。

―言謝っておきたかったんだが……。

アシュタルはいつの間にか居なくなっていた。

メンジャルたち、ゲーの家臣に正体を知られないように、こっそり離れたのだろう。


「覇眼を持った少女のこと、調べて必ず連絡する。」

「ぜひ、お願いします。」

アーサーは、アリオテスたちの前にひざまずいた。そして、ふたりの右手の甲に軽く口づけする。

「なんだそりゃ?」

「驚かせてすまない。俺のいるブレタニクの挨拶だ。

女性には、必ずこうして挨拶しろと幼い頃から、教えられてきた。変な意味はないさ。」

「……俺は男だ!」

「……え?」



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story3-3



アシュタルは手頃な切り株を見つけると、そこに腰を下ろした。

脇腹の傷は、急所を外れているので致命傷ではないが、浅くもなかった。


(まさか、ここまで腕が鈍っているとはな。

いや、違う。腕の問題じゃねえな。気持ちの問題だ。昔ほど勝負に執念を燃やすことができなくなった。

自業自得だな……)


「ん? あれ? どうなってんだこれ? くそっ……。」

手当しようと思っても上手く包帯が巻けない。四苦八苦していると。

「ルミアか? 悪いが包帯巻くの手伝ってくれ。ひとりじゃ上手く出来なくてよ。」

背後に立ったその人物は、黙って包帯を巻くのを手伝ってくれた。

「かすり傷だ。心配すんな。2、3日すりゃあ治る。だから――」

振り返る。後ろに立っていたのは、ルミアではなかった。


「な、なんだよ。その不機嫌そうなツラは? まさか、怒ってるのか?」

「……別に。」

「悪かったよ。巻き込んじまって。」

(このチビが、戦闘に割り込んでこなきゃ……。おそらく、俺は斬られていた)

「俺が覇眼をちゃんと使いこなせていたら、偽の覇眼なんて楽々封じ込められたんだ。

そしたら、アシュタルを巻き込まずにすんだ。全部、俺が未熟なのが悪い。わかってるよ。」

 (チビを守んなきゃって気持ちがあったから勝負に執着できた。一瞬だけ、昔の俺を取り戻すことができた……)


「黙るなよ師匠。なんか言えよ。」

アリオテスは、慣れた手つきでアシュタルの手当を終えた。

「……。」

それでも、アシュタルは□を利かないどころか、目すら合せようとしない。

「アーサーとは、また会う約束をしたぜ。

今度、改めて師匠に謝るって言ってたからそんときは許してやってくれよな?」

「……。」 (元々このチビが招いた災難だ。だから、チビオテスなんぞに感謝するのはシャクだが……)

「なんで無視するんだよ? いい加減、機嫌直してくれよ。師匠!」

「……。」 (でも、ま……。いまこうして生きていられるのは、こいつのおかげでもある)


気まずい空気が流れる。

無言のアシュタルが怖かった。意気消沈したアリオテスは、いつもの生意気さを引っ込めるしかなかった。


「……う、嬉しかった。来てくれて。もう、ダメだと思ったから余計に……。」

「……ふっ。

下手な壷と言ったこと取り消して謝れ。それで許してやる。」


「え? そんなこと言ったかな?」

「とぼけるつもりか? じゃあいい、チビはもう弟子でも、知り合いでもない。」

 (壷のことになると、途端にムキになるんだからなー)

「悪かった……。ごめん! すまん。もう二度と下手とか言わない。

アシュタルの壷は天下一だ! ……これでいいだろ? な?」

「なんか心がこもってねえな。」

「おい、いい加減にしろよ! いまので十分だろ!」

「ちっ……しょうがねえ。許してやるか。ルミアのところに行くぞ。あと、傷のことルミアには内緒な?」

「もちろん! 師匠にとっては不名誉な傷だもんな。誰にもいわねえよ。」

「……。」

「いってー! ……なんて殴るんだよ!?」





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