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神隠し・ストーリー・彼岸之处1~5

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序章-再会


神国


 神国の昼時、美しいオーロラが鬱蒼とする中庭を彩る。腰まで届く草の葉がさらさらと揺れ、その中にしゃがみ込む人影が時折姿を現す。


りんご飴:うわーせんべい先生の花坊、おっきいねぇ!半日も除草してるのにまだーーヘックッシュン、ヘクシュン!

草加煎餅:……りんご飴、大丈夫?

りんご飴:なんか……空気中の花粉、多くなってないーーハクシュン!も、もうムリ、外出て一息つきに行くわ!


 茂密な草葉がワッと両側へ払われ、咲き誇った深い紫色の花が爛漫に舞い踊り、花坊から急いで飛び出した少女のくしゃみを誘った。


りんご飴:ふぅーー一気にくしゃみを35回もすると思わなかったわ……

りんご飴:せんべい先生、この「薬草」って一体なんなの?今まで花粉症になったことないのに、おかしいわ。

草加煎餅:さあ……でも、こんなに大きなではなかったはずなんてすが……。


 二人は黙って花坊を見つめ、ボウルのように大きな花が重なり、まるで甘い果実のように、ブンブン鳴る蜂や蝶を引き寄せている。そよ風が吹くと、りんご飴はすばやく鼻をつまんで、より遠くの隅っこに飛んでいった。


りんご飴:ん……そうだよね、このお花たち、ちっちゃくてかわいかったのに!なんでこうなったわけ……

かき氷:せんべい先生ーーりんご飴!やっぱりここにいた!


 庭の木製扉を押し開けるかき氷の後ろには弱々しい見知らぬ姿がついていた。


かき氷:森で迷子になった食霊に遭遇しちゃって、しかもワタシたちのことを知ってるみたいなんだけど、この人が誰だか全然思い出せないの。

かき氷:大事なことを私たちに教えたいっていうから連れてきたの……薬師さん、入って。


 青年は一瞬ためらった後、足を踏み入れた。オーロラが空から夢幻な光を注ぎ、目の前のこの優雅な庭をファンタジーな緑に染め上げた。懐かしい顔たちも、まるで別世界にいるように見えた。


ふぐ刺し:……コホッコホッ、せんべい、そしてりんご飴……

ふぐ刺し:久しぶり……


星象館

神国


 午後、ほうきを抱えた少女は庭の階段でうとうとしていて、後ろからこっそり近づく足音に気付かず、そして、軽く肩を叩かれた。


花びら餅:……!!

花びら餅:いいえ、シラムス様、あなたのプロポーズには応じられません、どうかお許しください。私にはすでに心を許した特別な人が……ええぇーー金平糖ちゃん?!

金平糖:えーっと、どれどれ……「REBORN:異世界へ行ってしまった姫とドラゴンナイト」、えぇタイトル長いですね……


 金平糖は地面に落ちた絵本を拾い上げ、困ったようにそこに並ぶ奇妙な文字たちをじっと見つめ、しばらく考えてムダだと思い、大人しく頭を俯いて必死に小言を言っている花びら餅に返した。


金平糖花びら餅お姉さん……もうご催眠はやめてください。まだ全然眠りたくないです。

花びら餅:うっ……わ、わかりました。

金平糖:このお姫様とドラゴンナイトの本のストーリーってどんな内容ですか?

花びら餅:えっとね……一人のお姫様が別の世界へうっかりと入り込んでしまって、そこで助けてくれる勇敢で善良なドラゴンナイトさんに出会った話です。

金平糖:ワクワクするような冒険物語じゃないですか!それで最後姫様は元のお家に帰れました?ドラゴンナイトさんも一緒についていきました?

花びら餅:まだ最後まで読んでいませんが、この作者はバッドエンドが好きなようで、彼の手にかかった主人公たちはいつも死んでいるか、傷つくか、またはお互いを裏切るかですよ……

金平糖:ええっ!じゃああたし、やっぱり読まないことにします……みんながハッピーになるお話の方が好きですから!

花びら餅:ええ、そうなんです、お子さん向けの本じゃないですよ……


 金平糖は眉をひそめて絵本を見つめ、物語の中の二人の主人公の未来を深く心配していた。花びら餅の「陰謀」がうまくいったかのようなお馬鹿さんみたいな笑顔を全く気づかずに。


花びら餅金平糖ちゃんが好きなら、今度、おとぎ話の絵本を見つけてきますね。たとえば、「お茶会の姫様」や「小さな花の妖精」とか、可愛らしい金平糖ちゃんにぴったりのものですよ。

金平糖花びら餅お姉さん、ありがとうございます。でも、お姫様より……本当は善良で勇敢なドラゴンナイトさんのほうが好きなんです。

花びら餅:え?でも、お姫様はきれいなドレスを着て、庭でおいしいお菓子を食べれるんですよ……ドラゴンナイトさんだと大変です。

金平糖:ううん、ドラゴンナイトさんはお姫様を助けられる人ですから!人助けは……きれいなドレスやおいしいお菓子より人を嬉しくさせるんです!

花びら餅:そうなんですね、金平糖ちゃんはやはり独特ですわね……わかりました、今度ドラゴンナイトの絵本を見つけてきますね!


 金平糖はうなずいて、天真爛漫な笑みを浮かべた。その時、庭の外から車輪のゴロゴロした音が近づいてくるのが聞こえた。

 少し開いていた扉から見やると、足早の人たちがスッと通り過ぎて、いい匂いしかそこに残らなかった。


金平糖:あれ、りんご飴じゃないですか?なんでみんな木車を押してるんでしょう……エックシュン!エックシュン!あれ、せんべい先生のお花ですよ!

金平糖花びら餅お姉さん、あたし、見に行ってきます!手伝いが必要かもしれませんからっ!

花びら餅:えっ……ゆっくり行ってね、早く戻ってきなさいよーーあっくしょん!!


 紫を身に着けた女の子は瞬く間に扉の外へ消えていった。空を彩るオーロラもだんだんと薄暗くなり、神国の夜の訪れを示している。


第一章-出会

異世界へさまよったお姫様……


和室

神国


水無月:神子様!面白い場所を見つけたよ、森の東にあるんだ〜

羊かん:……また特定の時間に現れる場所か。

羊かん:いや違う……特定の時間と言うより最近、通路が開く日がどんどん……規則がなくなっているような。

水無月:神子様、何ブツブツ言ってるの?あのさ、せんべいたちが森へ向かってんの見たよ、見知らぬ食霊も一緒に……

羊かん:見知らぬ食霊?

水無月:うん。みんなで花草がいっぱい積んでる木車を押しててさ、そこでピクニックでもするのかな?

羊かん:……

水無月:だとしても、新食霊を拾ったら真っ先に神子様に報告するべきじゃんね、せんべいたち、遊んでばっかだな!

羊かん:……それなら、私たちも見に行こう。

水無月:えっ、やったー!神子様、やっと一緒に遊びに行く気になっていただけたのか!巫女様たちも誘う?

羊かん:瓊子も天沼も休憩が必要だから、今回はやめとく。

水無月:そっか、巫女様たちはいつも寝てるもんな、疲れてんだろう……じゃあ、神子様、僕たち、今から出発しましょう!


神国


 広々とした森の上に、星々が海のように広がる。その間を垂れ下がるオーロラは海に映る色とりどりの光柱のようだ。

 魚たちは広い海の底を泳ぎ、この輝かしい国に消えていく。彼らは永遠に知らないのだろう。自分がいる場所は単なる偽りの水槽だったということを。


金平糖:はぁ……はぁ……りんご飴たちが見つからない……あたし、迷子になっちゃったのかしら?

金平糖:どうしよう、星象館に戻る道も覚えていない……そうだ、星!お星さまを頼ればいいんだった!


 女の子は見上げると、鬱蒼とした枝葉がドームのように、星空を遮った。


金平糖:そうするしか……ないね。


 少女は袖をまくり上げ、決然とした顔で木の幹にしがみつき、手と足を使って苦しそうに頑張って上に移動していく。


金平糖:頑張るのよ、金平糖!木のてっぺんまで行けば星が見える……うぅ!でも木の皮、すごいチクチクする!……もっと、もっとはやく上へ!!

???:……君、何をしているんだい?

金平糖:ひぃぃっーー!!!!


 木の幹に子猫のようにぶら下がる女の子が驚いた声を発し、そのままぽんと地面に落ちてきた。ふぁっと木の葉が舞い上がる中、女の子はやっと体の下の感触が固い地面ではないことに気付いた。

 まず目に飛び込んできたのは美しい瞳と、広がる真珠のような輝きを持つ長い髪。まるで、物語の一幕のようだったーー


金平糖:異世界へさまよったお姫様……

呼子イカ:あはは……おチビちゃん、僕の美貌は確かなものだが、僕はお姫様じゃないよ。

金平糖:えっ、ええ?あなたは……

呼子イカ:ふふ、そう〜女に間違えられるの、久しぶりだけどね……

金平糖:はっ、ご、ごめんなさい!すごくお綺麗で……お姫様みたいだから……本当にすみません!

呼子イカ:まあいい、褒め言葉として捉えよう〜ねえ、おチビちゃん、ここを離れる道、知らない?

金平糖:えっ……あなたも迷子?そういえば、この「神国」で見ない顔ですね?

呼子イカ:「神国」……?

金平糖:んん……もしかして、あなたも「外」から間違えて入ってしまいました?花びら餅お姉さんのように……


 呼子イカは何かを考えているように見上げ、繁茂した枝葉からは美しいオーロラがこぼれ落ち、不思議そうに不意の客の顔を撫でる。


呼子イカ:どうやら、僕は不思議な国に迷い込んで……しかも不幸なことに、おチビの君と一緒に迷子になってしまったみたいだね。

金平糖:落ち込まないで!北斗星を見つければ……道を教えてくれますよ!

呼子イカ:ふふ〜君は星の魔法に精通する巫女ちゃんのようだね。

金平糖:ううん、違います、あたしは星占い師なんです!

呼子イカ:そうか。じゃあ小さな星占い師さん……もう木登りはやめましょう。もっと簡単な方法があるかもしれないよ。

呼子イカ:僕が来た道に木々がまばらな空き地があった。そこでなら、君の星の友達を見つけるのがもっと簡単なのでは?

金平糖:えっ、そうですね!じゃあ早速向かいましょう!


 人声が次第に静まり、そよ風が木の葉と戯れる中、カラフルなまばゆい光がかすかに見える。小道に大きな影と小さな影が徐々に遠ざかり、落ち葉の中にしおれた深い紫の花があったことを、誰も気づかなかった。


第二章-神子

神子に守られている国は、白紙のように純粋だった。


 オーロラの輝きが照らす星空は、夢のように儚くて美しかった。暗くて広い森の中で、無数の運命の轍はいずれ交差する。

 狭い林間の小道には、砕けたオーロラの光が地面に散らばる。小さな女の子はぴょんぴょん飛び跳ねながら枯れた枝を踏みしめ、時折後ろを振り返り、その人に向かって喋る。


金平糖:……つまり、呼子お兄さんは……お医者さん?

呼子イカ:医者?ふふ、面白い考えだね……

金平糖:人間の容姿を変えるお手伝い……それ、花びら餅お姉さんの本で見たことありますよ。グレロという場所にその治療ができる病院があるそうです!

呼子イカ:……

金平糖:呼子お兄さんも人助けをしていますから……いい人ですね!

呼子イカ:そうかな、でもそういうお手伝いは常に高い代償が伴うんだよ〜それでも僕はいい人だと思うの?

金平糖:へ……?

呼子イカ:おチビちゃん、しっ!誰か来る。


 木の車輪がカリカリと落ち葉を踏みつけながら進む。金平糖は喜びの表情を浮かべたが、後ろの手が彼女のまん丸く開いた口を急いで塞いだ。美しい瞳がパチパチとし、彼女に声を出さないようにと合図した。

 少し離れた道から、馴染みのある声が断続的に聞こえてくる。


りんご飴:……ねえせんべい先生、薬師さんの言うことは本当なの?通路の外の場所は本当に……

草加煎餅:私もいろいろ記憶が曖昧ですが、でも……彼のことは知っている気がします。彼は嘘をついていないはずです。

かき氷:そうだよ……さっき百聞館でもあの薬草を見た。せんべい先生のと比べると栄養不良に見えるけど。

りんご飴:で、でももし本当だとしたら、桜ヶ島が二つあって……じゃあ「神国」はいったい何なんっていうの?

草加煎餅:どっちにも……属していないかもしれません。

りんご飴:……

りんご飴:もう……ごちゃごちゃし過ぎよ……

かき氷:ええ……確かに複雑だけど、少なくとも私たちは薬師さんのお役に立てた。あの薬草は「桜ヶ島」が困難を乗り越えるのに役立つはずだよ。

かき氷:あとは、戻って抹茶に伝えて、一緒に今ある手がかりを分析しましょう……ああ、あと、念のために他の人にはできるだけ秘密にしといたほうがいいね……

水無月:え?秘密?なに楽しそうなこと話してんの、みんな?僕にも聞かせてくれよ!


 木立の中から、水無月の無邪気な笑顔が突然現れた。その後ろの木々の枝葉がさらさらと分かれ、ゆっくりと出てきたのはオーロラに包まれた神子だった。


草加煎餅:……!!!

羊かん:みんなが困惑しているかもしれないが、大丈夫……私が悪いものを全部浄化してあげるから。

りんご飴:ちょっと待って!神子様……

羊かんりんご飴、わかるんだ。でも、これだけは教えたい、「神国」だけが私たちの本当の家なんだ、永遠に。

りんご飴:……

羊かん:それと、「神国」はこれから新しい食霊を迎え入れない。


 神子はいつも通りに無表情だったが、なぜか微妙な不快感が漂っているようだった。言葉を聞いた一同は皆黙ってしまった。


羊かん:その前に、水無月、みんなを巫女様のところに連れてって。

水無月:ええ〜冒険の時間がもう終わり?残念だね、まだあの場所に行ってないのに……

水無月:まあ、わぁった、わぁったわよ〜、神子様がおっしゃるなら。みんなも渋い顔をしてないで、木車を押して一緒に帰ろうよ〜!


 木製の車輪がキーキーと音を立てて遠くへ行き、残されたのは静寂な樹影とオーロラ。両者が交錯して不規則な光の跡を編み出した。

 少し離れた茂みの中で、息を殺してしゃがんでいた金平糖が長い息を吐き出し、困惑な眼差しで森へ消えていく轍を見つめた。


金平糖:神子様……お怒りのようです。それにりんご飴たちが言った「二つの桜ヶ島」ってなんでしょう……

呼子イカ:ふふ……君達の神子様は「民たち」をきちんと守っているね。何色にも染まっていない白紙のように。これが「浄化」の結果か。

金平糖:神子様は普段あたしたちにすごくやさしいんですよ……無表情だけど、本当は寛大なお方なんです!あたしたちがなにをしても怒りません。

金平糖:でも今日は……あっそうでした!神子様、新しい食霊を迎え入れないっておっしゃいました!じゃあ呼子お兄さんはどうしたら……

呼子イカ:そうだね、帰り道も全然覚えていないし、困ったなあ……


 呼子イカは苦悩したふりをして頭を抱えた。とても熱心な女の子がすぐに考え込んでしまうのを見て、彼は口元をわずかに引き上げた。


呼子イカ:これだけ歩いたし、今畳に座って、熱いお茶を飲みたいよ……どうする?やはり予定通りに星象館に向かいましょうか?

金平糖:うん……ああおっしゃってましたけど、神子様が知らないなら、少しの間だけ、大丈夫なはず……そう!とりあえず、星象館に行きましょう!

呼子イカ:ふふ、そうだね〜君が話していた館長さんもすごそうだし……陰陽師からの指導を受けているなら、僕の帰り道もすぐに見つけてくれるでしょう。

金平糖:そうでした!最中兄さんがいますよ!あたしも星占いを手伝います。絶対呼子お兄さんを無事……じゃなかった!絶対呼子お兄さんにお家に帰らせません!

呼子イカ:……?

金平糖:ごめんなさい……だってみんな、あたしが言うと縁起でもないことが起きるっていうから、逆に言ったほうがいいのかなと思いまして!

呼子イカ:ふふ、そうか……ありがとね、おチビちゃん。

呼子イカ:君が僕がこの「神国」でのはじめてのお友達だ〜


第三章-友達

それはね、僕も首座様も「黄泉」から逃げ出したいという、似たような願望があるんでね。


 星の海が空に煌めき、遠くから銀の光を放つ。神国の夜には月がなく、星々に寄り添うのは永遠のオーロラだけ。

 誰もいない中庭の回廊を曲がると、目の前の和室には豆のような小さな明かりが灯っていた。明らかに、夜更けで眠らなかった人はこんな時に予期せぬ訪問者が現れることは考えていなかったようだ。

 ジーーージーーーっと、断続的な電流の音が鳴り、あっという間に消えた青い火花が紙の引き戸を照らした。


???:……連絡が不安定になったね……まだ聞こえる?

???:あっ、また中断したのか……ちょっと待って、外にいるの、誰だ?!


 引き戸が開き、青い髪が乱れたまたの最中がのぞき出し、顰めた眉間からはまれな注意深さと疑念を表している。


金平糖最中兄さん、あたしですよ!あっ……あとこちらは、森で拾った……

呼子イカ:はじめまして、呼子イカといいます。森に迷い込んでしまい、こちらの親切なおチビちゃんに助けてもらいました〜

最中:森……?貴方は「あっち」の人?

金平糖:しーっ!最中兄さん、内緒!あのね……


 金平糖最中の袖をつかんで言葉を詰まらせ、緊張して左右を見渡した後、声を低くして続けた――


金平糖:あのね……さっき、せんべい先生たちが遊びに行ったら、神子様に怒られて、これから新しい食霊を迎え入れないとまで言われました……

最中:えっ……神子様らしくないなあ……

金平糖:でしょう?だから、呼子お兄さんがお家に帰る方法を見つかる前に、神子様にバレちゃダメなんです!

最中:なるほど、てことは誠実な金平糖ちゃんは新たなお友だちのために嘘をつく覚悟はできているんだな。

金平糖:え?う、嘘を、つく?神子様には……隠し事をしてしまったことになりますけど……あたしは、呼子お兄さんを助けたいです……

最中:わかったよ、今の冗談さ〜貴方の友達なら、私も手伝うさ。

呼子イカ:ありがとうございます、最中館長〜

最中:礼を言うべき相手は、誰にでも親切なこの金平糖ちゃんだ……ねえ金平糖ちゃん、貴方は先に戻ってお風呂に入って休みな。そっちの新しいお友だちとはまだ話したいことがあるから。

金平糖:わかりました!ありがとうございます、最中兄さん!


 女の子の姿が夜に消えると、最中は和やかでのんびりした表情を引っ込め、目の前の人をじっくりと見た。


最中:私の知る限り、今回の通路は百聞館付近に現れた。貴方、そこから?

呼子イカ:よくご存知で〜さすが大陰陽師のお弟子さん。ふふ……館長さんがどちらのお使い手でしょうか?式占?易占い?それとも星占い?

最中:貴方も陰陽術を……?

呼子イカ:ふふ、たしなみ程度ですね。かつての御侍も陰陽師だったので……

呼子イカ:まあ、探り合いはやめた。別の楽しいことを話そうか。たとえば……先ほど青光を通して通話していた相手のこととか……

最中:……?!

呼子イカ:あの方、噂の「黄泉」観星落の首座様なのでは?

最中:貴方はいったい何者だ?

呼子イカ最中館長、もう忘れたのか?僕は呼子イカと言うんだよ〜ふふ……そんな顔しなくても、悪気は一つもないよ。

呼子イカ:僕と首座様も友達でね〜よく夜通しでお茶会をする仲だ。

最中:貴方が百聞館の人だったら、鯛のお造りとお友だちなわけ無いだろう……?

呼子イカ:それはね、僕も首座様も「黄泉」から逃げ出したいという、似たような願望があるんでね。

最中:……


 庭はしばらく静寂に包まれた。夜風が虫の鳴き声を運んできて、揺れ動くオーロラが様々な形の光の影を生み出す。呼子イカはつい夜空を見上げたくなった。


呼子イカ:あっちにいた頃、首座様はこの場所について話してくれたことがあった……「神国」が、こんなところだったんだね、とても綺麗だ〜

最中:そうかな……偽っているから美しく見えるかもしれない。

呼子イカ:ふふ、哲理的な考えだね〜最中館長とはきっとお茶会ができる仲のいい友達になれるね。

最中:……仲のいい友達だなんて、まだ話が先だろう。今の貴方は星象館のお客にすぎないんだ。

呼子イカ:まあまあ、そんなに遠慮しなくていいのに〜手伝いが必要なときは、いつでもお声をかけてくれればいいよ。とくに「例の計画」に関しての……

最中:貴方も知っているのか……「例の計画」を?

呼子イカ:もちろんだ。こっちはすでに待ち遠しいんだよ。伝説の「現世の門」を通りたくて仕方がないんだ〜


第四章-計画

「現世の門」の向こう側に。


数日後

星象館


 ジーージーージーー青い電弧が絶え間なく跳ね飛び、最終的に水晶玉のような形になり、画面の中の、見慣れた安らかで満足そうな顔もだんだんとはっきりと見えてきた。


鯛のお造り:……最中、やっと連絡がついた。この間、肝心なことを話している途中なのに……

最中:とりあえず待ってくれ、鯛のお造り。大事なことが聞きたい……百聞館の呼子イカ、貴方は知っているか?

鯛のお造り:知っているけど、どうして……?

最中:先日、通路を通して「神国」に来た。

鯛のお造り:そうか、道理で百聞館に伝書鳩を送ったのに返信が戻ってこない……羊かんは彼の記憶を消してないんだよね?

最中:ああ、今は星象館に隠れてて、まだ気づかれてない……いやちょっと待て、百聞館への伝書鳩?貴方たち、本当に友達なんだ?

鯛のお造り:……正確に言うと、パートナーだね。ここ最近、百聞館の情報をいろいろ教えてくれてる。

最中:なるほど……だがあいつ、なんか怪しい気しかしないんだよな……あっそうそう、百聞館の神器の手がかりは言ってなかったか?

鯛のお造り:いいえ。彼の話だと、百聞館の下っ端から館主本人まで神器について全く知らないようだ。

最中:それ……信じられる?

鯛のお造り:今までの情報から見ると、ほぼ真実だった。だが、たしかに深く関わっていい相手ではない……協力の事以外、彼とはあまり関わりがなかったね。

最中:だと思った!なにが夜通しでお茶会だ、嘘ばっか……しかもいっつもコソコソして私の周りをうろちょろしてるし、なに企んでるやら。

最中:ったく、あいつのことはもういい!こないだはどこまで話した?ああそうだ……現世の門を通る方法!

鯛のお造り:ええ。天沼と瓊子が言ってた。すべての神器を集めて、彼らふたりの力も加えるしか、現世の門で「黄泉」の人を「現世」へ連れていけないと。

鯛のお造り:私は最近、各神器の所有者と交渉して、すでに成果を挙げている。

鯛のお造り:計画通りだと、今度、「神国」と「黄泉」をつなぐ通路が開かれる際に、こちらからまず月見の注意を引くよう人を送り込んで、その後、他のみんなと一緒に太子を説得に行くつもりだ……

鯛のお造り:その後、私たちは神器を持って「現世の門」で二人の巫女と合流する。貴方は勾玉で「神国」のみんなの記憶を回復し、羊かんを引き止める。

最中:ああ。だけど、百聞館の最後の神器がまだ本当の姿を現していない……なのに巫女たちの神力は日に日に衰えていっている。計画を急がなければならないぞ。

鯛のお造り:もうしばらく時間をくれ……必ずあの神器を見つける……


 ジジーーーブーーン

 水晶玉の中映像が再び点滅し、最中はあきれたように手を戻し、指の間に残る青い火花を見つめた。


最中:百聞館……誰も知らない神器……いったい何なんだ?


 庭から笑い声が聞こえ、最中は青い炎を消し、引き戸を開けて外を見ると、新しい客人と一緒に楽しんでいる人々が目に入った。


金平糖:あっ、最中兄さん!最中兄さんも手鞠をやりませんか?呼子お兄さんがいろいろ教えてくれましたよ……わあーーっ花びら餅お姉さん危ないっ!

花びら餅:ふぅ……ビックリしました……

金平糖:すごいです!花びら餅お姉さん、それが取れるんですね!!

呼子イカ:ふふ〜花びら餅もおチビちゃんもすぐ上達したね。あっ、最中館長も一緒に遊ぼうかい?

最中:また貴方なのか……私は結構。出かけるんで、貴方たちで楽しんでて。


 最中が急いで去ったのを見て、呼子イカは全然気にしてないように手に持っている手鞠をポンポンと軽く投げ上げ、扉が閉まったままの和室を見つめた。


呼子イカ:よし、じゃあ僕たちも少し休憩しよう〜

金平糖:うん!休憩タイ〜ム!あたし、果物を持ってきましたよ、みんなで食べましょうね!

花びら餅:あ……う、うん……

金平糖花びら餅お姉さん、今日ずっと上の空ですし、顔も真っ赤で……具合悪いんですか?

花びら餅:えっ、あっ……ううん、大丈夫……ですよ……


 花びら餅の頬にあやしい赤がかっていて、彼女はひそかに横の呼子イカをチラっと見て、また再び頭を下げ、真剣に和菓子を見つめて、すぐに耳元の女の子のおしゃべりの声を九重の天へ投げ捨てた。


金平糖花びら餅お姉さんまーたぼーっとしてますよ、全然人の話を聞いてくれませんね。

呼子イカ:ふふ、大丈夫。僕がおチビちゃんのお喋り相手になろう〜

金平糖:えっ、ありがとうございます!

呼子イカ:そういえば僕、「神国」に来て何日も経ったけど、ずっと星象館にいたでしょう?外でなにか特別なこと、起こってない?

金平糖:特別なこと……ですか?ないみたいです。最中兄さんは出かけるのを控えようっていうから、あまりみんなと会ってないんです……

呼子イカ:そうだ、神子様は寛大なお方だってチビちゃん言ったよね?

金平糖:うん、そうです!この前のこと以外、みんなを怒る神子様、見たことないですよ……

呼子イカ:じゃあ……もしも、「神国」の人が他のところに行きたいって、たとえば、あの「現世の門」の向こうとか、お願いしたら、聞いてくれる?

金平糖:聞いてくれないと思いますよ!海のあの扉にはみんな、近づけませんよ。それに、神子様はあたしたちを「神国」から離させてはくれないんです、「神国」はあたしたちの唯一の家ですから!

呼子イカ:そうだったのか……

金平糖:呼子お兄さんは扉の向こうに遊びに行きたいですか?

呼子イカ:いや……僕はそこに行って、重要なことを解決したいんだ。

金平糖:重要なこと……あたしが力になれること、ありますか?


 女の子が異常に真剣な眼差しで見つめてくるのを見て、呼子イカは思わず驚き、そして笑みを浮かべて、彼女の頭を軽くポンと叩いた。


呼子イカ:ふふ〜君はもうずいぶん、力になってくれたよ。さあ、花びら餅を起こして帰ろう。


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