「我信の圧張者」イッスマン_story
<紹介所>
イッスマン「きゅーう、じゅーう!」
主人公「あれ、イッスマンさんだ。」
イッスマン「よぉーし、10まで数えたぞ! もういいかぁーい!」
「まーだだよー!」
メルク「どうやら、かくれんぼをしているようなのです。」
主人公「へえ……。なんというか意外だな。」
メルク「なのです。イッスマンさんが自分の宣伝や執筆活動以外のことをしているのは初めてみた気がするのですよ。」
メルク「しかも子供と一緒とは……。実は子供好きだったのです?」
主人公「だとすれば……。イッスマンさんのこと、誤解してたかもな。」
メルク「なのですね。あの情熱はきっと、子供のためにも向けられていたのです!」
メルク「主人公さん、ここは……。」
主人公「ああ。邪魔しないようにそっと見守ろう。」
イッスマン「もういいかぁーい!」
メルク「みゅふふ、大きな声なのです。」
主人公「イッスマンさんは元気だなあ。」
「もういいよー!」
主人公「お、隠れられたみたいだぞ。」
メルク「かくれんぼが面白いのはここからなのです! イッスマンさんはいったいどんなふうに、子供達を楽しませて……、」
イッスマン「そうか、もういいか。」
イッスマン「もういいと確かに言ったな! 言質を取ったぞ!」
メルク「みゅ?」
主人公「なんか雲行きが……。」
「クククク、甘い甘いぞ、ガキ共が。よりによって、この俺にかくれんぼを挑んだことを、谷よりも深く後悔させてくれるわ。」
主人公「ニヤニヤしながら色々取り出し始めたぞ。」
メルク「手ぶらでできることが売りのかくれんぼに、どうしてあんな大掛かりな道具が必要なのです……?」
イッスマン「フッ……、ガキ共よ。いちいち言うのは面倒だから、先に宣言しておいてやろう。」
イッスマン「みーつけた、となあ!」
「……!?」
イッスマン「さあ始めるぞ! 奴に対抗するために編み出したイッスマン式かくれんぼ!」
イッスマン「まずはイタンテの実をすりつぶして作ったパウダー! 振りかけた場所には、指紋や足跡が浮かびあがる! そうして出てきたものを辿れば……!」
イッスマン「はっはあ! この中か!」
リーダーの男の子「げぇー!?」
イッスマン「次はこのリダブの茎だ! ちぎれば、こうして強烈な匂いを発すオエッ! こ、これを使えば……。」
活発な男の子「くさぁー!?」
イッスマン「見つけ出すことなど容易よ!」
イッスマン「そしてモンスターが好む香りを放つ、ズキスタの種を使った香水! ……ふふ、気づかなかっただろう?」
イッスマン「既にお前に、これをつけておいたのをなあ! 行け! グララトンズ!」
「ごぉー!」
勝気な女の子「きゃあー!?」
イッスマン「だぁはははは! 完全勝利ぃいいい!」
イッスマン「所詮は子供の考える隠れ場所! 俺の頭脳と新時代の技術があれば、おそるるに足らんのだあ!」
活発な男の子&リーダーの男の子&勝気な女の子「ぶぅー! ぶぅー!」
活発な男の子「大人げないぞー!」
勝気な女の子「正々堂々とやれぇー!」
イッスマン「バァカめ! かくれんぼに大人も子供も、正々堂々も卑劣もあるか! いかに巧妙に隠れ、そしてそれを見つけ出せるか!」
イッスマン「あるのは勝つか負けるかだけだあー!」
リーダーの男の子「うるせー! これでもくらえー!」
イッスマン「ぎゃあーリダブの茎が顔面にぃ! オエッ!」
イッスマン「よ、よくもよくもよくもぉ! この恨み、晴らさずにおくべきかー!」
リーダーの男の子「それはこっちの台詞だ! みんなやるぞー!」
活発な男の子&勝気な女の子「おぉおおおおお!」
イッスマン「あ、こらっ! 3対1はずるいぞ! オイ! 脛を執拗に攻撃するんじゃない!」
イッスマン「おい、グララトォーンズ! あぁっ、ズキスタの匂いに夢中になってるぅ!」
イッスマン「やだっ、やめて! 誰かぁああああ!」
主人公&メルク「……。」
メルク「ありとあらゆる意味で、大人げないのですよ……。」
主人公「あ、ああ……。」
「いやぁああ! もうしませんからー!」
主人公「……助けるか。」
メルク「なのですよ。」
<場面転換>
イッスマン「うっ! うっ! ひどい! 俺はただ、全力で勝ちにいっただけなのに!」
主人公「勝ちにいくのはいいと思うんですけど、やり方が……。」
メルク「恐ろしいほどにガチすぎたのですよ。」
活発な男の子&リーダーの男の子&勝気な女の子「そうだそうだー!」
イッスマン「えぇい、どっちの味方だお前ら!」
主人公「今はどちらかというと子供達です。」
イッスマン「ひどい!」
イッスマン「お、お前達は俺のやり方がガチだとか、華麗で独創的で思わず嫉妬してしまうというがな!」
活発な男の子「捏造するなら、せめて本人のいないところでやってよ!」
イッスマン「既成概念にとらわれていては、発明と発展はありえないぞ!? いいか、かくれんぼを更に進化させようというのなら……!」
リーダーの男の子「そんな志はない!」
勝気な女の子「かくれんぼにそこまでの思い入れはないわ!」
イッスマン「なんだとぉ!」
イッスマン「こ、これが昨今の子供達の現状ということか……っ! 俺達の時はもっと! もっとこう……なぁ!?」
メルク「ど、同意を求めないでほしいのです……。」
主人公「イッスマンさんと倍以上に歳が離れてるんですよ……。」
イッスマン「うぉおおお、この世は敵ばかりだあー!」
グララトンズ「ごぉ!」
イッスマン「お、お前ら……!」
グララトンズ「ごぉーっつ!」
イッスマン「この香水が狙いなだけか!? クソゥクソゥ、期待させやがって! えぇい、くれてやるぅ!」
「ごぉ! ごぉおおお!」
主人公(なんか気の毒になってきたな……)
主人公「で、でも、さすがはイッスマンさんですね! 執筆とかで忙しいはずなのに、子供と遊んであげるなんて……。」
リーダーの男の子「ちがうよー!」
主人公「違うのか……。」
リーダーの男の子「ぼくたちが遊んでたら、このおじさんが急に現れて……、」
勝気な女の子「サインをしてやろうって、うるさくつきまとってきたの!」
メルク「イッスマンさん……。」
イッスマン「善意だ!」
活発な男の子「善意なら何でも許されると思うなー!」
リーダーの男の子「急に自分のサインを薦めてくるおじさんの出現で、ぼくたちがどれだけビビったと思ってるんだー!」
主人公「ぐぅの音もでないな……。」
メルク「それで、そこからどうしてかくれんぼに?」
勝気な女の子「あんまりしつこい上に、必死すぎてかわいそうになってきたから……。」
リーダーの男の子「かくれんぼで勝てたらいいよってことにしたんだ。」
主人公「譲歩された側なんですか!」
イッスマン「ぐぅ!」
イッスマン「だ、だって、たくさん本も出してるのに、誰も俺のことを知らないのが悔しくて!」
メルク(イッスマンさんの本は内容的にも、なかなか子供の目には入らないと思うのですが……)
イッスマン「だが、勝ちは勝ちだ! サインは書かせてもらうぞ!」
勝気な女の子「えぇ~……。」
リーダーの男の子「まぁ、約束だしね……。」
主人公(この子達のほうがよほど大人だなあ……)
イッスマン「フッフッフ、本当は欲しかったくせに。」
主人公「そういうところですよ……。」
イッスマン「で? で? どこに書いてほしい? 色紙があればもちろんそれに。あ、服でもいいぞ!」
活発な男の子「じゃあ裏地にお願い。」
勝気な女の子「あたしは靴の裏に。」
イッスマン「所々で小賢しいなお前ら!」
イッスマン「ええい、子供はもっと素直でいろ! 理屈っぽいのなんてあいつだけで十分だぁ!」
リーダーの男の子「うわっ、来たぞ!」
「逃げろぉー!」
「待て! サイン書かせろお!」
「そこ! 全員うるさぁーい! 紹介所は遊び場じゃないんですよ!」
「ごめんなさい!」
主人公&メルク「……。」
主人公「この町には、あんまり長く滞在しないほうがいいかもな。……イッスマンさんの被害者を増やさないためにも。」
メルク「なのですよ……。」
<場面転換>
リーダーの男の子「イッスく~ん。」
活発な男の子&リーダーの男の子&勝気な女の子「あーそーぼー。」
主人公「えっ。」
メルク「イ、イッスマンさんなのです?」
イッスマン「だぁはははは! 性懲りもなく来たか、お前達!」
イッスマン「よーし、今日はかけっこで勝負だ! 俺が勝てば著書をプレゼントしてくれる!」
勝気な女の子「わぁー、いらなあい。」
イッスマン「大人は心が脆いぞ気をつけろ!」
「では町の中心まで競争! はい、よーいドン!」
「あっ、わかりやすく卑怯よ!」
「普通にやっても勝てるくせにー!」
「だぁーはっはっはっは! 圧倒的な勝利にこそ意味があるのだあ!」
「待てー!」
リーダーの男の子「よーし、ぼくも!」
主人公「ま、待ってくれ! いつの間にイッスマンさんと仲良くなったんだ?」
リーダーの男の子「うん? 別に仲良くなったわけじゃないけど……。」
主人公「そ、そうか……。」
リーダーの男の子「でもイッスくん、全力で相手してくれるから。遊んでて飽きないよ。」
主人公「全力で……。」
リーダーの男の子「ま、腹が立つことも多いけどね!」
主人公「……はは、なるほどな。」
「おーい、こないのー?」
「本、プレゼントされちゃうよー!」
リーダーの男の子「あっ、じゃあぼくも行くから!」
主人公「ああ、気をつけてな。」
メルク「みゅふふ、たしかにイッスマンさんは、いつだって全力なのですね。」
主人公「それが自然と誰に対してもやれるのは、すごいことなのかもしれないな。」
「なんだどこから出てきた!? 裏路地? ずるいずるいずるぅーい!」
主人公「……まぁ、自然すぎるというか、おおっぴらすぎる気もするけど。」
メルク「それもイッスマンさんの良い所……なのです?」
主人公「う、うーん……。」
「勿論もう一回だ! 勝つまでやるからなあ!」
主人公「……まぁ、そうなのかもな。」