「貫志なる護矢」ユイリア

＜紹介所・昼背景＞

ユイリア「ふんっ、ふんっ！」

主人公「あ、ユイリア。このあたりで謎のモンスターが目撃されてるらしくてさ。それで注意をしておこうと……、」

ユイリア「せいっ、せいっ！」

主人公「あの、ユイリアさん。」

ユイリア「そいやぁっ！」

主人公「ぎゃあああっ！」

ユイリア「きゃあっ！　主人公さん！？」

主人公「風圧が！　風圧が俺の目を！」

ユイリア「す、すみません！　わたし、すっかり夢中になってしまって！」

主人公「い、いや、大丈夫だ。ちょっと目が涼しかっただけだから。」

ユイリア「主人公さんの目がかぴかぴに！」

ユイリア「本当にごめんなさい。まさか軽くウォーミングアップをしてただけで主人公さんを傷つけてしまうなんて……。」

主人公「大丈夫……。心の汗で目が潤ってきた。」

主人公「それにしても最近は前にもまして鍛錬に力を入れてるみたいだけど、どうしたんだ？」

ユイリア「はい。わたしなりにもっとモンスターと仲良くなれるように頑張ってみようと思ってるんです。」

主人公「モンスターと仲良く？」

ユイリア「わたしはモンスターを恐れてばかりでしたから、まだセンオンのモンスターたちとはそれほど仲良くなくて。ですから、まずは身近な存在になろうと考えてるんです。」

主人公「それはいい考えだと思うけど、そうじゃなくて……。」

主人公「どうして仲良くなるのに、握力を鍛えてたんだ？」

ユイリア「ふふ。それはもちろん、こうするためですよ！」

ユイリア「ふんっ。」

主人公「握られたりんごが粉々に……！」

主人公「あ、あのユイリア？　まさか例の肉体言語交渉術を実践してるんじゃないよな？　モンスターを舎弟という名の友達にしてるんじゃないよな？」

ユイリア「あっ、そろそろ時間ですね。いつもこの時間にモンスターたちと会ってるんです。」

ユイリア「すみません、主人公さん。お話はまたあとで！」

主人公「えっ、ちょ、ちょっと待って！　俺の質問に答えて！　俺を安心させて！」

主人公「……行ってしまった。大丈夫だとは思うけど、ちょっと様子を見に行ってみるか。」

＜町中・昼背景＞

ユイリア「行きますよ～。」

ユイリア「ふんっ！」

ラビューン・ラビューン・ラビューン「きゅいきゅいっ！」

主人公「な、なんだ。そういうことか。」

ユイリア「あれ、主人公さん。ついて来てくださってたんですね。」

主人公「悪い、ちょっと心配で。けど必要なかったな。」

主人公「ラビューンたちが自分では割れないような殻の堅い実を代わりに割ってたから、握力を鍛えてたってことか。」

ユイリア「そうなんです。たまたまクルミを前に困っているところを見つけて割ってあげたことが始まりで……。」

ギロスター「ぎろろろ……。」

主人公「ん？　なんだ？」

ギロスター「ぎろろろぉ。」

主人公「モンスターが憧れの眼差しでユイリアを見ている！」

ユイリア「ふふ、親切なモンスターなんです。よく食べ物や切り倒した丸太を持ってきてくれるんですよ。」

主人公「舎弟の匂いがする……。」

ユイリア「……。」

主人公「ユイリア？」

ユイリア「いえ、ちょっと思い出したことがあって。わたしがモンスター恐怖症になる前に仲良くしてたモンスターもこの種類だったんです。」

主人公「え？」

ユイリア「ふふ、もちろんこの子ではありませんが……。」

主人公「……そのモンスターは？」

ユイリア「行方知れずです。父がわたしを助けてくれた後にはもう姿を消していました。」

ユイリア「だからどうしてわたしを襲ってきたのか、こうしてモンスター恐怖症を克服し始めた今でも、確かめる方法はありません。」

主人公「そうか……。」

ユイリア「あのモンスターも、よくわたしの前に切り倒した丸太を持ってきてくれました。……それなのに、どうしてだったんでしょうか。」

ユイリア「わたしが何かしてしまったのか。それとも他の理由なのか。」

ユイリア「こうしてたくさんのモンスターたちと関わってゆけば、いつかはそれもわかる日が来るんでしょうか。」

主人公「……そうかもな。」

ユイリア「そろそろ戻りましょうか。」

主人公「ああ。」

ユイリア「ふふっ。そういえば、アーデさんが着ぐるみを買っていたんです。それがすごくかわいいモンスターの着ぐるみなんですよ。」

主人公「アーデさんはどこに向かおうとしてるんだ。」

ユイリア「わたしのためだそうです。モンスターの姿になれることができれば恐怖症がましになるかもしれないって。」

主人公「とはいっても、ユイリアってそういう段階はもう克服してるよな？」

ユイリア「でもアーデさんが可愛いので。」

主人公「そ、そっか。」

＜紹介所・夕背景＞

主人公「そういえば、モンスターについて詳しく載ってる辞典が紹介所にあったな。昼間のモンスターについて何か書いてあるかも。」

主人公「これだ。ええと、なになに……。」

主人公「ギロスターが丸太を相手に渡す行為は尊敬する相手に舎弟としての力を示す意味と、自分の力量を好きな相手に示して求愛する意味がある。」

主人公「やっぱ舎弟ができたんじゃん……。」

主人公「ええと、ただし若いギロスターの場合、勢いあまって好きな相手に襲い掛かって自分の強さをアピールして気を引こうとする。」

主人公「……ん？」

主人公「そして我に返った後は、相手を泣かせたショックで逃亡することが多い。大抵は成体になった後に謝りにくるという。」

主人公「……ま、まさかな。」

＜町中・夜背景＞

ギロスター「ぎろろろぉ……。」