「原初の求道者」クロンキスト

クロンキスト「(森が、僕を呼んでいる)」

クロンキスト「(緑精が、僕に歌を聞かせてくれる)」

クロンキスト「(教えてくれ。君たちは僕に何を伝えたいんだい？教えてくれ。僕はきっと、君たちの助けになれるから)」

クロンキスト「(ああ、聞こえる！　聞こえるよ君たちの声が！うんうん。なるほど！そっかー、それは大変だね。うんうん、よくわかるよ！)」

クロンキスト「(……)」

クロンキスト「(なんかむなしくなってきたな。実際に聞こえているわけでもないのに、僕は何をやっているんだろう……)」

クロンキスト「(原初の森を目指してもう１０年。祭司様の教えを受けたり、旧時代の教えに従ったりしたけどいまだに植物の声は聞こえない……)」

クロンキスト「(どうしてだよぉ！僕はこんなにも植物に尽くしているのに、なんで何も答えてくれないんだよぉ！)」

クロンキスト「(……こうやって怒っても答えは無し、と。はぁ、なんかもう疲れた。森林浴にでも行って、リラックスしてこよう)」

「あのー！」

クロンキスト「うん？誰かに話しかけられたような……、」

メルク「そこのお花をまとっているあなたなのですよ！申し訳ないのですが、ちょっとこちらに来てほしいのです！」

クロンキスト「おお、少女が瓶詰めにされてる……。これは珍しいものを見たねぇ。」

メルク「みゅう、言葉の割に驚いていないように見えるのですよ？」

クロンキスト「まぁ、同じくらい不思議なものをたくさん見てきたしねぇ。たとえば……歩くだけで花を咲かせる女の子とか。あの子には、もう１度会いたいなぁ。」

クロンキスト「それより君、大丈夫かい？瓶から出て来れなくなったのなら、助けてあげるよ？」

メルク「ご親切にありがとうなのですよ！でも、私は大丈夫なのです。むしろ、あっちの子を助けてあげてほしいのですよ！」

クロンキスト「あっちの子……？この飾られている花のことかい？」

メルク「そうなのです！なんだか元気がないようで、心配なのですよ。」

クロンキスト「ふぅむ、確かに元気はないねぇ。病気かな？それなら僕が何とかできるかもしれないけど。」

メルク「おお！もしかしてあなたは植物のお医者さんなのです？」

メルク「たくさんお花をつけていたので、植物には詳しそうだと思っていたのですが、まさか専門家の人だったとは……！」

クロンキスト「あはは、医者なんて立派なものじゃないさ。僕ができるのは、植物の手助けだけ……、救うなんて大それたことはできないよ。」

クロンキスト「だけど、彼の手助けはできるかな。元気がない原因は水不足だ。きっと朝に水をやり忘れたとか、そういうことだろう。」

クロンキスト「あとで受付のお姉さんに声をかけておこう。それで、元気を取り戻すはずだよ。」

メルク「みゅわ～、ありがとうなのですよ！えっと……、」

クロンキスト「あっ、名前かい？僕はクロンキストだよ。ちょっと探し物があってね。旅をしているんだ。」

メルク「私はメルクというのですよ！クロンキストさんも、旅をしているのですねー。」

クロンキスト「ということは、メルクもかい？」

メルク「はいなのですよ！今はここにいないのですが、一緒に旅をしている友だちもいるのです！」

クロンキスト「旅仲間ってやつかぁ。いいねぇ、僕は１人旅だから時々人が恋しくなるよ。」

メルク「なるほど……。では、クロンキストさんも私たちと一緒に来てはどうなのです？」

クロンキスト「えっ、いいのかい？」

メルク「仲間は多い方が楽しいのですよ！それに、もっと植物のことを教えてほしいと思っていたのです！」

クロンキスト「ふぅむ、そういう条件か。悪くないね。それじゃあ、お言葉に甘えようかな……？」

メルク「わーいなのです！歓迎するのですよ！すぐに旅の仲間も紹介するのです！」

クロンキスト「ああ、楽しみにしているよ。」

クロンキスト「(……嬉しかったから頷いちゃったけど、良かったのかな、これで？もし旅の途中で原初の森に到達したらメルクたちとは……、)」

クロンキスト「(いや、先のことを考えるのはやめよう。今は良い仲間ができたことを喜んでいたいんだ)」

クロンキスト「(森よ、緑精よ。君たちも喜んでくれるかい？僕が君たち以外のものと繋がることを……)」