「握心たる両手」ポワニエ_include

ポワニエ「……。」

主人公　「……。」

ポワニエ「……。」

主人公　「……さ、さっきから俺の後をついてきてるけど、

　　　　　なにか用か？」

ポワニエ「……それはなに？」

主人公　「え、ああ。

　　　　　これは、さっきパン屋のおやじさんからもらった

　　　　　パンの包みだけど……。」

ポワニエ「パン……。

　　　　　いい匂い。」

主人公　「お腹すいてたのか？

　　　　　なら、どうせ食べきれない量をもらっちゃったし、

　　　　　いくつかやるよ、ほら。」

ポワニエ「……はぐっ。」

ポワニエ「……おいしい……！」

主人公　「さっきまでの無表情が消え去るほど、

　　　　　うまかったのか……。」

ポワニエ「初めて食べた。」

主人公　「そこまで！？」

ポワニエ「違う、パン。」

主人公　「パン？

　　　　　そもそもパンを初めて食べたってことか？」

ポワニエ「うん。」

主人公　「ええ！？

　　　　　それなら今まで何を食べてたんだ？」

ポワニエ「わからない。」

主人公　「わからない？」

ポワニエ「ポワニエはポワニエを探してる。

　　　　　ポワニエのことがわからないから。」

主人公　「えーっと……、」

メルク　「もしかして、

　　　　　あなたも私と同じで、自分のことがわからないのですよ？」

ポワニエ「……！

　　　　　同じ？

　　　　　ポワニエと同じ？」

メルク　「そうなのです、

　　　　　私も自分のことがわからないのですよ。」

ポワニエ「同じ……、

　　　　　水はポワニエの仲間……！？」

メルク　「水……！

　　　　　わ、私にはメルクという名前があるのですよ！」

ポワニエ「わかった、メルクはポワニエの仲間。

　　　　　だから、メルクと一緒にいる。」

主人公　「な、なんかメルク、懐かれてないか。」

主人公　「それに一緒にいるって……、

　　　　　旅についてくるってことか？」

ポワニエ「仲間の行くところ、ポワニエも行く。」

主人公　「けど、いいのか？

　　　　　モンスターと戦うこともあるし……、」

ポワニエ「いい、ポワニエ、戦うの得意。」

主人公　「そうか……。」

主人公　「わかった、一緒に行こう。」

主人公　「ポワニエのことはわからないけど、

　　　　　パンの時みたいに、それ以外のことなら

　　　　　わからないことはなんでも聞いてくれ。」

主人公　「教えられることは教えるからさ。」

ポワニエ「……ありがとう。」

主人公　「ああ、これからよろしくな。」

主人公　「（戦えるとは言ってるけど、

　　　　　それ以外のことは常識的なことも知らないみたいだし、

　　　　　心細くて同じ境遇のメルクと一緒にいたいんだろうな……）」

主人公　「（……と、思ってたけど……）」

ポワニエ「……またパン、食べたい……！」

主人公　「（理由の半分はパンのような気がしてきたぞ……！）」