「雪寒凌ぐ隊員」リージュ

＜紹介所＞

リージュ「ふーんふふーん♪」

リージュ「よっしゃ、完成～！」

メルク「みゅ？リージュさん、爪に塗っていたのは……、マニキュアなのです？」

リージュ「そ。これ、発色が良くてさー。科学の国からわざわざ取り寄せたってわけ。」

メルク「そうなのですね。確かに綺麗な青色なのです！」

リージュ「でしょー？色のイメージは常夏の国！はあ、見てるだけで、マジテンションアガる～！個人的に１番あたしに似合う色が気がする！」

リージュ「……でもまあ、綺麗に塗ったところで、うちの隊の人間が気にかけてくれることは、ほとんどないと思うけど。」

リージュ「この色が似合うってのも単なる思い込みかもだし……。おしゃれって結局は自己満足なのかもねえ。」

メルク「そんなことないのです！そのマニキュアの色、リージュさんにとても似合っていると思うのです。」

メルク「自分に似合う色がわかっているのは素敵なことなのですよ～！」

リージュ「メルク……。」

リージュ「めっちゃ嬉しい！今の言葉、うちの隊員どもに聞かせてやりたい！特に男子に！」

リージュ「あいつら、あたしが化粧変えても全然気づいてくれないんだよね～。」

リージュ「一応、隊長が最初に気づいてくれるんだけど、口紅の色を変えたのに『お、アイメイク変えたか？』って聞いてくるし……。」

リージュ「隊におしゃれをわかってる人がいないのが悲しすぎるわー……。」

メルク「みゅ、そういえば、紹介所のお姉さんから聞いたのですが、リージュさんは、辺境調査隊のメンバーなのですよ？」

メルク「辺境調査隊は服装に厳しいイメージがあったのですが、意外と自由なのですね。」

リージュ「ん～？まあ、隊によると思うよ。あたしが所属してる３番隊は、規則が緩いから、自由にやってるだけ。」

メルク「そうなのですね～。」

リージュ「うん。どの隊に配属されるか決まるときに、『１番規則が緩くておしゃれができる隊にしてください！』って頭下げたんだよね。」

リージュ「そしたら、ジャルキィ隊長のいる３番隊に入隊が決まったんだ～。」

メルク「す、すごいのです。おしゃれに対してそこまで情熱的でいられるリージュさん、かっこいいのです……！」

リージュ「ふふーん、おしゃれのために生きてるからね、あたし。」

メルク「でも、どうしてそんあんいおしゃれが好きなのに辺境調査隊に入ったのです？」

リージュ「あーそれ？実は、憧れのおしゃれなお姉さんがいてさ。その人が辺境調査隊にいたから、あたしも入ろうって決めたわけ。」

リージュ「お姉さんのようにおしゃれと強さを両立できたらかっこいいなって思ってさ。」

メルク「なるほどなのですよ。そのお姉さんは素敵な方なのですね～。」

リージュ「あったりまえでしょ。あたしの憧れの人なんだから。」

リージュ「そのお姉さんが調査隊を引退した今でも、定期的に会って、おしゃれについてアドバイスをもらってるし。」

メルク「アドバイス、なのですよ？」

リージュ「まあ、具体的に言うとチークの塗り方とか、今年はどの口紅の色が流行りそうかとか、目が大きく見えるようにするアイメイクの方法とか……。」

リージュ「流行りの服についても教えてもらってる。調査隊の活動が休みの日は、そのお姉さんとめいいっぱいおしゃれして、街を歩くんだよ。」

メルク「みゅふふ、おしゃれを語る時の リージュさん、とても生き生きしてるのですよ。」

リージュ「ふふーん、言ったでしょ、メルク。あたしはおしゃれのために生きてるって。」

リージュ「ただ１つ、問題がある……。」

メルク「問題、なのですよ？」

リージュ「こんなにおしゃれしてるのに、あたしは、あたしは……、」

リージュ「モテない！」

メルク「みゅ！？」

リージュ「はあ……、憧れのお姉さんと歩くのもいいけど、あたしはそろそろイケメンとも歩きたい！」

リージュ「『あら、あのカップルお似合いね』なんて街の人たちに言われてみたい！おしゃれなモテライフが送りたいっつーの！」

メルク「そ、そうなのですね……。」

リージュ「そう。これはあたしの人生に関わってくる重要な問題！」

リージュ「辺境調査隊で出会いがあるかと思ったけど、実際は後輩のニックスとジャルキィ隊長の暴走を止める仕事ばっかり！」

リージュ「日に日に激化する『楽しいこと』にあたし、そろそろついていけないから！」

リージュ「『屯所で演奏会を始めるからリージュも来い！』って隊長に言われた時は、アイメイクが終わってないけど全力で止めに行ったっつーの！もう！」

リージュ「あの時止めに行ってなかったら、 ジャルキィ隊長は作詞作曲自分の曲を大声で歌って、屯所に迷惑かけてただろうし……、」

リージュ「ニックスはその歌に合いの手いれつつ、走り回った隊長のために観客を集めてただろうし……！」

リージュ「ふたりとも子どもか！無邪気か！」

メルク「みゅ～、 リージュさんのおしゃれなモテライフ、まだまだ訪れるのは遠そうなのですよ……。」

リージュ「そうなんだよねえ……。でもま、なんだかんだで今の隊は居心地がいいし。満足してる。」

リージュ「隊長は暴走することも多いけど、個人の個性は尊重してくれるし……、」

リージュ「後輩のニックスはたいていジャルキィ隊長と突っ走ってるけど、愛嬌があって可愛いし。」

リージュ「最初はおしゃれしたいから入った３番隊だったけど、今じゃおしゃれと同じくらし、あたしにとっては大切な存在なんだ。」