「篤信なる祈蹟」アムレット

＜紹介所＞

アムレット「──♪ 神よ、このよき日に感謝いたします。日差す窓辺の、なんと麗しいことか。」

アムレット「狭隘（きょうあい）なる暗路の先、主が与えたもう地上の光のなんとまばゆいことか。」

主人公「わぁ……。」

紹介所のお姉さん「あの人が、仲間になってくれるアムレットさん。修道院長さんで、地元で学生さんに歌を教えていたこともあったらしいわ。」

主人公「すごく綺麗ですね。今は……窓辺の小鳥に語りかけてる、のか。」

主人公「あっ、鳥が飛んで行ったぞ。今が話しかけるチャンス……！」

主人公「初めまして、アムレットさん。俺は癒術士の主人公です。」

アムレット「──白鳥のさえずりもまた主が与えたもうた奇跡。」

主人公「あ、あれ？ アムレットさん、まさか歌に没頭して……、」

アムレット「──それはそれとして。」

アムレット「神よ、このよき出会いに感謝いたします。暗路共にゆく輩（ともがら）の何と頼もしいことか──。」

主人公「……。」

アムレット「……ふぅ。」

アムレット「というわけで、申し遅れました。わたしはサクレー修道院のアムレットという者です。どうぞよろしくお願いいたします～。」

主人公（さっきの歌、途中から俺宛てに歌ってたんだ……！？）

主人公「は、はい！ よろしくお願いします。」

アムレット「はい。ところで、主人公さん……。」

アムレット「小鳥さんたち、行ってしまいましたね……。」

主人公「それは俺歓迎ソングを歌う前に反応することなのでは……。」

アムレット「うふふ～、『癒し手さま歓迎ソング・第１楽章』です。その前の歌は『日差しっていいな・第２楽章』です。」

主人公「聖歌じゃないんですね。」

主人公「えーと、アムレットさんってマイペースっていうか……、すごくのんびりしている方なんですね。」

アムレット「よく言われます。」

主人公「だと思います。」

アムレット「昔からこうなんです。この性格のおかげで、美味しいものや綺麗な景色をじっくり味わえるんですよ～。」

主人公「なるほど……確かにそうですね。」

アムレット「『先を急ぐ者は道端の美しい花を忘れ、足を止める者は道先の花畑に辿り着かぬこと多き』。教典にもそう記してあります。」

主人公「死者の国の教典ですか？」

アムレット「その通りです。この言葉は、ある旅人が残した言葉だと言われているんです。」

アムレット「その旅人は聖人ジェシスと聖人リュシエルンの旅に同行し、ふたりを助け、導いたと言われています。」

アムレット「その旅人の助言によって、ジェシスとリュシエルンは急がず、しかし足を止めることなく進み続け、ついに目的地へ辿り着いたと言われているんですよ～。」

アムレット「先ほどの言葉は、その人がふたりに贈った言葉なんです。」

主人公「えっと……、目的を見失ってもいけないけど、目的以外のことを見失ってもいけない……、」

主人公「そんな意味ですか？」

アムレット「うふふ～。その通りです。」

アムレット「そうして、ジェシスとリュシエルンを助けた旅人はふたりと同じく列聖され、聖人アムレスと呼ばれるようになったのでした〜。」

主人公「あっ。もしかして、アムレットさんの名前って……！」

アムレット「うふふ～。ご慧眼ですね。」

アムレット「主人公さん。まだお若いあなたの気高き使命ある旅路には、多くの困難があるはずです。」

アムレット「わたしはこの名に恥じぬように、あなたと共に長い旅路を進んでいきたいと思います。よろしくお願いいたします。」

主人公「……はい！ ありがとうございます。」

主人公「あなたに『協力してよかった』って思ってもらえるように、俺も頑張ります。」

アムレット「ふふ、とっても頼もしいです！」

アムレット「そんな主人公さんに、えらいえらい～。」

主人公「ほわっ！？」

主人公「アムレットさん、何故突然俺の頭をなでなでし始めたんですか！？」

アムレット「うふふ～、徳あるものには誉を与えよ。偉い子にはえらいえらい、です。修道院でもよくやっていたんですよ～。」

主人公「き、気持ちは嬉しいですけど、ちょっと恥ずかしいって言うか……！」

主人公「ううっ、でも気持ちいい！ 帰ってこれなくなりそう……、」

アムレット「主人公さん……。」

主人公「はっ、はい！ 何ですか？」

アムレット「わたしのこともなでなでしてほしいです。」

主人公「ええっ！？」

アムレット「気持ちよさそうな主人公さんを見ていたら、わたしもなでなでしてもらいたくなってきました……。」

アムレット「修道院からここへ来るまで一生懸命がんばりましたし……、ご褒美のなでなでがほしいです……。」

アムレット「いつもはシスター・ジェシカがなでなでしてくれるんですが……。」

アムレット「うう、シスター・リュエールさえいないのはやっぱりさみしいです……。」

主人公「ええ、えっと……、」

アムレット「主人公さん……。」

アムレット「ダメですか？」

＜時間経過＞

紹介所のお姉さん「……。」

主人公「え、えーと、つまり……。そういうわけで、アムレットさんもすっかり気持ちよくなっちゃったらしくて。」

アムレット「すぴー。むにゃむにゃ……。」

アムレット「うふふ……、神よ、このよき出会いに感謝いたします～……。」