「野性眠る爪槍」コアリス

（紹介所）

コアリス「もぐもぐもぐもぐ。もぐもぐもぐもぐ……。」

コアリス「はにゃぁあ～。」

主人公「コアリスー。」

コアリス「ふわぁあ～ん……。」

メルク「ダメなのです、主人公さん。コアリスさんはドーナツでうっとり夢見心地なのです。きっと聞こえてないのですよ～。」

コアリス「聞こえてる。」

主人公「聞こえてた！」

コアリス「返事してないだけだっ。」

主人公「聞こえてるなら返事して！？」

コアリス「そっちがボクの食事中に声かけるのが悪いんだっ。仲間なら理解しろっ。」

主人公「そんなこと言われても……。」

メルク「むしろ、コアリスさんのことはもうすっかり分かっているのですよ～。」

メルク「まず食事。そのあと睡眠。それから食事。それから睡眠。」

メルク「食事睡眠食事睡眠食事睡眠食事睡眠……。私たちの仲間になると言ってから、食事と睡眠しかしてないのですよー！」

主人公「お願いだから、その食っちゃ寝生活をやめてくれ！ 健康に悪すぎて見てられない！ それでもうそろそろ旅に出よう！？」

コアリス「ぐちぐち言うなっ。これがボクたちコアラ族の生活スタイルなんだ。」

コアリス「好きなものだけを食べ、好きなだけ眠る。だから１日中食べて寝る。それがコアラ族だ。」

主人公「何て自堕落な！」

主人公（でもちょっとうらやましい！）

コアリス「ボクは食べることと寝ることが大好きだ。好きなことを好きなだけするのが、ボクの本能なのだ。もぐもぐ。」

コアリス「でも、おまえらのことは好きじゃない。だからおまえらの事情なんか知らん。もぐもぐもぐもぐ。」

コアリス「もぐもぐ大体ボクは村を出たくなんかなかったんだもぐもぐ先生が勧めたから言う通りにしたけどもぐもぐ村を出たって上手くいくわけないんだもぐもぐ。」

メルク「ついに会話中にドーナツを食べ始めたのですよ！」

コアリス「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。」

主人公「会話が止まった！」

コアリス「もぐもぐ……もぐ……もぐ……。」

主人公「あっ！ この流れは……、」

コアリス「むにゃ……むにゃ……。」

メルク「まずいのです、主人公さん！ コアリスさんが食っちゃ寝の『寝』の態勢に！」

主人公「ここでコアリスが寝たら俺たちの旅はまたお預けだ……！」

主人公「おーい、コアリス！ 頼むから起きてくれ！ 何か言ってくれー！」

コアリス「……。」

主人公「ん？」

コアリス「……寝ているボクには……近づく……な……、」

「がくっ。」

（時間経過）

コアリス「すぴょ〜……。」

主人公＆メルク「ふふふ～。」

主人公「何て幸せそうな寝顔なんだ……。見ているだけで、こっちまでふわふわした心地になってくる……。」

メルク「こんなに幸せそうだと、無理に起こす気持ちもなくなってしまうのですよ～。」

主人公「それ、この前も言ってただろ～。今日こそコアリスを起こさないと、旅に出られないぞ～。」

メルク「主人公さんもそう言って、コアリスさんの寝顔を見ているだけなのですよ～。みゅふふ～。」

主人公「しかたないだろ～。」

主人公「コアリスって、食事の時も寝ている時も幸せそうだからさ～。ついつい、横で見ていたくなっちゃうっていうか〜。」

メルク「分かるのですよ～。」

主人公「俺、もうちょっと近づいちゃおうかな～。」

メルク「みゅみゅ、ずるいのですよ～！ 私ももっと近くでコアリスさんの寝顔を見ていたいのですよ～！」

主人公「でも、コアリスは『ボクに近づくな』って言ってたな～。あれはどういう意味だったんだろ～。」

メルク「でも、こんなにかわいい寝顔、見ていたいと思っても仕方ないのですよ～。みゅふふふふ～。」

「……！」

メルク「みゅ？ コアリスさんのコアラが、コアリスさんの腕の中で何やらバタバタしているのですよ。」

「……！ ……、……！」

主人公「何か伝えたいみたいだけど……。」

コアリス「う〜ん……。」

メルク「みゅっ、コアリスさん！ おはようございます、なのですよ！」

コアリス「……。」

主人公「コアリス？」

コアリス「フシャァァアーッ！」

主人公＆メルク「ふしゃぁぁあー！？」

コアリス「フリャァッ！ ホリャァッ！」

主人公「わああぁぁっ！」

コアリス「フギャァアッ！」

主人公「コアリスの手がものすごい勢いで俺に襲い掛かってくるんだけど！？」

メルク「違うのです、今のはコアリスさんの槍なのです！ コアリスさんはマジなのですよーっ！」

主人公「えぇっ！？ 俺何かした！？」

メルク「も、もしかして、私たちがしつこくしたのでコアリスさんは怒ってしまったのでは……、」

コアリス「ギョエァーッ！」

主人公＆メルク「ぎゃーっ！」

「……！」

主人公「えっ！？ い、今のは……、」

メルク「コアラさん！？」

「……！ ……！」

主人公「コアリスのコアラがコアリスにしがみついて……、」

メルク「コアリスさんが……、」

コアリス「……はっ！」

コアリス「主人公、メルク……、それに先生……。そっか、ボクまた……、」

「……っ！」

主人公「あっ、コアリス！？」

（夜の山）

「おーい、コアリスー！」

「コアリスさーん！」

コアリス「……まだボクのこと探してるんだ。」

「……、……。」

コアリス「先生……。」

コアリス「……ボク、行けないよ。ボクが謝ったって、どんなに頑張ったって、ボクの寝起きの機嫌の悪さは治らないもん。」

コアリス「だったら初めから一緒にいない方がいいんだ。嫌われて別れちゃうより、そっちの方がいいに決まってる。」

コアリス「……でも、もう嫌われちゃったよね。」

主人公「あっ、コアリス！ こんなところにいたのか！」

コアリス「うひゃぁっ！」

コアリス「な、何でわざわざこんなところまで来るんだよ。ほっといてよ、ボクはおまえたちのことなんて……、」

主人公＆メルク「ごめんなさい！」

メルク「なのですよ！」

主人公「コアリスのこと、怒らせちゃったよな。俺たちが悪かった！」

メルク「お詫びと言っては何なのですが、ドーナツを買ってきたのです！ 一緒にどうなのですよ？」

コアリス「……、」

コアリス「……。」

メルク「みゅっ、木の上から降りてきてくれたのですよ！ ドーナツで仲直り作戦、大成功なのです！」

コアリス「ドーナツにつられたみたいに言うなっ。別にそんなんじゃないっ！」

コアリス「……何で、襲われたのに仲良くしてくれるんだ。そんなの変だ。」

主人公「それは、俺たちがコアリスと仲良くしたいって思ってるからだよ。」

コアリス「ボク、寝起きはいつもああなんだ。だからまた……、」

メルク「今度からは、寝起きのコアリスさんには気を付けるのです。そうすれば何も問題ないのです！」

主人公「『寝ているボクには近づくな』、だろ？」

主人公「コアリスも、俺たちのことを心配してくれてたんだよな。」

コアリス「……。」

コアリス「……別にそんなことない。あれはおまえたちが貧弱だから言ったんだっ。勘違いだっ、勘違いっ。」

コアリス「……でも、ボクもなんだかおまえたちのことが嫌いじゃないかもしれない気がしてきたから、一緒にドーナツを食べてやってもいいっ。」

コアリス「……ドーナツがなくても、呼んでくれてもいい。」

主人公＆メルク「……。」

コアリス「何だそのだらしない顔はっ。」

「……。」

コアリス「ああっ！ 先生までだらしない顔してる！」

主人公＆メルク「……！」

コアリス「だ、だらしない顔でボクを取り囲むなーっ！ やーめーろー！」