「美学追う碧」アズール

アズール「いいね、完璧なのだよ。僕のアクアリウムは今日も美しい！」

アズール「ガラスの中に自分だけの世界を作る。ふはは、まさにこれが水の芸術の醍醐味……！」

主人公「アズール、そろそろ出発するぞ、って……。」

主人公「あーっ！また紹介所に水槽を持ち込んで！」

主人公「この間みたいに紹介所のお姉さんに怒られたらどうするんだよ……。」

主人公「もう、怒られる前に、外に運び出すからな。」

アズール「触るな、主人公！」

主人公「え！？」

アズール「僕の芸術に触るなと言っている。」

主人公「わ、悪かったって。」

アズール「まったく、これだから芸術を解さないやつは！」

アズール「理解なき者が僕のアクアリウムに指紋を付けるなど言語道断……！」

アズール「紹介所のお姉さんもどうかしているのだよ。」

アズール「こんなに美しい芸術品の良さを理解しようとせず、さらには邪魔物扱いするとは……！」

主人公「お、落ち着けって！それにほら、よく考えてみろよ。水槽は旅に持っていけないだろ？」

アズール「……これでも自宅にある水槽よりは小さな物を持ってきたのだよ？」

主人公「そんなきょとんとした顔をしてもだめだからな！」

主人公「旅に余分な荷物は持っていけないんだから。」

アズール「……余分な荷物？」

主人公「あっ、いや、その……！」

アズール「主人公、君は今、確かに僕のアクアリウムを『余分な荷物』と言ったね？」

主人公「えっと、今のはなんというか、そう！言葉の綾っていうか……。」

アズール「言葉の綾？それなら本当は何と言おうとしていたのか、教えてもらいたいのだよ。」

主人公「(まずい、まずいぞ……！このままじゃ、アズールの機嫌を完全に損ねてしまう……！)」

村の少年「うわあ……、きれい……！」

主人公「え？」

村の少年「ガラスの中にお魚さんがたくさんいて、きらきら光ってる……！」

村の少年「ねえ、これ、お兄ちゃんの？」

アズール「ああ、そうだが……。」

村の少年「すごいすごい！ぼく、こんなにきれいなもの初めて見た……！」

アズール「僕の芸術に理解を示すとは、なかなか見る目があるのだよ、少年。」

主人公「(よ、よかった……。男の子のおかげでアズールの機嫌が直ったみたいだ)」

村の少年「ねえ、なんで水の泡に色が付いてるの？いろんな色があって見てて楽しいね！」

アズール「ああ、これは魔法だ。」

村の少年「まほう？お兄ちゃん、魔法使いなの？」

アズール「ああ、そうなのだよ。」

村の少年「へえ……！かっこいい……！」

村の少年「じゃあ、あのお魚さんがキラキラ光るの、あれも魔法？」

アズール「そうなのだよ。特殊な魔法をかけて、魚が通った跡に光が宿るようにしてある。」

村の少年「そうなんだ！街で見た、宝石みたいに輝いてる……！」

アズール「ふははは、そうだろうそうだろう！」

主人公「アズール、なんだかすごく生き生きしてるな。」

アズール「む。そうかね？」

主人公「いつもしかめ面なのに、今はとても楽しそうだ。」

アズール「……それは、君。自分の芸術を理解されたら嬉しいと思うのは当然だろう。」

アズール「アカデミーでは、僕の芸術をわかってくれる人間はあまりいなかったから。」

アズール「理解されない芸術ほど、虚しいものはないからね。」

村の少年「ねえ、お兄ちゃん！もしよかったら……。」

村の少年「もっとお話し聞かせてほしい！」

村の少年「だめかな？」

アズール「……、別に構わないのだよ。」

村の少年「ありがとう！」

アズール「……まずこの水槽は、アクアリウムといって、この水槽の中で大自然を表現するものなのだよ。」

村の少年「それってとっても『そーだい』だね！」

アズール「少年、よくわかっているじゃないか。」

アズール「そうなのだよ。アクアリウムは壮大な芸術！一言では言い表せない奥深さがある……！」

主人公「(本当に嬉しそうだな、アズール)」

主人公「(メルクと相談して、出発の時間を少し遅らせるか)」

主人公「(あと、水槽をどうやって旅の間持ち運べばいいか、それも相談しよう……)」