千秋の物語・峰回路転
峰回路転·壱
「龍脈」…それは先生が作た物語じゃないか?
皆は山の崖を回り、曲がりくねった道を登っていった。遠くからかすかな音が風に乗って聞こえ、すぐに消えた。
月の光が静かに照らし、誰も何も言わなかった。先頭の人が突然立ち止まり、腰の剣に手をかけ、他の人たちと目を合わせた。
皆は木の間に隠れ、重なった枝葉の隙間から、近くのぼろぼろの寺の前に、黒い服を着た人たちが焚き火を囲んでいるのが見えた。
黑服の人 甲:こんな場所に本当に秘宝が隠されているのか?かしらが俺たちをからかっているだけじゃないか!
黑服の人 乙:かしらが俺たちをだますような人だと思うか?おい、さっさと食べ終わって、この焚き火が目立ちすぎるぞ。
黑服の人 甲:そんな急ぐなよ、こんな荒野で、狼以外に誰がいるってんだ?火を焚けば、あいつらを脅かせるだろう…幸い、魚を捕れる池もあるから、狼を倒しに行くこともないさ。
黑服の人 甲:兄貴、そのガキ、まだ起きないのか?捕まえたばかりで気絶してる。俺が変装までして、苦労して釣り上げたのに。
黑服の人 乙:後であの池にぶん投げてやろう。本当に気絶してるのか、ただのふりか、どちらにしても、俺に道を案内させるために起きろ!!
黑服の人 甲:兄貴が言った通りだ!おい、ガキ、聞こえるか?目を開けないと後で泣くことになるぞ。
黒服の人が横にかかっていた布を引き下ろすと、その中の小さな子供は縛られ、顔色が真っ白で目を閉じていた。
ルージューホーシャオ:あれは小吊梨汤(シアオディアオリータン)だ!クソ野郎ども、よくもこんなことを!
白酒:待て、まだ出て行けない、もし罠があるかもしれないから。
ルージューホーシャオ:待てない!小吊梨汤、今助けに行く!
第三幕 波乱が起こる
卤煮火烧(ルージューホーシャオ)はすでに木の茂みから飛び出し、黒服の男たちはその音を聞き、刀を構えて立ち向かった。白酒と羊散丹はそれを見て急いで追いかけ、戦いの準備を整えた。
黑服の人 甲:兄貴!魚がかかった!
黑服の人 乙:ふふ、じゃあ網を引き上げろ!
ルージューホーシャオ:?!
羊散丹:……
白酒:しまった、罠だ!
皆が反応する前に、何重にも絡みつく網が木の上から落ちてきて、彼らをしっかりと縛りつけた。手放した武器も、得意げな黒衣の男たちに蹴飛ばされた。
黑服の人 乙:ははは、さすがかしら、すべて見通しだ。こいつらは俺が思ったよりも簡単に引っかかるな!
黑服の人 甲:その通り、寒い風の中で待った甲斐があったぜ!おい、無駄に抵抗するな、これは兄貴がわざわざお前たちのような飨霊に対処するために持ってきた網だ。
ルージューホーシャオ:陰でこそこそして、何が男だ!俺を放して堂々と戦おうぜ!
黑服の人:甲:バカか、お前に勝てないって分かってるから、こんな手を使おうとしただけさ
黑服の人 甲:おお、この中に美人もいるのか?かしらが言ってなかったけど、なかなか魅力的だな。
羊散丹:どけ!お前の手を離せ!
黑服の人 甲:え、男だったのか?!なかなか根性がありそうだな。でもまあ、見た目が良ければそれでいい!
ルージューホーシャオ:クソ野郎、何をするつもりだ!あいつから離れろ
突然、枯れ葉が鋭く飛び、黒服の男の手のひらに当たった
黑服の人 甲:シュー―痛い痛い、兄貴、誰かが葉っぱで俺を打った!
白酒:ちっ、外れたな。本当は顔の皮を削ろうと思ったんだ。
黑服の人 甲:お前……!!兄貴、かしらは網の中では力が使えないって言ってなかったか?
黑服の人 乙:ふん、もちろん力は使えないさ。心配するな。葉っぱぐらいで命を取るわけがない。俺たちの目的を忘れるな、さっさとやれ。
黒服の男は警戒しながら網の中の数人を見回し、白酒に目を止めた。
黑服の人 乙:おい、お前がこいつらのリーダーだろ?さっさと秘宝がどこにあるか教えろ!言えば命は助けてやる!
白酒:私の知る限り、ここに財宝なんてない。
黑服の人 乙:ふん、俺たちが探しているのは財宝じゃない!『救世の秘宝』、『龍脈』だ!
白酒:……
黑服の人 甲:兄貴、気をつけて!あの白髪の男、殺すような目をしてる!また隠し武器を使ってくるかも!
黑服の人 乙:うるさい、黙ってろ……
黑服の人 乙:おい、お前、絶対に『龍脈』について知ってるだろ?
白酒:『龍脈』はすでに消えた。お前たちの頭が知らないのか?
黑服の人 甲:何?!『龍脉』(龍脈)が消えた?絶対にあり得ない!かしらはこの寺……
黑服の人 乙:黙れ!何を言っているんだ?
白酒:おや?この寺に何か秘密があるのか?もしかして『龍脈』に関係が?
黑服の人 乙:今聞いているのは俺たちだろう、お前じゃない!素直に言え、「龍脈」を見つける方法は何だ?
白酒:答えられない、だって私も知らないから。もしお前たちのかしらが何か知っているなら、教えてもらってもいいけど。
黑服の人 乙:お前……!
ルージューホーシャオ:……ぷ。
黑服の人 乙:何を笑っているんだ?!
ルージューホーシャオ:笑わせんな。まさか本当に噂を信じて『龍脉』を探してるのか?それって先生が作った物語じゃないか?
峰回路転·弐
初めてお前に会った時から分かってたよ。お前は俺と同じ道を歩むやつだってな。
ルージューホーシャオ:笑わせんな。まさか本当に噂を信じて『龍脉(龍脈)』を探してるのか?それって先生が作った物語じゃないか?なあ、羊散丹
羊散丹:金必多(富豪スープ)の話によると、あいつらのかしら、たぶん先生の熱狂的なファンなんじゃないかってさ。
ルージューホーシャオ:先生の劇がこんなに素晴らしいのも災難だな……また一人おかしくなったよ。
黑服の人 乙:おい、お前ら、何を言っているんだ?!黙れ、笑うな!
黑服の人 甲:兄貴、こいつらと話しても無駄だ!さっさとこいつらを池に沈めてしまおう!いつまで口をきいてるんだ!
黑服の人 乙:そうだな、時間を無駄にするべきじゃなかった!
黒服の男たちは網に縛られた皆を引き上げ、池へと近づけた
黑服の人 乙:怖いか?今すぐ謝れば命は助けてやるぞ。
ルージューホーシャオ:こんな手で脅そうって?かかってこい!俺たち泳げるからな!
黑服の人 乙:ふふ、この網がある限り、お前たちがどうやって泳げるって言うんだ?
水しぶきが上がると同時に、反対側の木立から一つの影が素早く飛び出してきた。
黑服の人 甲:まずい――兄貴!こいつらには援軍がいる!
黑服の人 乙:じゃあ、何をしてるんだ?もう罠はないぞ、早く逃げろ!
明四喜:今逃げるのは遅すぎる。
黒服の男たちは来た者の攻撃が激しいのを見て、戦いながら退却せざるを得なかった。
黑服の人 乙:……ちょっと待ってくれ!これ以上戦うと、お前の仲間が水の中で溺れてしまうぞ!
黑服の人 甲:そうだ、こんな寒い時期に溺れないとしても、凍死するだけだ。あの網があれば、こいつらはどうにもならん!
明四喜:……
相手が気を取られている隙に、黒服の人達は慌てて逃げ出し、武器を捨てて夜の闇に消えていった。
その頃、火のそばにいた子供はようやく目を開け、焦った顔をしていた。
シアオディアオリータン:やっと来た……早く彼らを助けて!私の縄には仕掛けがある、動けない!
明四喜:安心しろ、彼らは大丈夫だ。
池のそばにいる人が外套を脱ぎ、霜のような月光に照らされた。その時、小吊梨汤(シアオディアオリータン)は鮮やかな魚の尾びれが一瞬見えたような気がした。再び目を凝らすと、その人物はすでに水中に飛び込んでいた。
シアオディアオリータン:……あれは何だ?魚……?
深い池の中で、冷たい水が体に絡み、どんどん底へ沈んでいく白酒は、水草が揺れるのを見ていた。
意識がなくなる直前、彼は不思議な色を見たような気がした。
***
東海 玄武国
青年玄武:もうバレてるぞ、出てきたらどうだ?
明四喜:……
青年玄武:ははは、やっぱりあの岩の後ろに隠れてたか!俺の勘は当たるね!
明四喜:……また俺をからかってるのか?
青年玄武:魚がエサに食いつくように、毎回同じだ。
明四喜:……
青年玄武:おい鮫人、そんなに急いで逃げるなよ!俺、もう三回も来てるんだぞ。三顧の礼って言葉、知らないのか?
明四喜:……前回は、海の怪物を退治してくれて感謝する。
青年玄武:まぁ、少しは分かってるじゃないか。礼を言うなんて。気にするな!でも、本当に俺に礼をしたいなら、一緒に来たらどうだ?
明四喜:……
青年玄武:お前ひとりの力じゃ、この東海を守るのが精一杯だろう。でも、この広い世界にはまだたくさんの山や川、人々がいるんだ。
青年玄武:俺と一緒に来い。一緒にこの世を平和にして、みんなが安心して暮らせる世界を作ろうぜ。そしたら広い海のどこでも好きに泳げるだろ?
明四喜:……
青年玄武:おっ、今回は少しは成長したな。すぐ尻尾で叩いたりしなくなったじゃないか。
明四喜:……なんで俺なんだ?
青年玄武:初めてお前に会った時から分かってたよ。お前は俺と同じ道を歩むやつだってな。
明四喜:……
青年玄武:手を差し出して何だよ?今度は拳で勝負する気か?
明四喜:……いや、ちょっと陸に上がるのを手伝えよ。それで一緒に行けるからさ。
青年玄武:はは、やっと分かったか。よし、しっかり掴まれ!
***
人魚が差し出した手は、歴史と時間を越えるように、水をかき分け、水草を払いながら、池の底へと沈んだ男をしっかりと掴んだ。
複雑に絡まる記憶は、水の流れのように次第に消え去り、冷たい空気が鼻と口に流れ込む。白酒が勢いよく目を開けると、穏やかで凛とした顔がすぐ目の前にあった。
白酒:……?
羊散丹:目、覚めたか……。まさか君は一番泳げないとは思わなかったな。早く火にあたって温まれ
第三幕 波乱が起こる
峰回路転·参
偽物の中に本物があり、本物の中に偽物がある
パチパチと音を立てる焚き火が周りを照らし、このクモの巣だらけの朽ちた寺は空っぽで、止まらない夜風だけがうなりながら通り抜けていく。
羊散丹:火を囲んで温まって。
白酒:…他の人たちは?
羊散丹:森の中で薪を拾いながら、出口を探している。
白酒:私、結構寝ていたのか…?
羊散丹:うん、さっき君が気を失っていたとき、どうやら悪夢を見ていたみたいだ。
白酒:そうか、覚えていない。
羊散丹:君が「魚」って何度か叫んだのを聞いたけど、近づいて聞こうとしたら、君は目を覚ました。
白酒:…魚?さっき夢の中に大きな魚がいたような気がする。
羊散丹:人が溺れるとき、そんな夢を見ることがよくあるんだよ。魚に乗って水から上がるんだ。
白酒:本当に…?
羊散丹:先生がそう言っていたんだ。先生は「金魚が落ちた漁師を助け、その後その漁師と一緒に暮らす」という物語を書いたことがある。
白酒:面白いね、君たちの先生は本当に博識だ。いろんな物語を知ってるんだね…でも、どれが本当か分からないけど。
羊散丹:私もわからない。
白酒:……
白酒:…じゃあ、先生の新しい劇で出てきた『龍脈』については知ってる?
羊散丹:うん、先生が言ってたけど、『龍脈』は『救世の秘宝』だって。
白酒:それで?
羊散丹:それだけ。
白酒:……
白酒:…劇の中で「龍脈」の話は本当に生き生きと描かれていた。君たちの先生、何かその話と関係があるんじゃない?
羊散丹:先生のことが特に気になるんだね。
相手の疑問に満ちた真剣な顔を見た白酒は、自然と視線をそらし、火をかき混ぜながら言った。
白酒:…そうかもしれない。実は、私は彼のファンだから。
羊散丹:やっぱり…でも、君は先生に夢中になりすぎないほうがいいよ。
白酒:…それは心配しないで。
羊散丹:「真実のように見えるものは、実は嘘だ」って、先生がよく言うんだ。劇の中の人物が一番怖いのは、物語に入り込みすぎることだ。
白酒:……
ルージューホーシャオ:羊散丹、白酒!出口が見つかったよ!
半開きの扉が押し開けられ、少年が入ると共に寒気が流れ込んできた。
羊散丹:本当に?
ルージューホーシャオ:うん、君の布で道に印をつけたから、今すぐ帰れるよ!
羊散丹:待って…
羊散丹:……?!
羊散丹が声を出す前に、白酒は胸を押さえて苦しそうに倒れた。急いで駆け寄った羊散丹が彼を支えた。
ルージューホーシャオ:白酒!!大丈夫か!?どうして倒れたんだ!
白酒:…突然胸が痛くなって…
ルージューホーシャオ:胸が痛い?渊客が君を押した時のことかな?あれ、かなり強く押してたし、口も使って…あ、白酒!
羊散丹:本当に気を失ったみたいだ。
ルージューホーシャオ:え?どうしよう!
羊散丹:やっぱり、一晩休ませた方がいいな。明日また出発しよう。
ルージューホーシャオ:それもいい。じゃあ、俺は続き小吊梨汤(シアオディアオリータン)たちと薪を運んでくるよ!
羊散丹:気をつけて。
少年が去った後、羊散丹はほっと息をついた。そばにいるあの人は相変わらず目を閉じたまま動かず、その表情にはどこか微妙な硬さが浮かんでいる。羊散丹は首を振り、彼が退屈しないように、静かに歌を口ずさみ始めた。
遠くまで響くリズムが、パチパチと弾ける音とともに静かに広がっていく。火の明かりと影は、まるで芝居の中で姿を変え岸を離れる錦鯉のように、夜の深みへと泳いでいった。
峰回路転·四
私は恩を忘れるような男じゃない。
夜更け 廃れた寺
夜中、風が強く、月明かりが薄暗い。この廃れた寺では、まだ焚き火の残り火が燃えており、疲れ果てた皆はすでに安らかに眠っている。
しばらくして、一人がそっと起き上がり、静かに扉を閉めて外に出た。
静かな夜の中で、不意に響くカラスの鳴き声が暗闇を引き裂き、眠っている人々の夢の中にまで届くかのようだった。
白酒:「龍脈」「黒服の男」「山河陣」……どうやら思った以上に厄介な話だな……。
白酒:ここまで来た以上、手ぶらで帰るわけにはいかない。地の底まで掘る覚悟で、「龍脈」の秘密を必ず見つけ出す。
独り夜道を歩きながら白酒が考え込んでいるうちに、背後から足音が近づいてきた。白酒は剣に手を伸ばしかけたが、すぐに手を止めた。
白酒:渊客?やはり君か。この足音でわかったよ。
明四喜:ほう?俺の足音がどうかしたか?
白酒:他の人よりも重く聞こえる……前から気になっていたんだが、もしかして足を怪我したことがあるのか?
明四喜:怪我ってほどじゃない……昔からの病気だ。少し歩くだけで痛むんだ。
白酒:そうだったのか。私は何人かの名医を知っているので、外に出たら彼らに診てもらうことができる
明四喜:はは、ありがとな……てっきり、出たら私のことなんか忘れるかと思ってた。
白酒:そんなわけないだろう?君は今日、私の命を救ってくれたんだ。私は恩を忘れるような男じゃない。
明四喜:うん、君ならそうだな。
明四喜は静かに微笑み、余計な感情を隠した。明月は陰雲に覆われ、さらに暗くなった。
明四喜:……こんな夜更けに、一人で何をしている?
白酒:別に、眠れなくて散歩していただけだ。
明四喜:じゃあ、私も付き合う。
白酒:…うん。
明四喜:ところで、気づいたことはないか?この場所、どこか不自然な感じがする。
白酒:どういうことだ?
明四喜:もう真冬だというのに、ここでは草木が枯れず、まだ青々としている。
明四喜:……特にあの寺の周り、さっき満開の春の花まで見かけた。
白酒:……
白酒:どうやら劇場の先生が大金を使って壁でも作ったこの場所は、ただの荒れ地ではないようだ。
明四喜:ふふ、今夜不思議な事はもう十分だ……これ以上何も起こらないといいけど。
その言葉が終わると、遠くから耳をつんざくような大きな音が響き、森のカラスたちが驚いて飛び立った。
明四喜:あの音……寺の方向か?
白酒:行ってみよう。
二人が廃寺に着くと、そこはめちゃくちゃで、卤煮火烧(ルージューホーシャオ)だけが焦って壁を叩いていた。
白酒:何かあった?
ルージューホーシャオ:この壁には仕掛けがあるんだ。さっき、小吊梨汤(シアオディアオリータン)と羊散丹がどこかを触ったら、急に落ちちゃったんだ!
白酒:仕掛け?
ルージューホーシャオ:みんな、早く手伝って!一緒にこの壁を壊そう!
白酒:ちょっと待って、もし仕掛けがあるなら、力任せにやるとダメだ。
白酒は卤煮火烧を止めて、手に持っていた火を壁に近づけた。揺れる火の光で、壁に何か模様が浮かんでいるのが見えた。
白酒:この壁、確かにおかしいな。
明四喜:うん、少しボロボロだけど、よく見るとまだわかる。
ルージューホーシャオ:本当に、この壁には二匹の大きな蛇みたいなものが描かれてるのか?丸い物もあるけど?
明四喜:蛇?いや、これは明らかに二匹の龍が玉を遊んでる絵だ
ルージューホーシャオ:え?それがわかるの?
明四喜は少し笑みを浮かべ、白酒を見た。彼は壁の模様にじっと見入っているようで、何か思い出しているかのようだった。
白酒:原来是这样……如果没猜错,这几个珠子便是机关了。
(意訳:そういうことだったのか……もし私が正しければ、この玉がその仕組みだ。)
峰回路転·五
この世の耀の洲が二度と同じ過ちを繰り返してはならないことだ。
白酒:原来是这样……如果没猜错,这几个珠子便是机关了。
(意訳:そういうことだったのか……もし私が正しければ、この玉がその仕組みだ。)
ルージューホーシャオ:ねえ、白酒、何をつぶやいてるんだ?それとも、まだ壊し続けるか?
白酒:君たちはそのままで動かないで。
ルージューホーシャオ:え?何をするつもりだ…?まさか、この玉が動かせるのか?!
ルージューホーシャオ:うわぁあああ――!
大きな音が響いた後、傾いていた壁と床は元の状態に戻り、誰もいない廃寺には、消えかけの松明だけが残っていた。
しばらく後
地下宮殿
薄暗い霧の中、ほんのわずかな光がきらきらと輝いていた。冷え切った空気が骨まで染み込むようで、無限に広がる暗闇が、まるで地底に閉じ込められた長い時を感じさせるかのようだった。
白酒は必死に目を開け、霧の中を見渡したが、他に何も見えなかった。ただ霧が漂うだけだった。
白酒:「渊客……?卤煮火烧……君たちはどこに?」
(※渊客は明四喜のこと、卤煮火烧はルージューホーシャオ)
白酒:……?
遠くから響く音が霧の中を漂い、さらに深い闇の中から、かすかな歌声が聞こえてきた。
第四幕
???:……千里の大地が光を放ち、しかし一夜にして雪が覆い尽くす。山河陣の中に枯れた骨が積まれ、眠龍山の下には悲しい英霊が眠る。
???:旗は赤く染まり、空を遮り、鉄馬は狼煙を踏み砕いて進む……魍魎が横行し、龍は血を流しながら鳴き、明主を待ち望み、失われた大地を取り戻すことを願う
悲しげな歌声が遠く聞こえ、霧の中の妙な香りが急に強くなり、白酒の心は迷い、しばらく自分がどこにいるのか忘れていた。
どれほどの時が過ぎたのか、歌声が止み、霧の中から高身長の人影が現れた。
白酒:……誰だ?
白酒:……
白酒:あなたは……一体誰なんだ?
オシドリ粥:私は誰か、今は重要ではない。
白酒:……それなら、なぜここに現れた?
オシドリ粥:ふふ、ここの香りは心を惑わせる効果がある、もしかしたら……私は君の心の中の幻想かもしれません。
白酒:そうか。
鈴の音が響き、冷たい光を放つ剣気が一瞬で青衣の若者の髪の端を切り落とし、頬に血の跡がついてきた。彼は息を呑んだが、顔色一つ変えなかった。
白酒:幻想なら、殺しても構わない。
オシドリ粥:……
オシドリ粥:ふふ……焦らないで、私を殺すのは難しいことではない。しかし、もし本当にそうしたら、「龍脈」の後の話は聞けなくなりますよ。
白酒:「龍脈」……あなたは何を知っている?
オシドリ粥:前回私が話していたことを覚えていますか?……そう、「輪廻」。
白酒:……?
オシドリ粥:すべてのものは三千の世界の中で、一瞬の間に生死を繰り返す。過ぎ去った者たちの姿は消え去り、私たちの命もまた、川の流れのように集まり、雲が立ち昇り、霞のように広がり、そしてまた雨となって降り注ぐ。そうして無限に繰り返されていく……
白酒:簡単に言え。
オシドリ粥:ふふ……前回よりも耐性が少なくなったようですね。
白酒:前回も暗い地下でこんなふりをしていなかったじゃないか。
オシドリ粥:まあ、君の要求に応えて、簡単に言うと…「龍脈」はかつて絶たれたことがある。
白酒:ありえない。「龍脈」が本当に断ち切られたなら、耀の洲はとっくに消えてしまったはずだ。
オシドリ粥:違う、それは現世ではなく、別の時空のことだ。あの時の耀の洲は、確かにすぐに滅びてしまった。
白酒:……?
オシドリ粥:もちろん、過去の事は重要ではない。大事なのは…この時、この世の耀の洲が二度と同じ過ちを繰り返してはならないことだ。
白酒:お前は…
青い衣の青年は笑いながら、指を伸ばし、目の前の人物の唇に軽く触れて、問いを止めるように首を振った。
オシドリ粥:もう私が誰なのか、何故ここにいるのか、目的は何かを聞いても答えることはない。
オシドリ粥:「私」を探るよりも、他のことを考えた方がいい…。すでに仕掛けを解いてここに来た君は、重要なことを思い出し、この場所がどこかも知っているだろう。
オシドリ粥:一切才刚开始……只有你,玄武转世,才能唤起沉睡的「龙脉」。
(意訳:玄武の生まれ変わりであるあなただけが、眠っている「龍脈」を目覚めさせることができる。)
峰回路転·六
君は一度も、私が君のために陣を築いて死ぬことを望んでいるか聞かなかった。
オシドリ粥:一切才刚开始……只有你,玄武转世,才能唤起沉睡的「龙脉」。
(意訳:玄武の生まれ変わりであるあなただけが、眠っている「龍脈」を目覚めさせることができる。)
白酒はその言葉を聞いて心の中で一瞬、冷たいと感じた。しかし、青い衣の青年は手を振って別れを告げ、周りの白い霧が急に濃くなった。
白酒:待て、またこっそりと逃げようとしているのか?
オシドリ粥:ふふ…早く行け、劇がいいところになっている。
白酒はぼんやりとした気分になり、霧が目の前を覆い、その中でかすかな歌声が再び響き始めた。
???:……ただ言う、玄武はかつて陣を築き、千古の罪を恐れず孤独に行き、陣に足を踏み入れ、万千の魂を祭り、ただ言う、天下を救わん。
***
宮殿
高麗人参:陛下、どうか命令を撤回してください!
青年玄武:鬼蓋、もう言わなくてもいい。私は決めた。
高麗人参:この方法で多くの無辜の命を捧げることになる。たとえ忠義を尽くす者たちが喜んで陣に命を捧げても、この因果の障り…消えることはない、絶対に無理だ!
青年玄武:すべて私一人が背負う…鬼蓋、私は恐れない。
高麗人参:陛下…!駄目だ!
青年玄武:松花蛋、彼を外に出せ。
※松花蛋はピータンのこと
ピータン:……
ピータン:…はい。
涙を流すような懇願の言葉が遠ざかる。しばらく後、沈黙を守っていた忠実な護衛が再び病床の前に立ち現れた。
青年玄武:…松花蛋、君はどう思う?
ピータン:私は命を懸けて陛下に従います。
青年玄武:良い…咳…千古の罪、万民の怨み…それは私も知している。しかし、今のはこの方法だけだ。
青年玄武:耀の洲の生きる道のために…私はやらねばならない。
ピータン:陛下……
青年玄武:鬼蓋の心は純粋すぎて、分からないことがある…松花蛋、しっかりと彼を見張ってくれ…
ピータン:はい…
青年玄武:はは…そんな顔をしないで。私はまだ生きている…これから、私たちはまだやるべきことがたくさんある。
ピータン:はい、陛下の命じるまま、命を懸けてもかまいません。
青年玄武:残念だ…泉はどこに行ったのか…まぁ、彼の性格では…鬼蓋よりも頑固だろう。
***
静かな地宮の中で、燐火がかすかに輝き、悲しげな歌声が遠ざかり、霧も消えていった。
白酒はついに夢から目覚め、薄暗いろうそくの火がともり。目の前の人影が徐々に見えてきた。
白酒:…渊客?
目の前の人物は答えず、ただ軽いため息が聞こえた。
明四喜:君は一度も、私が君のために陣を築いて死ぬことを望んでいるか聞かなかった。
白酒:……?
明四喜:そして私も一度も言えなかった。君は世界のために命を投げ出すことを望んでいるが、私は世界を犠牲にしてでも、君一人を生き返らせることを選ぶ。
白酒:?!
明四喜:ついに再会できたが、やはり私を忘れてしまった。
ろうそくの光が夢のような影を映し出し、記憶の中の鮫人がまた手を差し伸べた。ただその目には悲しみが溢れていた。
白酒:…渊客。
白酒:「泉室潜織して絹を巻き、渊客慷慨して珠を泣く」どうして気づかなかったのか、渊客が鮫人で、君が明四喜だなんて。
明四喜:明四喜、はは…君は以前、私をそう呼んだことはなかった。実はその名前はあまり好きではない。
白酒:……
明四喜:世の中に本当に喜ばしいことなどない、すべては恨みと憎しみが交わり、愛は必ず別れへと続く。
白酒:なぜ最初から自分の正体を隠していたのか、君は何を目的としてここに来たのか?山河陣のためか?それとも…「龍脈」のためか?
明四喜:それらではない。私はただ君のために、ずっと待っていた、今日という日を。
白酒:……私は玄武ではない。
明四喜:ただの名前だ、それに、今日、私は君とこれについて議論しに来たわけではない。
明四喜:我知道你一直在寻「龙脉」,果然,也只有你能受到它的指引……不妨看看身后吧。
(意訳:あなたが「龍脈」を探しているのは知っている、もちろん、それに導かれるのはあなただけだ……後ろを見た方がいい。)
峰回路転·七
せっかくだから、この機会に過去の事をじっくり話しましょうか
明四喜:我知道你一直在寻「龙脉」,果然,也只有你能受到它的指引……不妨看看身后吧。
(意訳:あなたが「龍脈」を探しているのは知っている、もちろん、それに導かれるのはあなただけだ……後ろを見た方がいい。)
白酒:……?!
霧が晴れた後、白酒は自分がこの暗い地下宮殿の中をどれほど遠くまで歩いてきたのかに気づいた。
蝋燭の火が部屋を照らし、背後の、年月に侵食された石の扉は、かつて金箔で輝いていた記憶のものではなく、くすんだ龍の模様が埃をかぶっていた。
白酒:龍脈の寺…こここそが本当の入り口だったのだ!
明四喜:ふふ…どうやら、過去の事、完全には忘れていなかったようだ。
明四喜:私の努力も無駄ではなかった。
白酒:?
白酒が質問を投げかける前に、暗闇の中から魅力的な笑い声が響いた。
チキンスープ:ふふ~明四喜様の神策は、無駄になるはずがないわ~
白酒:聖女?ここで何をしている?
チキンスープ:白酒、久しぶりね~私がここに来た理由?もちろん、あなたと同じ、「龍脈」のためよ。
ほほえみながら歩み寄った女性が、明四喜の側に立ち、一振りの冷たい剣気に向かってきた。
白酒:「龍脈」、聖教が手を出すことは許さない。明四喜、その女から離れろ。
チキンスープ:ふふ、白酒、全然変わってないね。会うたびにいつもこんなに容赦ないんだから~明四喜様、どう思いますか?
明四喜:……
白酒:?
明四喜は淡々と手を伸ばし、目の前の人の剣の柄を押さえた。その瞳の中の感情は掴みどころがなかった。
チキンスープ:ふふ~正解だよ、明四喜様の見事な策のおかげで、私たちはあなたを通じて「龍脈」の場所をこんなにも早く見つけたの。
明四喜:そうだ。
明四喜:もし私と聖教がいなければ、今、あなたはここに立っていなかっただろう。
白酒:馬鹿な!
チキンスープ:ふふ……どうやら白酒、君がまだ理解していないことがたくさんあるようだね、まあいい、せっかくだから、この機会に過去の事をじっくり話しましょうか
***
陣を築く前夜
???:鬼殺大陣……?ふふ、もちろんその禁法は知っていますが、あなたが私にどんな取引を求めているのかは分かりませんね。
明四喜:もし聖主が私の条件を承諾してくれれば、今後、私は聖教に尽力し、犬馬の労を惜しみません。
???:おや?どんな条件ですか、話してみてください。
明四喜:私は一人の命を生き返らせたいのです。
???:ふふ……鬼殺大陣はその殺気が最も強く、誰かが陣に入れば、二度と生き返ることはありません。
明四喜:もしその人を天地の精霊として転生させるとしたら?
???:天地の精霊?それは生身とは異なり、試す価値はあるかもしれませんね……
明四喜:……詳しく教えてください。
???:陣法の肝心な部分を変えし、その人を大陣の中心に置けば、天地をひっくり返すことができるかもしれません。
明四喜:……本当に?
???:この方法は、陣中の万千の英霊の力を借りたため、その人が転生した後、英霊たちは徐々に弱まっていくでしょう。
???:ふふ……そうなると、万人の命を借りてその一人を生き返らせることになりますね。その後の因果は誰にも予測できません。全てはあなた一人が背負うことになります。
明四喜:……
明四喜:……取引成立。
第四幕
峰回路転·八
もはや生老病死に縛られることはない。悪くないだろう?
その時 地宮の一角
シアオディアオリータン:羊散丹、あちらはどうなっているの?知らない声が聞こえてきたような気がするけど。
羊散丹:はっきりとは見えないけど、どうやら女性が来て、白酒たちと話しているみたいだ。
シアオディアオリータン:え?変だな、先生は女性が来るとは言っていなかったのに。
羊散丹:うん……まずは様子を見るとしよう。
ルージューホーシャオ:羊散丹!小吊梨汤(シアオディアオリータン)!やっと見つけたよ!
後ろから飛び出してきた少年に、二人は驚いた。小吊梨汤はあまり考えず、すぐに少年の開いた口を押さえた。
ルージューホーシャオ:うむうむ――う?
シアオディアオリータン:しーっ、今は騒いではいけない、あっちでは肝心な場面になっている
ルージューホーシャオ:うむ……?うむうむ!うむうむうむうむ……
羊散丹:そう、白酒たちだよ、そして一人の女性がいる、誰かは分からないけど。
ルージューホーシャオ:うむ……
シアオディアオリータン:わぁ……羊散丹、すごいな、そんなことまで分かるなんて!
羊散丹:彼を解放してあげて、もう呼吸できなくなりそうだよ。
シアオディアオリータン:ええ……えええ!分かった!ごめんね、卤煮火烧(ルージューホーシャオ)……
ルージューホーシャオ:ふぅ……やっと息ができる……君たちはどうしてここに?白酒たちはどうなっているんだ?
シアオディアオリータン:言うと長くなるけど、今はまだ私たちが登場する時じゃない。まずは彼らの進展を見よう。
ルージューホーシャオ:……登場?
ルージューホーシャオ:ちょっと待って――白酒が渊客(※明四喜)の首に剣を突きつけている!あの妖しげな女のせいか!!ダメだ、止めに行かないと!
シアオディアオリータン:待て……!!!
ルージューホーシャオ:うむうむうむ……!!
羊散丹:落ち着いて、タイミングを待つんだ。
ルージューホーシャオ:うむ……
最終幕
もう一方では、部屋のろうそくの火が静かに揺れ、剣先の冷徹な光が骨までしみ込むような厳しい意志を反射していた。
白酒:明四喜、彼女が言ったことは本当か?君が聖教と手を組んで山河陣を壊したのは、私のため、いや…玄武の転生のためか?
明四喜:その通りだ。
白酒:……
明四喜:今や君は飨霊となり、もはや生老病死に縛られることはない。悪くないだろう?
白酒:……馬鹿な!
明四喜:……
チキンスープ:あの、今は二人が昔の話をする時ではないだろう?明四喜様、そろそろこの扉を開ける方法を考えたほうがいいのでは?
白酒:黙れ。
チキンスープ:ふふ……そのような目で私を見るのをやめてくれ、怖い。
白酒:お前たちがこれからどんな事を企んでいるかは知らないが、『龍脈』には手を出させない。
チキンスープ:そうか。
チースタン(※チキンスープ)は暗闇の中で手を叩くと、たちまち地宮の四方から黒服の者たちが押し寄せてきた。
チキンスープ:そろそろ違う方法に切り替えるべきだな。
黒服の者たちが一斉に押し寄せ、白酒は剣を抜いて立ち向かう。その時、暗闇の中から馴染みの声が響いてきた。
ルージューホーシャオ:あの女、どこから援軍を呼んだんだ――?
シアオディアオリータン:こんなに多く……先生はそんなこと言ってなかったはず……ダメだ、白酒を助けに行かないと!
ルージューホーシャオ:羊散丹、お前はどうしてそんなに急いで行くんだ!まあ、とうとう俺たちの出番だな!白酒、今助けに行く――
突然現れた羊散丹たちが黒服の者たちの陣形を乱し、チースタン(※チキンスープ)も自ら戦場に出てきて戦わざるを得なくなり、他のことに構っていられなくなった。
その一方で、目の前の黒服の者たちを片付けた後、明四喜は白酒の袖を引き寄せた。
明四喜:今だ、扉を開けろ。
白酒:近寄るな。
明四喜:私を信じないのか……呵、構わない。もし間違っていなければ、この扉の仕掛けは上のものと同じだろう。
(呵(か)とは、大声で笑っているさまを表す表現。 文語的な表現。)
白酒:?!
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