「黙想の弓使い」アコル

メルク「みゅ……？」

主人公「どうしたんだ？」

メルク「あちらにいる女性、眠っているようなのですよ。」

主人公「みたいだな……。あのままだと風邪をひきそうだし、起こしてあげたほうがいいかもな。」

メルク「なのですね～。」

主人公「あの、すみません……、」

アコル「……ん、う。」

主人公「体調でも悪いんですか？こんなところで寝てると冷えますよ。」

アコル「ふ、ああ……。」

アコル「えっと……、あなたは……、」

主人公「主人公、ですけど……。」

アコル「そう、主人公がわたしを助け出してくれたのね。」

主人公「助けるだなんて、大げさですよ。ただ起こしただけ……、」

アコル「いえ、だってあなたが接吻をして、わたしを永い眠りから覚ましてくれたのでしょう……？」

主人公「接吻？永い眠り？あの、いきなりなんの話しを……、」

アコル「あら、シャイな王子さまね……。」

主人公「なにがなんだかさっぱりわからないんですけど！？」

アコル「それで、わたしをどこへ連れ出してくれるのかしら？」

主人公「いえ、どこにも連れ出すつもりはないんですが……。」

アコル「お、置き去りに……？」

主人公「ええっと、置き去りというわけでは……、」

メルク「(ど、どうにも様子がおかしいのですよ)」

主人公「(もしかしたら、まだ寝ぼけてるのかも……)」

アコル「ひどいわ……。わたし、このままではまた、暗い暗い深淵の底に落とされてしまいそう。」

主人公「まさか、またここで寝るつもりですか……？」

アコル「……。」

アコル「さあ、もう時間がないわ。わたしの手をとって、早くここから連れ出して……。」

主人公「そ、そう言われても……。」

アコル「そして、わたしをぎゅっと抱きしめるの……！宮殿のバルコニーで、月明かりのベールに包まれながら！」

主人公「あなたの頭の中でいったいなにが起こってるんですか！？」

メルク「そもそも、まだ昼なのですよ……？」

アコル「……。」

アコル「ああ、わたしの王子さま！早く行きましょう！」

主人公「(だめだ、まったく聞こえてない。どうする、メルク……)」

メルク「(このまま置いていくのもかわいそうなのです。ひとまず彼女を連れていった方がよさそうなのですよ)」

主人公「(まあ、そうするしかないよな)」

(場面切り替え・平原)

アコル「……。」

アコル「あの、誤解しないでほしいのだけれど……、」

主人公「え、ええ……！もちろんわかってます！」

アコル「あなたに起こしてもらった時は、その、まだ少し、うつらうつらとしていて……。いつもなら、けしてこんな醜態は……うう……。」

メルク「……。」

アコル「本当よ……？」

メルク「う、疑ったりなんかしてないのですよ～！」

アコル「とりあえず、汚名返上させてもらうために、しばらくあなたたちについていくことにしたわ。」

主人公「それについては大丈夫です。アコルさんの気がすむまでいてもらえれば……。」

アコル「……これからよろしくお願いね。」

メルク「こちらこそよろしくなのですよー！」

主人公「あ、寝起きはなるべく近寄らないようにしますね……。」

アコル「余計な気遣いは不要だから……！」