極光神境・ストーリー・サブⅠ無光の森
仕掛け人
「黄泉」と「創世」の伝説。
水無月:首領、誘き寄せた食霊たちはもう無光に来ているみたいだ。ところで、首領はもしかして「記録者」のことを覚えていないのか?
羊かん:関係ないだろう。
水無月:……へへっ、彼らは面白い事をたくさん記録しているらしいよ。
羊かん:それがどうした。
羊かん:それより、お前がどうやって食霊たちを誘き寄せたのかについて知りたい。
水無月:首領はどんどん我慢がきかなくなっているようだね……ハハッ、彼らを誘き寄せた方法に必要不可欠な事だから、もう一度説明してあげよう。
──伝説によると、人間が神の怒りを買ったため天罰が下され、桜の島は半分の土地を失ったという。
長年神に仕えてきた双子の巫女は天機に通じているため、力を合わせて土地を創った。こうして人間たちは新たな土地を耕し、再び生活出来るようになった。
「黄泉」の全ては「現世」とまったく変わらないように見える。しかし「黄泉」の地はまるで孤島のように外界と連絡を取ることは出来ない。その上、島の人々は空高く懸かる月を失っている。
そのため、双子の巫女は五十年を一区切りとし、神楽を舞うことを合図に、二つの地を「黄泉」と「現世」の間で入れ替えた。
しかし、人間の歴史の中では月を失ったという記述はなく、双子の巫女が創った島を見た者もいないことから、「黄泉」についての事柄は全て伝説として語られるようになった。
水無月:この伝説は、全ての計画の土台だ。
羊かん:それはかなり前にお前から聞いている。
水無月:いや、これは伝説なんかじゃない、事実だ。真相は伝説の中に隠されてしまったんだ──皮肉な物だなー
快活に笑う水無月だが、羊かんは彼から悲痛と怨念を感じ取った。時間が経つにつれ、その感情は次第に沈殿していった。
水無月:「黄泉」と「現世」は単なる伝説ではない、少なくとも大巫女は実在していたし、桜の島を本当に守っていたんだ……
羊かん:だから……
水無月:だから、首領以外にも、たくさんの食霊が興味を持ってくれている。
羊かん:私の知る限り、全ての食霊がこれに興味がある訳ではない。
水無月:ああ、そんなの簡単だ。最中は呼ばなくてもどうせ自分からやって来る、日暮探偵社も少し手掛かりをバラ撒いておけば釣れる……とにかく、誰であろうと、興味を持つ物はあるという事だ。
水無月:残念なことに、紅葉の館と鳥居私塾の連中は最中の奴に止められたようだ。彼らを誘き寄せるのに、僕がどんだけ苦労したか……
羊かん:わかった、もういい。
水無月:首領が聞きたいって言ったんだろー
羊かん:そこまで具体的に言わなくてもいいだろう……
水無月:ヘヘッ、わざわざつじうら煎餅に占ってもらったんだー結果は大吉だった、今回の計画は必ずうまく行くよー
羊かん:……
水無月:皆が真相に気付く時、一体どんな状況になっているんだろうね?楽しみだなー
無光の暗闇の中、低い声で呟かれた水無月の言葉は、風に乗って遠くまで飛ばされた。まるで誰かの嗚咽のように。
記録者たち
三千世界の可能性が記録されている。
数日前
無光の森の外周
ホットドッグ:あら~やっと見つけたわ、この手紙が偽物なのかと思ったわ!
光と闇が交わる場所、無光の森の外周。長身の美しい食霊は集まっている者に向かって走っていった。
トッポギ:大きいわね!
キムチ:綺麗ですね。
納豆:あっ……ホットドッグですか、貴方も来られたんですね……紹介します、こちらは天才画家であるホットドッグ、我々「記録者」の一員でもあります。そしてこちらは……
トッポギ:私はトッポギよ。ホットドッグ姉様、貴方は美しいわね。あら、もしかしてホットドッグ兄様の方がいいかしら?
キムチ:コホンッ、トッポギ、失礼な事を言わないでください……こんにちは、私はキムチです。
ホットドッグ:こんにちは、スノースキン月餅はどこかしら?歴史を変える大事件を見届けるよう私たちを呼んだのは彼女でしょう?
納豆:僕たちも……長いことここで待っていました、もしかしたら……既に無光の中にいるかもしれません。
ホットドッグ:ここがあなたが記録したあの一縷の光も差し込まない場所?でも見た感じ……そんなに暗くなさそうだけど。
トッポギ:暗いどころか、非常に明るいわね。
納豆:「心災」がもたらした変化かもしれません……
ホットドッグ:「心災」?それって?
納豆:これまでに記録してきた事件によると、「心災」というのは桜の島特有のもので、それも毎回違った形で現れるとか……しかしどんな形であれ、迷い込んだ者には災いが降りかかるそうです。
梅酒:あの……実は、前回皆さんにお送りした記録に載っています。
ホットドッグ:あら~文字よりも、絵が付いている記録の方が好きなの!だけどその「心災」とやらはとても恐ろしいみたいね、本当に入らなければならないの?
納豆:ええ……食霊にとって「心災」そのものは怖いものではありません。ただ……毎回形が異なるため、うっかりしていると吞み込まれてしまいます。まるで誰かの心のままの幻想が形になったようで、そのため「心災」と呼ばれているのです。
納豆:僕は無光の近くで、別の噂も聞きました……森の奥には願いを叶えてくれる勾玉があるとのことです。もしかしたら……「心災」と勾玉が重なったことで、無光に異変が起きたのではないでしょうか。
梅酒:それに……スノースキン月餅はもう入ってしまっているかもしれません。
ホットドッグ:ならここに突っ立ててもしょうがないわ、早く入って探しましょう!
トッポギ:そうね、危険があるなら尚更助けにいかないと。
タピオカミルクティー:失踪したメンバー、神秘的な伝説……小説の書き出しに最適ね。行こう、新作のためにネタ集めもしたいしね。
名探偵の悩み
森の奥深くには一体どんな秘密が隠されているのか……
極光に包まれた森は、光の変化に応じて色づき、時間をぼやけさせ、昼なのか夜なのか、朝なのか正午なのか、まったくわからなくさせる。
りんご飴:ブサイクな木以外、小動物すらいないわ!
かき氷:静かすぎて、なんだか怖いね。
りんご飴:私たちと空で移ろうオーロラ以外、生きているものはないみたいね。
抹茶:すぐに引き返して、最中や他の者たちを見つけ、共にここから離れましょう。
りんご飴:えっ!どうして?!せっかくここまで来たのに。
かき氷:……前と同じで、誰かの罠かもしれない。
りんご飴:違う、あれとは違う!
抹茶:……
かき氷:りんご飴、少し落ち着いて、抹茶さんの言う事も正しいよ。あたしたちが「心災」について調査している事は別に秘密にしていないし、ずっと進展がなかった。なのに突然誰かが手掛かりを持ってくるなんて、いくらなんでも都合が良すぎる。
りんご飴:そんなのどうでもいい、前までは皆の言葉を聞いて、ゆっくり調べようとした……だけど御侍さんを死なせた沼が消えたのよ?せっかく「勾玉」に関する手掛かりを掴んだのに、このまま手放してしまったら、もう永遠に自分を許せなくなる。
りんご飴の毅然とした表情を見ていた抹茶は、相手を説得出来ないことを察し、心の中でため息をついた。思わず、亡くなった旧友から日暮探偵社を任された時のことを思い出した。
彼の親友で、りんご飴とかき氷の御侍は、もともとグルイラオの学者だった。桜の島の怪奇事件、怪異の噂を調査するためにやって来て、あの探偵社を設立した。
最後はとある怪奇事件を調べていた時、巻き添えを食らって死んでしまった。あの事件で、「心災」の影響を受けた沼は引き金に過ぎず、「勾玉」こそが本当の原因らしい。
抹茶:やっぱり……貪欲に突っ込むと理性を失ってしまうようだ、前回もそうでした、今回も……申し訳ない、ここに来ると決めたのは僕です、僕が間違っていました。
かき氷:……この前の七勾玉の事?
抹茶:ええ、あの時は最終的にあの勾玉が偽物であると証明は出来たが、そのせいで貴重な調査時間を潰され、あの沼が消えてしまった。
抹茶:今回の事件と以前情報を流してくれたのは、かなりの確率で同一人物だと思います。薬師を装い、勾玉が願いを叶えてくれるという情報を流し、被害者を「心災」の範囲内に入れようとしていたのかと。
りんご飴:なら、私たちは尚更きちんと調査するべきでは?
抹茶:僕もそう思っていました、しかし……よく考えてみると、彼らの本当の目的は僕たちをここに誘き寄せる事なのかもしれません。
りんご飴:もうっ!汚い手を使う奴らなんて一番大嫌いだ!
抹茶:調査を諦める訳ではありませんよ、ただまず一度後退しておきましょう。出発する前、カツ丼には玉子焼きに助けを要請するようお願いしておきました。もしかするとあの者の情報が掴めるかもしれません。
抹茶:先程まではまだ確信が持てなかったのですが、今はほぼ断定出来ます。流言をバラ撒いていたのは無光の水無月でしょう。
りんご飴:どうりで今回カツ丼が来ていない訳だ、そんなに前から準備していたの?
抹茶:最善を尽くしましょう。
抹茶とそれまで黙っていた草加煎餅は目を合わせた、事の重大さを再確認しているようだ。りんご飴は森の奥を見たまま、秘密を見透かそうとしていた。
星空の繋がりを越えて
障碍を乗り越え、星の指す方へ。
時間が経つにつれ、密林上空にある極光はより一層輝きを放っていた。最中は「黄泉」と連絡を取る方法を探るため、一行から離脱せざるをおえなかった。しかし未だに収穫はない。
ジリッ──ジジジッ──ブゥンッ──
最中:はぁ、また失敗か……もう一回場所を変えて試すか。
最中の手の平の中で青紫色の稲妻が走っていた、しかし灯ることはない。
同時刻
観星落
「黄泉」、観星落。首座がいる庭は、いつものように閑静だった。鯛のお造りは怠け者だ、お赤飯の他に、中庭のありふれた木戸を叩く者はいない。
鯛のお造りはいつもと違って、木の下に寝そべってのんびり花を見ながらお茶を嗜んでいなかった。和室の中に真面目な顔で正座し、眉間にしわを寄せながら微かに点滅している神棚を見つめている。
これは鯛のお造りが数年前に何日もかけて、編み出した外界と連絡を取る方法だ。外界にいる食霊は最中と自称し、桜の島の有名な占星術師だという。
最初はただ遠距離の連絡方法を見つけただけだと思っていたが、まさか星空と時空を超えて、二つの世界を繋げていた。
鯛のお造りは占星術師という言葉を聞いたことがなく、最中の世界では陰陽家は没落している。しかし同じ地理と文化を持っていることが判明した。話せば話すほど、二人は互いのいる世界の類似点と違いに気づいていった。
最終的に鯛のお造りと最中は文献から、「現世」と「黄泉」の概念を見つけこれでお互いの世界を区別した。
そのことについては、最中は誰にも話していない。鯛のお造りも、お赤飯以外には伝えていない。
お赤飯:首座さま、近頃少し様子がおかしいですよ、何かありましたでしょうか?
鯛のお造り:……お赤飯にまでバレてしまったか、ずっと眉間に皺を寄せているから?
お赤飯:そうではありませんよ。今までは「不精さや掻き起されし春の雨」でしたのに、近頃は毎日早起きをして、何かを待っているではないですか。
鯛のお造り:……おや、これは気を付けなければな。
鯛のお造り:そうだな……この間貴方に話した「現世」の事だが、「瓊勾玉」を「現世」へ送った後逃げてしまって数年経つが、最近居場所が掴めたようなんだ。
お赤飯:あら、それはおめでたい事ではないでしょうか?
鯛のお造り:おめでたい事ではあるんだけど、あの者と連絡が途絶えてしまってね……
お赤飯:首座さまはあの方をとても心配してらっしゃるのですね。
鯛のお造り:いや……ただ「瓊勾玉」が心配なだけさ、この「黄泉」の未来が懸かっているからね。
お赤飯:ふふっ──
鯛のお造り:どうかしたか?
お赤飯:「瓊勾玉」を送り出した日、首座さまは自由の身になったかのように、思うまま飲んだくれていたではないですか。その時は「黄泉」の未来について考えておられなかったんですか?
鯛のお造り:コホンッ。ひとまずは生きる事を求め、発展はその次さ。「瓊勾玉」を送り出す事は計画の第一歩だ、祝うべきだろう?
お赤飯:仰る通りです。
お赤飯の唇の端が、皮肉ではなく、全てを物語っているかのように穏やかな弧を描いていた。ただの雑談なのに、沈んでいた空気が一変した。
神棚が急に光りだした、途切れ途切れの言葉と、ぼんやりした姿が名が荒れてくる。お赤飯は笑みを絶やさないまま、鯛のお造りに会釈をし、黙って和室を退出した。
庭を出て扉を閉める前、お赤飯は思わず和室の方を見た。丹念に植えられた庭木が視線を遮ったが、彼女の思いを遮ることはできなかった。
お赤飯:もしかすると「黄泉」が再び「現世」に戻るきっかけが、あそこにあるかもしれませんね。
そう思いながら、お赤飯は変わらぬ穏やかな笑顔で、そっと庭の扉を閉めた。
忘れられた巫女
神様が創った大地は、命を貪っている。
つじうら煎餅:えーっ!
驚いたつじうら煎餅はパッと落雁の方を見ると、落雁は反射的に身を隠した。
つじうら煎餅:あたしたちの巫女様が──男?!不思議だね!ならどうして巫女って呼ばれているの?巫女は女の子しかなれないんじゃないの?
つじうら煎餅:落雁姉さん早く出て来てよーお願いだから、あたしの質問に答えてーこんなビックリ仰天なお話を聞いちゃったから、自分の声量を抑えられなくなっちゃったの。わざとじゃないから、早く出て来て!
落雁:……ごっ、ごめんなさい……気付いたら……隠れていました……
つじうら煎餅:ううん、大丈夫だよ、あたしの声が大きかったからだね。早く説明して欲しいな、本当に不思議でしょうがないの、姉さんにはわかる?なんでだろう?不思議だ!
落雁:えっと……御侍様が昔、こっそり教えてくれたことがあります……
つじうら煎餅:ほんと?
落雁:うぅ、でも……私が知っているお話も、御侍様の推測でしかありません……事実では、ないかもしれません。
つじうら煎餅:あたしにはさっぱりわからないから、推測でもいいから、教えてくれない?
落雁:わかりました……御侍様も秘密にしてとは言っていなかったので……でも、出来れば他のひとには言わないでくださいね。
つじうら煎餅:絶対に、絶対に、誰にも言わないよ!本当だよ!
落雁:わ、わかりました……「黄泉」と「現世」に関する伝説は、もう知っていますよね……
つじうら煎餅:もちろん!知らなかったけど、水無月兄さんが毎日言ってくるから、覚えちゃったよ。だからすごく不思議なんだ、あたしたち「現世」の大巫女様は女の子だと思ってたから!
つじうら煎餅:っていうか普通はそう思うよね?!話が逸れちゃった、早く理由を教えてー
落雁:え、えっとですね……
落雁:ただ、ほんの僅かな……人たちは知っていたんです、巫女様は男女の双子だって事を。
落雁:御侍様は言っていました……最初はお二方は遊びに出掛けるために、身分を入れ替えたんだと。
落雁:それから、巫女様たちは入れ替わりながら島を視察した……民たちの本当の状況と願いを見るために……
落雁:神罰が下された後、土地を失った民たちに……生きる空間を与えるため、巫女様は神様の目を盗み……天沼矛で新たな大地を創りました。
落雁:しかし、神様はこの世界に……自分で創った大地の存在しか……許せなかったんです。そのため、二つの大地の内一つを隠して、神罰から逃れなければならなくなりました。
落雁:巫女様たちは離れ離れになるしかなくなりました……それぞれ別の土地を守りながら。隠された方の土地を……「黄泉」、現実に浮かび上がっている方を「現世」と。
つじうら煎餅:あれ?じゃあ、隠されていた「黄泉」はとってもかわいそうじゃない?
落雁:はい……水無月さんが言っていました……「黄泉」と「現世」の入れ替えはもともと、五十年に一度と決められていたと。
落雁:そうすると……どの土地にも「現世」に戻る期間がある……巫女様も入れ替わりの時に……束の間だけど対面できると……しかし……
つじうら煎餅:あっ!この後のことは知ってるよ!貪欲な悪者たちが大巫女様を殺しちゃった……でも、なんで巫女様が男なのかについての説明は結局ないね。
落雁:それは、民たちを思ってのこと……神様を騙し通すため、巫女様たちは同じ格好をしていたんです……しかし最愛なる民たちによって……
落雁の声は次第に小さくなっていき、最後まで口にすることはなかった。
極光-幕
極光のもと、誰に呼ばれたのか……
無光の森の奥深く、隠れた山谷の中。
「心災」と「勾玉」が化した力が交わり、奇妙な均衡を保っていた。
中心にあるのは祭壇の跡地、その前には石の鳥居が立っていた。
純粋の色が海に交わるかのように、空には極光が現れた。
見えないはずの結界に衝突し、そこだけ極光の切れ目があった。
???:兄様、ここにいらっしゃるのですか、兄様……
???:感じます……貴方がここにいるのを……
???:兄様……
儚げに重なり合う声が、どこからともなく聞こえてくる。
まるでその声に応えるように、祭壇の前の鳥居は水鏡のようになり、波打った。
すると何もなかった祭壇の中央に、素朴な木箱が現れた。
???:兄様……やっと見つけました……
箱が現れると、先ほどの声は突如大きくなった。
結界も激しく揺れる。しかし、木箱に変化はなく、結界も再び静まった。
???:どうして……会いに来てくれないんですか……兄様……
悲しげな女性の声が山谷の中に広がる、それに答えてくれるものはいない。
心災Ⅰ
真ろ幻の感情が交錯する。
歪な木々が生い茂り密林を形成している。極光に照らされていても、光が通らない場所があった。そこはまるで誰かによって木で作られた通路のようになっている。
歩いていると、奇妙な風の音が聞こえてくる。耳を傾けると、それはまるで誰かの囁きにも聞こえた。
???:夢を見るのは好きか?
???:もし、ここは自由に夢を見れる空間だと言ったら、どんな夢を見たい?
???:思いつかない?じゃあ質問を変えよう。
???:あなたが夢見てきた中で最も美しい景色は何?
???:そこに誰がいる?
???:目を閉じて、よく考えてみて……
???:ああ、良い夢だね、そうだろ?
よく知っている声だが、口調がおかしい。まるであの者の声だけを別の者にすり替えたような、違和感があった。
???:私が誰なのか、気になるだろう?
???:私はね、羊かんだ……実は、感情をもっていないんだ。
???:私は生まれながらにしてそれが欠けていた。しかし私は、他人の感情を感じることが出来る。
???:まるで鏡のように、誰かの感情を映し、増大し、操ることが出来るんだー
???:だけど、私はs誰かの感情をこんな風に受け入れたくはない……まるでごみのように私に投げられた感情は、私を苦しくさせるんだ。
???:出来ることなら、正直にあなたの気持ちを私に伝えて欲しい。
???:私も、自分だけの複雑な感情をもちたい。
???:だけど、私は誰かの感情を模倣することしか出来ない、それを理解することは出来ないんだ……
???:しかし最近、この世界を浄化するよりも、私だけの新たな世界を創った方が良いと思い始めた。
???:苦痛も、痛みも、裏切りもない世界。
???:皆はやりたいことをやりたいままにやることが出来る
???:あれ?信じられないの?つまんないな、本当の事しか言っていないのにー
羊かんは無表情のまま、言葉を話す不思議な通路を見ていた。隣には笑っている水無月がいて、彼は楽しそうに先ほどまでの言葉を聞いていた。
羊かん:面白いか?
水無月:ああ、面白いよ。ハハッ、首領のその顔はどんな気持ちなんだ、ただの「心災」の現象だよ。僕の口調で君の心の内を話しているだけ、良いことじゃないかー
羊かん:処分しろ。
水無月:あー冷たいなーもう少し君の心の声が聴きたかったな!
???:口うるさい奴らを全員懲らしめてやりたい。とくに今目の前でベラベラ喋っている奴とか!
水無月:懲らしめる……僕の口調だけど……やっぱりちょっと怖いね……
???:お前のことだよ!張り付いたような笑顔をしているお前だ!私なんかよりも、お前の心の方が病んでいるだろうな。でも大丈夫、神国に行けば、全ての苦痛は消え失せるからー
???:お前のような陰気臭い奴も、同じように接してあげる!
水無月:……黙れっ!
羊かん:残しておいても良いだろう、行こう。
水無月:えっ……ちょっと首領、やっぱり処理しようよ、この通路を残したら君の秘密がバレてしまうかもしれない……って、待ってよ!おいっ!
美食への探求
不思議なキノコの噂。
ラムネ:本当にここに美味しいキノコがあるの?こんな薄暗いところに?!
お好み焼き:キノコは確かに暗くてジメっとした所が好きやからな、もしかするとほんまに美味しいもんに出会えるかも!
たこ焼き:うーん、それは微妙やと思うなぁ……おでんはどう思う?
おでん:……
お好み焼き:店主は美味しいもんにこだわりがあるおひとや、きっともっと良いもんを見つけてくれるはずや!
たこ焼き:そもそも、あのキノコはどないな見た目なん?
お好み焼き:確かうさ耳があって、色はピンク色やって聞いたんやけど……
ラムネ:だけどそんなキノコ聞いたこともないよ、店主はどう?
おでん:それは……
お好み焼き:店主は色んなこと知っとるから、きっと見たことがあるやろ。前にグルイラオの雑誌で読んだんやけどな、流行っとるキノコの品種やって。
おでん:随分前に輸入市場で見たことはあるけど、こっちでは確かまだ確認されていないはずだけどなぁ……
お好み焼き:つまり、もしウチらが見つけられたら、これから気軽にこの新しい品種のキノコが食べられるってことやな!
おでん:そうだね、お好み焼きの言う通りだ。皆にこの美味をお届け出来るなら、良いね……
ラムネ:よしっ!やる気出てきた!急いで探そうよ!
たこ焼き:うん!
幕が上がる
全ては計画通り。
落雁:水無月さん……ここに来た、全ての者は……全員予定していた範囲に入りました。
つじうら煎餅:今はいるけど、すぐに逃げちゃうかもしれないよ。
水無月:そう……待っていられない奴らはもうここから出ようとしているみたいだね。それは困るな、お芝居は役者が揃わないと始まらないからな。
水無月:落雁、つじうら煎餅、まずは全員を一か所に集めてくれ。
つじうら煎餅:だけど全員仲間じゃないよ?最初は一緒に行動してても、ちょっとしたらきっと分かれちゃう!
水無月:おっ。煎餅ちゃんは小さいけど、色々知ってるじゃーん。
つじうら煎餅:当たり前でしょ!神仙ちゃんなんだから、ちょっと占えばすぐにわかるよ!
水無月:じゃあ、僕たちの神仙ちゃん、ちょっと前に占ってくれただろ?その時は大吉だったんだけどなーまさか君の占い結果に矛盾が生じたりするの?
つじうら煎餅:あっ!それは……
水無月:ハハハッ。安心して奴らを誘き寄せれば良い、きっと神子様がどうにかしてくれるよ。
水無月:僕たちが大変な思いをして作り上げた舞台だ、来たんならちゃんと演出を最後まで見てってもらわないとなー最低限の礼儀ってもんでしょ!
落雁:はい……しかし……どうやって誘き寄せれば良いんでしょう……
水無月:一番簡単なのは、りんご飴にちょっかいをかければいい。「勾玉」についてテキトーに話題を投げれば、きっと全員に情報を流して追ってきてくれるだろうね。ね、簡単だろう?
落雁:ご、ごめんなさい……
水無月:なに?どうしたんだ、僕の手伝いが必要なのか?
つじうら煎餅:ふん!もちろんいらないよ!こんな簡単な仕事、あたしがちょちょいとやっつけてやるんだからー
落雁:しっ、しかし……
水無月:頑張ってねー
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