「泡沫の夢花火」いずみ

いずみ「あ～あ。なにが楽しくてこんなに遠出ばっかするわけ？おかげで足腰はガタガタだし、生活リズムも乱れっぱなし！」

いずみ「ねぇ、見てよこれ。衣装の裾に泥がこびりついちゃって。しかも、擦り傷だってこんなにいっぱい。」

いずみ「ほんとさぁ？あんたたちに同行してるとろくなことがないよねぇ。」

いずみ「あんたも、あんまり無茶しないほうがいいよ。けっこう綺麗な顔してるんだからさぁ。」

いずみ「ちょっと、聞いてるの？俺を無視するなんて見上げた度胸だよねぇ……？」

主人公「いや、べつにそんなつもりじゃないんだけど。ただその、ひとつだけ疑問に思うところがあって。」

いずみ「いきなり、なんの話？意味わかんないなぁ。ちゃんと説明してよねぇ？」

主人公「不平不満を口にするわりには、いつもちゃんと俺たちについてきてくれるから。」

主人公「もしかして、本当は違うことを考えてくれてるのかな、とか……？」

いずみ「ふぅん？あんた、思いのほか生意気な口を利くね。」

いずみ「ふふ♪主人公くん、ちょっとこっちにおいで～♪」

主人公「えっ、なんで……？そんなににこやかに言われても、嫌な予感しかしないんだけど！」

主人公「『瀬名先輩が無邪気に笑ってるときは要注意です』って、つかさにも教えてもらったばっかりだし。」

いずみ「なんなのその言い草っ、チョ～うざぁい！あのクソガキも、余計なこと言うよねぇ。」

メルク「みゅわわわっ！？いずみさんが本性をあらわにしたのですよっ！？」

いずみ「うるさいなぁ……？俺は別になにも隠しちゃいないんだけどね。」

いずみ「あぁもう、疲れたっ！どうしてこんなことしなくちゃいけないわけ！？」

メルク「だ、だって、それは、いずみさんが、私たちに協力することを了承してくれたからなのですよ。」

いずみ「ほんと、馬鹿みたい。あんたたちについていくのはこれっきりでおしまい！」

いずみ「ふふ♪はぁ、せいせいした……♪じゃあね、俺はゆうくんのもとに帰ってあげなきゃ♪」

主人公「あ、うん。ええっと、また明日……？」

いずみ「あんた馬鹿じゃないのぉ！？」

メルク「みゅわああっ！？いずみさんがとんでもない形相をしているのですよっ！？」

いずみ「冒険ばっかりしてるせいで頭が湧いてんじゃない？俺はここをやめるって、そう言ってんでしょ！」

主人公「う～ん、このまえも同じこと言ってたけど。結局、翌日には戻ってきてたような覚えが……？」

いずみ「そんなのいちいち記憶してるわけないでしょお。こっちはアイドル活動もあるから、忙しいんだよねぇ？」

メルク「な、なるほど。ということは、本当に行ってしまうのですよ……？」

いずみ「当然でしょ。やめなよ、寂しげな顔したって無駄だからさぁ？」

いずみ「ふふ……♪また機会があったら、俺の舞台でも観にきなよ。」

いずみ「そんなわけで、ばいばい♪ほかの連中にもよろしく伝えといてよねぇ。」

(暗転)

メルク「主人公さんっ、追いかけなくていいのですよ！？いまならまだ説得が通用するかもしれないのですっ！」

主人公「ああ、いや。このくだりにも既視感があるというか。」

主人公「そもそもいずみが『Knights』を残して、ここから出ていくとは考えられないし……。」

メルク「たしかに言われてみれば、そうなのですよ……？レオさんはいずみさんを世話好きだと言っていたのです。」

メルク「レオさんが離れていたころも、いずみさんは『Knights』のまとめ役として、『ユニット』をずっと守りつづけてきたそうなのですよ。」

主人公「ああ。機嫌が悪いと過激な発言もするけど、きっと、根はそんなことないんだと思う。」

主人公「あらしは、『Knights』ができるまえからいずみと仕事関係で知りあいだって言ってたけど、そのころから面倒見がよかったみたいだしな。」

メルク「みゅふふ。あまり素直になれないひとなのかもしれないのですよ～。」

主人公「明日には気も変わってるだろうし。『Knights』のことが心配になって、ひょっこり戻ってくるんじゃないか？」

いずみ「馬鹿じゃないのぉ！？気分なんかで戻ってくるわけないでしょ！？」

メルク「みゅわわわ～っ！？いくらなんでも戻ってくるのが早すぎるのですよ～！」