「閉環の黄昏月」ヘルメトレス

主人公「あれ……、夕方？さっきまで朝だったのに……、もしかして俺、うたたねしてた……？」

主人公「……ま、まじかー。最近、忙しかったからって気を抜きすぎたかも。今が夕方ってことは半日寝てたってことで……」

主人公「メルクも起こしてくれればいいのに……」

主人公「……って、あれ？ メルクは……？ というか、そもそも紹介所ってこんな静かだっけ」

主人公「…………。あのー……紹介所のお姉さーん……」

主人公「…………。誰もいない。な、なんか怖くなってきた」

主人公「あの、誰かいませんか……！ 誰か……」

？？？「おやおや、これは珍しいこともあるものだね」

主人公「わっ！ よ、よかった、人がいて……。すいません、驚いちゃって」

主人公「あなたはいったい……。（あれ……、この人の顔、なんだ？ お面？）」

？？？「おいで、君をあるべき場所へかえしてあげよう」

主人公「あるべき場所……？」

？？？「そうさ。ここは君のような本質たるものが訪れる場所ではないのだよ」

？？？「とはいえ、すべては円環の裏表。穴に落ちることは稀にあることさ」

主人公「本質……。えっと……よく分かんないんですけど、あなたは？」

？？？「私かい？ ふふふ、私について聞かれたのはとてもとても久しぶりだなあ」

？？？「だけれども、それについて語る名も、過去も、未来も持たないんだ。なんせ、私は現象だからね。とはいえ、残滓(ざんし)でもあるから、語る口はあるのさ」

主人公「現象……。（意味が分からなすぎて、オウムみたいになってるぞ、俺……）」

？？？「君はここへ何をしにきたんだい？」

主人公「え？ それは、仲間を探しに……。俺の旅を手伝ってくれる仲間を探しに来たんです」

？？？「仲間か、そうか。なるほど、これは必然と偶然、どちらだろう」

主人公「え？」

？？？「見てみなよ、扉の向こうは暁だ」

主人公「そういえば、朝だったのに、いつのまにか夕方になってて……、やっぱり、うたた寝してたわけじゃないのか……」

？？？「私もそろそろ飽きているような気がしてるんだ。ちょうどいい、君に名をたくそう」

？？？「君の問いに答えることのできない私に名前をくれないか。そうすれば、君に応えることはできるようになる。」

主人公「はあ……。名前なんて、俺がつけていいんですか」

？？？「ここで君と私以外に、言葉を繰れるものがいるかい？」

主人公「いなさそうですけど……。……えーっと、じゃあ……」

主人公「ヘルメトレスさんで」

？？？「ふむ、悪くない。なかなかいい名前だ。これなら君の仲間として、役立たずとはならないだろう」

主人公「えっ、仲間になってくれるんですか！？」

ヘルメトレス「こんな機会逃すわけにはいかないからね。それじゃあ、ゆこうか！」

主人公「えっ……」

　☆（場面転換）

主人公「…………」

メルク「みゅっ、主人公さん！ どうしたのですよ、そんなにぼーっとして……。やっぱり、こんな夜が明けるころから紹介所に来たからまだ眠いのですよ？」

主人公「えっ！？」

ヘルメトレス「はっはっはっ、シャバの空気はおいしいねえ」

メルク「主人公さん、その方は……」

主人公「えーっと……」

ヘルメトレス「…………」

主人公「……ヘルメトレスさんだ。仲間になってくれるんだって」

ヘルメトレス「そうとも、私はヘルメトレスだ」

メルク「そうなのですよ？ よろしくなのですよー！」

主人公「（よくわかんないけど、さっきのは現実だったのか）」

ヘルメトレス「どうかしたかい、暁へ導く者よ」

主人公「なにも……って、なんですか、その二つ名みたいな呼び方……。そういえばまだ言ってなかったですけど、俺の名前は主人公ですよ」

ヘルメトレス「あってるじゃないか」

主人公「はあ……。で、でも名前を教えたんだから、次からは名前で呼んでくださいよ」

主人公「そんな二つ名みたいなので呼ばれるほどすごい人じゃないし、なんか恥ずかしい……！」

ヘルメトレス「そうなのかい。私はよくそういった呼ばれ方をするからてっきりこちらではそれが普通なのかと」

主人公「ええ？ なんて呼ばれてるんですか？」

ヘルメトレス「滅びをもたらすものさ」

主人公「ぶ、物騒！」

ヘルメトレス「はっはっはっ。大丈夫さ、君がヘルメトレスと呼ぶ限り、私は何者も滅せないよ」

ヘルメトレス「君がそう導いたんだからね」