「至甘の福菓」ソワレ

＜町中＞

主人公「あのですね、ソワレさん……。俺、やらないといけないことがたくさんあるんですよ。それを無理やり町に連れ出してどういうつもり……、」

ソワレ「あのですね、主人公くん。実はこの町に今、チョコレート王子とまで呼ばれる凄腕ショコラティエが来ているそうなんですよ。」

主人公「聞いて、俺の話。」

主人公「……そのショコラティエのお菓子を食べたいから、俺を連れて来たってことか？」

ソワレ「そのとーりっ！ というわけで……、」

ソワレ「あの列に並ぶよ！」

主人公「……。」

主人公「……何時間待ち？」

ソワレ「２時間くらいかな。」

「さらばっ！」

ソワレ「待たれい！」

主人公「い、いやだー！」

ソワレ「だいじょーぶだいじょーぶ。やることがあるなら、後であたしも手伝ってあげるから！」

主人公「なにも安心できない！」

ソワレ「そんなことないない！ スフェラくんに勉強を教えてたこともあるんだから！ さあ、人が増える前に並んだ並んだ！」

＜時間経過＞

主人公「結局、並ばされてしまった……、ふああ。」

ソワレ「主人公くん、眠そうだねえ。」

主人公「いや、最近ちょっと忙しくて。旅の帳簿付けとか、他にもいろいろ……、」

ソワレ「それにしても暇だねえ。」

主人公「俺の話聞いてた？」

ソワレ「でも待ってる間は暇でしょ？」

主人公「そうだけどそうじゃない！」

ソワレ「暇だし、カードゲームでもやる？ スフェラくんとたまにやったりしてたんだよね。」

主人公「ほんとに自由人だな……。スフェラも大変だっただろうな。」

主人公「ん？ そういえば、スフェラってアカデミーやめたんだよな？ 占い同好会はどうなったんだ？」

ソワレ「今でも活動中だよー。ふふーん、アカデミーをやめて我が占い同好会から抜けられると思ったら大間違い！」

ソワレ「倶楽部じゃないから、メンバーはあたしの思うがままなんだよね！」

主人公「活動内容も気ままだよな……。」

主人公「でも、アカデミーをやめたんならあんまり顔も出せないんじゃないのか？」

ソワレ「うーん、それはまーね。でも、占い同好会のモットーは常識にとらわれないことだから！」

ソワレ「みんなが自分のやりたいことをやって、それで気が向いた時に集合して、一緒にお菓子を食べられればそれでいいんだよね。」

ソワレ「もともとスフェラくんを同好会に誘ったのも、やりたいことをやれる場所がないならあたしとそんな場所を作ろうよってだけだったし。」

主人公「そうなのか……。そうはいっても、スフェラがいなかったらソワレ１人だし、寂しくなるな……。」

ソワレ「ふふーん、それが１人じゃないんだよね。覚えてる？ アカデミーで一緒にいた、赤い帽子の子。」

主人公「ああ、黒髪の？」

ソワレ「そうそう、ミザリアっていうんだけどね。今はその子と、ヘルスケア同好会の活動がない日に、お菓子パーティしたり、お菓子屋さん巡りしてるんだ。」

主人公「へえ、そうなのか。」

主人公「ってそれ、ただ友だち同士で遊んでるだけじゃ……、」

ソワレ「占い同好会のモットーは常識にとらわれないことなのだよ。」

主人公「それですべてを済ませられると思うなよ……！？」

主人公「けど、ちょっと意外だな。ソワレとはまたタイプが違う人に見えたけど、ふたりは友だち同士なのか。」

ソワレ「まーねっ。もう恋バナまですましちゃった仲なんだから。」

主人公「な、なるほど、恋バナ……。」

ソワレ「あっ、もしかしてスフェラくんのこと考えてる？」

主人公「えっ、いや！ ……けど、そうなのか？」

ソワレ「それはねー……、」

ソワレ「残念、弟みたいな存在でしたー！」

主人公「な、なんだ……、そうか。」

ソワレ「とはいっても、弟そのものでは全然ないんだけどね。」

主人公「それはそうだろ。あくまで弟みたいな後輩ってことで……、」

ソワレ「だからたまにはちょっと、ドキっとしちゃうこともあるかもだったりして。」

主人公「えっ。」

ソワレ「なーんちゃって！」

主人公「今の、どういう……、」

「次の方、どうぞ！」

「はにゃ～っ、お菓子～っ！」

主人公「あっ、ソワレ！ 今のってどういう……、ああでも、今はいいや！」

「なんていい匂いなんだ！」

「チョコー！」

＜紹介所・夕方＞

主人公＆ソワレ「はあー。」

主人公「おいしかった……、疲れとストレスが消え去った……。」

ソワレ「やっぱり甘いものは最高だよねえ。心がゆるまる～。」

主人公「……、」

主人公「なあ、ソワレ。もしかして今日、俺を連れ出したのって……、」

ソワレ「ただのセンパイの気まぐれでーす。それじゃ、ゆるまったところでやらないといけないことやろっか？」

主人公「……ああ、ありがとう。」

主人公（無理やり同好会に引きずり込まれたってスフェラは言ってたけど……）

主人公（アカデミーではいろいろ悩んでたみたいだし、ソワレもあえて断れない状況を作ったのかもしれないな。スフェラが肩の力を抜けるように）

＜時間経過＞

ソワレ「すかー。」

主人公「くっ、もう２度とソワレの誘惑には乗らないからな……！」