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メイン・ストーリー・~パラータ前編

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人類と『食霊』が共存する世界

『ティアラワールド』

レストランを経営しているあなたを

待っていたのは

攻撃してきた『堕神(おちかみ)』

あなたは『料理御侍(おんじ)』として

美味しい料理を研究しつつ

食物から生まれた霊体 食霊と契約を結び

カレらを率いて堕神と戦おうと決心した……

果たしてその結末は?

公式紹介文より

目次

メインストーリー

オープニング

これは至美なる存在を示す伝説――食霊


カレらは無数の命に存続の力を与え、

本来この世に満ちていた暗闇を越え、万物の働きを導く。


それゆえ、全ての生き物に謳歌された命の賛歌は、

伝承の原動力となり、幸せの源ともなる。


この星に付き添い、永遠まで……



「まだ、諦めてはいけません!」


「御侍様!」


ライス……」

「無事で良かったです……!」


難関を乗り越えたいのか、ふーん?


まだ死なないの……?


あんたより先に死なない。

宿願が叶うまで倒すなんてありえない!

あんたこそ、

腕前をすべて発揮したの?

世界崩壊、そんな些細なことは……

あんたが手を挙げるとすぐ解決すると思った。

「救世主」?



「御侍様、ご命令を!」

「……みんな、まだ戦い続けますか?」


北京ダック「こんなこと聞く必要は無く…」

カニみそ小籠包「トラブルを解決することに手伝うと言ったんでしょう?」

フォアグラソテー「今回こそ、自分の運命をちゃんと把握する!」

B-52「戦う、そして、勝つ……」

湯圓「みんなの幸せのために!」


***


ライス「御侍様、私たちが敵を足止めしておきます。ここを離れれば、真相は明らかになるはずです!」

麻辣ザリガニ「それほど甘くはないぞ!」

???「おい!危ない!」

ライス「ヤァ――!!」

???「大丈夫か!」

ライス「……は、早く!」

???「だめだ、これ以上仲間を失いたくない!」

ライス「……そう言ってくだされば……私はもう満足ですわ、御侍様……」

ライス「それに……食霊として、堕神を倒し、人間を守るのが……私の宿命ですから。」

ライス「どうかご自身の使命を全うなさって、食霊と堕神、それにこの世界の未来を頼みます……」

???「おい!待ってくれ――!」


***


――その昔、神は眠りにつき、すべては静けさを取り戻した……

だが、それも長くは続かなかった。

堕神――すべての命を呑み込む怪物が美しい世界に降臨したのだ。

仲間たちや食霊とともに、運命に導かれて深淵のような暗黒に立ち向かうことになるのは、ずっと後のことだ。


***


星辰月二十一日

グルイラオ


第七海港、ヒレイナ――グルイラオ有数の景勝地で、世界中から貿易に集まってくる人たちによって、美食の都としても知られるようになった。


***

「新しいレストランオーナーさまですね。お待ちしておりました。さあ、こちらにご署名をっ!」

(名前入力)

***


そしてこの日、〇〇という若者も待ちに待ったレストランの営業許可を得て、新たな人生を始めようとしていた。


主人公「片付けも終わったし、さあ開業だ!」


???(オリビア)「………………」

主人公「いらっしゃいませ!」

???「……何してるの?」

主人公「え!?失礼いたしました……何名様ですか?」

???「注文を。」

主人公「はい、こちらがメニューで、今日は半額サービスです……」

???「じゃ、これらを。」

主人公「……かしこまりました。」

主人公「やりにくい相手だな、だが最初の客だしな。」

主人公「次の出方を考えなきゃ。」


***


主人公「お待たせしました。」

???「うーーむ」

主人公「(私の料理、気に入ってもらえたかな?)」

???「これこそ……私が求めていたものね。」

主人公「はい?」

???「何でもない、お勘定を。」


主人公「見たところ料理御侍のようだな……あの業界は変な人ばかりだからな……」


***


真夏二十二日

レストラン


主人公「ヒレイナのレストランは本当に儲かるな、食材の減りも早いけど。」

主人公「設備投資もかなりしたし、食材補給などの出費も計算すれば、赤字だな。」


???「仇討ちをするつもりか?」

主人公「あの、お客様は昨日の……」

オリビア「オリビアと呼んでください。こっちは食霊のティラミス。」

ティラミス「はじめまして。」

主人公「(食霊か?見た目は人間と同じ…)」

主人公「いらっしゃいませ。〇〇です。何かご注文されますか?」

オリビア「うむ、それよりさっきの独り言、聞かせていただいた。」

主人公「はぁ…… いや、調達費がかさむから、いい方法はないかと思って。」

オリビア「仕方あるまい。堕神がうろいているせいで、運送も命がけになった。」

ティラミス「食霊をもっていないのですか? 食材を集めてくれるから、調達の心配はいらなくなりますわ。」

主人公「もちろん、そうしたいけど、食霊の契約に必要な幻晶石を手に入れるなんて、いまはとても……」

ティラミス「そうだったのね……」

オリビア「じゃーん! この幻晶石を受け取るがよい。」

主人公「こ、これは?」

オリビア「おぬしの料理、素晴らしかった。ただそれだけのことだ。」

オリビア「さあ、さっそく最初の食霊契約をしてくるがよい。」


***


???「……………………」

主人公「あの、そこに知らない子が……」

オリビア「おや、ライスか?」

主人公「ライス? もしかしてこの子も…… 食霊?」

ティラミスライスちゃん、霊力を持っていませんね…からっぽのようです。」

主人公「からっぽ…… 堕神とは到底戦えないということだね。」

ティラミス「ええ。でも、育てていくこともできますし…」

オリビア「いずれにせよ、霊力のない食霊は誰も使いたがらないな。」

オリビア「通常ならば、契約を解除してギルドに帰らせるか、できて雑用程度か…」

主人公「うーん、契約解除が……」

オリビア「まあ、おぬし次第だがな。」

主人公「(そもそも、この子といつ契約したんだ? かといって、このまま見捨てていいのかな……)」

ライス「おんじ…さま」

主人公「え? いまなにか……」

オリビア「〇〇、ライスはおぬしが気に入ったようだな。どうする?」

主人公「そうします。〇〇です。よろしく、ライス!」

ライス「〇〇! 〇〇がわたしの御侍さま!わかりました!」

主人公「でも、こどもの食霊もいるなんて、知らなかったな。」

オリビア「うむ。ライスがこどもの姿なのは、過去の影響を強く受けているためだろう。霊体とはいわば、自身の過去を具現化したもの。」

オリビア「いずれにしても、しっかり見守ってやることだな。そのうち、記憶を取り戻すかもしれない。」

ティラミス「よかったです!可愛い子はそばに置いておきたいですものね!」

主人公「そ、そういうつもりで引き取るわけじゃ……」

ライス「御侍様?」

主人公「どうしたの?」

ライス「わたし、ここにいてもいいの?」

ティラミス「そうよ。ライスちゃんは、御侍さまの大のお気に入りですわ。」

ライス「御侍さまに気に入ってもらえるなんて、幸せです!」

主人公「おんじさま… なんだか照れるね。」

オリビア「食霊の契約者として認められたということだな。」

オリビア「おめでとう。これで心置きなくおぬしの料理を食べられるぞ。」

主人公「オリビアさん…… ありがとう。」

オリビア「では、さっそく食材の調達に行くがよいぞ。私はここで待つ。」

主人公「よーしライス、調達に行こう!」


午後

ヒレイナ郊外


ライス「はいどうぞ、御侍さま!」

主人公「うん、結構集まったね!ありがとう、ライス。」

主人公「食材の調達は、これで心配ないね!」


貪食女「ウ……ウウオオオオ…」

主人公「う、うわあ!!! 堕神! それも大きい……!」

ライス「おおおおんじさま、わわたしに、お任せを」

主人公「ラ、ライスはこっちへ下がって!」

ライス「でも、わたしを盾にすれば…」

主人公「ライス、落ち着いて、さっき契約した食霊たちを呼んで来よう。」

主人公「ライスを盾にするなんて、そんなこと考えられない。いまは無事にここを切り抜けよう!」

ライス「…… わかりました。ほかのみんなを呼んでくるね、御侍さま。」


***


貪食女「ソ…ンナ…… グワアアアアー!」


主人公「助かった…」

ライス「御侍さま?大丈夫ですか?」

主人公「大丈夫だよ。もうここに用はないし、急いで戻ろう。」

ライス「はーい!」

ライス「……この馬鹿と一緒にしないでもらいたいな。」

ライス「わたし、御侍さまの力になれてるのかな……?」



ティラミス「お帰り。」

主人公「ただいま。」

オリビア「うむ、調達はうまくいったか?」

主人公「オリビアさん。とんでもない強敵に出会ってしまいました。」

オリビア「そうか。よく帰ってこれたな。」

主人公「いえ、食霊たちのおかげです!」

オリビア「うむ。とにかく多くの食霊に出会い、協力して前へ進んでいかなければな。」

オリビア「食霊を育成するだけでなく、おぬし自身の腕も磨いておくことだ。」

オリビア「もちろん、私への料理のご奉仕も忘れずにな。」

主人公「はは…… それにしても、外の世界がこんなに危険だったなんて。」

オリビア「グルイラオだけでも、人間が動ける範囲はほんの一握り。堕神から人々を守るため、ギルドも躍起になって新たな料理御侍を探している。」

主人公「まったく予想外でした。なにか力になれればいいんだけど……」

オリビア「そう言ってくれると心強いな。考えておこう。」

主人公「はい、ぜひ! 料理御侍になれば食材は安く買えるし、いろいろ特権もつくし…」

オリビア「おぬし、意外とゲンキンだな…」

オリビア「ともかく今はレストランに励むことだ。ギルドには、私から伝えておこう。」

オリビア「それまでには、もっと強くなっておくんだぞ。」

グルイラオ編

1.ライスと食材 碧月一日ヒレイナ~風なき密林

レストランの食在庫を充実させるため、ライスは引き続き食材集めを決めた!?

碧月一日

ヒレイナ

主人公「ライス? おーい! ライスー!」

主人公「どこ行ったのかな?」

オリビア「○○、探し物か?」

主人公「オリビアさん。ライスに食事を作ったんだけど、返事がなくて。」

オリビア「食霊に食事? おぬし、面白いことを言うな。」

主人公「どこかで遊んでるだけならいいんですが……」

オリビア「実は、これを届けに来た。」


 手紙を受け取った。


主人公「……これは?」

オリビア「ドアに挟まっていたぞ。おぬし宛のようだな。」

主人公「なんだろう……」


【はいけい、御侍さま。きのうと同じ場所へ、食材集めに行ってきます。わたし一人でも大丈夫だから、心配しないでください】

【――ライスより】


主人公「そんな……一人で行くなんて、危ないに決まってる……」

オリビア「ライスも一人前の食霊として、おぬしに認められたい気持ちがあるのだろう。」

主人公「……探しに行かないと!」

オリビア「いや待て。どのみち食霊は、危険な状態になれば契約者のもとに戻る。見守ってやったらどうだ。」

主人公「オリビアさん、すみません、今日は休業にします!」


***


碧月一日

風なき密林


 少年の表情は愁いを帯びていた。何日も森をさまよった挙句、腐った果実を食べて腹を壊し、たき火の煙にむせ、超ヤバい状況にあることは明らかだった。


???「ゴホゴホ!」

???「ふぅ……まったくこのぼくが迷子になるとは……ぶあっくしょん!!」

???「でも今日こそ、ここを抜け出してやるんだ。」

???「料理御侍になる前にくたばるわけにはいかない。見ていてくれ! うおおおおおおおお」

ライス「きゃああっ!」

???「お、ぼく以外にも人が。いや食霊? びっくりさせてすまない。」

ライス「いえ、わたしの方こそ……」

イキ「ぼくの名はイキ。好きなものは料理、夢はひとつ、料理御侍になること!」

ライス「あ、あの……すてきな夢ですね……」

イキ「ハハハ、やはり口に出して言うのは恥ずかしいな。」

ライス「そんなこと…… 料理御侍はたくさんの人を助けられる、立派なおしごとです!」

イキ「キミ…… なかなか見どころがあるな。」

ライス「あの、イキさんはここで何してたの?」

イキ「うん、見ての通り森で修行だ! ハハ…… キミこそどうしてここに?」

ライス「その、抜け出してきたんです…… こっそり。」

イキ「こっそり? 何かあったのかい?」

ライス「わたしの御侍さまのために、食材をいっぱい集めてきたら、きっと喜んでくれるから……」

イキ「なるほど……じゃあ、この森から抜け出す道も知ってるんだね!」

ライス「実は……わたしも道に迷っていて……」

イキ「そんなぁ……やっぱりぼく自身の力でここを出るしかなさそうだな。」

主人公「おーい! ライスー!」

ライス「お、御侍さま?!」

主人公「ライス、探したよ。何も言わずにいなくなるから……」

ライス「ごめんなさい。御侍さまのお役に立ちたくて。」

主人公「ライス……。そのためにこんな遠くまで……」

ライス「ごめんなさい。」

イキ「キミの御侍か? これでぼくも助かったのか?」

主人公「こちらは?」

イキ「イキです。ここであなたの食霊に会って、ぼくもそろそろ帰ろうかななんて……」

主人公「そうか。それなら……えーと……」

ライス「御侍様?」

主人公「あれ、どっちから来たんだっけ?」

イキ「ま、また迷子がひとり増えた……」


 この時すでに、無数の堕神に取り囲まれていたことを、路頭に迷った三人が気づくことはなかった。森の湿った空気が突如一変し、ようやく異変に気付いたのだった。


主人公「なっ!? いつの間にこんな……!」

イキ「仕方ない。一緒に片づけましょう。」


***


イキ「ふぅ……何て危ない森だ。」

主人公「イキ、よくここで何日も暮らせたね……」

ライス「ねえ、帰ろうよ。夜になったらもっと危ないよ。」

イキ「だから今道に迷って……ん?!」

主人公「なんだ?」


 イキの体は限界に近くなっていたが、近づいて来る堕神の影を見逃さなかった。ライスも異変に気付き、神経を研ぎ澄ませた。


イキ「つ、ついにここまでか……もうだめだ、最後に料理御侍と戦えて幸せだったよ。」

主人公「イキ、しっかりするんだ! 力を合わせて、一緒にここを抜け出そう!」

ライス「そうだぞ! 一緒に戦うんだぞ!」

イキ「……そうか、これが料理御侍の強さ! ぼくはまだ、諦めるわけにはいかない!」

知らない人「何者!?」

主人公「え?」

イキ「何だ? 堕神じゃない……?」

知らない人「……貴様ら、なぜ後をつけて来た。」

イキ「はあ? ぼくたちはただの迷子だ! 後をつけた覚えはない!」

知らない人「……ともかく早々にここを立ち去れ。」

主人公「道を教えてくれれば去ります……」

知らない人「貴様ら……一体何のマネだ?」


 仕方なく、怪しげな人物にすべてを打ち明けた。


知らない人「ハハッ! 地図も持たずにこの密林に踏み入るとは、大した愚か者たちだ。」

イキ「なにー!!」

ライス「待ってください!」

ライス「ごめんなさい、困っているんです、どうか助けてください!」

知らない人「…………」

知らない人「こっちだよ。」

ライス「ありがとうございます!」

イキ「……ライスには優しいのかよ。」

主人公「しっ! いまはとにかく、黙ってついていこう。」

2.突然の敵意

ようやく森の出口にやってきた一行だったが、そこで待ち構えていたのは!?

知らない人「ここから行けばすぐだよ。」

イキ「ちぇっ、こんな道があったのか。」

ワイス「助かりました。ありがとうございます!」

知らない人「では、報酬を頂こうか。」

ライス「うん、いいよ! 何がいい?」

知らない人「この食霊の契約を解除して、私に譲ってほしい。」

ライス「え? え!?」

主人公「何だって?!」

知らない人「別にいいだろう? 霊力のない食霊など、連れていて何の価値がある? 礼の品として、決して高いものではないと思うがな。」

ライス「ごめんなさい! わたし、嫌です、御侍さま……!」


 ライスは瞳に涙をため、両手でしっかりと○○の袖を握りしめた。


主人公「ラ、ライスは譲れない! まだ出会ったばかりだけど、そう簡単には渡せない……!」

知らない人「そうか。ならば、手荒なマネはしたくなかったのだが……」

イキ「待て!」

ライス「イキさん?」

知らない人「ほう、たかが食霊一匹のため、貴様も死に急ぎたいと?」

イキ「そうじゃない!」

知らない人「ならば、口出し無用だ。」

イキ「お前、料理御侍のくせに食霊に手を出すつもりなのか?!」

知らない人「ふん。もはや話にならん。やれ、麻辣ザリガニ。」

麻辣ザリガニ「ふふ……お任せあれ。」


***


主人公「う……!」

イキ「ゴホゴホ、くぅ……」

ライス「御侍さま、イキさん!」

麻辣ザリガニ「まだ息があるようだな……」

イキ「や、やられる!」

麻辣ザリガニ「くく……怖いか? お前たち人間の命を握りつぶすなど、俺にとっては造作もないこと。」

ライス「だ、だめです!! もうやめて!」

麻辣ザリガニ「立派な食霊気取りか? 契約などなければ、人間などとうの昔に……」

主人公「なんのことだ……! そ、それより逃げないと!」

麻辣ザリガニ「くく……見苦しい。とどめを刺してあげよう。」

知らない人「待て……もう十分痛めつけた。貴様ら命拾いしたな。」

麻辣ザリガニ「な?! 生かしておけば面倒に……」

イキ「お前ら……ぼくがタダじゃおかない……」

知らない人「その程度の力でか? 忠告だ。我々に会ったことはここで忘れろ。」

麻辣ザリガニ「……まあ、またどこかで会うかも知れんがな。」


 ザリガニと正体不明の人物は、謎を残したまま去っていった。

3.手土産

ようやく危機から脱した3人だったが、イキは少々困ったことになった。

ライス「御侍さま、ご無事ですか?」

主人公「大丈夫だよ。ライスも無事でよかった。」

ライス「あのザリガニ、なんかいやな感じでした…………わたしが勝手に飛び出したから……」

主人公「いいんだよ。さあ、とにかく早くここから出よう。」

イキ「ようやく森とおさらばだ! ぼくは野宿にするけど、キミたちはどうする?」

ライス「今日も野宿ですか?」

イキ「見ての通り、もうクタクタだからね。どこか安全な場所を探して……」

ライス「御侍さま……」

主人公「イキ、うちのレストランでよければ泊まっていかない?」

イキ「えっ、でもぼく……いいの?」

ライス「イキさんおいでよ! みんなであそぼ!」

主人公「助けてくれたし、ほんのお礼の気持ちです。」

イキ「そ、そういうことなら……お言葉に甘えちゃおう。もちろんお礼はするよ。」

ライス「お礼?」

イキ「まだ時間もあるし、近くで食材収集でもしようかな。ぼくがご馳走するよ。」


***


イキ「これでよしっと!」

ライス「イキさん、お疲れさま!」

主人公「準備万端! 出発しよう!」

4.審査 碧月一日 レストラン

イキの助けに感謝し、暫くの間彼らをレストランに泊めてあげることにした。

碧月一日

レストラン

主人公「美味い!!!!! 味がしみてて舌触りもなめらか……! 驚いたよ、イキ。」

イキ「ああ、これでも料理御侍を目指しているからね!」

主人公「そういえば、ギルドに行く時間は大丈夫? あまり話し込まないほうがいいかな。」

イキ「大丈夫。おもてなしも料理御侍のお仕事だからね。」

イキ「おもてなしが出来てこそ、一流の料理御侍! それに……聞いてる?」

オリビア「○○、ライスは無事か。」

イキ「えっ?」

主人公「はい! 途中気になることもあったけど……オリビアさん、お食事は?」

オリビア「お構いなく、今日は良い知らせだ。」

主人公「よい知らせ?(まさか、正式に料理御侍に……)」

オリビア「おぬしも知っての通り、各地の惨状がこのまま続くようでは、ヒレイナだけでは料理御侍が足りぬ。」

オリビア「そこでだ。レストランにギルド支部を設立する。会長のご意志だ。」

オリビア「目的は、ギルドメンバーの活動拠点を増やし、任務範囲を広げるということだな。」

主人公「それで、このレストランも……?」

オリビア「左様。」

主人公「……て、てっきり料理御侍になれたかと思った……」

オリビア「そう気を落とすな。ここが支部になれば、料理御侍を束ねる役割が、おぬしに与えられる。」

主人公「おおっ!」

オリビア「さらにギルドに活動経費を申請できるし、任務完了で3%の報酬が手に入る。おぬしにとって悪い話ではないだろう?」

主人公「そんなに……! それなら、イキはここで料理御侍になれば……」

オリビア「イキ?」

主人公「密林で会って、ここにしばらく泊めてやってるんです。おーい、イキ!」

イキ「はじめま……あっ! ギルド戦闘支部隊長のオリビア?! ぼ、ぼくを料理御侍にしてくれるの?!」

オリビア「気が早いぞ。が、私を知っているのか。腕には自信がありそうだな。」

主人公「料理の腕は保証します。支部ができたら、イキはここに置いてくれませんか?」

オリビア「人選は上が行う。ギルドに入るには、あるを試練を受けてもらうぞ。」

イキ「試練……いいね、どんな試練?!」

オリビア「戦闘だ。」

オリビア「風なき密林付近に出現する、強力な堕神を討伐してもうおうか。それを倒せば認めてやろう。言っておくが、油断禁物だ。」

イキ「よし、任せとけ!」


***


イキ「少し休んだら力が湧いてきた……! ザリガニヤローでも何でも来い!」

イキ「この森で過ごした苦難の日々……ん? あれは……狼煙があがってる。」

イキ「救援信号かな? うんうん迷子の気持ちはよく分かるよ。」

イキ「いや、もしかしてあいつらか……このぼくをからかってるのか?」

イキ「でも迷子なら見過ごせない! ぼくのようなお人好しはそういないぞ!」

5.遭遇

クエストをクリアすれば料理御侍になれる! イキは、目的地に向かった。

イキ「おーい……誰かいるんだろー……」


 狼煙の方角へと向かっていくと、なぜだか香ばしい匂いがした。たどり着くと、誰かが旨そうな魚を焼いていた!


???「……誰だ?」

イキ「なんだ、迷子かと思ったけど。キミ、ケガはない?」

???「あ? 誰か知らんがあんたに心配される義理はない。」

イキ「でもキミさ、こんなところで魚焼いてると堕神が来るよ。」

???「ここは俺の家だ。家で魚をグリルにしているだけだ。」

イキ「キミ、ここに住んでるの? 変わり者だなあ。まあぼくも同じような経験があるよ。腐った木の実を……」

???「ってか腰を落ち着けすぎだろ! 勝手に人の魚食うなよ! 帰れよ!!」


 相手はイキを追い払うべく、火のついた棍棒を振りかざし、襲い掛かってきた!


イキ「わ、分かった! 帰るよ。」

???「ああ、さっさと失せろ。」

イキ「もう、冷たい人だなあ……」

???「…………」

???「…………」

???「こんなところにまで人間が入り込んでくるなんて、もはや我々に残された場所はないのか?」

イキ「お~い!!!! おいおいおいおい!!」

???「何者!?」

イキ「いや、ぼくだけど」

???「き、きさま……!」

イキ「そうじゃなくて! うしろ! うしろ見て!」

貪食女「ニンゲン……オイシイノ、タベル……!!!」

???「この……また来たか……」


***


イキ「大丈夫だったか?」

???「この程度何の問題もない! 分かったら消えろ!」

イキ「まあそう言わずに。魚を食べさせてくれた礼を言うよ。」

???「そうか。気持ちだけで十分。」

イキ「あんなに美味しい魚は久しぶりだったよ。どんなレシピなんだ?」

???「悪いが、教えられない。帰ってくれ。」

イキ「なら、せめて名前だけでもさ。」


 相手は背を向けたきり、何の反応もなかった。


イキ「…………」

イキ「(……この人、もしかしてこの森の種族の人かな?)」

イキ「おっと、もう日が沈みそうだ。こうしちゃいられない。」

光耀大陸編

6.ティラミス 碧月二日 レストラン

詳細を得るため、ティラミスと共に光耀大陸に向かう。(右下の地図を開いて光耀大陸を選択しよう)

碧月二日

レストラン

イキ「……とまあ、華麗にやっつけてきたというわけなんだ!」


 イキは、クエスト完了の知らせを手土産にレストランに戻り、得意げに戦果を語った。


ライス「イキさん、すごいです!」

主人公「おめでとう。早速ごちそうを用意するよ。」

オリビア「ともかく、よくやってのけたな。素晴らしい。」

イキ「いや~そんな!」

ライス「じゃあ、イキさんは合格?」

オリビア「それは改めて報告する。何はともあれ、○○に支部の仲間ができたな。」

主人公「支部のチームらしくなってきましたね。」

オリビア「では支部をより強化するため、おつかいに行ってきてくれ。」


 オリビアは買い物リストを取り出し、皆の前にかざした。


主人公「なにこれ?」

オリビア「建築用資材だ。」

イキ「何に使うんですか? レストランの内装? ハハ……」

オリビア「うむ。レストランを改造する。」

主人公「開店したばかりで改造!?」

オリビア「支部発展、ひいては料理御侍のためであるぞ。」

オリビア「レストランを心地よい場所にして、任務に励みやすい環境をつくるのだ。」

主人公「はあ、なるほど……」

オリビア「おぬしたちが外出している間に、私が食材を運び込んで来てやろう。」

オリビア「立派な支部として、このみすぼらしいレストランを巨大に改造する!」

主人公「みすぼらしいって何ですか!」

オリビア「いや、すまぬ、少々言い過ぎた。とにかく食材も、物資も、すべて入るほど大きくするのだ。」

主人公「まあ確かに、ギルド支部としては小さすぎますかね。」

オリビア「うむ。この後のことは彼女に聞いてくれ。」

ティラミス「○○さま、お願いいたしますね。」

主人公「やあ、ティラミス、こちらこそよろしくね。」


***


商人「らっしゃい! おっとお客さん、ギルド支部の○○さんで?」

主人公「これはありがとう……や、ティラミス、これは……?」

ティラミス「わたくしの御侍さまが手配された商人の方ですわ。」

主人公「なるほど。」

商人「ご依頼の建材は揃いましたぜ。ささ、お茶でも召し上がっていってください。」

主人公「ありがとうございます。」

7.多地域協力

支部を設立するには、建材を使ってレストランをリニューアルしなければならない。しかし光耀大陸で面倒事に巻き込まれた。

 店主が立ち去ると、○○は室内をしげしげと眺めた。

 建材調達のため来たとはいえ、○○はここ北の地がグルイラオとは全く違うことに、やや心が踊った。

 南部の巨大城壁――天城のお陰で、ここは堕神の侵入を免れている。人々の生活も平和で落ち着いているようだ。

 建築や衣服、人々の所作、どれをとっても、この洗練された美しい自然に溶け込んでいた。

 そして、○○は視線をティラミスに戻した。それを感じて振り向き、微笑みを浮かべるティラミス


ティラミス「○○様、大丈夫ですか?」

主人公「いや……初めて食霊と仕事をするものだから、慣れなくてね……」

ティラミス「慣れない? ライスちゃんといるときもですか?」

主人公「食霊って戦闘と厨房の仕事しかできないんだと……すまない、そう思っていたんだ。」

ティラミス「それも間違ってはいませんわ。」

ティラミス「わたくしたちはそもそも、堕神との戦いのため召喚されたんですもの。」

ティラミス「ですが、有機体でできた人間と違い、食霊は零体を本質として生まれたので、脳も含めた体のあらゆる器官は単なる模倣物。実際の機能はないんです。」

ティラミス「オリビアさまのように思考や探索を教えてくれる人間がいたおかげで、わたくしたちも「主観的思考」を持ち、人間の知識、行為、理想を学びました……」

主人公「それって……、「主観的思考」はもともと、食霊に備わっていないということ?」

ティラミス「はい、わたくしたちが契約に従うのはただ本能的なものです。「主観的思考」のお陰で「自我」の大切さを知るのです。」

ティラミス「自我を知ることが、契約を超えた関係を結ぶ第一歩ですわ。ライスちゃんにとっても……」

主人公「きっと、契約より、大切なことがあるんだろうな。」

主人公「教えてくれてありがとう、ティラミス。」

ティラミス「お役にたてて光栄ですわ。」

商人「おーい、お二人さん。」

ティラミス「店主さん、仕事は済んだんですか?」

商人「ああ……だが二人に言わなければならないことがある。」

商人「最近建材が不足気味でな。買い付けの人間を手配しようと思っているんだが、彼らの食事がな。」

商人「デリバリー契約しているレストランがあるんだが、よそで堕神にやられたとか。生きてはおるまい……」

商人「近所の店はどこも注文でいっぱい、しかしみんなを腹ペコのまま働かせるわけにはいかないしな……」

主人公「それは困りましたね。」

ティラミス「他のレストランをあたってみてはいかが?」

主人公「ティラミス、それって……」

商人「ありがたい! デリバリー、頼めるか?」

ティラミス「○○様、支部の設立と同時に、レストランの経営も重視しなければ。光耀大陸からデリバリーの受注を受けられれば、周辺地区の宣伝にもなりますわ。」

ティラミス「お店の知名度を上げるいい機会ですわよ。」

主人公「いい考えだね……商売上手なんだね。」

ティラミス「もちろん。」


 ティラミスがほほ笑むと、頭のリボンが揺れた。○○には、彼女はかわいい女の子としか見えていなかったが、印象が変わっていくのを感じていた。


商人「よし、最初の注文はこれで頼む! 今後もよろしくな!」

主人公「こちらこそ。では契約を! 今すぐイキに食材を準備させます!」

8.追随

ティラミスの話を思い出すと、心がざわつく。

 商人と契約を交わし、店に戻って最初の注文が来たのは、それから二日経ってからのことだった。

 朝食メニューが終わり○○とライスは店の片づけをしている。食事を終えた客が次々と立ち去る九時は、一日の貴重な静かな時間だ。

 ライスのお陰で、店の仕事はだいぶ楽になった。それに、訓練に付き合ってあげた結果、ライスの喋り方もだいぶまともになってきた。

 だけど……○○の心は落ち着かない。この静かな空間は、もしや話しかける絶好のチャンス?


主人公「デリバリーの調子はどう?」

ライス「順調だよ! あの店主さん、じきに建材も用意できるって。」

主人公「そうか、ならそれが届きしだい工事開始だな。」

ライス「よかったですね、御侍様~」


 話が終わると、厨房の仕事を続けるライス。その背中を見ていると、二日前のティラミスとの会話が思い出され、言葉が喉元まで出かかってくる。


主人公「ラ、ライス?」

ライス「はい、何でしょうか?」

主人公「ライスライスって……いや、何か思ってることはないか? 不満とか……」

ライス「それってどんな食べ物ですか?」

主人公「ハハ……、食材のことじゃなくて。契約のことで……」

ライス「もちろん、御侍さまを全力でお助けするだけです!」

主人公「うん……ありがとう。」


 ○○はティラミスの考えを理解していたが、それにライスに話そうとして、気の利いた言葉が出てこないことに気が付いた。

 瞳を輝かせて真剣に考えこむライス。だがやがてまぶたが重くなってきた。


ライス「ううん……? 眠くなってきちゃった。」

イキ「おーい、○○、朝から難しい話?」

主人公「そんなことより遅刻だよ、イキ。」

イキ「寝坊。それで、何の話をしてたの?」

主人公「ライスが主観的思考をもっているかだよ。危険な目に合わせたくないんだ。どう説明すればいいか、わからないんだけど。」

イキ「それは……食霊にも思考はあると思うけど。」

主人公「大事なことだと思うんだ。」

イキ「フフフ、ライス、キミの一番の願いは?」

ライス「もちろん御侍様のおそばで、全力でお仕えすることです!」

イキ「ほら、これの何がダメなの?」

主人公「いや、いいんだ。どうかしてたね。」

ティラミス「○○様!」

主人公「ティラミス? どうしたんだ?」

ティラミス「ご存じないんですか、建材屋さんが……」

主人公「どうしたんだ?」

ティラミス「オリビアさんの受け取った手紙です。」

主人公「建材の手配をしていたスタッフたちが堕神に襲われた?」

ティラミス「はい、それに、彼らが連れていた食霊たちが、事件後に姿を消しているんです。」

イキ「姿を消す? それは怪しいな。」

主人公「前回会ったあの人でしょう、それが本当なら、様子を確かめに行かなきゃ。」

主人公「ティラミス、オリビアにこのことを伝えておいてくれ。イキ、行くぞ。」

ライス「わたしも行く!」


 出発しようとしていた皆は、突然立ち上がったライスに気が付いた。ピンと伸ばした背筋、真剣な眼差しには、大きな決心の色が見えた。


主人公「ライス……。今回は危険だよ。店番をお願い。」

ライス「御侍さま、おねがい! 帰りをまつだけなんていやです!」

ライス「そばにいられないなら、わたし……どうかおねがいします!」

主人公「だが……」

イキ「連れて行ってあげたらいいと思うな。」

主人公「ライス……「契約」より大切なことがあるんだ。」

ライス「……?」

主人公「……危ない目にあったら、まずは自分のことを守るんだよ。いいね?」

ライス「うわ!」

9.掃除 碧月四日 光耀大陸郊外

ようやく食霊の最後の足取りが掴めたが、どうやら堕神の仕業じゃないみたい!?

碧月四日

光耀大陸郊外

主人公「食霊たちは、ここで姿を消したんですね?」

イキ「情報によると。それに、ほら周りと比べて新しい足跡が残ってるし。」


 イキは東側の川辺の茂みを指さした。あたりには、食霊の魔法による木の幹の焦げ跡や、なぎ倒された草が。建材屋のスタッフはここで堕神の襲撃に遭ったに違いない。


イキ「ほら、こんなに痕跡が、彼らはこちらへ向かっていたのかもしれないな。でもこんな場所へ、どうして……?」

主人公「何かを追っていた? まさか、捕まったとか。」

ライス「みんな……無事かな?」

主人公「何とかしないと、建材は調達できない。それに、食霊の動きも気になる。」

主人公「しかしこの様子からして、堕神の数は多そうだな、前からこうだったのか?」

イキ「いや、天城に綻びでもない限りは考えられないね。」

主人公「人が堕神を連れて来たのか……?」

イキ「調べてみないとわからないな。その前に、この目障りな連中をすべて片付けてしまわないと!」

主人公「うん……ライス、無理はするなよ。」

ライス「……はい。」

10.疑念

森の奥まで探索。その奥には一体なにが隠されているんだ?

 茂みの奥は巨木によって日光が遮られ、昼間でも薄暗くなっている。

 大きな音に驚いて茂みから飛び上がる小鳥たち。木の下に一人の食霊が倒れている。体中の傷から霊力が滲みだし、うつろな目にはもはや生気がない。

 その傍らでは赤い服を着た白い髪の男が、冷ややかなまなざしで息も絶え絶えの食霊を見つめている。「フン」という一声で、巨大なハサミの電光が消えた。

 さらにその後ろに、黒い服を着た謎の人物が、すべてを黙って見ていた。


知らない人「奴は死んだか、ザリガニ?」

麻辣ザリガニ「まだ息はあります。この体、使いますか?」

知らない人「時間があればな……まったく。」

知らない人「奴らを見くびっていたようだ。今や食霊の力を借りなければ片づけることも困難だ。」

麻辣ザリガニ「こんなものは朝飯前の仕事。悲観することはありませんよ。」

知らない人「ああ、すべては自由のため……」

麻辣ザリガニ「とは言え、もう我々の手は血に染まっていますよ……」

知らない人「……貴様とも、そろそろ別れどきだな」

麻辣ザリガニ「気分次第かな。」

イキ「おーい! こっちこっち!」

知らない人「あの少年は……」

麻辣ザリガニ「おや、ついて来たのがまだいるようだね。」

主人公「イキ、あの食霊は行方不明になっている……」

麻辣ザリガニ「ちょうどいい、お前の仲間だろう?」

ライス「ど、どうしてこんなことを!?」

知らない人「もちろん、生きるためだよ。」

ライス「……生きる?」

知らない人「生きるためには、食霊の体が必要なんだ。」

イキ「食霊を何だと思っているんだ?」

知らない人「道具に決まっているじゃないか。」

イキ「何だと……?」

知らない人「知っているか、こいつらはこの星にもう何百年もいるんだ、こんな奴らを仲間だと思うなんて、バカな人間もいたもんだ!」

知らない人「こいつらは人間が作った存在なんだ、どうしようと人間の勝手だろう。」

知らない人「こっちに利益さえもたらしてくれれば、死のうが生きようが関係ない。」

イキ「ふざけるな!」

ライス「イキさん、落ち着いて。」

主人公「じゃ、ここの人たちが堕神に襲われたというのも、お前らの仕業か?」

知らない人「堕神? あの食霊のことか? こうなったら、もう教えてもよかろう。」

知らない人「あれは堕神だが、正確にはもとは食霊だった。」

イキ「しょ……食霊!」

主人公「さっき倒したのは商人の連れていた食霊……!?」

知らない人「なんだ、あいつらを探していたのか? 気が付かなかったのか? どうだ、食霊を殺した気持ちは?」

イキ「お前なぁ……!」

知らない人「じゃ、話はこのぐらいで、時間もないし、ザリガニ、あとは頼んだぞ。」

麻辣ザリガニ「フンッ!」

知らない人「ぐわあっ! ザリガニ……貴様?!」


 黒服は自分のために時間稼ぎをしてくれると思ってザリガニのそばを通り過ぎたが、ザリガニは巨大なハサミを振りかざし、黒服に反応する隙も与えず、その首を挟んで体を宙に持ち上げた。


知らない人「ザリ……ガニ………………!?」


 巨大な鋏を振りほどこうとする黒服、だが人間の力では食霊と勝負にならない。生死の瀬戸際にあってなお、彼にできるのは無駄あがきだけだった。


知らない人「おい! に……逃がしてやったじゃないか……なぜだ……?」

麻辣ザリガニ「なぜか? 私も「食霊」だからですよ。」

知らない人「グッ……!」

麻辣ザリガニ「あの人との約束で仕方なく人間と協力していたんだ。だがあんたみたいな下賎な生物といるのはもうたくさんだ。命で償いをしてもらおう。」


 相手の次の言葉を待たず、ザリガニはハサミに力を込めた。あがいていた黒服はうめき声を一つ上げ、それきり体はだらりと垂れ下がり、動かなくなった。


ライス「ど……どうして人間を殺したの!?」

麻辣ザリガニ「おまえは、この前の空っぽの食霊さん?」

麻辣ザリガニ「こんな下賎な生物に同情など必要かい?」

ライス「……私たち食霊の使命は、人間を助けることじゃなかったの?」

麻辣ザリガニ「使命!? ……ハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!」

ライス「…………」

麻辣ザリガニ「堕神が暴れ始めてからというもの、人間は食霊とともに世界を守ってきたように思われているが、知っているか、奴らは食霊を堕神化させるものを秘密裏に製造しているんだ。」

ライス「食霊を……堕神化?」

麻辣ザリガニ「なぜか知っているか? 知りたくないか? 信じないのなら、今からすることをよく見ておくがよい。」


 ザリガニは死んだ黒服の服の中から注射器のようなものをまさぐり出し、ハサミで倒れている食霊を捕まえて中身の液体を注射した。そして、すぐにその場から逃げ去った。


イキ「おい! 待て!」


 追いかけようとしたイキは、思わず足を止めた――虫の息だった食霊はけいれんを起こし、唸り声を上げ、異様な光が宿る両目を見開いたのだ。


イキ「これが……食霊?」

主人公「いや違う……「堕神」だ!」


***


酒呑童子「ああ、御侍様……ど……どこ?」


 ○○たちの健闘により、「敵」は倒されたが、その時の相手のやるせない声により皆は悟った……この戦っている相手は食霊なのだ、他の食霊たちもこうして堕神になったのだと……


イキ「危ないところだったな!」

主人公「…………」

ライス「なぜ……こんなことに?」

主人公「ライス……!」

ライス「もしや、今まで倒してきた堕神は、私の仲間……? そんな、そんな、今まで耐えてきたのに……!」

主人公「ライス?」

ライス「……!」

主人公「その「今まで」ってどういうこと?」

ライス「え? 私……今何か言いましたか?」

イキ「緊張しすぎて、思ってもいないことを言ったんじゃないか?」

ライス「そうですね……ごめんなさい。」

主人公「ライス。あいつが食霊に何をしたのか知らないが、どうか信じてくれ、契約者として、食霊を傷つけることは絶対にしない!」

ライス「御侍様……わ、私は平気です、心配させてごめんなさい。」

主人公「……」

イキ「○○、これを!」

主人公「何か見つけたのか?」

イキ「これは大発見だよ。」

主人公「さっきザリガニが使っていたものだな? 食霊を堕神にしたのも、この中身と関係がありそうだね。」

イキ「このマークを見て。」


 イキは注射器の末端を指さした。銀で刻まれた美しいマークの下に、小さな字が。

【ナイフラスト魔導学院製】


ライス「まどうがくいん?」

主人公「ライスは知らないか。もとは精霊が魔法を研究する場所だったが、人類が魔法能力を失ってからは、様々な用途の魔導工具を研究する場所になったんだ……」

主人公「私たちの契約に使った幻晶石も彼らが開発したものだよ。」

ライス「じゃ、彼らはどうしてまたこんな恐ろしいものを?」

イキ「それは彼らに聞かないとわからないな。」

主人公「魔導学院は普通の人間が出入りできる場所じゃないよ、どうしよう?」

イキ「うーん……オリビアに相談してみよう。ここは片付いたんだ、建材屋にもそう伝えて、レストランに戻ろう。」


11.決心

今後どうすれば良いのか確かめるため、疑わしいものを携えてレストランに戻った。

黒服の死で全てが片付いたわけではなさそうだ。注射器を店に持ち帰って数日後、仕事にやってきたオリビアに、○○は事情を話した。


オリビア「つまり、事件の黒幕は魔道学院だと?」

イキ「ぼくもそう思う!」

主人公「仮にそうじゃなかったとしても、様子を探ってきてもらえるかな?」

オリビア「反対はしないが、学院は許可された教職員や学生以外、一般人は立ち入り禁止であるぞ。」

主人公「確かに、でもギルドと学院はどちらも皇室所属だから、ギルドの許可をとれば可能性はありますよね?」

オリビア「……少し考え過ぎではないか?」

主人公「ハハ…自分でもそう思います。はっきりしないと落ち着かなくて。」

イキ「ぼくも彼らのしたことは許せない! ○○、力を貸すよ。」

オリビア「………」

オリビア「私が反対しても、あきらめるおぬしたちではないだろう?」

主人公「オリビアさん…」

オリビア「おぬしはまだギルドの新入りらレストランランクを上げられたら、私も手伝おう。」



12.新しい仲間

レストラン経営にも大きな収穫があり、その後、オリビアがようやく良い知らせを持ってきた。


オリビア「いいぞ○○、レストラン経営にも余裕がでてきたようだな。」

主人公「まあまあですよ。そうだ、あっちはどうなりました?」

オリビア「持っていくがよい。」


配達許可証を手に入れた


主人公「配達許可… なるほど。デリバリーを装って学院に入るということですね。」

オリビア「うまくいく保証はないが、これが最善策だ。おぬしのレストランの知名度も高くなったおかげで、許可もすんなり下りたぞ。」

主人公「ありがとう、オリビアさん。」

オリビア「苦しゅうないぞ。ちなみに正式に…」

オリビア「私がこの支部に移動することとなったよろしく頼むぞ、支部長。」

主人公「えっ! いいんですか。」

オリビア「何か問題でも?」

主人公「も、もちろんありません!」

オリビア「さっそくだが、イキに配達用の食事を用意してもらおうか。」


ナイフラスト編

13.極寒の地 碧月四日 ナイフラスト

今回は一風変わった配達仕事だ。極寒の地で頑張ろう。


碧月四日

ナイフラスト


○○たちは用意した食べ物を持ってナイフラストに到着した。

グルイラオと違うのは、夏なのにまるで暑くないこと。天空の冷たい風に吹かれ、雲の上にそびえたつ巨大な建物が、今回の目的地だった。


主人公「ハクショーン!ぶるぶる――」

ライス「御侍さま、あついお茶を入れてきました。どうぞ。」

主人公「わあ! ありがとうライス

イキ「○○、あれが魔道学院か! 空に浮かんでいるが……?」

オリビア「魔道学院は特殊な極寒地帯にある。その研究環境を保つため、空中に浮かんでいるのだ。」

オリビア「それに、あの高さは侵入者を隔離する壁にもなる。不用意に近づけば、撃墜されるぞ。」

イキ「ぼくたちただの出前屋なのに…」

ティラミス「オリビア様、あちらで女の子が墜神に追撃されています!」

オリビア「やはり来たか。おぬしら、戦闘準備はよいか?」

イキ「おーけー! ちょうどいい準備運動だ!」


***


???(ミスラ)「はぁ…はぁ…」

イキ「キミ、大丈夫かい?」

???「何してるのよ、堕神が近くにいるわよ、早く逃げて!」

主人公「大丈夫、それなら倒しておきましたから。」

???「そう、なら礼を言っておくわ。「あいつら」が待っているから、早く行かなきゃ、さよなら!」


突然現れた少女は○○たちに挨拶もそこそこに、息を弾ませ立ち去った。


イキ「忙しそうだね。追いかけようか?」

オリビア「あの制服なら魔道学院の学生に間違いない。友人にでも会いに行くつもりだろう。」

主人公「さあ、我々にもやることがある。行くぞ。」


14.学院衝突

ようやく魔道学院に着いたが、そこで待っていたのは意外な展開だった。


イキ「やっと着いた、○○ほら、あそこで待っている人がいる。」

学院の教職員「ヒジョ~~~に遅い!!! 最近のギルドはどうかしとるぞ!!」

主人公「えっ?」

イキ「遅れたって、たった1分だよ…。」

学院の教職員「効率だ効率! 1分の遅れがどれだけ研究、影響を及ぼすか分かっておらんな?ええいこれだから料理御侍は!」

イキ「何だとー! このこのー!」

オリビア「我がギルド支部への意見は院長へお伝え願おう。それともご一緒しようか?」

学院の教職員「う……ともかく受け取ったから、さっさとたまえ!」

主人公「待ってください! 聞きたいことがあるんです!」

学院の教職員「な、何だ?」


注射器を渡した。


主人公「これに見覚えありませんか?」

学院の教職員「ど……どこで手に入れた。」

主人公「これを使って食霊を堕神化させているのを見たんです! 事情を教えてください!」

学院の教職員「…ハッ、ハハハハハ! 出前に教えることは何一つない! 用事は済んだだろう、帰りたまえ!」

イキ「待てこら! 知ってるんだろう!」

学院の教職員「は、離せ! 王室直属の本院でおかしなことをしてみたまえ…」

イキ「お、お前が黒幕か、このーっ……!」

???(ルクシード)「騒がしいぞお前たち!」

学院の教職員「ル、ルクシード! あんたの手下が…」

イキ「ルクシード? 誰?」

オリビア「イキ、下がれ。この方はギルド戦闘部部隊長、ルクシードさまだ。」

イキ「え!?」


***


イキ「○○、厄介なことになったぞ。」

主人公「……まずは様子見だね。」

オリビア「部隊長、こんなところでお会いできるとは。」

ルクシード「君は○○という新人の支部に移籍したと聞いているが、なぜ学院にいるんだ?」

オリビア「出前の手伝いで参ったまでです。今まさに引き上げようかと…」

学院の教職員「ごまかすな! あいつら、さっき私におそいかかってきたんだ!」

イキ「なにー!!」

学院の教職員「いやあんたのことだよ!!」

主人公「隊長、ご紹介が遅れました。○○です。実はこうこうこういう……」


○○はルクシードに事情を説明した。


主人公「このままでは、また、罪のない食霊が犠牲になってしまうと思って…勝手なことをしてすみません。」

ルクシード「料理御侍の職務は堕神を倒すこと、王室近衛団の調査に首を突っ込むことではない。」

主人公「だが……」

オリビア「(かろうじて助かったな。)部隊長、ではこれにて失礼いたす。」

オリビア「…彼に逆らえばタダでは済まん。帰るぞ。」

主人公「はい。」

学院の教職員「全く驚いたな、君のお陰だルクシード、院長どのとの話は済んだのかね?」

ルクシード「ええ、それから言づけですが…ミスラが逃げ出したと。」

学院の教職員「ま、また!? ああああまったくもう!」

イキ「プッ、騒がしい人だなあ。」

学院の教職員「おい! あんたらちょっと来い!」

イキ「な、何だ?」

学院の教職員「本院の学生一人が逃げ出した。安全に連れ帰るようにと院長からのお達しだ!」

イキ「そんな命令、知ったことか!」

ルクシード「○○、命令には従った方がいい。人間を堕神から守るのが、料理御侍の職責ではないか?」

主人公「……分かりました、行きます。」

15.人捜し 碧月四日 地質観測点

料理御侍として、責務を全うしなければならない。学院のために人捜しをしよう。(ステージ:13-9)


碧月四日

地質観測点


イキ「ちぇっ、あのルクシードって、ギルドの人なのに学院を手伝ってるなんて。」

オリビア「ルクシードは几帳面で、規則を守ることにこだわる。じきに慣れる。」

イキ「今回の仕事は人探しだよね? どうして地質観測点にきたんだ?」

主人公「逃げた学生というのはあの女の子だろう、確かこっちのほうに向かっていたと……ごめんくださーい。」

地質調査員「出前ですね? おや? どなたですか?」

主人公「ギルドの料理御侍です。あの、長い黒髪に白い制服を着た女の子を見ませんでしたか?」

地質調査員「あの子ですね? ここで幻晶石を買って行かれました。いつものように青石村へ向かったんでしょう。」

イキ「ってことは、よく来るのか?」

地質調査員「たまにですがね、学院の生徒がここに来るのは珍しいですから、皆顔見知りですよ。」

主人公「ありがとうございます。出前とおっしゃってましたが、お食事はまだですか?」

地質調査員「それが注文してからだいぶ時間がたったのですが…」

ライス「御侍さま、どうする?」

主人公「出前が安全に来れるように、帰りは堕神をやっつけておこうか。」

16.制御権奪還 碧月四日 青石村

青石村の住民が困っている。解決しなければもっと大変な事になるぞ。(ステージ:13-5)


碧月四日

青石村


イキ「お、ボコボコと泡が出ているぞ?」

主人公「温泉かな?」

イキ「これが温泉っていうのか?! 寒いし入ってみたいなー。」

オリビア「この村の温泉には強い酸が含まれ、入れば骨の髄まで溶けてしまうという…。」

イキ「うわーっ! 温泉ってそんな危ないものなの?」

オリビア「あの建物が見えるか? 極寒のナイフラストも、温泉の熱を利用しているから凍えずに済むというわけだ。」

イキ「へぇ…、あれ? 建物のまわりに人が集まってるよ? 何かあったのかな?」

主人公「あの女の子かも、様子を見に行ってみましょう。」

主人公「すみません、長い黒髪に白い制服を着た女の子見ませんでしたか?」

青石村村長「これはこれは、料理御侍さま、よいところへいらっしゃいました。」

主人公「どういうことですか?」

青石村村長「今朝、設備が故障してしまったんですよ。どうやら工場内部は堕神のすみかになってるようで…。恐ろしくて修理どころでは…」

ライス「御侍さま、行きましょう!」

オリビア「ご安心を、堕神ならお任せください。」

イキ「え、人探しは?」

主人公「まずはこっちだな。」


***


イキ「設備は地下に向かって続いてるのか。やみくもに戦ったら落ちちゃうかも。」

主人公「設備の照明は壊れてるけど、順調に動いてるようだね。」

青石村村長「御侍さまがた、無事修理に入ることができました。ありがとう。」

ライス「お役にたててうれしいです。」

青石村村長「そういえば、女の子を探されていたのでは?」

オリビア「会ったことがあるのか?」

青石村村長「彼女、よくひとりで海辺に行っておられましてな。最近じゃ堕神は海岸でも現れますから、危ないとは言っとるんですが。」

イキ「のんびりしてる場合じゃなさそうだね。」


17.危険時刻

海辺の危険性を知った一行は、急いで目的地に向かい、ようやくミスラの痕跡を見つけた。(ステージ:14-7)


主人公「この海岸か…。」

イキ「お、あれは…?」

ミスラ「うーんやっぱりおいしい。あれ?」

ミスラ「あなたたちはさっきの……?」

イキ「ねぇっ、食べている場合じゃないよ!?」

主人公「あぶなーい! 逃げて!」

ミスラ「えっ!?」



18.義理人情

一心不乱に「敵」を倒したたが、助けられたミスラは怒っているみたいだ。


巻貝女王「げっ、あなたたち…」

イキ「ブクブク…」

ミスラ「お待ちを!」

イキ「えっ?」

ミスラ「何をするつもり!」

イキ「そりゃ、堕神を倒すんだよ!」

主人公「君、ミスラだろう? 魔道学院から君を連れ戻すようお達しを受けているんだ。」

ミスラ「私を? あなたたちの堕神退治には興味がないわ、だけど私の取引相手を攻撃するんなら、ちゃんとした説明がほしいんだけど。」

イキ「取引相手? 堕神!?」

巻貝女王「ブクブク、人間は野蛮。すぐ暴力してくる。」

オリビア「まったく、学院の人間がまたわけのわからないことを……で、結局何がしたいわけ?」

ミスラ「私一人でことを進めていたけれど、見つかってしまったからしょうがない、話すわ。」


ミスラは事情をすべて話した。


主人公「つまり、巻貝女王と、幻晶石を報酬として堕神の情報をもらうという約束をしたと?」

巻貝女王「ブクブク、その通り。」

ミスラ「だけど、今日買った幻晶石はあなたたちの戦いで壊れちゃった、弁償してよ。」

主人公「幻晶石なんて、今日は持ってないよ。」

ライス「御侍さま、青石村で採掘のおしごとをしてる人に、たすけてもらえないかな?」

主人公「それはいい、だがコスト削減のために、ライス、店にいるお客さんに伝えておいてくれ、今日の支払いは幻晶石でいい。」

ミスラ「待って、わたしも行く!」

主人公「こっちへ!」


19.学院出身 碧月四日 レストラン

ようやく全ての補填を終えた一行はレストランで休んでいたが、予期せぬ客がやってきた。


碧月四日

レストラン


忙しい一日が終わり、○○たちは満腹になったミスラを学院に送り届けた。店に戻った時には、日が暮れかけていた。


イキ「あのミスラ、恐ろしい食欲だな、一人でうちの在庫をほとんど全部食べつくすんだから!」

主人公「ああ、もう思い出したくない……」

イキ「○○、ぼくは何をしようとしていたんだっけ?」

主人公「えー? なになに? 怖い話?」

オリビア「まったく無駄足だったな。これからはこんな無用なおつかいはしたくないな。」

主人公「申し訳ありません……」

ミスラ「誰かいますか?」

イキ「あ、ミスラ? 忘れ物?」

ミスラ「学院に戻って、あなたたちがここへ来た理由を聞いた。学院長の許可ももらったし、今日から私がこの支部の顧問だよ!」

主人公「顧問って…店を食べつくすつもり?」

ミスラ「あなた、○○だね、青石村の人たちを招待した時、あなたの作品を知ったの。」

主人公「さ、作品?」

ミスラ「本当に、本当にすごいわ! あれほど私を夢中にさせた食べ物って初めて! あなたの作品を研究することにしたから、どうかいろいろ教えてね!」

イキ「料理に、研究って…?」

オリビア「つまり君は食いしん坊なんだね?」

ミスラ「いいえ、それもあるけれど、あの注射器についてあなたたちに話しに来た。」

オリビア「何か知ってるのか?」

ミスラ「学院中の人は誰でも知っているけど、話そうとしないだけよ。」

ミスラ「十五年前、学院は堕神の研究チームを結成し、目覚ましい研究成果を遂げた。」

ミスラ「彼らは幻晶石の力で霊体を再組織させる薬物を発見し、度重なる実験の結果、人間を堕神にする可能性を見出した。」

ミスラ「だけど皇室がこの薬物を許可したその日、研究チームのメンバーは学院で殺され、彼らの研究成果も犯人に持ち去られて行方知れず。」

イキ「つまり、注射器は学院と無関係だと?」

ミスラ「それどころか、学院の人から聞いたあなたたちの遭った敵の様子や、食霊の注射をされた後の変化は、チームの研究結果と違っている。」

主人公「つまり、犯人は奪った薬物の改造をその後も続けていると?」

ミスラ「ええ、あなたたちが遭遇したのも彼らの実験だったのかもしれない。噂では、桜の島は彼らの薬物により、徹底的に改造されてしまったそうよ。」

オリビア「なかなか詳しいな。おぬし、ただの学生のようには感じられぬのだが。」

ミスラ「いいえ、普通の学生だよ。」


20.渡航 碧月五日 レストラン

手がかりを見つけ桜の島へ向かう。しかしそれは容易な事ではなかった。



碧月五日

レストラン



ミスラから黒服の更なる情報を得た○○たちは、少し休んでから、グルイラオ航海協会に連絡船と使用を申請した。二日後、彼らは返答を得た。


主人公「船では桜の島に行けない? なぜ?」

オリビア「桜の島は、外部との連絡を中断してはや三百年だ。そんな場所に行きたがる者もあまりおらんしな。」

イキ「どうする? じゃ、飛行船に乗ろうか?」

ライス「危険すぎます! うちの財産はすべてここにあるのに。」

主人公「さすがライス

イキ「ライス、急にケチになったな?」

オリビア「主人に似てきたんだよ…」

ミスラ「考えがあります。」

ミスラ「青石村には小さな悼頭があり、以前は桜の島ーのナイフラスト間の物資運送に使われていたんだ。今は荒れ果てているが、民用の漁船が多く残されているようだ。」

主人公「つまり、それで海を渡ると?」

ミスラ「今の一番いい方法だから。」

オリビア「あまり頼れるとも思わないが、ここは支部長に決めてもらおう、○○?」

主人公「やってみなければわからないじゃない? 行先はもう決まっているんだし、明日、青石村に向けて出発だ。」

21.村長の手助け 碧月六日 青石村

出航を迎えた船はどこか心許ない。そこで、村長が一つ提案を出した。

碧月六日

青石村


村長「わたしたちの船を借りたいと?」

主人公「もちろん、お代は払います。」

青石村村長「いえそんな、前回は村の危機を救ってもらった上にごちそうまでしてらった。お金なんて。」

青石村村長「船は埠頭に泊めてあるから、自由に使ってください。それと、ちょっと頼みを聞いていただけないか。」

ライス「私たちにできることなら、喜んでお手伝いしますよ。」

青石村村長「この船は俺たちの商売道具なんで、貸し出したらその数日間は漁ができない。」

青石村村長「だから、食料を事前に準備してほしいんだ。」

イキ「お安い御用で! まずは食料を調達してくればいいんでしょう。じゃ、出発だ!」


***


ライス「村長さん、これで足りますかな?」

青石村村長「おお、こんなに手配してくれたのか、ありがとう!」

主人公「大したことじゃありませんよ、さ、イキ、オリビアとミスラを呼んで、船のところへ行こう。」

イキ「は~い!」


22.邪神の涙 碧月六日 青石村海岸〜氷涙湖湖畔

極寒の地の入り口にたどり着いた。寒さが身にしみるが、ミスラは嬉しそうだ。

碧月六日

青石村海岸


青石村村長「これがうちの漁船だ。動力源は幻晶石なので、長い船旅ができる。ご自由に使ってください。」

イキ「わー、でっかい!」

オリビア「だけど、この船、頑丈そうには見えないなぁ。」

青石村村長「桜の島とは往来が途切れて久しいから、運送船はもうほとんど残ってないんだ。」

青石村村長「うちのこの漁船は、もうそれほど遠くまで行くこともないから、手入れもあまりしていなくてね。」

ミスラ「しかしこんなぼろい船、海へ出たら、危ないじゃないか。」

青石村村長「手入れをすることができるが、ただし……」

主人公「どうしたんだ?」

青石村村長「氷涙湖のことは聞いたことがあるかね?」

オリビア「あのナイフラストの寒気の源と呼ばれる場所のこと?」

青石村村長「そうだ、あの湖が我々を寒さに悩まされるようになったが、あそこの水はとても役に立つのだ。」

ミスラ「思い出した、氷涙湖の底には大量の幻晶石が積もっているから、湖水に濡れたものはなんでも頑丈になるんだ。」

青石村村長「ああ、だから木材もしばらく湖水に浸しておけば頑丈になって、船体の補強になるだろう。」

主人公「行ってみる価値はありそうだな。」

青石村村長「最近氷涙湖湖畔は堕神の活動も活発だから、気を付けるんだぞ!」

イキ「大丈夫ですよ村長、私たちは堕神を倒すのが専門なんだから!」


***


碧月六日

氷涙湖湖畔


 湖畔につくと、皆は補強に使う木材の縄をほどき、一斉に湖に投げ込んだ。寒さのせいで水しぶきは一瞬にして凍り、再び水中に落ちた。


主人公「さすが「ナイフラストの冬は氷涙湖の賜物」、近寄れば近寄るほど寒くて、耐えられない!」

イキ「鍛錬が足りないな、○○、店の中にいて体がなまっちゃったんじゃない? ほらほら!」

主人公「イキの方が異常だよ……そっちは大丈夫?」

オリビア「なんだ? ブルブル震えているのはおぬしだろう?」

主人公「アハハ、お恥ずかしい。」

ミスラ「そんなことより、私たち氷涙湖にいるのよ!」

主人公「こんなに寒いのに、余裕があるね?」

ミスラ「ただの湖じゃないのよ、氷涙湖という研究価値のある場所に来られるなんて、生きててよかった!」

イキ「まぁ普通の場所じゃないけど、そんな大げさな。」

ミスラ「○○、木材、もうちょっと浸しておいたほうがいいかしら?」

主人公「何をするつもり?」

ミスラ「私は水のサンプルを研究用に持ち帰りたい!」

主人公「そ、そこまでするか?」

ミスラ「知らないの? 湖底にある幻晶石の影響で、水温は下がり続けるけれど、湖水の中で氷晶は起きないの。先行研究によれば……」

主人公「わかった、わかった、つまり研究価値のある水だってことだろう。気をつけて。」

ミスラ「すみません、ちょっとついてきてくれない、私には食霊がいないから。」

主人公「ライス、この顧問の契約はいつまで?」

イキ「○○、ここはぼくが見張るから、気をつけて行ってきてね。」

ライス「御侍さま、わたしも行きます!」


23.堕神

ミスラは、自分の安全など全く顧みていないみたいだ。君が敵を防ぐしかない。


主人公「ミスラ、このへんがいいんじゃないかな?」

ミスラ「水を汲みやすそうな場所ね、ちょっと待ってて、すぐ戻るわ!」

ライス「御侍さま、堕神が近づいてくる気配が!」

主人公「こんな時に!? ミスラ、逃げるぞ!?」

ミスラ「もうちょっと、湖底の泥も採ろうと思っているの……」

主人公「まったくいつも面倒を起こしてくれる、ライス、ミスラを頼む。」

ライス「うん!」


***


毒ふぐ「ブクブク……ブク……」

主人公「ここって堕神の巣か!? なんでこんなにいるんだ!」

ミスラ「お待たせ……えーっ!? もしかして包囲されちゃったの?」

主人公「今気が付いたのかよ? 早く逃げよう!」

ライス「御侍様、あそこ……!」

ミスラ「待って、あっちに洞窟が、きゃ――!」

主人公「うわぁ!!」


24.考古の新発見

洞窟に落ちてしまった3人は思いもしなかった大発見をする。


 洞窟に落ちた○○は何とか立ち上がり、皆がけがをしていないことを確かめると、洞窟の入り口を見上げた。


主人公「あんな高さから?ここから出るのは無理みたいだ、ライス、ランプを。」

ライス「はい。」

ミスラ「……こ、ここは邪神遺跡!?」

主人公「え? まさか……どうしてこんなところに?」

ミスラ「氷涙湖畔は神言八峰、ここに落ちても不思議じゃない。だがここは魔導学院の開いた通路とは違うみたい。」

ミスラ「つまり、ここはまだ発掘されていない部分ってこと!? すごい、大発見じゃない!」

主人公「喜ぶのはまだ早い、まず何とかしてここを脱出しなきゃ。」

ミスラ「待って、壁には精霊時代の文字がたくさん刻まれているの。それを解読出来たら、当時の文明について解明できるかもしれない。」

ミスラ「それに彫刻技術も研究価値が高いのよ。王歴152年には精霊文字を正確に翻訳した人がいたんだけど……」

主人公「また講義が始まったか。」

ライス「御侍様、ミスラさんのおっしゃることがわかるんですか?」

主人公「わかったふりだよ、じゃなきゃ止まらないだろう?」

ライス「これからどうしますか?」

主人公「出口を探すには時間がかかる、その前に何か食べて体力を補給しておこう。」


25.潜伏者

集中してしまうとなにも目に入らなくなってしまう。尻ぬぐいをするのはいつも君だ。


主人公「この近く、模様や文字がたくさんありますね、建てるのも大変だっただろうなぁ。」

ミスラ「なるほど、精霊の自然体は自然界の生物になることだと……」

主人公「ミスラ?」

ミスラ「え……光精霊と闇精霊はもともと同じ祖先から枝分かれしたものなの?」

主人公「聞こえてないな。」

ライス「夢中なんでしょうね。」

血に飢えたナイフ「………カカカ……」

主人公「………」

主人公「ミスラ! 堕神……いや、聞こえてないな、戦闘だ!」


***


血に飢えたナイフ「ヒヒヒヒヒアアア!!!」

主人公「ふ~面倒なことになったな、ミスラ、もういいか?」

ミスラ「だいたいね、だけどこの文字が、どうやらただの精霊文字じゃないらしい。」

主人公「そんなことより、ここは危険なんだよ、あの青いやつがいつまた出てくるとも知れないんだ、いきましょう!」

ライス「あれは、祈りの言葉?」

主人公「……?」

ミスラ「ライス、ここの文字がわかるか?」

ライス「えーっと……かつて世界が滅びかけた時、生命は二つに分かれた。つまり、世界にはもう一つの存在があると。」

主人公「ライス、ここの言葉はどこで覚えたんだ?」

ライス「なぜかわからないけれど、読めるの……」

ミスラ「神言八峰の裏側にはもう一つの世界があると伝わっているけれど、それを証明した人はいないわ、精霊時代にもね。」

ミスラ「この文字が伝えることが本当なら、大発見よ!」

主人公「それよりまずこの洞窟を脱出しなきゃ。」

ライス「御侍様、ここに、付近の地図が描かれていますよ。」

主人公「本当か? どれどれ!」

主人公「もう一つの出口があるんだ、よかった、急ぎましょう!」


26.徹底追及 碧月六日 氷涙湖畔

ようやく邪神遺跡から逃れイキたちと合流したが、「追手」は簡単に諦めそうにない。


碧月六日

氷涙湖畔


イキ「おーい○○、戻ってきたのか?」

主人公「はい、なんとか。」

オリビア「ぐったりしてるな、堕神に遭ったのか?」

ライス「はい、恐ろしい堕神が現れた、御侍様が追い払ってくれた隙に、慌てて戻ってきたんです。」

イキ「恐ろしい堕神って、今背後にいるそれか?」

血に飢えたナイフ「ヒヒヒヒヒ!!」

主人公「ここまで追いかけてきたのか!」

オリビア「血に飢えたナイフ」か、地獄へ叩き落してくれる!」


***


イキ「あっという間だったね。」

主人公「一件落着か。」

イキ「戻ってこれないと思ったと言うから、どんなすごい堕神かと思ったら、○○、やはりまだ青いな。」

主人公「ハハ……で、木材はもういいの?」

イキ「とうに。今は青石村で漁船を補強しているところだよ。」


桜の島編

27.出航

準備を全て終え、一行はようやく出航するが、航路は順調に進むのだろうか?


碧月七日

海上


 青石村の人々のお陰で、漁船の補強も無事完了し、翌朝桜の島へ出発した。

イキ「うわー、本当に果てしない大海原!」

主人公「ヒレイナで海を見たことはなかったの?」

イキ「あるけど、こんな東西南北すべてが海というのは初めてだよ。向こうが見えなくて、本当にすごい!」

オリビア「走り回るなよ、海に落ちても救命道具は何も持っていないんだから。」

イキ「大丈夫、今は風も優しいし!」

 イキが言い終えると、風と共に寄せていた波が突然止んだ。まるで時間が止まったかと思われたその瞬間。

イキ「……回り道した方がよかったかな?」

オリビア「間に合わない。」

 何が起こったのか皆が理解するより先に、船の上には赤い煙が漂い、あたりに不思議な香りが立ち込めた。

ミスラ「何だこれ……ね……眠い……」

主人公「ミスラ、どうしたんだ? あれ?」

オリビア「怪しい煙だわ、口と鼻を押さえて……う……」

主人公「オリビア? イキ、早く二人を船倉へ連れて行くんだ!」

 ○○はイキを呼んだが、イキは床でいびきを立てて眠っていた。

主人公「…………まったく。」

ライス「御侍さま、ご無事ですか?」

主人公「いや…、この煙は食霊には効かないようだな。ライス、船倉に隠れて、いい……か……」

 ○○はライスにそれだけ告げると、ついには眠りについてしまった。


28.蘇生後 碧月十四日 船上

どれくらい意識を失っていたことか。君はようやく意識を取り戻した。


CENTR:碧月十四日

船上


 目を開けると、魂が再び体に戻ってくるような感覚が。耳元には船舷に寄せる波音、それに甲板のギシギシという音が。

ライス「御侍さま、気が付いたんですね!」

主人公「ライス?……私は気を失っていたんだか、無事だったらしいが……どのくらい眠っていたのか?」

ライス「七日間ですよ。」

主人公「そんなに!? 看病してくれて、ありがとう。他のみんなは?」

ライス「昨日みんな意識を取り戻して、船も桜の島に着いたのですが……みんなが上陸してすぐに、船が勝手に、島を離れてしまったんです。」

主人公「ええ? じゃ、私たち今はどこにいるの?」

ライス「たぶん……別の島です。」

 ○○は立ち上がってあたりを見渡そうとしたが、頭がクラクラする。

ライス「御侍様、まず何かお召し上がりになって。しばらく気を失っていたから、体も弱っているんですよ。」

主人公「そうだな、焦っても仕方がない。ライス、ちょっと手伝ってくれ。」

ライス「はい!」


29.突然の襲撃

この島はどうやら目的地とは違うようだ。仲間が傍にいない君は、島を探索することにした。


主人公「ひっく! ふーーこんなに食べて腹を壊さないかな……」

ライス「御侍様、現在地がわかりましたか?」

主人公「ここは初めてだから、誰かに聞いたほうが……うん!?」

 

 ○○の傍らの草むらで、にわかに音がしたかと思うと、何かが飛び出してきた!背は高くないが、手の中に光っているのは包丁だ。


刺身「あ……!」

主人公「何者だ? 食霊か!?」

ライス「はい、刺身です!」

刺身「人間? ごめん、命はいただくわ!」

主人公「ええ? 何か雰囲気違ってない?」


***


刺身「うわっ、イテテ!」

主人公「イテテ? まだこっちは何もしていないだろう?」

刺身「あ、あなたたちはよそ者ですか?」

主人公「よそ者? まあ、確かにそうだけど、これが歓迎儀式……?」

ライス「見たところ堕化はしていないようです。なぜわたしたちを攻撃するの?」

刺身「……ごめんなさい……『正常』な人間を、久しく見ていなかったからです。」

主人公「つまり、ここの人間はみんなどうかしていると?」

ライス「何があったのか、教えてください。」

刺身「……ここは桜の島の南、葦原という島です。13年ほど前だったと思うけど、葦原に巨大な堕神ーー蛇君が現れ、我が家の主人、葦原島主の蝉丸様を呑み込み、島の人間を操るようになりました。人々は契約に操られて自らの食霊を倒し、家主に早く死なれた私と姉の寿司だけが生き残ったというわけです。蛇君に復讐をしたいけど、強い相手です。私と寿司は隙を伺っているけれど、物騒なので、危険な人間を見たら……殺すことにしています。」


30.無人島 碧月十四日 葦原島主の家

13年という時の中で、葦原島になにか恐ろしいことが起きたみたいだ。


ライス「そんなこと、怖すぎです!」

主人公「13年も君たちがそんなことをしていたら、無人島になっちゃうんじゃないか?」

刺身「ごめん……」

主人公「謝らなくていいよ、状況が状況だもの、誰だってそうするさ。でもミスラの言うことが正しければ、その蛇君も魔導学院事件の犯人の手によるものかもしれないね。」

ライス「御侍様、それは本当ですか?」

主人公「ただの推測だけど、手がかりがつかめたんだから、来た甲斐はあった。」

刺身「二人とも……事件の調査に来たんですか?」

主人公「もちろん、その件ではかなり苦しめられたからね。」

刺身「じゃ、一緒に蛇君を倒しましょう!」

主人公「できるかどうかはわからないが、詳しい状況を教えてくれないか。」

刺身「分かりました! 早速寿司姉さんも呼ばないと!」


***


碧月十四日

葦原島主の家


刺身「ただいま!」

寿司刺身、危険な目には遭わなかった?」

主人公「お邪魔します。」

寿司「人間!? 刺身、逃げて、私が倒すから!」

主人公「またか!? やめてくれよ!」

ライス「御侍様!」

刺身寿司姉さん、よそから来た、蛇君に操られていない人たちよ。」

寿司「でたらめを、葦原によそから人が来るというの?」

主人公「まず武器を下ろして、話を聞いてよ。」

寿司「うるさい! つべこべ言わず、とっとと成敗されなさい!」


 寿司に事情を説明した。


寿司「そういうことでしたか。私の誤解だったみたいです。」

ライス「御侍様、お怪我は?」

主人公「無事だけど、あの冷やっこい刀を首に当てられるのはたまらなかったなぁ。」

刺身寿司姉さん、ついにあの蛇君に復讐をして、人間を救えるかもしれなくてよ!」

寿司「人間を救う? この人が?」

ライス「そんな、御侍様はすごいんですよ!」

寿司「疑うわけじゃないけど、蛇君を倒したところで、葦原は昔のようには戻りません。」

主人公「どういうことですか……?」

寿司「わかりませんか? 葦原の人間はもうどうしようもないってことです!」

31.救援 碧月十四日 葦原郊外

葦原の人は絶滅した。信じがたいが、寿司姉と弟と共に事件を調べることにした。(ステージ:19-3)


ライス「ま、まさか? 」

主人公「つまり葦原の人間はすべて滅んでしまったと? 蛇君に操られているんだって、刺身からは聞いたけれど。」

寿司「堕神に操られた人間が生きて戻れるとでも思いますか? 」

主人公「試してみようじゃないか。」

ライス「御侍様、どうしましょう? 」

主人公「ことの顛末を聞いてからだ、それに、魔導学院の犯人が来ていれば、何か、例えばこんな薬のような痕跡が残されているはずだ。」

刺身「薬物?! それなら、作られるところを知っています!」

主人公「連れて行ってください! 」

刺身寿司姉さんも来てよ、人間を救えなくても、蛇君を倒して蝉丸様の仇をとることはできるかも! 」

寿司「……仇を? いいわね……」


***


碧月十四日

葦原郊外

寿司「ここです。」

主人公「この建物? 」

刺身「ここは黄泉から広がった疾病対策のために、蝉丸様が建てた診療所です。」

主人公「それって、薬とは何の関係があるのかな……」

寿司「ここになければ、他にはありませんから。」

主人公「よし、じゃあ入ってみよう。」

ライス「御侍様、なんだか……不気味なところですね。」

主人公「何年も放っておかれた建物だからね。大丈夫、私が付いているよ。」

ライス「……はい。」


32.契約

途切れ途切れの情報を得た後、この地はもはや安全ではなくなった。何とかして包囲網を突破しよう!


寿司「人間さん、何か見つかりましたか?」

主人公「……なんだかよくわからないものしかないよ。」

ライス「御侍様、この棚、「研究報告」って書いてありますよ。」

主人公「研究報告?どれどれ。

……案の定鍵がかかっている、機密文書かもしれない。近くに鍵はないかな。」

寿司「そんなことしなくても、ちょっとどいてください。」

主人公「え、何をするの?」

寿司「かっ! 」


 鍵のかかった棚は寿司に割られ、大量の書類が真っ二つになって、宙から落ちてきた。


主人公「………」

ライス「御、御侍様、書類が……! 」

主人公「手荒すぎだろう!」

刺身「〇〇様、真っ二つになった書類はまた閉じ合わせればいいでしょう。」

主人公「こんなバラバラになっちゃって、前後もわからないし、それにこんなに大量に……しょうがないな、まず閉じ合わせなきゃ。」


主人公【王歴503年、黄泉から葦原に来て、最初の研究を行う。前者と比べ、ここの疾病は蔓延が比較的遅く、現地の人々との交流のお陰で……………】


主人公【……………実験は比較的成功した。臨床実験を予定……………】


寿司「いかがでしょうか?」

主人公「彼らは疾病に効く薬物を研究していたと。だけど臨床実験の結果は……残りの部分も探さないと……」

寿司「待て、敵が近づいてきています!」


 欠片から手がかりを見つけた〇〇だが、残りの文書を探し出すより先に、建物の外から物騒な物音が聞こえてきた。


ライス「数が多いみたいです! 」

主人公「まったく、こんな時に! 」


***


人類男子「ぐぬっ……! 」

主人公「さっきのは? 」

寿司「……人間ですよ。」

ライス「あなたたち、本当に人間を殺しましたの!? 」

寿司「そもそも奴らは敵ですから! 」

ライス「でも、食霊は契約を遵守しなければ……」

寿司「あんな契約がなければ、食霊は人間に従うことなんてありません! 」

ライス「そ……そんな……」

主人公「ごめん、ライスは何も知らなくてね。」

寿司「………」

刺身「〇〇様、本当にごめんなさい。」

主人公「食霊なのに人間を殺めなければならなかったとは、寿司も辛いでしょう。」

ライス「御侍様、私……間違ってますか? 」

主人公「い、いいえ、食霊はみんな自分の経歴や考え方があるから、ライスライスでいいんだよ。」

ライス「……。」

主人公(契約の縛りがなくなった食霊は人間と変わりがないな……そういえば、ティアラには寿司のような食霊が何人いるんだろう? )


33.一時休憩

危険を脱し一休みすることを決める。もうすぐ空も暗くなり、どこかでお腹を満たさないといけない。


主人公「一安心だね、ちょっと休憩しましょう。」

刺身「では、宜しくお願いします。」

主人公「もう夜だし、そろそろ食事の時間だよ。」

ライス「御侍様、すみません、まだ食材の準備ができていません。」

主人公「じゃ、この近くを探してみよう。」


34.暴露

ようやく食事を始めようとしたそのとき、突然寿司が現れた。何か起きたのだろうか? 


主人公「人がいないせいかもしれないけれど、この近所は食材が豊富だな。」

ライス「御侍様、私が火を起こします。」

主人公「うん、ありがとう。」


***


主人公「さあ完成だ。」

ライス「御侍様、すごいです! 」

主人公「じゃ、準備も整ったし、いただきまーす! 」

寿司「おーい!」

主人公「寿司? どうしたそんなに焦って、ほら食べろよ。」

寿司「般若が現れました。早く火を消してください! 」

主人公「般若? 私の食事が! 」


 皆が焚火を消すと、夕日の残光の下に、少年の人影が現れた。ぎこちない怪しい動きで、手足を動かすと澄んだ木の音がする。


般若「……ルルル……」

主人公「それほどおっかなくは見えないな。」

寿司「蛇君を除けば最強の堕神ですよ。甘く見ないでください。」

ライス「で、でもこれ、人形じゃないですか?」

般若「……ルルル、初めまし……て、……般若……です。」


35.般若

般若という名の堕神は、それほど恐ろしいようには見えなかったが、寿司はそう思わなかったみたいだ。


主人公「ええ? 人形が喋った? 」

寿司「堕神ですから、当然だろう? 」

主人公「その話、無視して。」

刺身「〇〇様、気を付けて! 」

般若「……よそ者……人間、ルル……初めまして……」

主人公「なかなか礼儀正しいじゃないか、何をするつもりだ? 」

般若「……ルルル……蛇君様が……会いたがっていらっしゃる……。」

主人公「私に? 」

寿司「お黙り、くらえ!!! 」

般若「ルルル……敵、邪魔者、ルル……殺す……。」


***


般若「……ルルル……」


 地面に倒れた般若はまるで線を切られた操り人形のように、動かなくなった。


主人公「………」

刺身「〇〇様、大丈夫ですか? 」

主人公「こいつの口から何か聞き出せないかと思っていたが、倒してしまったからそれもできなくなってしまった。」

寿司「生かしておいたら他の般若を呼ぶから、さっさと倒したほうが正解でしたよ。」

主人公「増えるの? 」

寿司「人間さん、本当に私たちを助けてくれるつもりですか? 」

主人公「もちろん、約束しただろう? 」

寿司「もう相手には気づかれているから、隠れていても意味がありません。あなたが手伝ってくれるなら、今日は私たちの復讐の日になります! 」

主人公「え!? 待ってつまり正面対決ってこと? 」

刺身「正面からじゃきっとダメだわ、でも……考えがあります。」

刺身「葦原の西にある蛇祀台は、私、こっそり見ていたんだけど、蛇君が人間を生贄にする場所らしいです。」

刺身「例えば騒ぎを起こして、敵をたくさんおびき寄せれば、私と寿司姉さんが蛇君の居所を突破し、一網打尽にできます。」

主人公「声東撃西作戦か、……私は問題ないけど、君たち二人だけで蛇君を討つなんて大丈夫?」

寿司「やってみなければわからないでしょう。」

主人公「……一回勝負のことなんだ、ちゃんと考えなきゃ。」

寿司「………」

主人公「わかった、君たちも覚悟できていたな……よし、ライス、蛇祀台へ行くぞ。」

ライス「……はい。」

寿司「あなたたち、思っていたより親切ですね。」

主人公「……私たちにも君たちとの約束を守らなきゃいけないんだ、でも正直、私は食霊とは縁があるみたいなんだね。」


36.孤軍奮闘 碧月十四日 蛇祀台

行動が明るみに出てしまった。今日、決着をつけよう。寿司と相談して蛇祀台に向かおう!

碧月十四日

蛇祀台

ライス「御侍様、ここみたいですね。」

主人公「ここが人間を生贄にしていた場所か。蛇君のお陰で、ここは恐怖の島になっちゃったな。」

ライス「般若だらけです。」

主人公「倒せない数じゃないみたい、さあ行くぞ! 」


***


般若「……ルル……敵……殺せ。」

般若「……こ……殺せ。」

主人公「寿司の言う「だらけ」っていうのは、倒しきれない数っていう意味なんだね。」

般若「……包囲したぞ、ルル、早く降伏……しろ。」


 般若たちは次々と〇〇の前に現れ、蛇祀台をびっしりと包囲した。


ライス「御侍様、どうしましょう……? 」

主人公「こっちはもう危ないだ……賭けに出よう。」

主人公「すまないね、投降することにしたよ、こんな戦いを続けても無益だろう? 」

般若「………」

主人公「君たちのボスは私に会いたがっているんだろう、連れて行ってくれないか」


 般若たちはしばし黙り込み、包囲を解いて通り道を作った。そのはるか先には枯れて何年も経つであろう巨木が見えた。


主人公「蛇君はあそこかい? 」

ライス「御侍様、本当に投降しちゃうんですか? 」

主人公「「命あっての物種」というだろう。」

主人公「寿司たちは先に着いているだろう、大丈夫だ、ついでに蛇君の顔も拝んでやろう。」


37.蛇君 碧月十四日 巨木の下

般若に続いて神樹に着き、ようやく蛇君に会えた。計画まであと一歩だ。

碧月十四日

巨木の下

般若「……ルルル……蛇君様、人間を……連れて……来ました。」

蛇君「よし、下がれ。」

主人公「ほぉ、君が蛇君か……」

ライス(御侍様、どうしよう……? )

主人公(寿司がここに潜伏しているかもしれない、時間稼ぎだ。)

蛇君「あいつが戻ってきたかと思ったら、違うのか。」

蛇君「もう13年も外部からの客などいないからな、人間よ、何をしに来た? 」

主人公「いえいえ、海上で気を失って気が付いたら船がここに。お腹がすいていたので、食べ物を探しに来ただけだ。」

蛇君「それだけか? 」

主人公「あ、それから、さっきあなたを倒すようにと、ある人から依頼を受けました。」

蛇君「………」

蛇君「フンフンフン、ハハハハ……」

蛇君「人間にしては威勢がいい、昔のことを思い出した……」

蛇君「だが、今となっては戻れない。」

主人公「どういう意味? 」

蛇君「もうどうでもいいだろうともかく、葦原には……お前も含めて人間はもはや不要なのだ。」


 蛇君が言い終えると、神樹の上で大きな音がして、二つの赤い人影が天から降ってきた。


寿司「命はもらった! 」

刺身「先主の仇! 」

主人公「君たち、上に隠れていたんだか?」

蛇君「寿司と……刺身……お前たちか、まったく残念だ……」

般若「……ルルル……蛇君様を……お守りする」

寿司「隠れているなんて、卑怯者! 」

主人公「まずい、般若が多すぎる、それに蛇君も手強いぞ! 」

寿司「人間よ、蛇君は頼みます。」

主人公「ええ? 待って、私が何も言っていないよ! 」

ライス「御侍様、蛇君が! 」


***


蛇君「ここまで……か……!!! 」

ライス「御侍様、成功しました! 」

主人公「うん、じゃ、続きは……寿司? 」


 蛇君はすでに倒れて息も絶えだえ、そこへようやく大勢の般若を倒した寿司が、こちらへやってくる。


寿司「蛇君、食らえ! 」

蛇君「うわぁーー!!! 」


 寿司は冷ややかな薙刀で蛇君の胸をブスリと突き刺した。霊力がまるで血液のようにあふれ出す。


寿司「ここで罪への罰を受けなさい! 」

蛇君「……ハハハ……確かに……因果応報というやつ……か?」

寿司「何を言っている!? 」

蛇君「……俺もいつかは死ぬと思っていたが……自分の食霊にやられるとはな……」

主人公「ま、まさか?」

寿司「蛇君……………?」

蛇君「これでいい……寿司刺身……ありがとう。」

寿司「……………蝉……?」

刺身「蝉丸様!? 」

ライス「どういうことですか!? 」

寿司「そ、そんな、蝉丸様は歳を取って、蛇君に呑み込まれてしまったはず……まさか……あなたが蝉丸様……」

寿司「死の間際まで私を騙しているおつもりか!?」

寿司「答えろ! 答えろ!!! 」

蛇君「……もう、いい……お前たちが……生きていてくれたら……それで……」

般若「……ルルル……蛇君様を……お守りする……蛇君様を……! 」


 沈黙の中、さらに多くの般若がこちらに集まり、同じ言葉を繰り返しながら、寿司に飛び掛かってきた。


ライス「危ないです! 」

刺身寿司姉さん、後ろ! 」

寿司「うるさい! ……………蝉丸様をお守りする……それは私の役目だ! 」

ライス「落ち着いてください! 無茶しないで! 」

主人公「違う、般若たちはもう……」


 般若たちに飛びかかろうとしていた寿司、だが目の前に迫っていた無数の般若たちは、突然糸を切られたかのようにバタバタと地面に倒れ、それきり動かなくなった。


ライス「こ、これは? 」

主人公「……般若は蛇君に操られた人形型の堕神だったんだ、力の元がなくなったから……」

主人公「蛇君……蝉丸は今度こそ、本当に死んだんだな。」

刺身「す、寿司姉さん……」

寿司「……どうして、どうしてよ……………」


38.故主の理想 碧月十五日 蝉丸故居

なんと、蛇君は長年「亡くなった」と思われていた寿司の主人――蝉丸だった? 君は事の真相を調べることにした。


刺身「〇〇様、ごめんなさい、姉はかなり衝撃を受けていまして……今はそっとしておいた方が……」

主人公「仇を打った相手が自分の死んだ主人だったとは、人間の私でも辛いだろう、気持ちはわかるよ。」

主人公「でも、蛇君の原形が人間だったとは、光耀大陸の時とはまた違う。」

主人公「刺身、蝉丸は居所や仕事場の記録を残していたのか?」

刺身「はい、蝉丸様は生前日記をつけていましたが、姿を消してからは……その場所は封鎖されてしまいました。」

寿司「……………蝉丸様の日記をご覧になりたければ、案内しますよ。」

ライス寿司、大丈夫ですか? 」

寿司「私はあなたが思っているよりは強いです。それに……契約は本当に消えたようです。」

主人公「……ならいいこれで君を縛る過去もなくなった。」

寿司「人間さん、案内しますわ。蝉丸様のお住まいまで。」


***


碧月十五日

蝉丸故居

刺身「蝉丸様が生前に使っていらした記録簿はここです。」

主人公「うわっ、たくさんあるな! 」

ライス「御侍様、これを。」

主人公「手紙? 」

ライス「サイモンという人の落款があります。」

主人公「……サイモンって、蝉丸が言っていた「あの人」のことかな?」

寿司「サイモンは疾病に効く薬を研究していた人で、蝉丸様が堕神になってから、殺されたと思っていました。」

主人公「でも、あの「蛇君」の話によれば、死なずに葦原を離れたようじゃないか。面白い。」

ライス「御侍様、もしかして、魔導学院のことも……? 」

主人公「さあね、だがこの手紙には私たちの知りたいことが書かれているに違いない。」


 手紙を読む


主人公「ばらばらになった情報だけど、もう結果は見えているよ。」

刺身「いかがでしょうか? 」

主人公「まず確認だ、君たちと北島の「黄泉」はずっと対立していたのか? 」

寿司「蝉丸様の家族が代々桜の島を統治していましたけれど、その昔北島の黄泉に「犬神」という堕神が現れました。」

寿司「犬神は先代島主一族を葦原に追いやり、黄泉を占領しました。その時先代島主一族は「犬神」の手から黄泉を取り戻そうと決心しました。」

寿司「だけど先代島主の在位中、最後の黄泉争奪戦で惨敗して、葦原の軍隊は全滅、先代島主は一人逃げ帰りました。」

寿司「罪滅ぼしとして、先代島主はその位を自ら、蝉丸様に譲りました。」

寿司「蝉丸様は食霊がいなければ堕神と戦えないと知ってらしたから、幻晶石を手に入れて私たちを召喚しました。でも惨敗してしまったから、もはや誰にも信じてもらえなくなってしまいました。」

寿司「……蝉丸様の努力も空しく、一族の没落の運命は止められませんでした。そのまま蝉丸様は失意の生涯を過ごされました。」

主人公「その後、疾病が流行した、サイモンが葦原に来た、と? 」

寿司「サイモンが蝉丸様を殺して、蛇君にしたと思っていますか? 」

主人公「この手紙にはサイモンが葦原の疾病抑制に来たこと、そのれに「若返り」の技術を持っていると吹聴していたことが書かれている。」

ライス「わ……若返り? 」

主人公「人にはそんなときがある。この世界がたまらなく恋しくなる…自分が長くないことを悟った蝉丸にとって、「若返り」は大変魅力的だったに違いない。」

主人公「表向き、蝉丸はサイモンに疾病抑制のための薬物研究を許可したが、本当の目的は自分の延命だったんだ。」

主人公「そして、ついに蝉丸は永遠の命を得た。人間のすべてと引き換えにね。」

寿司「蝉丸様が……延命の誘惑に勝てなかったのは、すべてサイモンのせいだといいうことですか? 」

主人公「仇討ちをするつもりか? 」

寿司「私、復讐って肌に合わないのかも、蝉丸様を倒した時に思いました。十三年も恨みを持ち続けているなんて無意味だって。」

ライス「確かに……とてもつらかっただろう。」

主人公「じゃ、これからどうするの?葦原はすでに「死の島」だ、それでもここに留まるのか? 」

寿司「いいえ、黄泉に行きます。」

寿司「黄泉を取り戻すことは蝉丸様の宿願、私はそれを果たしてみせます。」

主人公「そうか、なら私たちも黄泉へ向かうところだから、一緒に行こう? 」

寿司「……………はい、刺身と準備してきます。」

ライス「……御侍様、寿司は契約が切れたのに、どうしてまだこんなことを? 」

主人公「あれはもはや契約などではなく、蝉丸との絆で動いているんだよ。」


39.黄泉 碧月十六日 黄泉北岸

ようやく黄泉にたどり着いた。ここはどうやら葦原より静かなようだが、今はここの現状を探りに行かなければならない。

碧月十六日

黄泉北岸

 葦原を出発した〇〇たちを乗せた船は、ついに桜の島の北島――黄泉に到着した。


主人公「船の上からはなかなかいい風景に見えたけど、着いてみたら……」

ライス「堕神に占領されたようには見えないですね。」

刺身「蝉丸様に召喚されたのは大戦の一年後、黄泉のことは私たちにもよくわからないんですが、油断は禁物です。」

寿司刺身の言うとおりだ、いつ堕神が襲ってくるかわかりませんからな。」

主人公「うん、まずは情報収集だ、誰かに聞いてみるのがいい。」


***


主人公「」

宿のオーナー「いらっしゃいませ。」

主人公「私たちは海外から来た……商人だ。近いうちに黄泉で商売をしたいと思っているんだけれど、土地勘がないのでいろいろ教えてください。」

宿のオーナー「……ここで商売? もう久しくそんな人はいないよ、儲からないからね。」

主人公「えっと…… 」

寿司「じゃ、ここがどこか教えてください。」

宿のオーナー「火峰村、黄泉の最北端だよ。」

寿司「それだけですか? 」

宿のオーナー「他に何が知りたいっていうんだい? 」

主人公(疑り深い人だな、話題を変えよう。)

主人公「コホン……長い船旅で疲れているんで、ここで休憩させてもらってもいい? 」

宿のオーナー「宿と食事なら、こちらへ。」

主人公「はーい、じゃあお世話になります。」


40.夕泊まり 碧月十六日 宿屋

お腹も満たされ、会計をしようとしたら問題が起きた。どうやら携帯していた通貨が桜の島では流通していない物のようだ。


 泊まる口実としてそう言った〇〇だが、確かに空腹であることに気がついたので、料理を注文して美味しくいただいた。


主人公「や、なかなか独特の味だね。」

宿のオーナー「ええ、うちの秘伝のタレは、村ではちょっとした名物なんだよ。」

主人公「秘伝のタレ?レシピを分けてもらってうちでも出せば、儲かりそうだな。」

ライス「御、御侍様、よだれ……」

主人公「え? これは失礼。」

宿のオーナー「悪いが、うちのタレは門外不出でね。」

主人公「まぁ言ってみただけだよ……お勘定を。」

宿のオーナー「百四十貫になります。」

主人公「か……貫?」

宿のオーナー「お金……持ってないのかい? 」

主人公「持っていますが、それはグルイラオの通貨で……」

宿のオーナー「……外国の金? すまないがうちでは使えないよ。」

ライス「お金って、万国共通じゃ、ないですか? 」

寿司「堕神に占領されて数百年、桜の島は外部との貿易関係が途絶えて久しいんです。この金はもちろん使えませんよ。」

主人公「……ここに来た時、両替しておけばよかったなぁ。」

宿のオーナー「金で払えないとなったら、労働で払ってもらうよ。」

ライス「労働ですか? 」

主人公「いいじゃない、みんな料理人だし、一番得意な仕事じゃないか。任せてください! 」

寿司「ここで働きに来たんじゃないんですが……! 」

刺身寿司姉さん、そんなことを言っていられる場合じゃないでしょう。」

宿のオーナー「………」


***


碧月十六日

宿屋

主人公「ふ――うぅ――! 」

ライス「今日も忙しいでした。」

寿司「あなた、見た目に似合わず体力仕事が好きですね。」

ライス「はい、うちはレストランですから! 」

主人公「ああ、ライスはわかってくれるな。」

寿司「……二人とも変人です。」

宿のオーナー「みんな、一日中頑張ってくれてありがとう。」

主人公「いえいえ、もう遅いので、これで失礼しますよ。」

宿のオーナー「……なら、もう一晩店に泊まってもいいんだよ。」

ライス「ええ? いいですか? 」

宿のオーナー「ええ、お陰で今日はいつもより儲かったから、今晩は無料で泊めてあげよう。」

主人公「ありがとうございます! 」

寿司「一日中大変だったのに笑えるとはね。」

宿のオーナー「みなさんこちらへ。部屋に入る前に、この消毒剤で体の汚れを落としてね。」

主人公「ええ? シャワーじゃダメなのか? 」

寿司「私たちがそんなに汚いとでも!? 」

宿のオーナー「すまないね、黄泉の人たちにとってはこれがもう当たり前になっているんだ。疾病を経験してからというもの……」

寿司「葦原をなんだと……! 」

主人公「はいはい! そうする! 」

主人公「くだらないことで怒ってないで、明日はまたやることがあるから。」

41.紅月の刻

疲れ切っていたところ、宿の店主が泊めてくれたが、夢の中では誰かの声を聞いた。

主人公「…………」

「……御侍様……」

「……御侍……様……!」

主人公「……なんだい?」

ライス「御侍様、御侍様!」

主人公「……ライス?」

主人公「……こんな夜中に……」

ライス「ま、窓の外が!」

主人公「え?」


 ○○は窓の外に見やった。あたりの景色は昼間とうって変わり、月光に照らされて怪しいことこの上ない。


主人公「幽霊か?」

ライス「さっき、ここの人たちが一斉にどこかへ向かっていくのが見えたんです!」

ライス「まるで……何かに取り憑かれているみたいに。」

主人公「やはり普通の場所ではなかったんだな、よし、様子を見に行こう!」


 ○○が服を着て外へ出ようとすると、おかしい、扉が開かない。


主人公「ん? 鍵がかかってる!?」

ライス「あの主人!?」

主人公「怪しい奴だと思ったら……おい! おい! 誰かいるか!」

主人公「寿司! 刺身! そこにいるのか!?」

ライス「御侍様、窓から逃げ出すのはどうでしょう?」

主人公「そうするしかないな……幸い二階だから、危なくはないだろう。」


 窓から室外に出た。


ライス「御侍様、寿司たちもいません!」

主人公「扉を壊すとは、寿司の仕業だな。つまり、二人は無事だろう、怪しい人間を追いかけて行ったに違いない。」

ライス「気をつけて……近くに、堕神がいます!」

主人公「まったく、こんな時に堕神でもなんでも出て来るな。」

42.抵抗

おかしな夜。月まで異様になり、四方からは堕神が絶えず襲撃してくる。今すぐ奴らを始末しよう!

主人公「こいつらどこから出てきたんだろう……」

ライス「御侍様、船が、ありません!」

主人公「なに? 私たちをここへ閉じ込めるつもりか?」

ライス「危ない、また堕神が来ました!」

主人公「……どうやら狙われてしまったようだ。」


43.意外な人

広い場所は暴露されやすいため、ライスと一緒に路地に沿って目的地へ。(ステージ:20-5)

主人公「次から次へと般若みたいに出てくるんだ、まったく!」

ライス「もしかして、私たちを、阻止しようとしているんでしょうか?」

主人公「そうかもしれないが、もしかしたら犬神に見つかったとも言い切れない……」

主人公「目立つ道は避けて行きましょう。」

ライス「うん!」


***


主人公「おかしいです。この道にも誰もいません。」

ライス「確かにこっちへ向かっていたんです。」

主人公「もっと遠くへ行ったのかも、もっと進んで探して見よう。」

オリビア「あら、こんなところに!」

ライス「え!?」

主人公「オ、オリビア!?」

オリビア「ええ、そうよ~」

主人公「よかった、危険な目には遭っていないようだね。」

オリビア「そうよ、ここの人たち怖すぎ。ずっと隠れているの。」

ライス「え……?」

主人公「そうだ、イキとミスラはどこに?」

オリビア「私もあの二人を助けるにでここに来たのよ!」

オリビア「二人は犬神につかまって、比良坂城に閉じ込められているわ!」

ライス「比良坂?」

主人公「それは大変、早く助けなきゃ。」

オリビア「ちょっと待ってよ、比良坂城には犬神の手下の人間と多くの堕神がいるから、無闇に動いてはダメよ!」

主人公「ならば、何か考えが?」

オリビア「もちろん。比良坂城の東北側には月見台があって、そこにお供えしてある神の隠し酒を飲めば気配を隠せるの。それでこっそり侵入できるはず!」

主人公「なるほど、じゃあ……やってみるか?」

オリビア「よーし、私についてきて~」


 …………


ライス「……御侍様、オリビアさん、何だか……」

主人公「おかしいだろ? 私も……」

主人公「ひとまずついて行ってみよう。」

44.神の隠し酒

突然オリビアが現れたが、いつもの彼女と少し様子が違うみたいだが、彼女の提案に従い、月見台に向った。(ステージ21-6)

オリビア「ここよ、ほらこれが神の隠し酒!」

主人公「こんなところに置いてあったお酒、飲めるのかな?」

オリビア「大丈夫、ほら早くお飲みなさいよ!」

ライス「御侍さま……」

主人公「……そうだ、オリビア。」

オリビア「どうしたの?」

主人公「忘れていたけれど、こっちが片付いたら、金を返すのを忘れないで。」

オリビア「え、あーあのお金ね? わかったわ、二倍にして返してもいいよ~」

主人公「ぷっ……コホン、じゃ、前々回言ってた、賭けに負けたら一生私の言うことを聞く約束は?」

オリビア「え……? そんな約束していたかしら?」

ライス「御侍様……ひどい……」

オリビア「えっ?」

主人公「ちょっと聞けばボロが出る。どうやら君、人を騙すのは上手じゃないようだね。」

オリビア「ば、ばれた!?」

オリビア「クッ、こうなったら強行突破しかないわ!」

45.目的地

目の前のオリビアは偽者、攻撃までしてきたぞ。今すぐ撃退して追撃しよう!

化け狸「イタイタイタタ!」

主人公「えっ、化け狸?」

ライス「オ、オリビアさんに何を?」

化け狸「言うもんか、フンフン、逃げちゃうもんね~!」

主人公「させるか!?」


***


ライス「御侍様、見失った、ようです。」

主人公「逃げ足の速い奴だね……」

寿司「人間さん? どうしてここに?」

刺身「○○様、大丈夫ですか?」

主人公「寿司刺身……二人とも、私から借りた金のことを覚えているか?」

寿司「金? あなたが寝ても醒めてもほしがっているあれですか? 昨日ヨダレ垂らしてたじゃない、覚えていますわ。」

主人公「ああ、本物の寿司に間違いない。」

ティラミス「○○様が無事で何よりです!」

ライスティラミス!」

主人公「ティラミス? 本当に君なのか?」

寿司「さっき宿屋から抜け出して怪しい人間をつけていたらこの人に会いました。お知り合いですか?」

ティラミス「こちらは、本物の○○様のようですね。」

主人公「どうやた君たちも化け狸に遭遇したようだな?」

ティラミス「ええ、二日前、島に上陸したばかりの私たちをあなたに化けた化け狸が騙して、「神の隠し酒」を飲ませてきましたの……」

ティラミス「オリビアさんの他の食霊と違って、私はずっとお仕えしているから、みんなが気を失った後に一人だけ抜け出すことができましたわ。」

主人公「じゃ、船が流れていったのも化け狸の仕業? はめられたな……じゃ、今オリビアたちはどこに?」

ティラミス「気を失って、ここの人たちに桜泉郷に軟禁されています。」

ライス「桜泉郷?」

寿司「黄泉最南端の温泉地区でしょう、蝉丸様が話しているのを聞いたことがある。」

主人公「じゃ、まず桜泉郷へ行ってみんなを助けよう。後のことを考えるのはそれからだ。」

ティラミス「待ってください!」

主人公「どうしたんだ?」

ティラミス「桜泉郷は同じ黄泉にあるけれど、船でなければいけませんよ。」

主人公「船? 誰かに盗まれて行方不明じゃないか。どうするんだ?」

ティラミス「この近くの港に、もしかしたらあるかもしれません。」

46.異邦人

ようやくティラミスに会えたが、仲間たちは桜泉郷に囚われてしまったみたいだ。何とかして助けに行こう!

主人公「待って、そこには見張りはいないのか?」

寿司「おかしいな、私が通った時は誰もいませんでしたけれど。」

ティラミス「いや、あの服装はよく見ると……グルイラオの人?」

???「君たち、何をこそこそと? まさか盗みじゃないよな?」

主人公「グルイラオからのお方? どうしてここに?」

グルイラオの商人「君たちもグルイラオの人間か? 海上で嵐に遭って、ここで止むのを待っているんだ。」

グルイラオの商人「聞いているよ、桜の島は前にもましておかしなことになっているんだろう、嵐でもなきゃ来ないさ。」

ライス「じゃ、お願いが……南の桜泉郷へ行きたいんですが、船がなくて……」

グルイラオの商人「乗せるのなら問題ないが、停泊したばかりでみんな腹を空かしているんだ、船にある食料も食べつくしてしまったし、こんな夜中だ、食事にありつくこともできやしない。」

主人公「食事がまだ? ならば私たちにお任せを!」


***


グルイラオの商人「懐かしい味だ、久しぶりに食べたよ! レストランを経営しているのか? よし、これから来ることにしよう。」

主人公「ご愛顧ありがとうございます! では……出発しましょうか?」

グルイラオの商人「よし、船に乗れ!」

47.花夜 碧月十七日 桜泉郷

花夜が申し入れを受け入れてくれたが、彼女はあなたの助けも必要みたいだ。

碧月十七日

桜泉郷

主人公「きれいな景色だな~ここが桜泉郷か?」

刺身「そうでしょう。桜泉郷は桜の名所、桜の島の桃源郷ですよ。」

寿司「桃源郷か、それが堕神に占拠されてこんな風に。」

花夜「いらっしゃいませ!」

主人公「どちら様ですか?」

花夜「桜泉郷唯一の彼岸温泉の女将――花夜でございます。」

花夜「ご入浴のお客様ですか? 五名様? どうぞこちらへ。」

ライス「あの、違うんですが。」

花夜「ええ? ご入浴しないの? じゃ、どうぞこちらへ、彼岸温泉の茶菓子はいかがでしょう、自慢の一品ですよ。」

ティラミス「すみません、観光客じゃないんです。もてなさなくてもいいですよ。」

花夜「まぁ……お茶菓子でもなくて?」

主人公「こんな愛想のいい人、桜の島で初めて見たな……」

花夜「先日まで私、病床に伏せておりまして、商売もできなくてねぇ。先日久しぶりにお客様が来たかと思えば……」

主人公「そのお客さんというのは、女二人に男一人?」

花夜「ええ、ですがこちらにいらして三日間も寝たきりなんですよ、ぜひ温泉を楽しんでいただきたいのに。」

ティラミス「オリビア様とイキ、ミスラに違いありません。助けないと!」

刺身「でも、あの宿屋の主人みたいに、犬神に操られているかもしれませんよ。」

主人公「今までの様子からして、犬神に操られても会話はできるみたいだから、話を聞いてみよう。」

主人公「花夜さん、その三人はここ数日ずっと探していた友達なんだ。連れて帰ってもいいのか?」

花夜「ええっ? 犬神様にここから人を出すなと言いつけられているんですが、お客様の頼みならしょうがないですね。」

花夜「ですが、その代わりとして、ちょっとお手伝いしていただけないでしょうか。商売もやりやすくなりますし。」

主人公「わかった。何か用?」

花夜「この地は桜泉郷とはいうものの、何十年も堕神に占拠されて、今や来る人もほとんどいないんです。」

花夜「彼らを退治していただければ、彼岸温泉に客足も戻るはず!」

主人公「わかった。堕神退治なら、お任せください。」

主人公「ティラミス寿司、ここで休んでいなさい。私は外で用事があるから。」

48.意気投合

花夜が引き続き桜泉郷を維持できるよう、在庫拡充のため、食材の採集を手伝うことにした。

花夜「お帰りなさい、足湯はいかがですか?」

主人公「いえいえ、堕神なら退治しておきましたよ。」

花夜「そうですか、どうぞこちらへ。」

主人公「ところで、桜泉郷にはあなた以外の人はいないのか?」

花夜「ええ、温泉は私一人で経営しておりまして、なかなか大変なんですが、お客様が来てくだされば、そんな苦労も吹き飛びますわ。」

ライス「なんだか、御侍様と、似ていますね。」

主人公「ええ、私も店で儲けて左うちわで暮らしたいだね。もちろん、美味しい料理が最終目標だが。」

花夜「料理……私も少しはできますから、毎日温泉のお客様に美味しいものをお出しできればと……ええ。」

主人公「どうしたんだ?」

花夜「しかし、お茶菓子にしても、食材にしても、普段は私一人で調達しているんだが、お客様が増えればそれも足りないでしょう。」

主人公「それなら、私にお任せあれ。」

花夜「ありがとうございます、大量に必要なんです。ご面倒おかけいたします。」

主人公「いえいえ、これも同業者のよしみ。私、○○と呼べばいいだよ。」


***


主人公「花夜さん、どうです? 集めてきたよ。」

花夜「まぁすごい、私一人じゃこんなに無理ですわ。」

主人公「これは私の仕事の基本中の基本だよ。」

主人公「じゃ、彼らを連れ出してもいい?」

花夜「ええ、世話をしている方もいらっしゃいますので、どうぞこちらへ。」


 彼岸温泉の建物に入った○○たちは、眠り続けるオリビアたちと対面した。ティラミスが心配そうな顔でそばで見守っている。


寿司「人間さん、お帰りなさい。」

主人公「ティラミス、彼らは大丈夫ですか?」

ティラミス「私の治癒能力でも、オリビア様たちは目を醒まさなくて……ど、どうしましょう。」

ライスティラミス……」

花夜「この人たち、神の隠し酒を飲んだのでしょうか?」

主人公「なぜ知っているんだ?」

花夜「神の隠し酒は犬神様に捧げるもの、人間が飲むと、こうして魂が酒に封印されてしまうのです。」

ライス「魂が、封印される? ど、どうしましょう?」

花夜「大丈夫、もう一度神の隠し酒の匂いを嗅がせれば、目を醒ましますわ。」

ティラミス「でも、神の隠し酒を手に入れるにはどうすれば?」

ライス「あの、御侍様、さっき……?」

主人公「ん? ああ! さっき化け狸に騙されて飲まされそうになったから、私まだ持ってる。」

主人公「ティラミス、待ってて、今彼らを助けてあげるから!」

49.計画

神の隠し酒を使って仲間を蘇る。

 神の隠し酒の匂いを嗅いだオリビア、イキそれにミスラは、ついに目を醒ました。


イキ「ふぅ…………ここはどこだ?」

ミスラ「長い間……眠っていたようね……?」

オリビア「うっ、頭が……」

ティラミス「オ、オリビア様!」

オリビア「ティラミス……?」

主人公「三人ともぐっすりだったね。」

オリビア「○○? 事情を説明してもらおう……さもなくば……」

ライス「や……御侍様のせいじゃありませんよ!」

イキ「じゃ、これはどういうこと?」


***


 オリビア、イキ、ミスラに事情を話した。


オリビア「た……化け狸に騙されていたと?」

イキ「だから、あの時の○○が変だって言ったじゃないか!」

ミスラ「先にちっとも疑わずに飲んじゃったのは誰よ?」

イキ「と……友達だもに信用していたんだよ!」

オリビア「○○がいなければどうなっていたか。ありがとう。」

主人公「急にそんなかしこまったことを言われると、落ち着かないなぁ。」

主人公「これで一つ解決……まだ終わっていないけれど。」

オリビア「ああ、まさかこの島が堕神に占領されているとは。だが幸い相手は仲間もさほどいないみたいだし、手強くはないだろう。」

寿司「じゃ、蝉丸様の宿願も叶うってことですね!」

花夜「お客さん方、犬神様に何を……?」

主人公「………………ま、まずい。」

50.少女

仲間との話し合いに花夜が興味を持ったみたいだ。彼女は犬神に対して特別な感情を持っているのか?(ステージ:22-5)

オリビア「今しがた○○から聞いたのだが、花夜どの、だな?」

花夜「はい。」

オリビア「おぬしたち島の人たちは、堕神の目的は世界を滅ぼすことであるのをご存知か?」

花夜「外の世界のことは、よく知らないもので……」

花夜「ですが犬神様は私たち黄泉のすべてを守ってくださいます。少なくとも私にとって、犬神様は本当の神様ですわ。」

寿司「愚かにもほどがあるわ!」

寿司「蝉丸様はあなたたちが再び堕神に支配されることがないよう、黄泉を昔のように戻すことを九十年も考えてくださっていましたのよ。なぜ堕神の側につくのですか!?」

主人公「寿司、落ち着いて。」

花夜「蝉丸様? あの島主様のご長男ですか?」

主人公「はい、どうやら名前は忘れていないようだ。」

花夜「変ね、蝉丸様はまだ十六歳でしょう、九十歳って……?」

寿司「………………え……?」

ライス「花、花夜さん!?」

花夜「私は今年二十二歳、蝉丸様は六歳年下です。」

ミスラ「待って、今年は何年かご存知?」

花夜「醍醐十七年ではないの?」

主人公「醍醐……?」

ミスラ「光耀大陸と桜の島独自の年号で、グルイラオ王歴に換算すると、醍醐十七年は王歴437年頃だね。」

イキ「ええ? 王歴437年……え!? じゃ、じゃこのお嬢さんは!?」

花夜「私?」

ミスラ「花夜さん、今年は王歴516年碧月十七日、つまりあなたの年齢は……」

ミスラ「少なくとも……百歳は超えていると……!」

花夜「百歳……まさか、私ずっとこのままですよ……」

オリビア「ここで長い年月を過ごした結果、感覚が麻痺しているのだろう。」

オリビア「もう助からないかもしれないな。島の他の人たちと同じく、助けても無駄かもしれない。」

花夜「…………」

主人公「オリビア、そこまで言わなくても……」

主人公「花夜さん、信じてもらえないかもしれないけれど、証明するチャンスをください。」

ライス「花夜さん、うちの御侍様を信じてくださいよ!」

花夜「……分かりました、一緒に犬神様のところへ行きましょう。」

51.堕神の縁 碧月十七日 比良坂城

どうやら花夜は桜泉郷で百年以上も過ごしているらしい。しかし、本人にその意識はない。彼女と共に真相を突き止めることにした。


碧月十七日

比良坂城

犬神「ついに来たな。」

主人公「これが犬神? 」

ミスラ「ええ、学院に残る資料や記録どおり、月見台の守護神像――狛犬に寄生する堕神……「神性」を持つ堕神だと。」

主人公「ずいぶんと我々を待ったようだな? 」

犬神「「あの人」が言っていた、料理御侍…………堕神を滅ぼすことを誓う者が、いつかここへ来るだろうと。」

犬神「好きで堕神に生まれたのではないので、私を倒したいのも仕方がない。」

主人公「自分の境遇をよくわかっているようだな、じゃ、大人しく捉えられたらどう? 」

犬神「………………人間との因縁があるので、ここで滅びるわけにはいかぬ、すまない……」

寿司「何が因縁よ! お前がいる限り、桜の島に未来はない! 」

犬神「心を決めたのか……仕方がないな。」

花夜「犬神様……!」


***


主人公「これで勝負がついただろう? 」

犬神「こ……ここまで……か……? 」

寿司「犬神、喰らえ! 」

花夜「お待ちを! 」

ライス「花夜さん!? 」

寿司「……人間、あなたが止めたって手は抜きません。分かったらどいて! 」

花夜「………」

花夜「犬神様を殺さないでください!」

主人公「寿司、やめて! 」

寿司「何をするつもりですか!? 」

主人公「黄泉がどうなっているかまだわからないんだ。それに、花夜さんに約束通り見せてあげなくちゃいけない。さ、刀を下ろして……」

寿司「……………フン。」

主人公「……犬神、どのみちお前の負けだ。ひとまず怨恨を忘れて、教えてほしいことがある。」

犬神「な……何をだ? 」

主人公「まず、ここで昔、疾病の大発生があっただろう? 」

犬神「……はい。」

ライス「御侍様、それを聞いてどうするつもりですか? 」

主人公「葦原で寿司たちから聞いたよ、桜泉郷でも、花夜さんから以前大病をしたと聞いた……」

主人公「彼女の話が正しければ、病気になったのは八十年以上昔、ちょうど疾病が爆発的に流行した頃だ。」

オリビア「つまり、犬神が人間を操りだしたのはその頃だと? 」

主人公「はい、疾病にかかった人間はすぐ死んで、犬神に操られた人間だけが生き残った。なぜかは……犬神自らに説明してもらおう。」

犬神「……人間よ、よく分かっているな。」

主人公「あまり自信はないが、手がかりらしいものは徹底的に調べたので。」

犬神「そうか、では黄泉で起きた百年あまりの出来事を、話すこととしよう。」


52.堕神の善

どうやら犬神は何もしないで終わる様なまねはしないようだ。犬神が言う「因縁」とは、一体何なのだろうか?


犬神「私はもともと月見台の守護神像で狛犬という名だった。なぜだか目を醒まして、もう282年になる。」

犬神「あの頃、人間が何度も軍隊を率いて、堕神討伐に来ていたが、島の堕神たちに倒された。残されたのは、おびただしい人間の死体だった。」

犬神「人間は怖がってここへ近づかないから、死体を埋葬する者もなく、やがて疾病が発生したんだ。」

主人公「それで、黄泉の島中の人間が感染したのか? 」

犬神「堕神には痛くもかゆくもない疾病だったが、島民の大部分が七年間の内に死に、残された人々も重い病に苦しめられた。」

ライス「に、人間にそんな苦しい、過去が、あったなんて……」

ミスラ「学院では聞いたことがないわ、記録しなきゃ……で、その後は? 」

犬神「……私はあちこちで死にかけている人々を疾病から救った。」

オリビア「……彼らの命と引き換えに、だろう? 」

イキ「い? 命? 」

ミスラ「寄生型堕神は他の人間やものに寄生して、自分と共生させるんだ。犬神はそういうタイプの堕神だ。」

ライス「堕神と共生すると、人間としての一面はなくなります……つまり、花夜さんは……? 」

花夜「……? 」

主人公「今の彼女は堕神さ、本物は……七十年以上前に死んでいる。」

犬神「………」

花夜「………」

ライス「花夜さん……」

花夜「それだけ……それだけですか? 」

ライス「……? 」

花夜「だからって、何だっていうの? 」

主人公「それで平気なのか? 」

花夜「〇〇、そんなことより大切なのは、犬神様が人間を救ってくれたことではないんですか? 」

オリビア「果たしてどうかな? 今ここにいるおぬしは、八十年以上前にとうに死んでいる。」

花夜「それが事実かもしれません!! 」

花夜「だけど、私は人間として、過去の意志を持ったまま「生きている」のではないのか? 」

主人公「うむ……………」

花夜「〇〇、どうかお願い。犬神様を許して、これからも私たちと一緒にいさせてほしいのです! 」

主人公「……本気ですか? 」

寿司「ダメよ! この堕神のせいで、葦原の人間は消え失せてしまったのよ、その罪は償ってもらう! 」

花夜「だけど、今や私と黄泉のすべての人の命は犬神様のもの犬神様が消えれば、黄泉の人間はすべて消え失せてしまう! 」

寿司「だったら何だ! 」

ミスラ「花夜さんの言うとおりだ、犬神が死ねば、桜の島の人間は本当にいなくなってしまう。」

寿司「みんなすでに人間じゃないわ! 」

花夜「どうして!? 私は誰も傷つけず、温泉を経営しているだけ、このまま人間として生き続けてはいけないのですか? 」

寿司「あなた……………! 」


***


ライス「……御侍様、どうしますか? 」

犬神「………」

花夜「………」

主人公「……どうやら、レストランに戻ったほうがよさそうだな。」

ミスラ「そうきたのか、でもそうかもしれない。」

主人公「うん、イキは? 」

イキ「いやー、しゃもじを手に取るのも久しぶりだから、慌てちゃったな! 」

主人公「じゃ、オリビアあとは任せたよ……ここで起きたことを、ギルドに報告しないでくれない? 」

オリビア「しかし、それが上に知れたら、おぬし一人で責任を負えるのか? 」

オリビア「……まあ、支部長はおぬしだ。この前助けてもらったことも含め、これで貸し借りはゼロだな。」

主人公「ありがとう! 」

犬神「人間よ、私を殺さないのか? 」

主人公「私には桜の島の未来を変える力はないし、それは花夜さんたち島の人が考えるべきことだと思って。」

花夜「ありがとうございます。このご恩は決して忘れません! 」

主人公「そんな、いいよ、ところで寿司刺身、君たちは……」

寿司「私がそんなに簡単にあきらめるとでも思いますか? 」

刺身寿司姉さん……」

主人公「あきらめろとは言わないけれど、「人間」として生きていきたい花夜さんの未来を絶つなんて、そんなことはできない。」

寿司「じゃ、私たちの未来は? 復讐のために今まで生きてきたのに、蝉丸様も亡くなり、その宿願を叶えることもあなたの一言で却下されてしまうなんて。」

主人公「蝉丸は黄泉の人間が堕神に苦しめられることのないよう願っていた。今ここの人たちは疾病から生き残っているのは犬神のお陰だ、このままでいいんじゃないか。」

主人公「それに、却下なんてしてないよ。うちのレストランは人手不足で、ちょっと手伝ってくれないか? 」

刺身「〇〇様……」

寿司「………」

寿司「ごめんなさい。葦原は私たちの故郷……それにもう人間とは一緒にいたくないです。刺身、帰りましょう。」

刺身「……〇〇様、ごめんなさい……」


 刺身は〇〇に深々とお辞儀をして、寿司とその場を離れた。


ライス「御侍様、葦原はあの二人だけになりましたね……」

主人公「あの二人が決めたことなんだ、悲しいことじゃない、縁があればまた会えるさ。」


53.その後 碧月一八日 葦原

花夜を生かすため犬神を許すと決めた。しかしこれで本当に終わったのだろうか? 


主人公「そうだ、犬神、「あの人」ってサイモンという名前か? 」

犬神「まさに。」

ミスラ「待って、〇〇、サイモンって!? 」

主人公「調べたところによると葦原で疾病の薬を研究していた人だよ、ミスラ、君も知っているだろう? 」

ミスラ「はい……魔導学院始まって以来の天才学生だったって。」

イキ「おお、そりゃすごい! 」

ミスラ「すごいじゃなくて、怖いわよ……あの事件で殺されたといわれていたの。」

オリビア「つまり、本当は死んでいなかったと? 」

犬神「あなたたち、彼を探しているのか? 」

ミスラ「そうだ、だって生きていればいろいろなことを聞けるじゃない! 」

犬神「そうか、彼は桜の島の「結果」には不満だと……人間と神の直接の衝突が必要だと言っていた。」

犬神「そこで、彼は砂漠の国に行ったの。」

イキ「砂漠の国……パラータ? 」

主人公「人間と神の衝突……よくわからないけれど、胸騒ぎがする。こうしちゃいられない、食べ物を用意して出発だ! 」


***


碧月一八日

葦原

刺身「………」

寿司「何みてるの? 」

刺身寿司姉さん、〇〇さんからのお誘いよ、どうしてお断りしたの。行きたくないのか? 」

寿司「……い、いや行きたい……」

寿司「だけど……無数の人間を殺めてきた私たちに……今更……誰かを助けることなんてできるのかしら。」

刺身「………」

麻辣ザリガニ「ごめんくださーい! 」

刺身「誰!? 」

麻辣ザリガニ「いえいえ、私も食霊だ、怖がらないで、仲間だよ。」

寿司「食霊? ここに何をしに? 」

麻辣ザリガニ「この十三年間、ずっと人を殺め続けてきたんだってね? 」

寿司「あなたと何の関係が? 」

麻辣ザリガニ「もちろん理由があるさ、じゃ、今からゆっくりと話し合おうか、まず自己紹介を……」

麻辣ザリガニ「私は麻辣ザリガニ、食霊の自由のため、同志を募っているんだ。」


パラータ編

54.蒸し暑い 碧月二十一日 パラータ外界

一行はパラータに到着したが、着岸する前に、最初の試練が立ちはだかった。


碧月二十一日

パラータ外界

 桜の島からパラータへ発った〇〇たちの目に、海岸沿いの港が入ってきた。

 長い旅も終わりに近づいていたが、この時、船上の皆は我慢が限界に達していた。


イキ「暑い……暑い! 暑いよおおおおお! 」

主人公「うるさい! ますます暑くなるじゃないですか? 」

ミスラ「でも本当に暑いよ。外は日差しがきつすぎるし、船倉の中は蒸し風呂、こんな暑さじゃやってられない……」

ライス「みんな、水を飲んで下さい。」

イキ「水を飲んだところで、すぐに乾くからなー」

イキ「ああライスがうらやましいよ、気温なんて関係ないんだから。」

オリビア「食霊は能力以外は気温に影響されないからな、やはりこんな時にはあの二人が必要だな。」

オリビア「イチゴ、バニラ! 」

ダブルアイス「バニラ:御侍様、何の御用でしょうか?」

オリビア「ここの船倉の温度を下げてもらえないか。」

ダブルアイス「バニラ:え?堕神退治じゃなくて? つまんなーい!」

ダブルアイス「イチゴ:……かしこまりました……」

主人公「レア食霊の能力を使って温度を下げるなんて、何とぜいたくな……」

オリビア「仕方ないさ、まだ上陸はできないし、蒸し焼きにはなりたくないだろう? 」

ミスラ「蒸し焼き……そうだ、何か冷たい料理でも作らない? 」

イキ「おおお! いいな、よし台所に行くぞ! 」


55.無法の地

暑さの問題をしばらく解決した。急いでパラータへ、内陸と繋いでだこの港は、ヒレイナと雲泥の差があるように見えた。


イキ「食べ終わったところでちょうど到着とは、運がいいな! 」

ミスラ「外は相変わらず暑いけれど……」

主人公「それにしても、大きな港ですね~、ヒレイナに匹敵するんじゃないかな? 」

オリビア「世界一の闇市港だからな、そりゃあもちろん。」

イキ「闇市? どおりで人相の悪い人が多いわけだ、危なくはないのか? 」

オリビア「危険はあるさ、パラータのグレーゾーンだからな。その分、私たちも動きやすいだろう。」

オリビア「まあ、本当に面倒なことが起きたら料理御侍の身分を明かせばいい。パラータとグルイラオが緊張関係にあっても、ここの国王は料理ギルドとの関係を大事にしているようだからな。」

主人公「つまり、その関係を利用して、身を守れるってことですね? 」

ライス「御侍さま……」

主人公「どうしたんだ? 」

ライス「女の子が一人、ずっとこっちを見ているのですが……」

主人公「なんだ? 」

???「………」

主人公「う~ん、話を聞きに行ってみよう。」

主人公「あのー……」

???「ついに来たか。」

主人公「えっ? 」

???「あなたたちが来ることは予知していた、〇〇。」

主人公「どうして名前を? 君は一体? 」

パティ「私はパティ、あなたの名前を知っているのは、私が神だから。」


56.自称神 碧月二十一日 北荒集落

パティという名の少女は自分のことを神と称したが、御侍様に協力してほしいことがあるみたいだ。


主人公「………」

ライス「御侍様、この人、大丈夫ですか? 」

主人公「暑さでやられているのかも、ライス、水を。」

ライス「はい! 」

パティ「冗談で言っているんじゃない! 」

主人公「そんな、いきなり自分を神だなんて、流石にちょっと。」

ミスラ「賢そうなお嬢さんね。ただもう少し勉強が必要じゃないかな……」

パティ「……信じるかどうかは自由だが、言っておきたいことがある。」

パティ「今やパラータは未曽有の危機、四百年以上眠っていた厄神が目を醒まそうとしているの。そしてそれを倒せるのはあなたたちだけだ。」

オリビア「冗談だろう、神様なら自分で何とかできるだろう。」

パティ「それができればとうに……」

ミスラ「〇〇、とりあえず話を聞いてみる? 」

主人公「用事があってパラータに来たんです、時間もないし、堕神ならともかく、数百年ものの厄神なんて対応できる範囲を超えてます。」

パティ「用事? なるほど……もしやサイモンという者を探しているのではないのか? 」

オリビア「なぜ知っているんだ? 」

パティ「だから、私は神なのよ、人間のことはすべて知っている。」

パティ「サイモンを追いかけているのなら、パラータで厄神を倒してくれれば、行き先を教えてあげてもいい。」

オリビア「取引上手だな、必要としている情報のようだし、仕方ない、付き合うとしよう。」

パティ「ありがとう。パラータの子民に代わって礼を言う。」

イキ「で、何をすればいい? 」

パティ「まずは食事を準備して、北荒集落へ届けてほいいの。」

イキ「四百年ものの厄神対策がデリバリー!? 」

パティ「すべては厄神の来臨に備えて。」

ミスラ「ほんとに関係あるの……? 」

主人公「引き受けたからには、しっかりやるしかないですね。」

オリビア「なら、それは〇〇とイキに任せるとしよう、ミスラと私は港の管理所へ、役に立つ情報があるかもしれない。」


***


碧月二十一日

北荒集落

貧民「やっと食事にありつける、神からの食糧配給がこの頃滞っているからな! 」

貧民「ともかく、食べられるのはありがたい! 」

ライス「は、はい並んで、押さないで……」

イキ「この人たち、あの「神」からの食べ物を待っているだけじゃないか。」

貧民「神は祈れば食べ物をくださるんだ、飢え死になんてしない! 」

イキ「ええっ、その「神」が毎日、一日三食用意してるのか? 」

貧民「神っていうのはそういうものでしょう? だいたいあんたに何の関係があるんだい? 」

イキ「は? そんな言い方はないんじゃないのか? 」

主人公「ちょ……イキ、落ち着いて。」

イキ「待てよ、あんな態度黙ってられない! 」


 〇〇はライスを呼んで、イキとともに北荒集落の外に出た。


イキ「ここの人間はどうかしてるぜ。」

ライス「イキさん、落ち着いて……」

主人公「ともかく、こんなところで愚痴っている場合じゃない、それより戻って「神」に効いてみよう。」


57.未来人

北荒集落の人々はむちゃぶりをして、チャリティーデリバリーのはずだったのに、皆をうっとうしい気分にさせた。(ステージ:25-1)


ティラミス「……かわいそうな人たちね。」

ライス「北荒集落の、ことですか? 」

ティラミス「彼らには長らく幸せな時間が訪れていないわ……」

ライス「どういう意味ですか? 」

ティラミス「食べる物や住む家にすら事欠いて、これじゃ幸せなはずがない……」

主人公「おーい置いていきますよー、何をお喋りしているんですかー?」

ライス「御侍様……北荒集落の人たちは、ずっと、お腹を空かせているんです、何とか、できないでしょうか? 」

主人公「……うーん。」

主人公「こういう人たちは、あんまり助けても……」

ライス「助けても、どういう意味ですか? 」

ティラミス「……え!? 」

主人公「ティラミス、君は人間のことにも詳しいから、あえて包み隠さずいうよ。」

主人公「北荒集落の人は働いて自分の力で生きていけるようにならないと未来はないと思うんだよ。」

主人公「こんな、すべてを神に頼りきりで、飢え死にしかけても働かない人たちじゃ…。」


58.通路

貧困に陥った人々は、理不尽で理解に苦しむことをやるが、パティはいつも彼らを守る。これが神様なのか? (ステージ:25-4)


 〇〇たちは闇市港に戻り、何があったかをパティに伝えた。


パティ「無事に配達できたようね。」

ライス「あれを「無事」と言えるんでしょうか……」

パティ「ごめんなさい、パラータの民はここへ来てからずっと、貧しい暮らしをしているの。彼らもしようもないんだ。」

イキ「だからって毎日「神」からの施しを待っているのか? 」

パティ「もちろん、信者の願いを聞き届けるのが神ですもの。」

主人公「ということは、彼らは君を心の底から信じていると。」

パティ「彼らが祈っているのが本当の「私」だ。今の「私」は神には見えないでしょう。」

イキ「どっちも君じゃないか……ところでデリバリーも終わったけど、厄神は? 」

パティ「厄神がそんなに簡単に倒せるとでもお思い? じゃ、次は闇市港に向かう道路の堕神をすべて倒してください。」

パティ「通り道さえ確保できたら、万一のときにみんなを安全な場所へ避難させられる。」


59.似て非なるもの

堕神を倒した後、ライスはおかしな気配を感じた。


イキ「これでおわりだ、〇〇、そっちはどうだ? 」

主人公「この辺りはもう大丈夫、ライス、戻るよ。」

ライス「……御侍様、待って、……何だか、堕神の気配を感じる……」

イキ「おお、ライスも成長したな、すごい! 」

主人公「それで、何を感じたの……? 」

ライス「大……」

主人公「大? 」

ライス「大量の……堕神……」

主人公「えっ? 」

イキ「〇〇、あっちだ! 」


 イキの指さす方向、海岸線に沿った天空に巨大な黒雲がうごめいていた。

 だが〇〇はすぐに、その「黒雲」が数えきれない堕神の集合体であることに気が付いた。


イキ「鳥みたいな堕神だな……しかしすごい数だ! 」

ライス「こちらに向かっているみたいです! 」

主人公「闇市港の方向みたい、何とかしないと人々が危ない。」

ライス「ど、どうしよう? 」

イキ「〇〇、あの特に大きい奴が堕神の頭だろう、あれをやっつけたら奴らの動きを封じられるかもしれない。」

主人公「よし、やってみよう! 」


***


 堕神の頭を倒すと、他の堕神たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。


イキ「ふー! 危なかったぜ! 」

ライス「イキさん、すごかったですよ。」

主人公「でも、どうして突然これほどの堕神が? 砂漠だとこれが当たり前? 」

パティ「無事だった? 」

イキ「パティ、何をしに? 」

パティ「あなたたちがカルラ族の襲撃に遭ったのを感知した……無事で安心したわ。」

主人公「カルラ族って、あの空飛ぶ堕神? どうやら群れを作るみたいですね。」

パティ「いいえ、彼らは普段洞穴で暮らしていて、外へ出るのは少数の強力な者だけだ……」

パティ「でも今回は、人間を襲うというより、何かから逃げているようだった。」

イキ「逃げる……つまり? 」

パティ「……砂漠の奥に潜んでいる、恐ろしいものが目を醒ましたようね。」


60.移動 碧月二十一日 闇市港

カルラは何か恐ろしいものから逃げているようだ。一体どんなものか。


主人公「それって、その厄神? 」

パティ「違う、だけどパラータにとっての大きな脅威に変わりない、厄神と奴が同時に襲ってきたら! 」

主人公「……つまり状況は悪化していると。嘆いている時間はなさそうですね、対策を考えよう。」

イキ「ああ、それに相手が堕神なら俺たちの役目だ! 」

パティ「ごめんなさい、あまりに突然のことで少し取り乱しました……あなたたちの言う通り、今は対策を考えないと。」

パティ「現状をまとめると、驚いた堕神があちこちに現れて、人々の安全が脅かされる可能性があるということ……」

主人公「闇市港なら防衛設備も備わっているみたいだったけど、北荒集落だと……」

イキ「じゃ、港に北荒集落の警備をお願いするってのは? 」

パティ「オリビアが現地の責任者と交渉に行ったはず、どうなったんだろう、戻って聞いてみよう。」


***


碧月二十一日

闇市港

主人公「オリビア、責任者には会えた? 頼みたいことがあるんだけど。」

オリビア「堕神のことか? ちょうどその事について話していた。」

オリビア「北荒集落はここから近いし、山海の地形に恵まれた天然の砦だから、警備は問題ないようなんだが……」

ミスラ「投入できる物質には限りがあるって。」

イキ「なんでだ。物資なら足りてるはずだろ? 」

主人公「警備にも金はかかるし、それほど守る価値もない場所じゃ、仕方がないと思う。」

ライス「御侍様、私たちで、何か、力を貸せないでしょうか? 」

主人公「力を貸す? 」

ミスラ「そうだ! 費用に余裕があれば、その分北荒集落の警備に回せるんじゃない。」

ミスラ「だから必要になるのが物資援助だよ。先立つものは糧秣、私たちは食材や物資をふるまってあげればいいわ! 」

イキ「食材調達なんて朝飯前、任せとけ! 」

パティ「………」

主人公「どうしたの? 」

パティ「こういった事を、神に頼らず自分たちで解決しようとするなんて。」

オリビア「神の力を借りるまでもないだろう? 人間がティアラの統治者になれたのは、自分の手と頭を使ったからだ。」

パティ「………」

61.地震

突然の危機だが、皆は闇市場と北荒集落を守ると決めた。(ステージ:26-4)

主人公「じゃ、港のためにも行動開始!」

オリビア「調べたんだが、ここは海産物が豊富のようだ。でも付近の海域は港の所有になっていて、勝手に魚を取ることは禁止されているんだ。」

主人公「なら、他へ行くまでですね、パティ、近くに魚を捕れる場所は?」

パティ「西南では大丈夫だ。」

イキ「おお……あの白い建物のところか? わかりやすいな。」

パティ「昔から堕神がいるせいで人通りも少ない道なの、今は堕神が騒ぎ出したから、もっと危険かもしれない。」

主人公「じゃ、みんな気をつけていきましょう。」


***


 しばらくして、皆は「白い建物」の下にたどり着いた。近くで見るとそれは建物ではなく、巨大生物の白骨死体であった。


ライス「大きいです!」

イキ「あの牙! 生きていたら、おっかないだろうなぁ!」

ミスラ「外形からして、古代堕神ーー鯨呑かしら?」

イキ「鯨呑? 古代堕神?」

ミスラ「以前資料で見たのを思い出したの。もとは海に棲んでいたのが、四百年前に陸に上がって、パラータの町一つを破壊したと。パラータの人々はその存在を恐れ、北に移住したと。それででてきたのが北荒集落よ。」

主人公「とてつもなく強い堕神だったんだ……なら、どうして死んだんでしょう?」

ライス「魚みたいに、自ら上がったら、生きられなかったとか……」

パティ「いいえ、殺されたの。」

ライス「え?」


 皆が驚いてると、足元の砂地が突然揺れだした。揺れはだんだん激しくなり、鯨呑の骸骨も揺れている。


イキ「じ、地震!?」

主人公「と、突然……!?」

パティ「うぁ……!!」

ライス「パティさん、大丈夫?」

パティ「……『あれ』が目を覚まそうとしている……」

主人公「……あれって、あなたが言っていた……?」

パティ「……そう、四百年以上前に……鯨呑を殺した堕神ーー蜃楼。」

ミスラ「蜃楼!? あの伝説の堕神?」

62.蜃楼

これほど大きな鯨呑も食べられるとは、伝説の堕神ーー蜃楼とは一体どのような存在?

主人公「伝説の堕神?大層な称号を持ってるんですね〜。」

パティ「蜃楼は鯨呑と同等以上の巨大な堕神で、四百年前に鯨呑を殺してからは海へは帰らず、パラータの砂漠に身を潜めた。あまりにも巨大で、当時の人間では太刀打ちできなかった。パラータが滅ぼさてしまう恐れがあった。だから私が自分の力で封印したの。」

オリビア「道理でギルドが何百年もこいつを探し当てられなかったわけだ、それほどのものを封印するなんて、確かにあなたは普通の人間ではないようだ。」

ライス「でもパティさん、どうして、蜃楼をそのまま、倒さなかったの?」

パティ「……」

主人公「神の辞書にも不可能はあるってことですね〜」

ミスラ「冗談言ってる場合じゃないでしょ、蜃楼が目を醒ましかけている、闇市港が北荒集落を守れるようにしてあげなきゃ!」

オリビア「ぐずぐずしていられないな、すぐに行動しよう、急いで食材を港に運ぶんだ!」


***


イキ「このぐらいあれば足りるかな?」

オリビア「数日間は持つだろう。」

ライス「これだけあれば、充分です。」

主人公「食材が腐ってしまうとまずいですし、すぐに出発しよう!」

パティ「うぁ……!!」

ミスラ「また地震だ……パティ、大丈夫?」

ライス「御侍様、地震が来ると、パティさんも苦しそうです。」

オリビア「パティ、大丈夫か?」

パティ「……子民が……無数の子民が……私に祈っている……」

主人公「祈っている?」

ミスラ「神は人の信仰のために存在し、人は神に祈ることで神から力を得ているの、神は普通は力を発揮しても衰弱することはないんだけど……パティ、まさかパラータに人が住むようになってから、ずっと彼らの祈りを聞いてきたの?」

パティ「……」

主人公「パラータの人々が何百年も神に祈り続けてきたせいで、もう神には力が残されていないってこと?」

パティ「……普段は……何とかなっているけれど今回は……北荒集落の民に……危険が迫っている……!」

ライス「危険……つまり、北荒集落が堕神の襲撃に逢うという事ですか?」

主人公「じゃ、早く戻ろう、北荒集落を守るために食材の調達に来たのに、守れないんじゃ骨折り損になってしまう!」

63.親友

尸骸(しがい)になろうとも、鯨呑の巨大な体は変わらない。その大きさを目のあたりにすると、驚嘆しない者はない。(ステージ:27-4)

主人公「………………うわ。こんな遠くから見ても、やっぱり大きいなぁ!」

イキ「えっ、あの骸骨が?」

ミスラ「鯨呑だよ!」

オリビア「名前はどうでもいいじゃないか、もうただの骨だしな。何百年も野ざらしになって、今やパラータの砂漠と一体化している。」

ライス「風景……みたいな?」

パティ「鯨呑はまだ絶滅していない。」

イキ「え? 生きている鯨呑ってまだいるの?」

パティ「はい、ここの海域で。蜃楼以外のものは何でも呑み込むの……」

ミスラ「そういえば、航海記録で読んだことがある。冒険家が遠洋で遭遇して、同行した船を丸呑みにするのを目撃したとか。」

イキ「ま、丸呑み? 反撃する時間もないじゃないか、すごい食欲、ミスラといい勝負だ。」

ミスラ「……」

イキ「わあ!」

主人公「航海でまだ出くわしていないってことは、運がいいということかな。」

パティ「ティアラの海には未発見の生物や堕神がまだたくさんいるの。人間は様々な生きる術を培ってきたけど、未知の領域に足を踏み入れるのは、常に命がけよ。」

ミスラ「……はい……うんうん! パティ、いいこと言いますね、未知の世界への冒険は確かに命がけの覚悟が必要よ!」

パティ「え、えっと……冒険?」

ミスラ「パラータの神は知的好奇心にあふれていた! 大発見よ、意見をもっと聞かせてもらえるかしら!?」

パティ「え、私は……その……」

イキ「ミスラ、パティは弱っているんだ、ゆっくりさせてやれ……」

主人公「大発見はおめでとう。でもミスラ、このままだとティアラ史上初の神を殺した人間になりますよ?」

64.王城の過去

帰る途中、ライスは遠くの廃墟に気付いた。(ステージ:27-8)

ライス「御侍様、あれを!」

主人公「は……廃墟?」

イキ「さっきの地震のせいかな?それにしてもひどい壊れ方だ。」

ミスラ「いや、そんな新しいものじゃない。遠くからでもわかる。」

主人公「じゃ、昔堕神に破壊された町か?」

パティ「いいえ、人間に破壊されたの。」

主人公「え?」

ミスラ「三年前に御国とグルイラオとの間で起こった戦争?」

オリビア「いいや、二百八十二年前の第一次辺境戦争による廃墟だろう。グルイラオはバサラ山に大量の投石機を設置し、パラータの旧王城を一気に破壊したんだが、その廃墟がここに残っていたとはな。」

イキ「パラータの人たちはなぜここに王城を再建せず、遷都しちゃったのかな?」

パティ「一つはパラータ聖王が、ここは再び戦争が起きれば危ないとみて放棄することにしたの。二つ目は……」

オリビア「二つ目は、パラータ王室はこんな重要性の低い場所に金をつぎ込みたくなかった。」

主人公「と、いうと?」

オリビア「政治関係の話さ。」

イキ「政治?」

パティ「それはね……グルイラオとパラータの暗戦に関係があるんだけど、今は言わないでおきましょう。」

イキ「もったいぶるなよ、教えてくれたっていいだろう?」

オリビア「政治なんて、関わると後々面倒だ、それより料理御侍の仕事に専念すべきだ。」

65.全員出勤 碧月二十一日 闇市港

海に帰る途中、カルラの数が増え、地震が頻繁に怒った。何かを予兆しているようだ。

ライス「御侍様、カルラの数が増えたようです……」

主人公「うん、まるで蜂の巣をつついたような騒ぎになってる。」

イキ「北荒集落に向かっている……何があるんだ?」

オリビア「ともかくこれはチャンスだ、帰り道でなるべくカルラを倒していこう、北荒集落の警備の負担が少しでも軽くなるように。」

主人公「ライス、パティを頼むよ、堕神がいっぱいいるから、はぐれないように。」

ライス「うん!」


***


碧月二十一日

闇市港

イキ「闇市港はそれほどの被害は受けていないようだ、よかったな。」

ミスラ「でも北荒集落はどうなったんだろう、パティの体は弱り続けている、もしかして……」

異国の行商人「や、お戻りになったのかね、無事で何よりだ。」

主人公「あなたは……」

異国の行商人「よそから来た商人だ。今日闇市港へ来て商売をしようとしていたら、巨大な堕神が北の方へ飛んで行ってね。パラータでの商売は危ないとは聞いていたが、まさか命がけとはね、くわばらくわばら。」

イキ「巨大な堕神……?」

パティ「……雷鳥カルラよ……!……子民に危険が迫っている……倒さなきゃ……」

ライス「パティさん、無理しないで!」

オリビア「人を助けるどころか、自分が倒れそうじゃないか!あんな依存心の強い人々にどうしてそこまでしてやるんだ!」

パティ「私は……パラータの神……人々の祈りを聞くために生まれたの、じゃなきゃ……存在する価値がない……!」

ライス「……」

主人公「神だというんなら、人間を教え導くだけで十分なんです。人間は君が思うほど弱い存在じゃない。ここで休んでください、北荒集落は任せて。」

パティ「だが……」

主人公「厄神を倒したら、サイモンのことはちゃんと教えてくださいね。」

66.過去の栄光

雷鳥カルラは北の集落へ行ったようだ。邪魔をしてくるカルラを倒して、すぐ追いつこう!(ステージ:30-4)

主人公「大量の……カルラの羽が散らばっている?」

ミスラ「みたいね。しかもこの量からして、結構大きいやつ。」

イキ「カルラって鳥なのか?そうとしか思えないけど。」

オリビア「鳥の形をした堕神だ。奴らが生まれた経歴はパラータらしいといえる。」

主人公「どういう意味だ?」

ミスラ「カルラはもとはパラータの少数民族が祀っていた神鳥で、肇始之神と同じく、信仰の対象だった。だけど混沌に寄生されてから、堕神になってしまった。」

イキ「犬神と同じじゃないか。でことは、話が通じる相手だってこと?」

オリビア「それはどうなんだろうな……」

67.吸血の悪

カルラは昔パラータの神鳥だったみたいだ。堕神になった今の姿は?(ステージ30-9)

 歩き続けていた皆の前に、何かが散らばっていた。引き裂かれた生物の死骸のようで、あたりにはまだ新しい血痕が飛び散っている。


ミスラ「うっ……血生臭い、もしかして……?」

オリビア「人間か……カルラの群れにやられたのだろう。」

ライス「そ、そんな……!?」

主人公「生けるものはすべて狙う、なんて食欲…。」

ミスラ「う……ゲホゲホ……少なくとも、奴らは群れで活動し、人間、あるいはすべての生物を捕食すると……記録しなきゃ……」

イキ「吐いてまでも研究のための記録とは、熱心じゃないか?」

オリビア「どうやら話が通じる相手じゃないな、神といえど、欲に支配されたら他の堕神と変わらないのだろう。」

主人公「殺傷力のある堕神ですね、これが北荒集落に行ったら、みんなが危ない! もたもたしてられないようです、行きましょう!」


68.巨影 碧月二十一日 北荒集落

どうやら、雷鳥カルラが北荒集落に侵入したみたいだ。今すぐ撃退していき、住民を守ろう!

碧月二十一日

北荒集落

雷鳥カルラ「新しい……住処……」

イキ「北荒集落に住処を構えようなんて、甘いことは考えるなよ!」

ミスラ「パティが言っていた雷鳥カルラって、これ?」

オリビア「どうやらこいつが頭みたいだな。こいつを倒せば他のカルラもいなくなるだろう。」

主人公「よし、急ぎましょう、さらに被害が出る前に!」


***


雷鳥カルラ「うわぁ……に……人間め……!!」

イキ「やったぞ!」

ミスラ「残りのカルラも逃げて行ったわ、北荒集落はもう安全だ。」


 雷鳥カルラを倒した皆が一息ついたところで、砂漠が再び揺れだした。


イキ「ま、また!?」

ライス「御侍様、あれを!」


 ライスが慌てて指さした東南の方向では、破壊された巨大な町が地震でせり上がってこようとしている。まるで震える巨大生物のようだ。


イキ「あ、ありゃなんだ……!?」

オリビア「蜃楼……ついに目を覚ましてしまったか!」



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