「憧燈の炎術士」フレイミオ

フレイミオ「はあ～……。」

メルク「どうしたのですよ、フレイミオさん。」

フレイミオ「あ、メルクさん！いやあ、仕事でのヘマを思い出しちゃいまして……。」

メルク「フレイミオさんの仕事といえば、港の氷を壊したり溶かしたりして、船が入港できるようにすることだったのですよ。」

フレイミオ「そうなんです。先輩たちは斧や魔法でザクザクやっていくのに僕ときたらろくに魔法も使えなくて……。」

フレイミオ「そのうえ、溶けた氷の水で滑って転ぶし、海に落ちそうになること、数知れず。そのたびに先輩方に助けたられてるんですよねぇ……。」

メルク「なるほど……。それはつらいのですよ。」

メルク「でも、まだ入ったばかりと聞くのです。これから経験を積めば、きっとフレイミオさんも先輩さんたちのようになれると思うのですよ！」

フレイミオ「そうですね、そう思いたい……、」

フレイミオ「いえっ！　そうなると決めたんでした。彼の力に頼らずに、自分の力だけでやっていけるようになりたくて。」

メルク「彼とは誰のことなのですよ？」

フレイミオ「あ、彼っていうのは僕の幼馴染です。とはいっても、ドジばかり踏んでる僕とはまったく違って運動も勉強もできるすごい子なんですけど。」

フレイミオ「昔から彼にはお世話になってばかりでした。転んだ僕を立たせてくれるのも、落ち込んだ時に励ましてくれるのも彼で……。」

メルク「優しい方なのですよ！」

フレイミオ「ふふふ、そうなんです。僕やリューセ……、彼の妹さん以外には誤解されがちな時もあるんですけど。」

メルク「それで……、その人に頼らずやっていけるようになりたいとのことだったのですよ。」

フレイミオ「そうなんです、このままではいけないと思いまして。彼は優しいので、要領の悪い僕を心配して仕事なら自分が紹介するとまで言ってくれるんです。」

フレイミオ「というのも、彼の家は大きな商家で、彼も将来は実業家になる予定なんです。だから、自分が雇ってみせるって……。」

メルク「そ、そこまで……！」

フレイミオ「きっとそこまで僕がダメってことなんだと思います。実際に今の仕事だってドジばっかりで先輩方には迷惑をかけっぱなしですし……。」

メルク「フレイミオさん……。」

フレイミオ「でも、そんな自分のままでいるのはやめりょうってあの人に会ってから決めたんです！雪をも焦がすようなアツいあの人に！」

メルク「お、おお……！フレイミオさんの目に炎が……！」

フレイミオ「あの人と会ったのはほんの少しの間だけでしたが、僕の考え方を大きく変えてくれる、アツい人でした……。」

フレイミオ「自分は何をやってもダメなんだと自分で自分の考えも可能性も凍らせてしまった僕の氷を雪さえ焦がすようなアツい言葉で溶かしてくれたんです。」

フレイミオ「あの人のようにはなれないかもしれないけど、それでも、諦めて立ち止まってるだけじゃ、永遠に形を変えることなくそのままだ。」

フレイミオ「常に動いて少しでも熱を生み出していれば、いつかは氷が水になって形も変えられるはず！」

フレイミオ「僕は自分を変えたい……。少しでもダメな僕という氷像の形を変えたいんです！」

メルク「ア、アツい……！フレイミオさんのアツい気持ちが伝わってくるのですよ！」

フレイミオ「だから僕は、幼馴染の元から離れてこうして港で氷を溶かす仕事についたんだ。」

フレイミオ「そうだ、思い出し悩みをしてる場合じゃないじゃないか！常に動いで、熱を生み出すこと……。それが自分を変える方法なんだから！」

フレイミオ「ありがとう、メルクさん！話してるうちに初心を思い出せました！このアツさのうちに魔法を練習しようと思ってます！」

メルク「フレイミオさんのアツさはわかったのです！私も応援するのですよ！」

フレイミオ「ありがとうございます！ふふ、それにしても本当にあの人はすごいや。」

フレイミオ「あの人の言葉を思い出しただけでまるであの人が傍にいるみたいに気温が５度ほど上がったように感じ……、」

フレイミオ「感じ……。」

メルク「みゅわーっ！杖から出た炎が服に燃え移ってるのですよー！」

フレイミオ「ほんとに上がってたー！」

メルク「物理的なアツさは今はいらないのですよー！」