忙しい休日・ストーリー
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忙しい休日
プロローグ
ホルスの眼
事務室内
ザッハトルテは真っ白な壁の前に立って、無意識に手元の万年筆を開けると、再び閉める。
この壁には色々な画像や手がかりメモや事件資料がたくさん貼り付けられている。そしてそれらの手がかりはそれぞれ線で結び付けられている。その中心には、丸を付けられている。大きな疑問符を打たれた名前ーー「幻楽歌劇団」。
この数日間、彼はこれらのメッセージをじっと見ていた。バレンタインの事件が終わった後、彼はずっとこの不思議な歌劇団の情報を集めている。やはりいくつかの異常な事件はこの歌劇団と関係があるらしいが......
ザッハトルテ:(幻楽歌劇団が能動的に接触した事件と人物とメッセージは全てここに……理論的な関連性がさっぱり見えない……この歌劇団は……何を求めている……きっと何か重要な情報をみのがしているんだ。)
ザッハトルテはふと何かを思い出して、隣のファイル室の方に向かって叫んだ。
ザッハトルテ:綿あめ、もう一回幻楽歌劇団のメンバーの資料を僕に見せなさい。
ファイル室から返事がないが、ザッハトルテは別に気にしなかった。彼はまた壁の情報を見る。
しばらくして、誰かがきた。
フランスパン:調べられる物は全てここに。
ザッハトルテ:ありがとな。
フランスパンは両手でファイルを持って、彼のそばで礼儀正しい姿勢で立っている。
ザッハトルテ:……いいや。
ザッハトルテ:ファイルの整理は綿あめの仕事のはずだ、どうして君がやっている?
フランスパン:朝、苺パフェ先輩が彼女と一緒に外に遊びに行ってしまいました。彼女は事前にあなたに欠勤届を提出したと言っていました。
ザッハトルテ:でも彼女が欠勤を申請した日は国際休日の日だ。
ザッハトルテがページをめくる手を止めると、顔を上げる。
フランスパンは答えず、黙って法典からーページのカレンダーを持ちだすと、彼の前に渡す。
ザッハトルテ:……なんだい?
ザッハトルテは目を大きくした。
フランスパン:今日はもう国際休日ですよ、先輩。
ザッハトルテ:早いな。
フランスパン:先輩は国際休日に私と一緒に外へ遊びに行くと言ってましたけど、まだ覚えていますか?
ザッハトルテ:もちろん、注意してくれてありがとう。
フランスパンの話を聞くと、ザッハトルテの精神は少し緩和してきて、表情をリラックスさせて、手元のファイルをテーブルに置いた。
ザッハトルテ:もう行く場所は決めた?
フランスパンは頷いたが、何も言わなかった。
ザッハトルテが笑って、彼の髪を撫でる。
ザッハトルテ:恥ずかしがる必要はない、誰でも行きたいところくらいある。どこに行く?もしかして遊園地?
フランスパンが首を横に振った。彼はザッハトルテを一秒見ると、視線をあの壁に移した。
ザッハトルテ:……?
ザッハトルテは急に変な予感を感じる。このことに関して、フランスパンはまた予想外な返答をしてくるかもしれない。
案の定フランスパンが口を開いた。彼の声は小さいが、しっかりしているものだ。
フランスパン:先輩、私は、「幻楽歌劇団」の歌劇を見たいです。
ストーリー1-2
ミドガル
ある劇場
ステージの幕がゆっくりと閉じられ、観客の拍手が止まらない。
ステージに最も近いVIP室で、カップを持ち上げるザッハトルテはお茶を飲みながらチラッと隣のフランスパンの様子を見る。フランスパンが微笑みながら拍手しているが、ザッハトルテは、彼が本当はそんなに喜んでいない事を知っている。
ザッハトルテ:(休みの日に最もやりたいことだと言っていたのに、前半の公演が終わってもまだ気が塞がっているように見える、それに……)
ザッハトルテはそう思うと、また懐中時計を持ち上げて時間をチェックする。やはり、フランスパンの視線もすぐついてきた。ザッハトルテが黙っていると、フランスパンはやっと口を開いた。
フランスパン:先輩、何かご用事でもあるのですか?
ザッハトルテ:どうして急に?
ザッハトルテは懐中時計をおろす。
フランスパン:歌劇が始まってから今まで、先輩は時計を四回見ました。
ザッハトルテ:ずっと僕のことを観察していたのか?
ザッハトルテは驚くふりをして声を上げた。
フランスパン:……いいえ、私はちゃんと歌劇を見ていました。
フランスパンは胸を張って、さっさときちんと座ると、目の前のカーテンが閉められているステージを見る。
ザッハトルテ:(体の動きをどうやって真面目風に取り繕っても、僕を直視したくない目つきはもうバレてしまっているよ……)
ザッハトルテは少しおかしいと思った。でもいくら疑っても、なぜフランスパンが「自分が興味のないこと」を要求したのかわからない。
ザッハトルテ:(「長い時間をかけて幻楽歌劇団のことを調べました。いつも彼らの演出は素晴らしいと聞いていましたから、彼らの演出が気になりました。見に行けば意外な発見があるかもしれません」か……。一見、この理由は確かに説得力があるように見える。)
しかし昼にフランスパンがこの話をした後、彼の「本当か?」という詰問に対して、フランスパンはしばらく言葉を濁してから、何も答えなかった。
フランスパン:先輩はどこに行ってもいいと言っているんですか?
ザッハトルテ:その通りだ……しかし……
───
ザッハトルテ先輩……
・<選択肢・上>私も一緒に行ってもいいですか?
・<選択肢・中>私を連れて行ってもいいですか?
・<選択肢・下>僕は本当に行きたいです。
───
ザッハトルテ:……わかった、君がそこまで言うなら。
結局、ザッハトルテは妥協の選択肢を選んだ。彼は自分に言い聞かせる。(今回はフランスパンとの私的な約束。仕事でないなら、長官の姿勢でいてはいけない。最後まで諦めないといった長官的な姿勢はここでは不適当だ)
ザッハトルテ:(フランスパンもどんどん自分の考えを持つ事を始めた。これは最初に彼を育てる上での目標だったはずだ。彼が僕に話したくないことがあるのはなんらおかしい事ではない、余計な詮索はやめろ、ザッハトルテ。)
そう考えてから、彼は立ち上がって服を整理した。
フランスパン:先輩、どこかに行かれるんですか?
ザッハトルテ:うん、ハーフタイムは30分間だ。この時間で他のボックス席の客を訪問しに行く。全員ミドガルの偉い人たちだから、ちゃんと挨拶をしなければならない。
フランスパン:……では一緒に行きましょうか?
ザッハトルテ:いいや、君がとりわけ社交的な場所が嫌いなことは知っている。
フランスパン:私は大丈夫です。
ザッハトルテ:それも知っている。でも今日は君の休日だから。
ザッハトルテは入り口のドアを開けて彼に笑いかけた。
ザッハトルテ:せめて今日だけは、君に無理して欲しくない。ゆっくり休んで自分のやりたいことをしよう。僕はすぐ戻る。
ザッハトルテはそう言うと、外に行ってドアを閉めた。
今はハーフタイムの休憩時間、ステージのカーテンも閉められている。今日の歌劇を見に来ている観客のほとんどがミドガルの偉い人だ。
ザッハトルテ:(……前に苺パフェがこの件について言及していたからよかったものの……今日突発的にチケットを買いに来ていたら、買えたかどうかわからなかった……)
ストーリー1-4
二週間前
苺パフェの住まい
苺パフェ:はい、ご希望のもの。
ザッハトルテは苺パフェから薄い紙袋を受け取って開いた。中から出てきたのは二枚のチケット――「幻楽歌劇団」の公演チケット。
ザッハトルテ:ありがとな。
苺パフェ:あなたのためではなく、綿あめの安全のためよ――まあ、この歌劇団の正体を早く明らかにするのも悪くないことね。また彼らが危険な目的を抱いて彼女に接近することを避けるためにもね。
ザッハトルテ:ああ。今回は必ず原因を突き止める。そして彼らが僕らの試験場――バックトラックルームのエネルギーを持ち出した証拠を見つける。
苺パフェ:……そうしたほうがいいわ。
苺パフェは扇を振ると、何かを思い出したみたいだ。
苺パフェ:バックトラックルームにあなたの追跡マークが残されていた。あなたは「十分な距離に近づくと、その方位がわかって犯人を見つけられる」と言っていたわね、本当?
ザッハトルテ:嘘ではない、しかし……
苺パフェ:しかしなに?
ザッハトルテ:今までの追跡対象は全て実体のある生き物、だから彼らを探し出すことはあまり難しくなかった。だが物体に憑依するエネルギーにマークをつけるのは初めてだ。本当に見つけられるのか、50%の自信しかない。
苺パフェ:だから私にVIP室のチケットの入手を頼んだの?
ザッハトルテ:そうだ、僕がマークをつけたエネルギーが本当に彼らのものかを判別するためにも、以前の追跡よりも近い距離にいたい。
苺パフェ:じゃ公演の当日はどうするつもりなの?
ザッハトルテ:当意即妙に、臨機応変に。
───
……いいわ、別に私に言い出さなくても構わない、ただ……
・<選択肢・上>フランスパンのペースがあなたと合うならいいのよ。
・<選択肢・中>ミスをしないでね。
・<選択肢・下>あなたがわかっているならいいわ。
───
ザッハトルテ:うん、そうだな。
ザッハトルテは当たり前のようにうなずき、同意を示す。苺パフェは彼のこのように全てをコントロールした気でいる姿が最も嫌い。
苺パフェ:チケットはもうあんたにあげてしまった、だからこっちの条件もオーケーでしょ。
苺パフェ:そうよ、あの半月で国際休日、彼女はまだホルスの眼の正式メンバーになったばかり。残、業、禁、止!
ザッハトルテが思わず笑った。
ザッハトルテ:当たり前だ。僕が無慈悲に自分の部下を搾取する長官だと思うか?
苺パフェ:これはあんたじゃなくフランスパンの様子だけ観察していてわかった事よ。
ザッハトルテ:……なんだい?
一週前
ホルスの眼
フランスパン:ザッハトルテ先輩、苺パフェさんから手紙をもらいました。
フランスパンが走ってきた時、ザッハトルテは「箱」の完全モードを起動して、あのマークをつけられたエネルギーの状態を検査していた。
フランスパンが来たのを見て、彼は急いで外に放出していた精神エネルギーを収めた。でもまだフランスパンからの細かい精神エネルギーを感じていた。
その瞬間、彼はフランスパンの精神エネルギーから疲れ、興奮、困惑、迷い等、様々な感情を読み取った。……でも最も多いのは、疲れ。しかし……彼は無理に我慢している。
ザッハトルテ:……なんだい?
フランスパン:お邪魔でしたか?
ザッハトルテ:そんなことないよ、ありがとうフランスパン。手紙をくれ。
ザッハトルテは手紙を受け取って読んだ。フランスパンは振り向いて帰ろうとするがザッハトルテは彼を呼び止めた。
ザッハトルテ:そうだ、フランスパン。あることについて、君の意見を聞きたいのだけど。
フランスパン:はい?どんなことですか?
フランスパンの足が止まった。彼は振り向いてザッハトルテを見る。ザッハトルテは彼の真面目な顔を見ると、笑ってしまった。
ザッハトルテ:仕事のことではないから、そんな真面目にしなくてもいい……。ただ一週後は国際休日、行きたいところはないか?僕が連れていってあげてもいいよ。
フランスパン:……休日?行きたいところ?
ザッハトルテ:そう、どこでもいい。
フランスパン:必ず一つの場所を選ばなければなりませんか?
ザッハトルテ:いいや……このことを仕事や任務として扱わないでくれ。帰ってからゆっくり考えてくれ。どうやって休日を過ごすかを教えてくれればいい。
フランスパンが分かっているようで分かっていない様子でうなずいた。フランスパンが去った後、ザッハトルテは手元の手紙を見てから、引き出しに入れて鍵をかけた。
ロックされた手紙に、苺パフェが以下の内容を書いていた――「幻楽歌劇団の公演時間が良くわからない理由で変更されて、五月一日に変更されたわ。ちなみにその日は「国際休日」、あなたがどんな最終決定をするかに関わらず、約束通り綿あめの欠席届を認めてください。」
ストーリー1-6
劇場内
ステージの隣
幻楽歌劇団の公演の後半が始まるまであと30分くらい。ザッハトルテは一人で席を外してステージから近いところまで来た。
ザッハトルテ:(僕の計画ではないが、とにかく今日ここに来てしまったんだから、この機会に少し調査しよう。ハーフタイムが終わるまでに帰ればいい。)
ザッハトルテは心の中で決めた。彼はまず素早く周囲の様子を見渡す。
目の前のステージは劇場内で最も暗いところ。照明がないステージなら誰にも気づかれないと考え、ザッハトルテはすぐカーテンの下から入り込んでステージの裏に潜入した。
広いステージ裏には誰もいない。ザッハトルテは周りを少しチェックしてから、箱を開く。自分の精神領域を展開する。
ザッハトルテ:箱よ、あのマークをつけられた者を探せ!
黒い箱は空中で完全に展開されて、狭い地図になった。地図上で、一つの銀色の点がキラキラ宙に浮いている。
ザッハトルテは銀色の点に従って前に進む。ステージ裏を通過すると、最後は劇場の二階の部屋の前に来た。この部屋のドアの表札には「ロイヤル休憩室」と書かれている。
ザッハトルテ:(バックトラックルームのエネルギーを持ち出した者はやはり幻楽歌劇団の者。そしてこの部屋にいる。その者を見つけたら、ソイツを逮捕する証拠をもらう。)
ブルーチーズ:そこにいるのは誰ですか?
その時、遠くないところからきれいな声が聞こえた。
ザッハトルテは休憩室のドアノブを離さざるを得なかった。声の持ち主は早歩きして来た。白い髪、青い光がキラキラしているバイオリン……ザッハトルテは資料に書かれた特徴ですぐに彼が幻楽歌劇団のバイオリニスト――ブルーチーズだと確信した。
ブルーチーズは驚きの表情を浮かべたが、すぐ落ち着いて、礼儀正しく微笑む。
ブルーチーズ:まさかここでザッハトルテさんに会うなんて思いませんでした。こんにちは、僕は幻楽歌劇団のバイオリニスト、ブルーチーズと申します。
ザッハトルテ:ブルーチーズさんは僕のことを知っているのですか?
ブルーチーズ:ザッハトルテさんはミドガルの有名な食霊調査官として、正義を守る非常犯罪事件の専門家ですから、僕はとても尊敬しております。
ザッハトルテ:ブルーチーズさん褒めすぎです。こちらこそ、ずっと幻楽歌劇団に憧れていました。僕は歌劇が大好きで、前から幻楽歌劇団の公演を見たかったんですが、普段の仕事が忙しすぎるせいで来るのが今日に至ってしまいました。この場所には色々興味があるので、あちこち回ってみます。
ザッハトルテは深い意味がある表情をする。ブルーチーズは何も言わずに前に進み、招待のジェスチャーをしてから、ザッハトルテとドアの間に来た。
ブルーチーズ:なるほど。ですが後半の公演がそろそろ始まりますから、ザッハトルテさんを客席にご案内します。さもないと後半に間に合いませんから。後で私自らお伺いしてご案内しましょう。
───
そんなことわざわざしなくても大丈夫です、何と言っても……
・<選択肢・上>時間はまだ早いです。
・<選択肢・中>楽屋のことがもっと気になります。
・<選択肢・下>僕はブルーチーズさんともっと話していたいです。
───
ザッハトルテの足元は微動だにしない。
ザッハトルテ:僕の休日は少ないです。今日歌劇を見に来られたのは最大のチャンスです。だからこの休憩時間を使ってブルーチーズさんとちょっとお話できるだけでもとても満足できます。ブルーチーズさん、僕の願いをかなえてくれませんか?
ブルーチーズ:……ご愛顧賜り、至極光栄に存じます。
ザッハトルテ:よかった。この休憩室ならゆっくり話ができそうですね。
ザッハトルテは笑うと、ドアノブに手を伸ばす。
ブルーチーズ:ザッハトルテさんのような大事な客を招待するなら、こんな部屋を使ってはいけません。今すぐ僕の専用休憩室に案内します。
ザッハトルテ:いいえ、僕は選り好みする人ではありません、ここでも十分です。
ブルーチーズ:それはいけません。
ザッハトルテ:どうして?
ガチャ――――
オペラ:……うるさい。
閉められていたドアが急に開けられた。オペラは無表情で二人を見ている。
オペラ:後半が始まるまで静かにしてくれ。私は十分休まなければならないから。……ご協力ありがとう。
ザッハトルテ:……
穏やかに出てきたオペラを見て、ザッハトルテは眉をひそめて、悪い予感がした。再び目を閉じて自分の精神領域を展開しても何も感じなかった。
彼がロックしていたあのターゲットは、もうこの部屋から消えてしまった後だった。
ストーリー2-2
劇場
ロイヤル休憩室の前
休憩室のドアが開けられた。中から出てきたのは幻楽歌劇団のカウンターテナー、オペラだ。
ザッハトルテ:……なるほど、オペラさんはここで休憩していたのですね。失礼いたしました。
ブルーチーズ:いいえ、大したことではありません。
ブルーチーズは少し疑いの表情を見せたが、すぐ表情を改めてザッハトルテに笑顔を見せる。
ザッハトルテ:それでは、僕はお先に失礼します。
ザッハトルテはこれ以上ここに留まりたくないと考え、離れた。彼の姿が消えてしまった後、ブルーチーズの顔がまた真剣になった。
ブルーチーズはすぐ休憩室に入った。中には散らされたぬいぐるみとおもちゃ、そしてたくさんの台本以外、何もない。
ブルーチーズ:彼は?彼はどこに?どうして君がここに?
オペラ:私が来た時にはもう彼はいなかった。また……逃げたのかもしれない。
劇場内
フランスパンのVIP室
ザッハトルテはまだ帰ってきていなかった。一人でVIP室にいるフランスパンはちょっと寂しさを感じた。彼は昼に苺パフェと綿あめが出発する前の光景を思い出した。
苺パフェ:よし、じゃあ私たち出発するね。どう、フランスパンのお休み計画はどうするの?
フランスパン:ザッハトルテ先輩はどこに行きたいかを私に考えさせました。でも私は……まだいい場所を見つけていません……。ザッハトルテ先輩は色々なところに行ったことがありますから。
苺パフェ:……フフ、どうして彼がどこに行ったことがあるかまで考えてるの?君に決めさせたんだから、自分が好きな場所を選んでいいんだよ。
苺パフェ:私を信じて。あなたたちはパートナーだから、君が好きな場所は彼も必ず好きになる。
フランスパン:本当ですか?
苺パフェ:もちろん、私の話に従うだけでいい。けどまさかあいつが本当に調査を放置して、休みを選ぶなんてね……
フランスパン:……調査?
苺パフェ:…やばい、バレた……
フランスパンは頭を振って、思い出を後ろに捨てると、気が塞がった様子で茶を飲む。
フランスパン:……ザッハトルテ先輩の好意を無にしないのと同時に……彼の調査を助けてあげたい……どうやってすればいい……
ムースケーキ:うん、確かに考える価値がある問題だね。でも今はもっと緊急なことがあるよ。ねえ、悪のドラゴンに追われている子どもを助けてくれない?
───
うーん……うん???
・<選択肢・上>だ、誰?
・<選択肢・中>あなたは誰ですか?
・<選択肢・下>どうやって入ってきたんですか?
───
ムースケーキ:ムースケーキと申します。今、悪い人が僕を探している。お願い、誰に聞かれても、僕を見なかったと言ってください、ねえ?
フランスパンが答えないうちに、急にVIP室に踏み込んできた子どもはすぐソファーの後ろに隠れた。
フランスパン:……あの、誰と隠れん坊で遊んでいるんですか?
ムースケーキ:シー!――
ムースケーキはフランスパンの質問に答えなかった。フランスパンは彼を引っ張り出したいと思ったが、急にドアがまたノックされた。
ブルーチーズ:失礼しますお客様。この辺で七、八歳ぐらいの子どもを見ませんでしたか?
ストーリー2-4
劇場内
フランスパンのVIP室
フランスパン:ブルーチーズ……幻楽歌劇団の人がどうして彼を探している?……もしかして……
フランスパンがソファーの後ろでうずくまって、助けを求める目で自分を見つめるムースケーキを見る。
ムースケーキ:お願い、お願いします!
フランスパン:わかりました。
フランスパンがドアを開けた。
ブルーチーズ:……もっと早く思い付くべきだった……
フランスパン:何か言いました?
ブルーチーズ:いいえ、何でもありません。調査官さん、久しぶりです。ようこそ僕たちの公演へ。あの、一人の、身長はこれぐらい、七歳八歳くらいの男の子を見ませんでしたか?彼は少し女の子のように見えるかもしれません。
フランスパン:いいえ、見ていません。
ブルーチーズ:……本当に見ていませんか?
フランスパン:はい。
ブルーチーズ:……わかりました、ありがとうございます。では今日の公演をごゆっくり。素敵な一日になりますように。
ブルーチーズはもっと追求したそうな表情だったが、それ以上聞かず、ドアを閉めた。
フランスパン:よかった……。それにしてもあなたは一体……?
フランスパンはほっとしたかと思うと、振り向いて少年を見る。ムースケーキはいつの間にかソファーに跳びこんで、テーブルのお茶をたくさん飲んでしまっていた。
ムースケーキ:フー……。さっきは本当……ありがとう。君いい人だね!受難の主人公を助けた君にはいいことあるよ!
───
あなたは一体誰ですか?
・<選択肢・上>どうしてブルーチーズはあなたを探しているんですか?
・<選択肢・中>幻楽歌劇団とどんな関係ですか?
・<選択肢・下>ブルーチーズとあなたはどんな関係ですか?
───
ムースケーキ:えーっと……好奇心が強いキャラクターは、大抵台本の中ではあまりいい結果にはならないから、そんなに沢山聞かない方がいいと思うよ。
ムースケーキ:わかった、偶々主人公の周りの真実をネタバレしても構わない――
ムースケーキは跳び上がって、フランスパンを抱くと、頭を上げてウルウルした目で彼を見る。
ムースケーキ:何を知りたいにしても全部教えるよ。幻楽歌劇団の全ても。君が僕をここから連れ出してくれるなら。
フランスパン:……ここから離れたいんですか?
ムースケーキ:うん!こそこそ、誰にも気づかれないように、ここを離れる。そして……一緒にある場所に行く……
劇場の外の空地。ザッハトルテは精神領域の瞑想状態から意識が帰ってきた。
ザッハトルテ:……あのマークは急に消えてしまった……。まるで最初から存在しなかったかのように……。どうして……
彼の疑念が深くなる。懐中時計を取り出して時間をチェックする。
ザッハトルテ:(まあいい、これは短い時間で解決できない事柄だ。まもなく後半の公演が始まる。フランスパンがまだ待っているから、早く帰らなくては。)
ザッハトルテは箱を片付けると、戻って行く。
ザッハトルテ:わるいな、少し時間かかった。でもアイスクリームを持って来たよ……フランスパン?
VIP室に誰もいない。ザッハトルテはフランスパンが残した貼り紙を発見した。――フランスパンは自分と一緒に調査の仕事を始めてから、貼り紙を持つ習慣ができた。休日でも例外ではない。
ザッハトルテはその貼り紙を取った。
フランスパン:「ザッハトルテ先輩、僕は怪しい子に会いました。彼の名前はムースケーキ。ブルーチーズは彼を追っていると言っていました。僕は先に彼を安全な場所に連れて行きます。すぐに戻りますからご心配なく。」
ザッハトルテ:なにを?
ザッハトルテ:……しまった!これは罠!
ザッハトルテの頭の中で色々なことが思い浮かんだ――急に消えたマーク、休憩室で自分を邪魔したブルーチーズ、部屋内のオペラ……もし全てが幻楽歌劇団が自分を誘導するために仕掛けた罠だったら……
ザッハトルテ:クソ……。まさかフランスパンも彼らの 餌……。一体何をするつもりだ?!
ザッハトルテは貼り紙を握り締めて、VIP室を飛び出す。
ブルーチーズ:痛ッ!!
ザッハトルテ:痛ッ!!
なんと、彼がVIP室から出た直後に、面と向かってブルーチーズとぶつかった。ザッハトルテは相手をはっきり見てから、ブルーチーズを押し倒した。
ブルーチーズ:……ザッハトルテさんどういう意味ですか?さっきまでフランスパンさんはちゃんとVIP室にいましたよ。
ザッハトルテ:……
ブルーチーズ:手を離して下さい。今はとても忙しいので、お付き合いはお断りさせて頂きます。
ザッハトルテ:じゃあ、教えてください。ムースケーキとは、一体だれですか?
ブルーチーズ:……!!ザッハトルテさんは彼に会いましたか?彼はどこにいますか?
ブルーチーズの顔がついにどぎまぎしてきた。ザッハトルテも眉をひそめて、フランスパンの貼り紙を彼に見せる。
ブルーチーズ:……僕に追われている?愚か者が……よくもそこまで嘘をつける……
その瞬間の、ブルーチーズの顔の変化はとても複雑なものだった。
ザッハトルテ:だから、彼は一体誰ですか?
ブルーチーズ:ゴホ……彼は……幻楽歌劇団の………………………団長です。
ストーリー2-6
ミドガル
あるバー
ムースケーキ:オーナー!酒!
フランスパン:安全な場所というところは、このバーですか?
ムースケーキ:そうだよ!ここの酒は超うまい!あなたもきっと気に入る!
フランスパン:でも、どうしてここが安全な場所だと思うんですか?
ムースケーキ:酒に酔うと~本音が出る~から。
フランスパン:なんだ?
ムースケーキ:何でもない。とにかく、一緒に酒を飲んでくれたら、君に幻楽歌劇団のこと教えてあげる、どう?酒代は僕がおごるよ!オーナー、何してるの?早く早く!
フランスパン:……
バーのオーナー:ハハ、子どもは酒を飲んではいけないよ、お前の保護者は?
ムースケーキ:おい!僕はただ背が低いだけだ!真の姿は悪のドラゴンを殺せる程の食霊だ!あなたたちよりぜーんっぜん年上だぞ!
バーのオーナー:はいはい、なるほど。まさか小さな勇者様だとは!よし、どれくらい飲めるか見せてくれ!
ブルーチーズ:……なぜ僕を尾行するのですか?
ザッハトルテ:僕はただ僕の地図について行くだけです。
今のザッハトルテはあまり余計な話をしたくない。彼は自分の精神領域を最大限まで展開して、数百キロ先の地点にフランスパンの精神の信号を見つけた。
普段の調査任務は一定の危険性を持つものだから、彼はホルスの眼全員がどこにいても追えるよう追跡標識をつけた。 まさか最初にこれを使う対象が、逃げられる可能性が最も低いフランスパンになるとは。
イライラしているザッハトルテはさらに加速して、信号のある方に向かって走る。
しばらくして、彼はブルーチーズと同じタイミングで足を止めた。二人が顔を上げると、バーの看板が見えた。そして中から子どもの大きな笑い声が聞こえてきた。
ブルーチーズ:団長よ団長、やはりここにいましたか……
ブルーチーズがため息をついて、ためらうことなくバーに入った。しばらくすると、彼は酒臭い子供を抱いて出てきた。この子供はまだ不安そうにブルーチーズの懐で動いている。
ムースケーキ:ブルーチーズ、待ってよ……離せ……。前回海に行った時、シフォンケーキのビーチパンツがサメにかみ切られた話をまだフランスパンに聞かせてないのに……
ブルーチーズ:はいはい、団長さん、今度聞かせてあげましょう。今は僕と一緒に帰りなさいよ。さもないと、また団員の皆さんが団長さんの体を心配します。
ブルーチーズは酔ったムースケーキをあやしながら外に出て行く。そして入り口でびっくりしているザッハトルテに会った。
ブルーチーズ:……どうして入らないのですか?フランスパンは中にいます、まあ彼の様子もうちの団長とほぼ同じでしたね。
ブルーチーズ:今度僕たちの公演を見に来る時は、お互いの気持ちが平和であるように祈ります。
ザッハトルテは少しためらったが、結局バーに入った。
バーに入ってすぐにザッハトルテはフランスパンを見た。白い髪の食霊の少年は華麗な服を着ている、周りの客に比べてまるで別の人間だ。「フラワークラウン」と呼ばれる銃は静かに彼のそばで浮かんでいる。そのため、誰もフランスパンのそばに近寄らない――ザッハトルテが初めてフランスパンに出会った時と同じだった。
でも、あの頃のフランスパンに比べて、目の前の少年の精神状態は大分よくなった。特に今はたくさん酒を飲んだおかげで、グラスを持ち上げて何かを見ている。
フランスパン:あら……ザッハトルテ先輩ではないか……ずっと待っていたぞ。
ザッハトルテ:僕を?
フランスパン:うん。先輩を待ってた。
ザッハトルテがフランスパンの隣に来ると、フランスパンは目を細めて、手を伸ばしてザッハトルテの腕をつかんで、彼を側に座らせた。
フランスパン:ねえ、座って、ここ、いい?
ザッハトルテ:なんだ?
フランスパン:気を付けて。今日はね、波が、少し激しい。でも私が、丁寧に、漕いであげる。
この時ザッハトルテはやっと気づいた。フランスパンのグラスに一つ小さな紙船が浮かんでいる。そしてこの紙船はフランスパンの貼り紙で作られたもの。
ザッハトルテ:……フランスパン、あの、船を漕いでいるのか??
フランスパン:はい、船を漕ぐよ~
フランスパンはうなずいて、グラスをザッハトルテの前に置いた。彼の瞳は今、星より輝いている。
フランスパン:先輩、さっき証人を安全な場所に送ったから、心配しないでよ。
フランスパン:今日は、国際休日。実はね、歌劇なんて全然好きじゃない。先輩、私は、私は……
───
私は先輩と……
・<選択肢・上>船を漕いで海を冒険する、そして宝物を探して、いい?
・<選択肢・中>ミドガルのあの木に花が咲いてきた。先輩と一緒に花見をしたいけど、いい?
・<選択肢・下>先輩と一緒に船に乗って、海で一日中ラフティングをしたい。
───
ムースケーキ√宝箱
幻楽歌劇団
団長の部屋
ムースケーキ:なに――一ヶ月なの??
ブルーチーズ:そうです。い、っ、か、げ、つ、です。
ムースケーキ:ウウ――――――――僕の人生、もう終わった!死んだほうがましだ!
シフォンケーキ:……団長はまたどんなあやしい台本を読んだんだ?たかが一ヵ月間デザートを食べられない罰を受けただけで、使うセリフまで変になった!なあ、知ってるか、オペラさん?
オペラ:……
ムースケーキ:ウア――オペラは無口なタイプだから仕方ない。シフォンケーキ!僕を助けてくれよ!
シフォンケーキ:ゴホゴホゴホ、団長よ。こちらも助けてあげたいが、団長は酒を飲んだな。前に団長に言っただろう……団長は酒を飲んだら霊力が弱くなる!弱くなったらデザートを食べられないのも当たり前だ!救えない団長だ!
ムースケーキ:シフォンケーキ!ブルーチーズ!この裏切り者共!――僕を捨てないで――
ムースケーキを無視して、ブルーチーズとシフォンケーキは部屋から出ていった。
ムースケーキ:……
彼らが去った後、ムースケーキは急に静かになった。彼はベッドで横になり、疲れて息を吹き返した。オペラも慣れたように何も言わずにその場から離れようとする。
オペラ:……
ムースケーキ:君の行動が僕のためではないのはわかっている。今回僕が彼らに捕まえられていたなら、君を含め、劇団の皆全員が逮捕されていたかもしれないから。
ムースケーキ:でも、それでもありがたいよ。君が理由を聞かずに僕を逃がしてくれた事に感謝しているよ。
ムースケーキ:オペラがいなければ、僕はここから脱出できない。ホルスの眼の人達が僕を見つけだす前に、彼からもらった「時空エネルギー」を消すのも無理だ……
ムースケーキ:だからしばらくは弱いままでも仕方ない。でも彼の追跡マークも一緒に消えてしまった。これで何も怖くない。ハハハ、やっぱり僕頭いいねえ?
ムースケーキ:なにを?
ムースケーキ:ああ……もしかして……なんで僕がわざわざ飲みに行って、霊力が弱くなった様子を見せたかを聞いてるの?
ムースケーキ:それはね、つけられたマークを発見することも、マークを消すことも、どちらも今の僕がまだ覚えている能力ではないからだよ。だから、酒を飲む事しかできない。
ムースケーキ:でも最も重要なことはやっぱり――久しぶりに酒を飲んだことだ!ハハハハハ!
オペラ:……いや、聞きたいのは、なぜ彼に君が記憶を既に取り戻した事を告げないのか?
ムースケーキ:……
ムースケーキの笑顔が消えた。しばらくの間、彼の顔に子どもらしくない無力感が浮かんだ。
ムースケーキ:ブルーチーズ、そしてシフォンケーキも……彼は僕に昔のことを忘れさせるため、必死に頑張ってくれた……。僕ができるのは、このように子どもの無邪気で楽しそうな姿を維持することだけ。彼らの努力を裏切ってはいけないよね?
ムースケーキ:これは彼らの努力に対する、最も良い恩返しだ。
ザッハトルテ√宝箱
フランスパンが意識を取り戻した時、雨の音が彼の耳に入った。
フランスパン:……今日は雨が降っている?……劇場の中なのに……雨が降っている……そしてこのゆらゆらした感じはまるで川に……そうだ……劇場……劇場……劇場?……
フランスパン:!!!!
ザッハトルテ:目覚めたか?
フランスパンが目を丸くした。
フランスパン:せん、先輩?
すでに黄昏時。ザッハトルテが傘を持って自分を見ている。周りには花びらが舞い落ちている。フランスパンは目をぱちくりさせると、急に立ち上がって、顔を赤らめた。
フランスパン:ザッハトルテ先輩、すみません。あの、私は、別に酒を飲みたくなかったんです、ただ……
ザッハトルテ:自分が酔っ払った時に言った話をまだ覚えている?
フランスパン:………………………………………………
……………………………………
長い間黙っていたフランスパンは自分の顔を押さえて、こわばって頷いた。
フランスパン:申し訳ございません、少しバカな事を言ってしまったみたいで……
ザッハトルテ:顔を押さえていないで、周りを見てみよう。
フランスパン:…………お断りします、恥ずかしすぎですから。
ザッハトルテ:大丈夫、手を下して。
フランスパン:……はい。
フランスパンはゆっくりと手を下した。彼は周りを見て、突然声を出した。
フランスパン:……川?
二人を乗せた船が静かに川に止まっている。川のほとりの木が絶えず花びらを落としている。
ザッハトルテ:うん、もうすぐ夜だから、今日はもう海へ出航できる船がない。だからこの川にしか行けなかった、我慢してくれ。
フランスパンの微動だにしない様子を見て、ザッハトルテは手に握るある物を彼に渡した。フランスパンがびっくりしてうつむいてそれを見た。船のオールだ。
ザッハトルテ:船を漕ぎたい、だよね?
フランスパン:……はい。
ザッハトルテ:休日が終わるまであと6時間。
フランスパン:……はい!
小さな船が前に進む。
フランスパン:先輩、今日は、先輩の調査を邪魔してしまいました……歌劇も最後まで見れなかった……
ザッハトルテ:君のせいじゃない。前に君と遊ぶ約束をしたのに、仕事のことばかり考えていた僕の方が悪いんだよ。
ザッハトルテ:でも今度は、僕のこの悪い習慣を止めて欲しい。
フランスパン:……苺パフェ先輩が、今日の公演は幻楽歌劇団の今年最後の公演と言っていました……。今日証拠が見つからなかったとなると、これから幻楽歌劇団をどうやって調査していきますか?
ザッハトルテ:明日の仕事の話は、明日にしよう。今日は仕事のことを話したくない。
フランスパン:……では何を話しますか?
ザッハトルテ:うん、そうだな……この船、どこに行くのかを考えてみよう。
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