「九尾の霊狐」すずかぜ

村の子供「なあー、遊ぼうってー！」

村の子供「そうだよ、どうせ仲間なんて見つからないんでしょー！」

主人公「どうせってなんだよ、どうせって！いいか、諦めたらそこで試合終了なんだよ！」

村の子供「むー、もういい！紹介所のお姉さんにイタズラしに行こうぜ！」

主人公「あっ、こら！監督責任で怒られるのは俺なんだからな！」

村の子供「それじゃあ、僕たちと遊んでよ！ほらほら、早くうんって言わないとお姉さんの大事にしてたおやつを食べ･･･､」

村の子供「わっ」

村の子供「うう、誰かにぶつか･･･、」

「おやおや、痛うところはありませんか？」

村の子供「う、うん･･･、」

主人公「ああもう、前を見ずに走るから･･･!すみません、ぶつかっちゃって･･･、」

主人公「あれ、あなたは･･･、」

？？？「お気になさらず。童の駆け遊ぶ姿にこそ、里の豊かさが見えるというもの。」

主人公「あ、ありがとうございます。」

？？？「どうかなされましたか？」

主人公「いえその･･･、･･･どこかで会ったことがありませんか？」

村の子供「あーっ、ナンパしてる！」

主人公「バカ、違うよ！ただ、なんとなく懐かしいような気がして･･･、」

？？？「さようですか。しかしながら、あなたとは初めてお会いいたします。」

主人公「で、ですよねー。なんでこんな錯覚したんだろ･･･。」

？？？「それは私がうつせみゆえに。」

主人公「うつせみ？」

？？？「風の吹くたび姿を変える、水影のようなもの。あなたは私を通して、あなたの中にある面影と出会っているのです。」

？？？「それは母であり、父であり、友であり、時にあなたが求め、未だ見（まみ）えぬなにかでもある。」

主人公「じゃあ俺が今、あなたに会って感じたなつかしさは･･･、」

村の子供「主人公、いつまで話してんだよ！この人はこれから俺たちと遊ぶんだって！」

主人公「こら、この人だって用事があるかもしれないんだから･･･、」

？？？「いいえ、かまいませんよ。若葉は芽吹き、繁りゆく姿こそ愛おしい。時にその姿を近くで見とうなります。」

村の子供「じゃあ、きーまり！行こうぜ、ねーちゃん！こっちだからついて来いよ！」

村の子供「けちの主人公は来なくていいから！仲間探し頑張ってね！べーっだ！」

主人公「構わなさ過ぎて完全にスネさせたな･･･。」

？？？「ふふふ、ではまた後ほど。」

主人公「えっ、後ほどって･･･、」

主人公「･･･もういない。」

「待ってー、あたしも行くー！」

主人公「あれ、まだ小さな子がいたのか？･･･けど、紹介所にあんな子いたっけな。」

主人公「っと、俺は仲間探ししないと。」

～～夕方～～

主人公「･･･。」

村の子供「ただいまー！」

村の子供「あっ、主人公が落ち込んでる！また仲間が見つからなかったんだー！」

主人公「うっうっ、そうだよ！」

主人公「もう、俺のことはいいから、あの人にちゃんと遊んでもらったお礼はいったのか？」

村の子供「あの人？」

主人公「一緒に遊びにいっただろ？」

村の子供「あの人っていうか、あの子だよ。だって僕たちと同い年くらいの子だったもん！」

村の子供「そうそう。ええと名前は･･･、あれ、なんだっけ。」

主人公「え、ええ？」

村の子供「まあいいや！また会えるだろうし、その時に聞けば！」

村の子供「それじゃあね、主人公！仲間探しがんば･･･、」

村の子供「あいたっ！」

主人公「だから前向いて走らないから！」

村の子供「ドジだな～！ほら、手ｪ貸してやるからさっさと立てよ！」

村の子供「うう、わかったよ･･･。」

主人公「ほら、手当てしたから。これでもう歩けるだろ？」

村の子供「家まで一緒に行ってやるから帰ろうぜ」

村の子供「うん･･･。ぐずっそれじゃあな！」

主人公「まったく････、」

主人公「それにしてもどういうことなんだ？あの人は2人と遊びに行ったはず･･･、」

？？？「こおは豊かな村ですね。」

主人公「うわっ！」

？？？「おやおや、驚かせてしまいましたね。」

主人公「あの、子どもたちと遊びに行ったんじゃ･･･、」

？？？「ええ。先ほどの童はいつも気がそぞろですね。遊んでいるときもよく転んでいました。」

主人公「さ、さっきから見てたんですね。」

？？？「私がなすべきことは見守ることだけですから。」

主人公「は、はあ。」

？？？「立ちたくとも、ひとりで立てぬ時もあるでしょう。けれど、その時に掴む手が私の手であってならぬのです。私の手は、揺り籠を揺らすためだけのものですから。」

主人公「･･･、」

主人公「あなたは何者なんです？なんのために紹介所に？」

？？？「あなたに会いに。」

主人公「俺に？」

？？？「しばし、見させてほしいのです。いずれ雲を払わん異国の風の吹くさまを。」

？？？「そうして雲が晴れた時には、赤子たる里を守る必要もなくなるのでしょうから。あの雲が囲みし、夏の揺り籠たる山にて。」

主人公「･･･、」

すずかぜ「どうぞ、すずかぜと。」

主人公「すずかぜ、さん？」

すずかぜ「ええ、あなたの前ではまさしく。」

すずかぜ「･･･あなたは枯れぬ夏に四季を兆す者だから。」