Gamerch

【黒ウィズ】続アルティメットサマーガールズ! Story

最終更新日時 :
1人が閲覧中

2016/06/30

目次


プロローグ

Story1 航海、大魔道士 初級

Story2 上陸、大魔道士 中級

Story3 発見、大魔道士 上級

Story4 遭遇、大魔道士 封魔級

最終話 対決、大魔道士 絶級






story0 プロローグ


「キミ、最近、お疲れなのかにゃ?」

ウィズの問いかけに、君は首を傾げた。

疲れているといえば疲れているけど……君はそう返した。

「見ていればわかるにゃ。キミは疲れてるにゃ。

休むことも大事なことにゃ。魔法を学ぶためには、十分な体力と、心の持ちようが大事なんだにゃ。」

さすが師匠。いいことを言う。

君はほんの少しの感動を覚え、頷いた。

「だからキミ、これから海を見に行くにゃ。」

海? と君は訊き返した。

「最近は暑い日が続いているから、海風を感じながら気持ちを新たにするにゃ。

今日はもうギルドの依頼もないし、魔法のことはちよつとだけ忘れて、体を休めるのがいいにゃ。」

いいかもしれないね、と君は返答する。

バカンスにでも出られればいいんだけどね、と言ったところで、君は足元に封筒が落ちていることに気づく。

君はそれを拾い上げる。

「嫌な予感がするにゃ。キミ、封筒の中身を見ないようにするにゃ。」

ウィズが言い終わるや否や、あのときのように紙が落ちてそこに書かれた文字が見えてしまった。


『緊急命令。浮上した古代都市トランディアに集合せよ』




TOP↑

story1


船は順調に航海を続けている。

頬を為でる風、飛沫を上げる波、海の匂い。

それはとても新鮮で、心地よかった。

「キミ! 現実逃避はやめるにゃ!」

君は何故か、船の上にいた。

お、黒猫のひとだ。

ほんとだー! 黒猫のひと!

l黒猫のひと、こんなところで何してるの?

そしてすぐに囲まれた。

みんな見知った魔道士たちだ。


黒猫のひと、こんなところで何してるの?

ここアリエッタの船だよ?

そうそう。わたしの船。

ずいぶんと立派な船だ、と君は思う。

何がきっかけかはわからないが、異界に飛ばされてしまったようだ。

状況をだいたい把握した君は、この船どうしたの? と尋ねた。

lアリエッタが拾ってきたんだって。

落ちてたんだー!

街に。

アリエッタが操舵輪を握ったまま、口にする。

……アリエッタが操縦しているんだ。君はそう思った。

街に船が落ちてるってどういう状況にゃ。

それを引っ張ってきたんだって。

t非常識にも程がある。

最も非常識な人……ではなく杖が、そんなことをぼやいた。

黒猫のひとも島に行くのー?

君はできれば帰りたいかも、と言ってみた。

わたしたち島に行くから、まだ帰らないよ?

キミ、諦めるにゃ。

ウィズはどうやら既に受け入れたらしい。

あら。声がすると思ったら、珍しいお客様ね。

どうしたものかと悩んでいると、今度はエリスが姿を見せた。

どうやら船尾のほうにいたらしい。

あなた、こんなところで何をしているの?

話すと長くなるんだけど、と君は口にする。

まあ、航海はまだ続くし、あなたもゆっくりするといいわ。

あの大会が終わってから少しして、あなたが急にいなくなったから、結構探していたのよ。

あなたの住んでいるところでは、別れの挨拶はないのかしら?

君はごめん、と謝罪する。

責めているわけじゃないのよ。あなたはアリエッタと同じで、神出鬼没だと思っただけ。

lアリエッタと同じって、素直に喜べないわね。

えー? 光栄なことだと思うなー?

t自分で言うことか。

みんなで遊びに行くの? と君は問いかける。

そう!

いや、違うわよ。大切な仕事があるの。

仕事? 君は首を傾げた。

ええ、数百年も前に沈んだとされる島が、再び浮上してきたなんて噂が流れてきたのよ。眉唾だって話もあったのだけれど……。

l魔道士協会のお偉いさんが、それを見つけたって。大騒ぎになっちゃって。

アリエッタ、島作った説とかね。嘘というか、デマというが流れちゃったのよね。

レナが心底楽しそうに笑いながら言う。

でも島が浮かんできたからどうしたにゃ? それぐらいなら、別に問題にもならなそうにゃ。

ちっちっちっ。

実はそういうわけにはいかないんだなー。いきなり島浮かぶとかわけわかんないでしょ?

確かにわけはわからないけど、めちゃくちゃやってきたみんなを知っているから、君はそこまで驚かなかった。

島には古代都市の、わるーい魔道士がいるんだって。

そういうこと。協会が送った魔道士2名が島で行方不明になって、それの捜索も兼ねているのよ。

l黒猫の魔道士さん、あなたも一緒にどう?

どう? と訊かれたところで、帰れないのだからついていくほかない。

オッケーオッケー! じゃあ、黒猫のひとも、アリエッタの船で行こう!

かくして君は、この魔道士たちと一緒に突如浮上した島へと向かうことになった。





この海のタコって、美味しいんだって。

tタコ? 小娘、タコを食すのか? グロテスクの極みではないか。

l焼くと美味しいって聞いたことがあるかも。まあ、市場に出回ってるものぐらいしか見たことないけど………

焼くの? タコを? どうして? 美味しいって、そもそもどんな味なの? 甘いの? 苦いの?

lそんなの食べたことないから知らない。でもほら、燃やしたりするのって私、得意だし。

それ、あなたが何か燃やしたいだけでしょ。

わかるー!

わかってるんじゃないわよ!

どうやら順調に進んでいるらしい。

会うのは久しぶりなのに、あなたはあまり変わっていないみたいで安心したわ。

エリスは少し、大人びたかも、と君は口にした。

まだ貧乏なのにね。

余計なことは言わなくていいの!

lエリスは、魔道士協会の理事に就任したのよ。しかも歴代最年少理事。

理事……それって要するに、偉くなったということだろうか?

ま、まあ、少しだけよ……。

l12人の理事のうちのひとりだから、エリスは結構すごいんだって。最年少よ、最年少。

それは自慢していいことにゃ。

この中じゃ一番年上だけどね。

あーあ、私も偉くなりたいなー。

偉くなりたいんだ、と君はリルムに問いかけた。

ううん、そうでもない。

適当すぎるにゃ………

l功績を残した者しか理事になれないんだから、誇っていいことでしょ、エリス。

うっ……。

あはは、照れてるー!

いいのよ、私のことは。

クールな表情とは裏腹に、言葉はどこか嬉しそうだった。

君は、そういえばソフィがいないね、と言った。

…………。

l…………。

…………。

ど、どうしたにゃ……? ソフィに何かあったのかにゃ?

一様に沈鬱な表情を浮かべている。

船の空気は、一気に重くなった。

ソフィちゃんはもう………

……そんな。君は愕然として、

明日に備えて寝るって……。

帆柱に頭をぶつけた。

キミ、いつの間にそんな古典的なこけ方を習得したにゃ。

いきなり船が揺れたから、と答えようとした瞬間、大きな飛沫を上げて、タコが乗船してきた。

タコだー!

ん? これタコ? クラゲじゃない?

クラゲか? クラゲなのか?

なんでもいいから食べる! 捕まえろー!

いや、クラゲはよしなさい。お腹壊すわよ………

乗船してきたタコは、1匹や2匹ではなかった。

l全部、蹴散らす!

ふふん、黒猫のひとに進化した私を見せるいい機会だ!

杖を――。

tえ、うそ。待って待って。ちょっと待って。

小娘、考えなおせ。目測を誤ったら、我、落ちちゃう。海に落ちちゃうから。

ぬわああ振りかぶるなあああああ!!

――置いてからのリルム式ロロット砲!!

フレイミィ・フルバースト!

ちょっと落ち着きなさい。船の上でそんな無駄に魔法を使わない。

そうそう。無駄撃ちはよくない。

lアリエッタ! タコそっち行った!

うおおおくらええええ!!




sどうしたの!?

タコを吹き飛ばした衝撃で、どうやらソフィは起きてしまったらしい。船の奥からゆっくりと姿を見せた。

sわわ、何? タコ? あれ? クラゲ?

タコでもクラゲでもいいよ。食べよう!

君は苦笑しながら、食べるとしたらどうやって調理するのだろう? と考えた。

いや、食べないわよ。こっち見てるじゃない、タコ。

目を……とる……?

あのね、アリエッタ。あなたは馬鹿だから不用意な発言をするけれど、そんな気持ち悪いことしたら本気で怒るわよ。

うん! だいじょうぶ!

大丈夫じゃないから言ってるのよ。あなただちが暴れたせいで海が割れて、船が沈むかと思ったじゃない。

結構な混沌が生まれていた。

タコって焼くだけでいいのかな?

sうーん……調味料あったかな?

lそういえばアリエッタって意外とグルメで、味には無駄にうるさいのよ。

sあっ、お薬はあったよ!

おお、さすがハーネット商会!

l酔い止めでしょ。え、酔い止めをかける料理って何?

こっちはこっちで、何か別の混沌が生まれそうになっていた。


 ***


あっ! そろそろ島につくよ!

アリエッタが指差した先には、小さな島がひとつ。

lあれが魔道士協会のお偉いさんが見つけた島?

……ええ、どうやらそうみたいね。

s言い伝えでは、あの古代の島には、特別な薬草が生えていたみたい。

特別な薬草?

tふん、しょせん草ではないか。

l杖が何言ってるの。

s頑張ってたくさん集めなきゃ……!

ソフィだけ目的が違うにゃ。

いや……私だけよ、ちゃんと調査しようと思って来ているのは。

うっすらと気づいてはいたが、やっぱりみんな遊ぶ気だったようだ。

大事にならなければいいんだけれど………

エリスは不安そうに――いや、心底面倒くさそうにそう言った。

だが今さらこの船が止まるわけもなく………

よーし、何とかの島に向けて、面舵いっぱーい!

船は進む。

この先に何が待ち構えているのか、ちょっとした不安と期待を抱きながら。



TOP↑

story2



航行を続けていた船が、浜辺付近に停泊した。

聞くところによると、どうやら彼女たちは丸1日船に乗っていたらしい。

ついたー!

lここ、どう見ても普通の島じゃない?

……禍々しい気配は感じないわね。

エリスが箱を浮かせながら、周囲を見回した。

生い茂る緑はあるが、しかしそれぐらいだ。

スイカ持ってきたよ。

sどうやって割るの?

リルムが黒々とした大きな玉を取り出した。

スイカ? 艶といい、重そうな見た目といい、鉄球の間違いではないのだろうか?

l杖でいいんじゃない?

tえ、我?

ふーむ……杖かー。

tやめておけ、小娘。我ちょっと尖ってるところあるから、スイカを割るのに適さないのだ。

杖は置いておこう。

tいや、それもちょっと待て小娘。おい砂に突き刺すな!波が来るから。このままだと波に当たるから!

けどおかしいわ。先生も来ているはずなのに。

君は、先生? と訊き返す。

ええ。魔道士協会理事のひとりで、世界の魔道士を束ねる大魔道士でもあるお方よ。

エリスの先生なのかにゃ?

直接の師とか、先生というわけではないわ。だけど魔道士として、多くのことを学ぱせてもらっているの。

イーニアっていうんだよ。

あのね、イーニアはね、ふふ、実はね。

何が可笑しいのか、アリエッタがニヤニヤしながら話しかけてきた。

l余計なこと言ったら、アリエッタまた叩かれるよ。

はっ。

そいつはかんべんしてつかあさい……。

何言ってるのよ、もう。

ひとまず先生と合流する必要があるから、遊んでないで行きましょう。

こういう島って、財宝とか眠ってるのが相場だよね?

lまあ、そういうこともあるね。うまくゲットできれば、ー気に大金持ちかも。

…………。

いいかもしれない!

sリルムちゃん……。

t小娘。おい小娘。我のこと忘れてないか? 我、砂場に突き刺さったままなんだが?

宝物は全部わたしのものだー!

そう言って、アリエッタたちが森の奥へと進んでいく。

lしょうがないなあ。

その後を追うように、レナが走りだした。

tおい小娘。待って本当に待って。波に対して我、無力だから。

黒猫の。ちょっと我を運んでくれ。

そう言われても……と君は言いよどむ。

初めてこの異界に来たとき、彼……魔杖が人を乗っ取ったことを思い出した。

t安心しろ。我は見境なく体を乗っ取るような美学のない杖ではない。

だから置いてかないで。

何だか哀愁を感じてしまって、君は魔杖エターナル・ロアを引き抜いた。

キミが乗っ取られても、私は何もしてあげられないにゃ。

乗っ取られたら、引き剥がしてあげるわ。

……そんな言葉をかけられて、不意にエリスの匝に目を向けてしまった。

そうならないように意識しないと……。

sリルムちゃんとアリエッタちゃん、大丈夫かな……。

大丈夫なわけないじゃない……。レナがついているとはいっても、ノリで便乗したりするんだから。

それなら早く行かなきゃいけないにゃ。

sソフィは飛べるけど、黒猫さんは?

走って追いかけるよ、と君は告げる。

ソフィ、先に追いついたら止めておいて。

sはーい。

それじゃあ、君も行くにゃ。



驚いた。あなた、身体能力も高いのね。それともそれもあなたの魔法なのかしら?

それならエリスだって、と君は言う。

悪しきもの、醜いものを捕まえるのが封印の魔道士だもの。逃げられるなんてヘマは出来ないでしょ?

そういった訓練や修行のようなものを、エリスはやってきたということだ。

真面目な彼女らしい行いだ。

そんな話をしながら、アリエッタたちが進んだであろう森を駆け抜けていると、小さな影が視界に入った。

木の後ろから飛び出してきた小さな女の子。

む?

キミ、危ないにゃ!

君は空中で体をよじらせ、その少女を避けようと試みる。

お互いに勢いを殺すことが出来ず、何故か胸に飛び込んできた少女を抱きかかえる形になって――

お、おお……?

君は大木に激突した。

tはうっ……!

ちょっ……ちょっと、大丈夫!?

幸い衝撃はそこまででもなく、落下することもなかった。

エターナル・ロアにもダメージはないようだ。

君は、大丈夫だよ、とエリスに告げて、少女にもごめん、と言った。

うむ、私のほうこそ済まなかったな。

魔物に囲まれたのでな。広い場所で蹴散らそうと移動していたのだ。

魔物……そんなの危ないよ、と君は声をかける。

……せ、先生!

おお、エリス。ようやく来たか。メリイの奴とずっと待っていたぞ。

先生、お元気そうで何よりです。

先生……? その言葉を聞いて、君はその少女を二度見してしまった。

ええ、さっき私が言っていたのは、このお方のことよ。

先生はね、各国の魔道士育成に熱心なお方で――あっ、あなたも知ってるわよね、これぐらい。

あのレナも指導を受けたことで、急激に魔法の才能が開花したの。

そうなんだ、と君は口にした。

小さな女の子にゃ。

そうだね、と君は小声で言う。

アリエッタと同じぐらいの年齢……もしかするとそれよりも下に見える。

数多いる大魔道士を束ねるお方でもあるのよ。

だというのに驚くほどの経歴を持っている。

世の中わからない……。

どうしたにゃ?

と思ったが、よくよく考えてみれば、自分の師匠も今は猫であった。

何か失礼なことを考えてないかにゃ?

そんなことはないよ、と言って、君は少女――もとい、大先生に向き直る。

こちらがあの黒猫の魔道士で……。

ほう。黒猫の魔道士か。噂はエリスから聞いているぞ。なるほどあの動きはそれ故のものか。

私は――

と彼女が口を閉ざして、君たちの背後に視線を向けた。

挨拶を終わらせたいところだが、まずは魔物を叩いてからだな。

アリエッタたちが通ったはずなんですが……。

全くあの馬鹿。魔物を刺激したのか?

……気ままな子ですから。

おい、黒猫の魔道士。お前も手伝え。

君は向かってくる魔物を見据えて、力―ドを取り出した。

ひとまずは魔物退治だ。






お、黒猫のひと発見。

sほんとだ。おーい!

魔物を退けて進んだ先に、先行していたみんながいた。

sリルムちゃんリルムちゃん。

なに?

sほらあの人……。

あ! ……知らない。

人数だけは連れてきたようだな、エリス。

ええ……まあ、ー応。

イーニアだー!

わはは、私より小さい!

おい、アリエッタ。お前、前に会ったとき、年上に敬称をつけろと言ったのを忘れたのか?

えっ?

人の話を聞け。スイカを持ち上げるな。ていうか何だそのスイカは。

リルムにもらった。

私もアリエッタより年上だし、ちょっといいとこ見せないと。

lイーニア先生かー。懐かしい。お久しぶりです、先生。

うむ、レナも息災で何よりだ。

おっと挨拶を忘れていたな。黒猫の魔道士よ。

私はイーニア・ハーメティック・ソルルスト・ラクトリティシア・ウォルヴィアラ・メメスリスムルナ・ストラマー3世だ。

君は自己紹介をしたあとで――思わず、えっ? と訊き返した。

……イーニア・ハーメティック・ソルルスト・ラクトリティシア・ウォルヴィアラ・メメスリスムルナ・ストラマー3世。

……超ながい。

イーニア・ハーメティック・ソルルスト・ラクトリティシア・ウォルヴィアラ・メメスリスムルナ・ストラマー3世。

今まで始末してきた魔道士の名前を自分の名前に加えていくという……。

アリエッタがこっそりと耳打ちしてきた。巨大なスイカが当たって少し痛い。

イーニア先生は、なかなか俗悪な趣味を持っているようだ。

滅多なことは言うものじゃない。それと黒猫の魔道士。お前も信じるな。子どもの戯れ言だ。

イーニア・ストラマーと呼んでくれていい。

それにしても、ロロット家の娘もいるとはな。エリス、お前も交友の幅が広いじゃないか。

たまたま街で会って……それで話をしたらついてきたといいますか……。

あのク一ルなエリスが、イーニア先生の前では恐縮しっぱなしだ。

それは君にとって、少しだけ新鮮な光景だった。

大方、遊びに来たというところだろう。あそこの当主は教育が甘いんだ。

父さんを知ってる……?

当然だ。そこの杖を封印した功績もある。それ以前に、比較的古株の魔道士ー家だからな。

あっ、私の杖。

君はエターナル・ロアをリルムに手渡した。

持ってなきゃダメだよ、と付け加えて。

t小娘もソフィも、我を置いていくとはあんまりではないか。貴様らには人の道理というものがないのか。

杖が人道を説いていた。

エターナル・ロアを封印したなんてすごいにゃ。

確かに、強大な魔力を有して、人を乗っ取る魔杖を封印できるなんて……。

封印したといっても、杖の話を聞かず、蔵に放り込んだだけというではないか。

それが最も効果的な方法だったとはな。リルム・□ロットのように話を聞かなければ、乗っ取られることもない……。

まあ、そんな話はどうでもいいか。

お前らに集まってもらったのは他でもない。この島のことは、大方エリスに聞いていることだろう。

君はイーニア先生の言葉を聞きながら、森を見渡してみた。

禍々しい気配は、奥に進んでも感じない。

かつて悪の魔道士たちが力を結集させ作り上げた古代都市「トランディア」。

孤鳥にあったトランディアは、大魔道士たちとの戦いを経て海に落ち、深き眠りについた。

だが何がきっかけか、こうしてここに浮上した。魔道士協会は、これを看過することはできない。人々を脅かすのはアリエッタだけで十分だ。

えへへ。

褒めてないわよ……。

仮にトランディアが目覚めた場合、島外に被害が及ばないように、魔道障壁が必要不可欠だ。

そして奴を抑えるための魔法……強力な魔法を使える大魔道士がいなければならない。

そういう意味では……。

イーニア先生が言葉を止めて、周りの皆を見る。

……人選ミスだな。

lアリエッタが悪い。

え、わたし!?

それは否定できないけど、魔道障壁の完璧な展開はこの子にしかできないわ。

そうだそうだ。

トランディアは意志を持つ古代都市だ。気を抜くと、やられかねん。

ハーネット商会の出番だね、ソフィちゃん。

sえっと、でもそんなすぐ傷が癒えるような万能薬は……。

ハーネット商会? 君はさっきも聞いたその言葉に首を傾げる。

ソフィちゃん、魔法で新薬を開発して、それが世界的にヒットしたんだ。

すごいにゃ。

sリルムちゃんに材料を集めてもらったし、主な研究開発の理論はアリエッタちゃんが学会で発表した新・魔道医学書を参考にしたの。

行動こそが魔道士の成長に大切なことなのよ。

今やハーネット商会は、魔道士協会と提携をして、様々な形で人々に関わっているからな。

魔道士としての才能もさることながら、まさか商才もあるとはな。今後100年はハーネット家も安泰だ。

アリエッタも見習うように。

NO!

lなんで……。

ソフィが薬を作って一山当てたってことにゃ?

そういった才能も開花させるなんて、ソフィの真面目さが生きたようだ。

研究開発の理論はアリエッタがって……。あの子は医学研究もしてるのかにゃ?

それは聞かなかったことにしよう、と君は言った。




TOP↑

story3 発見、大魔道士



悪人であろうと、善人であろうと、魔道士が作った人工の島である。

だけどここには自然があって、人が暮らしているようだった。

sんしょ……よいしょ……。あ、この草も使えそう……。

薬を作るのに、そんな雑草が必要なのかにゃ?

sそう。ここにしか生えていない草があって、それが新しいお薬に使えそうだから。

けどそんな頻繁には来られそうにない場所だ。

ここでたくさん集めても、次にいつ採取できるか……。

s魔法で成分を分析すれば、ここに来なくても新しく育てることができるかもしれないから。

ソフィは真面目だね、と君は言う。

sそ、そんなことは……。

ひとりじゃできなかったことだし、それにこのことで皆に喜んでもらえるのが、本当に嬉しいから頑張れるの。

それは魔道士が魔道士たらしめる何よりの思想であり、それこそが真理だ。

誇っていいぞ、ソフィ。スイカを抱えているあれとは違い、立派に人のために魔法を使えている。

sアリエッタちゃんは、お薬を作るときに色々とアドバイスもくれたんですよ。

調合のバランスとか、魔力を込めるタイミングとか……。

君は、イーニア先生は、アリエッタのことが嫌いなの? と尋ねた。

ふん、まあ、私もあの子のことを評価していないわけではないのだ。

長らく魔道士協会の理事をやっているが、あの子は間違いなく歴代の魔道士の中でも飛び抜けた天才だ。陳腐な言葉だがな。

アリエッタの魔法は比類なきものだ。理に基づいた魔法を使いこなすのはもちろん……。

現代の魔法理論に至っては、あの子が作り上げたものも多く、発想力にも富んでいる。

あの子だからこそ考えついた魔法は数知れないし、世界を発展させたのは間違いない。

…だが、そのなんだ。アリエッタは子どもだ。

好きなことは好きなだけやるし、興味がないことは全くやらない。

魔力を抑えられず地形を破壊するし、気分で凶悪な魔物をぶっ飛ばしたりもする。

大魔道士は、それではいけないのだ。人のため、世界のため、尽くすからこその大魔道士であるべきなのだ。

未熟な心を、正しく育んでほしい。そうすればあの子は、さらに素晴らしい魔道士になるだろう。

私はそう考えている。だから厳しく接する。それだけのことだ。

そこまで言って、イーニア先生はアリエッタを見た。

とても素晴らしい教育者であり、魔道士だけではなく、世界のことも考えている、立派な魔道士協会の理事なのだろう。

先生。

ん。どうした?

人が住む、村のようなものがありました。

ふむ……。

メリィ。――メリィ・ミツボシ。いるか?

はい。お側におります。

よろしい。ではお前は、村の住人と接触しろ。

お前は立派な魔道士だから大丈夫だろうが、我々が現れたとなると、相手は警戒するだろう。

はい。

では行ってこい。

はい。

声の主が気配と共に消えていくのがわかる。

……誰だったにゃ?

レナの国の、4大魔道士のひとり。メリィ・ミツボシよ。グリモワールグランプリの優勝者でもあるの。

そんな大会もあったね、と君は思い出す。

イー二ア! イーニア! 村があるよ、村!

もう知ってる。それと敬語を忘れるな。

スイカをあげてみよう。

あっ、おい待てアリエッタ! お前が行くとややこしくなるから――。

はぁ……エリス、アリエッタをちゃんと教育しておけとあれほど……。

いい子ではあるんですけど。無邪気というか……。

無邪気を通り越して、あれは天災だ……。追うぞ、黒猫の魔道士。




TOP↑


top next







新着スレッド

注目記事
ページトップへ