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クワス・エピソード

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クワスのエピソード

自分の能力が弱かったせいで力のない飨灵になったことが悔しくて仕方なかった彼女。だけど、偶然武器を操る才能に気づき、「武器を極めれば自分の運命を変えられる」と思い立った。そこから必死で武器を作り始め、ついには伝説の武器マスターと呼ばれるまでになった。


性格は短気で忍耐力がほとんどなく、すぐ怒るけど、意外にも弱い者には優しい一面がある。

実は長い年月を生きていて、性格はまるでおじいさんみたいに渋いけど、面倒なことになると「私はまだ子供だから!」と平気で言い訳して逃げるおちゃめなところもある。

Ⅰ.任務

(※数箇所に「▫霊」表記が出てきますが、おそらく「食霊」の文字化けだと思われます。ですが原文のまま書き出していますのでご了承ください)


氷のバケツを俺の手から受け取った後、青年の顔に困惑の表情が浮かんだ。


「隊長、ここは雪山ですよ。」


「それくらいわかってる。俺の目が悪くない。」


「それにしても……こんな場所で氷を食べろって言うんですか?」


思わず白目をひっくり返した。こいつ、俺がこの氷を取るためにどれだけ苦労したか知ってるのか?それなのに文句を言うなんて……


特に、あいつが俺より背が高いことを考えると、帽子のひさしで私の白目を見えないだろうから、ますますイライラした。


言葉より行動が大事だから、俺は彼を無視して、バケツから氷を一つ取って口に入れた。


「ここは気温が低いから、話すと口から白い息が出て位置がばれる。でも氷を食べれば、息は出なくなる。」


「こんな少しの白い息で気づかれるんですか……?」


「相手は▫霊だ、それも逃げ出した▫霊だ。」


ガチャン。手に持っていた銃に弾を込めた。


「こんなところに逃げてくるくらいだから、生き残りたいって必死なんだ。あれはお前らのような脆弱な人間と命をかけて戦うような怪物だ。死にたいなら、勝手にしろ。」


その言葉を聞いた青年たちは、お互いに無意味な目配せを交わし、結局みんな氷を口に入れた。


これでいい。舌を凍らせて、余計なことを言わせないように。


俺は満足そうにうなずき、バッグを背負って洞窟を出た。


「ねぇ……本当にこんな小さな女の子に従うつもり?」


「そうだよ、何がすごいっていうんだ?身長は俺の足の長さにも及ばない。」


「シーッ――聞こえたらまずいだろ。あいつは隊長なんだから、忘れるなよ。隊長の指示に従わないってことは、家族の命令に背くことになるんだ。」


「チッ、隊長だと?どうせここにいるのは俺たちだけだし、誰にもバレずにあいつを始末するのなんて簡単だろ。」


「まあ、▫霊だからな。何か特殊な能力でもあるかもしれないし。」


雪原の風が激しく吹きつけてきたが、それでも後ろから聞こえる騒音は消えなかった。


本当に、氷すら口を塞げないなんて……


正直言って、私には耳が少し良いくらいで、特別な能力なんてない。


あえて言うなら、私の能力は度胸の広さかな。若い奴らと争う気になれないだけだ。


どうせ、そんなことはもう聞き飽きている。


バッグを横に置いて、崖に身をかがめた。


目の前の谷はまるで天然の塹壕のようで、周囲の山々に囲まれて、あらゆる音が何十倍にも増幅される。


守るのは簡単、攻めるのは難しい。確かに、逃げた者を隠すのには最適な場所だ。


先日、家族の年次試験で、五人の▫霊が試験場を利用して逃げた。


行動時間が極端に短く、見事に連携していたことから、かなり前から計画していたことがわかる。


でも、その五人は特に名の知れた存在でもなく、能力も普通だ。家族としては機密を守るために捕まえなきゃいけないだけ。


偶然にも、新兵たちは実戦経験を積む必要があったため、俺と一緒に臨時チームを組んだ。


「ところで、あの叛逆者を捕まえた後……どうするつもり?」


「……お前らの上司、こんなことも教えてくれなかったのか?」


「特に指示はないって言われてるから、その場で処刑ってことになると思うけど……」


青年が喉を鳴らしながら、少し緊張して言った。


「本当に▫霊を殺せるんですか?」


「ふっ、クレメンス家の一員で、▫霊を恐れるのか。」


思わず笑ってしまった。


「お前らは私たちを殺すつもりだったんだろう?それがなぜ、今になってこんな愚かな質問をするんだ?」


青年たちはお互いに目を見合わせて、私が急にこんなことを言った理由がわからないようだった。


まあ、仕方ない。気分が悪かったからだ。


谷の中には小さな森があり、銀色の雪が枯れた枝に覆いかぶさって、風が吹くたびにまるで無数の白骨が踊っているように見える。


さらに、地面には「死体の山」が積もっている。


揺れそうな木造の小屋が、その「乱葬の地」の中央に建っていた。


「どうやら、あの小屋の中に人がいるようだな……でも枝が多すぎて、踏むと音が出てしまう……仕方ないな。」


私はバッグから、まだ「生まれたばかり」のバズーカを取り出した。


「できれば、お前の初戦がこんなことじゃなければよかったんだけど……」


バズーカを肩に担ぎ、地面と三角形になるように構えた。


「でも、もう仕方ない。さあ、この子の初めての『泣き声』を一緒に楽しもうじゃないか!」


Ⅱ.脱走者

(※数箇所に「▫霊」「▫灵」表記が出てきますが、おそらく「食霊」の文字化けだと思われます。ですが原文のまま書き出していますのでご了承ください)


バズーカは音を立てなかった。


小屋の扉が開き、中から男女が一人ずつ、両手を上げて降参のポーズを取って出てきた。


後ろにいる青年たちは一瞬で気を引き締め、ただ人をすぐに連れて帰りたいで、足を踏み出しそうになった。


「バカか?こんなに簡単に降参するなら、最初から逃げなかっただろうが。俺たちがそんなに手強そうに見えるか?」


足元で一斉に動きが止まった。俺はため息をつきながら、前に一歩踏み出した。


「脱走者は五人だ。降参するなら、全員まとめて出てこい!」


「降参じゃない!和解だ!」


その女性の▫霊は大声で言ったが、どこか自信満々な口調だった。


ちょっとおもしろい。


「自分がクレメンス家と『和解』できると思ってるのか?」


「クレメンス家じゃない、あなた、クワスと和解したい。」


それはおかしい。脱走者の中に知り合いがいるわけじゃないし、しかも…


さっきまで俺をどう殺すか話してた人間たちの前で、脱走者と「和解」だって?


こいつら、死にたくても誰かを巻き込みたいだけじゃないか……


「おい、お前ら、ついてこい。こいつらが何を企んでるのか見に行こう。」


今度は、後ろにいる奴らがすぐには返事をせず、お互いに見合わせた後、ゆっくりついてきた。


小屋の前に着くと、入口の▫霊二人が武器を地面に放り投げて、俺たちを中に通した。


部屋はボロボロだが、生活必需品はしっかり揃っていた。こんな場所を彼らだけで準備できるわけがない。


「他の人は?」


「地下にいる。」


「へぇ?」


こんなボロ屋に地下があったとは。バズーカが届かないなら、もしかしたら逃げるチャンスがあるかもしれない。でもなんで…


そして、こんなに素直に言っちゃうのか?自分の後ろを断ってしまうんじゃないか?


「本当に俺と『和解』できると思ってるのか?」


「同じ▫霊だから、あなたも分かってくれるだろう…チャバタ、みんなを上に連れてきて。」


その言葉が終わると、床から微かな音が聞こえ、次に板が持ち上がり、三人が下から出てきた。


大体、あの女の意図がわかった。


「子供二人と、一人のお年寄り…家族の厳しい試験に耐えられなかったから、逃げるしかなかったんだろう?」


彼女は否定しなかったし、銃がまだ向けられていることにも全く気にせず、振り返り、子供の一人の頭を優しく撫でた。


「私はあなたが羨ましい、クワス。私たちには才能がない…いや、戦闘に関する才能がないの。」


「この子は自分の想像の中でしか存在しないものを描くことができるし、このお年寄りはどんな話も魅力的に語れるし、チャバタはただ自分の家を持って、庭に花を植えたいだけ。私も彼らの願いを叶えたかった…」



「でも私たちみんな知っている。クレメンス家は▫灵を欠かすことはないが、特別な能力のない▫灵を簡単に捨てることはない…捨てるとしたら、価値を絞り尽くしてからだ。」


「運が悪ければ実験室送りにされるか、他人にいじられや恥をかかされ、最後は苦しんで死ぬ。運が良ければ、生身で地雷を探察したり、新しい武器のテストをさせられて、せめて楽に死ねる。」


「でも、どうして私たちには死ぬしかないんだ?どうして家族の残酷なシステムや欲望の中で死ぬしかないのか?」


女性の冷静な顔に、ようやく細かい皺が現れ、目に涙が浮かび、急かした声に涙声が混じった。


俺は肩をすくめて言った。


「クレメンス家がなければ、俺たちは存在しない。この命はもともとあの家族のものだ。」


「今まで家族にした貢献は、もうその恩義を返すのに十分だ――愛なんてない。ただ、私たちには価値がない体にその恩義をくれただけだ。」


「その話は俺に言うべきじゃない。俺は家主じゃない、そんな計算をする資格はない。ただ命令を受けて行動しているだけだ。」


「あなたはきっと私たちを理解してくれる、クワス。あなたも私たちと同じ…」


「同じ?俺は他人の力を借りて逃げ出して、その後他の誰かに命を助けてもらうなんてことはしない。俺は自分の力で、この無価値な体を一歩ずつ進ませてきたんだ。」


砲身を少し持ち上げて言った。


「お願いだ、姉さん…私たちを傷つけないで…」


突然その声が聞こえてきて、私は少し驚いた。


声の方向には目を向けなかった。というか、この部屋に入った瞬間から、目を合わせないように気をつけていた……


でも、彼女はやっぱり俺の視界の隅にいる。


その小さくて、傷だらけの、でも頑なに倒れない姿は…


だんだんと、昔の自分と重なってきた。


Ⅲ.淘汰戦

(※数箇所に「▫灵」表記が出てきますが、おそらく「食霊」の文字化けだと思われます。ですが原文のまま書き出していますのでご了承ください)


「勝たなきゃ…絶対勝たなきゃ…」


私はナイフを握りしめ、目の前の巨大な影をじっと見つめた。


負けたら死ぬ…


もうこの狂った淘汰戦で、ここまで来たんだから…


勝たなきゃ…絶対、絶対勝たなきゃ!


「アー!!」


私は叫びながら、その相手に向かって突進し、思いっきりナイフで刺そうとした。


だが、それは俺の力では全く動かせないものだった。


カラン。


ナイフは弾き飛ばされ、私と同じように埃が積もった隅に落ちた。


「ぐっ…ごほっ、ごほっ…」


自分の血でむせ返る感覚がひどく、止まらない咳の中で、かすかにその男がため息をつく音が聞こえた。


…もしかして、彼は自分の相手がこんな無謀なガキだということに呆れているのか?


それとも、この家族が設けた、俺たちを殺し合わせるような狂った仕組みに不満があるのだろうか…。


私は歯を食いしばり、必死に立ち上がろうとした。ダメだ…もう視界がぼやけて見えない…


ここで死ぬのか…


痛い…悔しい…


なんでこんな痛みを感じなきゃならないんだ、こんな死に方をしなきゃならないんだ…


なんで…?


「まだ生きてるのか?」


突然、男の声が私の考えを遮った。混乱した意識で反応が遅れて、しばらくしてから私はその声を思い出した…。


「大丈夫だ、どうやら痛くて動けないだけみたいだな…お前、試練が終わる前に自分でゴールに行けるか?」


それは、エンペラーマフィンの声だ。家主の誕生日パーティーで聞いたのと全く同じだった。優雅で、感情がない冷静な声。


奇跡的に視界が少しずつクリアになり、私はようやくその時、私を殺そうとしていた男が、エンペラーマフィンの足元に倒れているのを見た。


「お前…なんで、俺を助けたんだ…」


「助けた?ふふ、結果的にはそうだが、実際は通りすがりで、ついでにやっただけだ。」


体の痛みが少し和らいだ私は、体を支えながら彼を見上げた。


「俺、行ける。」


「うん?」


「俺、自分でゴールに行ける。」


「ああ、よかった。」


そう言って、エンペラーマフィンは何も急がずに歩き去った。私は少し不思議に思った。


家主の▫灵がゴールにまだ着いていないって、どういうことだろう…?1位を取らなくても平気なのか?


そうだ、彼が試練で1位を取らなくても、家主は彼を気に入っているだろう。


なんで俺はあんな強い▫灵になれないんだ…。


最終的に、私は辛うじて終了の笛が鳴る前にゴールを越えた。


審査員は無表情で私の名前を記録し、その背後には警戒や嫌悪の目が無数に存在していた。


彼らもまた、この淘汰戦を生き抜いてきたので、私と同じように知っている。生き残った者たちは、殺戮を繰り返すか、命を繋ぐために卑劣な手段を使う人ばかりだと。


全員敵だ。


クレメンス家は、こうした試練で優秀な▫灵を選別するだけでなく、▫灵たちを分裂させ、孤立した存在を作り上げていく。


全員が孤立し、仲間がいない。上司と部下、命令と服従だけ。


これが私がクレメンス家の▫灵として生まれてから二年目にして、身をもって理解した「母」の冷酷さだ。


だが、私のように弱いために必死で考えざるを得ない▫灵と違って、強い▫灵はむしろこの冷酷さを楽しんでいる。


私は、最終ランキングでちょうど真ん中に位置しているその名前を見ながら、複雑な気持ちだった。


1位じゃないのも仕方ない…だって、私にとっては生死を決める試練だけど、彼にとってはただのゲームに過ぎなかったんだ。


「お前、まさか生き残るとは、すごいな。」


私がひそかに愚痴を言っていると、突然後ろから声がかかり、驚いて振り返った。エンペラーマフィンは笑って、謝るように手を振った。


「驚かせるつもりはなかったが、こんなところでお前に会うなんてびっくりしたな。」


「…戦うのは得意じゃないけど、頭は悪くない。」


「なるほどな、とにかくおめでとう。」


「そして、あの時『ついでに』助けてくれてありがとう。」


「うーん…そのことについてはお前に感謝しなきゃな。もしあの時お前があそこにいなかったら、俺も今日の成績を取れなかっただろう。」


彼は意味ありげに別の方向、または一人を見つめた。


その▫灵の名前はヴィダルアイスワイン。エンペラーマフィンの出身と比べると、ヴィダルアイスワインの御侍は平凡と言えるが、彼自身の能力は非常に優れていて、人望も高い。


今回、彼はエンペラーマフィンと1位を争っていると思っていたが、意外にも中位の順位だった…。


待って、この二人は…もしかして、中間のその順位を争っているのか?


「だから、お前があの男を殺さなかったら、今の順位にはならなかったんだな。」


「さすが賢いな。家族はまだお前の本当の才能に気づいていないみたいだ。こんな試練で時間を無駄にしてる…もし運悪く死んでいたら、惜しい話だ。」


「惜しい?代わりは幾らでもいるだろう。」


「でも、誰もお前の代わりにはなれない。お前にとっては、死んだらそれで終わり、誰も代わりに生きることはできない。」


「…」


「次に生きているお前に会えることを願っているよ、小娘。」


Ⅳ.武器


エンペラーマフィンに再会したとき、私はまだ生きていたが、ひどく殴られたばかりだった。


理由は簡単だ。私は弱くて無能なのに、性格が悪くて人の気に障ることばかりしていたからだ。


顔が腫れた私を見て、エンペラーマフィンは「復讐したくないか?」と聞いてきた。


私は目をそらして、「こんなガキが誰に勝てるってんだ?」と返した。


「ふむ、復讐は必ずしも力で返す必要はないのさ。」


私は疑いの目を向けたが、彼はそれ以上何も言わず、ただついて来いと促した。


「前にお前は言ったよな。『俺の代わりはいくらでもいる』って。だが、お前自身が替えの利かない存在になりたくはないのか?」


「…確かに俺はガキに見えるけど、子供扱いして励まし話なんてしなくていい。」


「ふふ、俺はそんなつまらないことをする気はない。」


「じゃあ、何を考えてるんだよ?」


「武器だ。」


「は?」


「お前には武器が必要だ。文字通りの武器でも、自分だけの能力でもいい。武器さえあれば、お前は替えの利かない存在になり、誰にも舐められなくなる。そして…」


「待て待て、つまり今からその武器を見つけに行くってこと?」


「何か問題でも?」


エンペラーマフィンは平然としていて、私が変なことを言っているかのような態度だった。それが余計に私を苛立たせた。


「ふざけてるのか?前回は順位目当てで俺を助けたって言い訳したけど、今回はどうなんだ?何を企んでる?」


「企み…か。まあ、そう言えなくもないが、俺の『企み』は他の奴らよりずっと優しい。」


そう言いながら私たちはある部屋の前にたどり着いた。

家族の屋敷と比べると、ここはまるでゴミ捨て場だった。家族にこんな場所があるなんて知らなかった。


「他人の弱点を攻撃して従わせるより、俺はその弱点を補う手助けをして、いずれ強くなったお前に恩を返してもらう方が好みなんだ。」


エンペラーマフィンはそう言って、私に中へ入れと示した。


「…ここは何だ?」


「お前が自分の武器を作る場所だ。ただし、成功するかどうかはお前次第だ。」


私は壊れかけのドアノブを見つめて考え込んだ。

もし彼が私を助ける理由が「いずれ利用するため」だとしても、クレメンス家よりはマシだ。


いや、少なくとも基礎訓練もほとんど受けずに「闘技場」に送られた過去を思えば、まだ希望がある。


どうせ死なないなら賭けてみるか…。

そう思ってドアを開けた。


ひゅっ――


ドアを開けた瞬間、酒瓶が飛んできた。


パリン!


「さっさと消え失せろ、このクソガキ!」


足元で割れた瓶を見て驚いた私は、エンペラーマフィンを見ると、彼は予想通りの顔をしていた。


「じゃあ、幸運を祈るよ。」


「待て、ちょっと!おい!」


彼はそれだけ言い残して立ち去った。


半開きのドアを見つめながら、私は唾を飲み込んだ。


どうせ死ぬことはない。

そう思うと気が楽になり、私はその扉の中へと足を踏み入れた。


薄暗さに目が慣れてくると、そこが外見以上にゴミ捨て場のような場所だと気づいた。


「ガキ、お前何しに来た?」


背中を丸めた老人がゴミの山に座り、背を向けたまま何かをいじっていた。


彼の傍らに転がる酒瓶を見て、私の背中には冷や汗が流れた。


「俺は…『武器』をもらいに来た。」


「武器?フン…そんなガキが俺の武器を手にする資格があるのか?」


そう言われて初めて気づいた。ゴミの山に見えたものは実は武器の山だった。しかも、どれも見たこともないような異様な武器ばかりだ。


「これ、全部お前が作ったのか?」


「当たり前だ。この世で俺以外にこんなものを作れる奴はいない。」


「…俺にも武器の作り方を教えてくれないか?」


「お前が?」


老人は振り返り、片方が義眼になった恐ろしい顔で私をじろりと睨んだ。


「なんて馬鹿みたいの顔だ。お前、これを学んで何がしたいんだ?」


「…俺もいずれ、誰にでも酒瓶をぶつけられるようになりたいんだ。」


老人は鼻で笑うと、遠くの鉄の塊を指差した。


「あの鉄を円柱にできたら教えてやる。」


「円柱?道具は?どうやって…」


「好きにしろ。」


そう言って老人は私に背を向けた。私は仕方なく周りを見回し、使えそうなものを探した。そして頭をフル回転させながら、やっとその鉄をなんとか円柱の形にできた。


気づけば、それに7日間もかかっていた。


だが老人はその鉄の円柱を一瞥もせず、ただ横に投げ捨てた。


「おい!」


「次はこの鉄管を図面の形にしろ。」


「……」


それから私は「ゴミ捨て場」のあらゆる金属をいじり回す日々を送った。


たまに、老人が作った新しい武器を試させてくれたが、その結果は大抵、足を吹っ飛ばされるか、顔に火傷を負うかだった。


私の惨めな姿を見た老人は、最初大声で笑った後、少し驚いたように私を見つめた。


「怒らないのか?」


「何を?ケガのことか?」


私は肩をすくめた。


「こんなの慣れっこだ。」


こうして、あっという間に3年が過ぎた。


その日、老人は円柱形の鉄塊、曲げた鉄管、そして私を吹き飛ばした火薬で作った銃を私に渡した。


「お前が欲しがってた武器だ。それから…」


そう言って、また空の酒瓶を私に投げてきた。


今度はそれが足元で割れることなく、しっかりと私の胸に収まった。


「これで、お前も好きな奴に酒瓶をぶつけられるようになったな。」


Ⅴ.クワス

(※数箇所に「▫灵」表記が出てきますが、おそらく「食霊」の文字化けだと思われます。ですが原文のまま書き出していますのでご了承ください)


クワスは長い時が経ってから、すべての▫灵が生き残るために競技や試練を乗り越えなければならないわけではないことを知った。


特別な能力を持っている必要もなく、召喚した人間や組織のために貢献をしなければならないわけでもない。


そして、同族を殺す必要があるわけではない。

殺す理由も、殺される理由も誰にも分からないことがある。


クワスがこれらのことを知ったとき、ようやくクレメンス家で「無くてはならない武器のマスター」として認められたばかりだった。


最初は、こんな小さなガキがその重責を担えるのかと疑う者もいた。


しかし、前任の武器マスターが酒瓶を疑う者に投げつけ、「使いたければ使えばいい、俺はもう引退したから関係ない」と言った後、誰も何も言えなくなった。


その後、クワスは暇な時に酒を持って師匠を訪ね、なぜ自分に教えてくれたのかと尋ねた。


師匠は酒を飲んで、笑って言った。「この技術は誰かに伝承しなければならない。でも、お前だけが俺のドアを開ける勇気があった。それだけで何もしない臭いガキどもよりもずっと優秀だ。」


クワスは頷き、飲み物で師匠と乾杯した。


師匠と自分だけが、今日ここまで来るために何を犠牲にしてきたかを知っていた。


昼夜を問わず続いた厳しい修練だけでなく、何度も命をかけて逃げ延びたこと、そして今の心身の疲れもあった。


生きるために、クワスはエンペラーマフィンのような「家族の残酷な仕組みを楽しむ人間」にならざるを得なかった。


それは自慢しているように聞こえるかもしれないが、彼女は本当に弱者を踏みつける感覚が大嫌いだった。


少なくとも過去の自分は本当に踏みつけられる感覚を味わっていたし、上級者を心底から罵ったこともあった。


しかし。


目の前の五人の脱走者を見ていた。


彼女は必死に立ち上がって、やっとここにいるのに。


彼らは他人の同情で、自分を助けてもらい、簡単に自由を手に入れられるのだろうか?


その小さな▫灵を見て、どうしてそんなにも卑屈な言葉を言えるのか、どうして言葉だけで生きる権利を得られると思っているのか。


なぜ、脱走者たちを見逃し、家族の命令に逆らう罪を背負わなければならないのか?


なぜ……


なぜダメなのか?


彼らはなぜ、簡単に生きる権利を得てはいけないのか?なぜ、簡単に自由を手に入れてはいけないのか?


命と自由は、もともと私たちのものなのだ。


そう思ったクワスは、後ろの人間に向けてバズーカを構えた。


「今から、五人を逃がす。俺はお前たちに隠すことを頼まないし、誰かを黙らせるために殺すこともない。ただ何もしなければいい。」


「家族にどう報告するかは、勝手にすればいい。」


「理解したなら、道を開け。」


青年たちはお互いに目を合わせ、ゆっくりと道を開けた。


女性の▫灵の目から涙がついにこぼれ落ち、感謝の気持ちでクワスを見つめ、何かを言おうとしたが、彼女に遮られた。


「お前らの感謝のためにこれをしたんじゃない。早く行け。」


五人が完全に谷間から姿を消すまで、クワスはバズーカを手放すことはなかった。


「行こう、帰ろう。」


青年たちは当然、クワスに何も隠す理由がなく、命を守るために彼女が脱走者を逃がしたことと、武器で脅したことを家族に全部報告した。


すべては予想通りで、クワスは驚きも怒りもなかった。


彼女は自分がしたことに責任を持っており、言い訳する気もなかった。


幸いなことに、今の彼女は本当にクレメンス家で重要の存在となっていた。


上層部は彼女に死刑を言い渡さなかったが、何もしないわけにもいかなかった。家族の威厳を守るためには。


「『美食家協会』?なんだその名前は……」


「名目上は料理人協会に付属しているが、実際にはクレメンス家の秘密組織だ。そこに入れば、家族のために働き続けることにはなるが、家族内ではお前の存在はなくなるということだ。」


「……また俺のために取り計らったんじゃないだろうな?」


エンペラーマフィンは思わず笑い出した。


「だって、お前を助けるために時間を使ったんだから、返しがないまま死んだら、俺も損だろ?」


「……早く言ってよ、その恩をどう返せばいいんだ?いつも何かを借りてる気がして、うんざりだ。」


「焦るな、もうすぐチャンスが来る。」


エンペラーマフィンはクワスに委任状を渡し、その隙に彼女の耳元で囁いた。


「俺は近いうちにクレメンス家を離れる。そのとき、この残酷な『母』を滅ぼすための武器を……」


「頼んだぞ、マスター。」



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