「秋統べる紅翅」フルルメリィ

メルク「フルルメリィさんが仲間になってくれて嬉しいのです！これからよろしくなのですよ～！」

フルルメリィ「うふふ。ええ、よろしくお願いね。」

メルク「それにしても、フルルメリィさんのそのドレス、とっても素敵なのですよ～！ティアラや髪型ともよく合っているのです！」

フルルメリィ「あら、ありがとう。そう言ってもらえると、わたくしも嬉しいわ。」

フルルメリィ「オーダーメイドなの。お兄様とお揃いで作って頂いたのよ。ねえ、お兄様？」

フルルメリィ「……ああ、お兄様とはしばしお別れだったわね。」

メルク「そういえば、フルルメリィさんには双子のお兄さんがいると聞いたのです。」

フルルメリィ「ええ。いつも翅が触れ合うほどの近さにいたから、つい呼んでしまったわ……。」

メルク「お兄さんと仲がいいのですね～！」

フルルメリィ「だって、わたくしたち、対の片翅ですもの。ねえ、お兄様。」

フルルメリィ「ああ、いけない。わたくしったら、また。」

メルク「そんなにいつも一緒にいるのです？」

フルルメリィ「生まれた時からずっと一緒だったもの。食事も、お風呂も、眠る時も。ずっと2人で秋の森を治めてきたの。」

メルク「そうなのですね～……。秋の森というと……、妖精の国で1番初めに秋が訪れる場所なのです？」

フルルメリィ「そう、飽食と贅沢が許される、実りの季節。だけど、最も冬の息吹を感じる季節でもある。そんな秋を、わたくしたちは司っているのよ。」

メルク「春の丘とは、また違っているのですね～。」

フルルメリィ「だって、春は芽吹きの季節だもの。でも、全ての季節はつながっているものよ。だからわたくしたち、春も好きなの。」

フルルメリィ「春の丘で開かれるダンスパーティにはお兄様とおろしたてのドレスを着て、毎年参加するのよ。」

メルク「ダンスパーティなのです！？楽しそうなのですよ～！」

フルルメリィ「いつか、メルクちゃんも一緒に行きましょう？お兄様とわたくしがエスコートしてさしあげる。」

フルルメリィ「音楽に身を任せて踊るのって、とっても楽しいのよ。まるでお兄様とわたくしが、同じさなぎの中で、とろけているよう。」

メルク「と、とろけちゃうのですよ！？」

フルルメリィ「うふふ、本当にそうなればどんなに……。」

フルルメリィ「ああ、でも、やっぱりお兄様とわたくしはお兄様とわたくしのままの方がいいわ。」

フルルメリィ「だって、2人だからこそ一緒にいろんなことができるんだものね。」

フルルメリィ「そういえば、メルクちゃんは、すでにとろけているのね。くるくる回って、もう誰かと混ざり合ってしまったの？」

メルク「そ、そんなことはないと思うのですよ！」

フルルメリィ「そう、それならやっぱり一緒にダンスパーティに行きましょうね。誰かと踊る楽しさを、お兄様とわたくしが教えてあげる。」

メルク「ほんとなのです！？それは、楽しみなのですよ！」

メルク「で、でも、とろけたくはないのですよ……！」

フルルメリィ「うふふ、冗談よ。くるくると回り続けた蜂たちが、いつのまにか溶け合って蜂蜜になってしまったという童話が妖精の国にはあるから。」

メルク「なるほど、そうだったのですね～。」

フルルメリィ「それじゃあ、これからよろしくね、メルクちゃん。」

フルルメリィ「旅の途中で、妖精の国へ立ち寄ることを期待してるわ。」

メルク「はいなのです！私もダンスパーティが楽しみなのですよ～！」