「亜星の迷い路」ロミアチシャ

＜回想＞

ロミアチシャ「マギナアリス様、ご覧ください、にゃ！」

マギナアリス「まあまあ、チシャ、そのしっぽは？」

ロミアチシャ「どうですか？　似合っていますか？　にゃ。」

マギナアリス「ふふふ。はい、とってもかわいらしいです。けれど、どうして？」

ロミアチシャ「私は今日から、動物の国の猫族になります、にゃ。種族は違うけれど、これでマギナアリス様とお揃いです。」

ロミアチシャ「マギナアリス様の角だって、とっても可愛くて似合っていますよ。だから、気にしなくてもいいんですよ、にゃ！」

＜町中 - 噴水の前＞

ロミアチシャ「もしもしそこの人にゃ。ちょっと道をおたずねしたいのですがにゃ。」

主人公「あ、はい、いいですよ。どこに行きたいんですか……、にゃ？」

メルク「口調は真似しなくていいと思うのですよ……？」

ロミアチシャ「助かりますにゃ。それで、紹介所へ行くにはあそこを右に行けばいいですかにゃ？」

主人公「はい、その方向であってますよ。」

ロミアチシャ「ふむ、ということはやはりこの矢印が正解で、次はきっとこれですねにゃ……！」

ロミアチシャ「見ず知らずの地上の方々、助かりましたにゃ。おや？　よく見ればお一人は透き通って水のようにゃ。もしかして、神が遣わしてくださったにゃ……？」

メルク「よく見なくても私が普通ではないのは分かるような気が……、」

メルク「っと、そうではなくて、よく勘違いをされるのですが、私は空の国の人が言う聖なる水の人では……、」

ロミアチシャ「うーん、考えたところでどうせすぐに忘れるので、気にするだけむだでしたにゃ。」

ロミアチシャ「親切に教えていただいて、ありがとうございましたにゃ！」

主人公「そんな、たいしたことじゃないですよ。」

主人公「ていうか、紹介所だったら詳しいので、よければ案内を……、」

メルク「と、言い切る間もなく行ってしまったのです。」

メルク「なんともマイペースな方だったのですよ～。」

主人公「まあ、しっぽにたくさんの行き先矢印？　もつけてたし、ここから紹介所なら迷うこともないよな。俺たちはこのまま買い物に行くか。」

メルク「なのです！」

＜町中＞

ロミアチシャ「そこの方々、ちょっと道をおたずねしたいのですにゃ。よろしいですかにゃ？」

メルク＆主人公「……。」

ロミアチシャ「紹介所へ行くには、あっちに行って次を左であっていますかにゃ？」

主人公「あ、いや、まずはこっちから左ですね。」

ロミアチシャ「あちゃあ、また順番を間違えたみたいですねにゃ。」

ロミアチシャ「こっちに行ってから左だとすると……、この矢印が次で、その次は多分これにゃ。でもってそのまた次が……、」

メルク「みゅ、みゅー、あの、さっき会ったことがあるような気がするのですが、私たちに見覚えは……、」

ロミアチシャ「うん、おそらくこの順番にゃ！」

ロミアチシャ「親切な地上の方々、ありがとうございましたにゃー。」

主人公「あ、待ってください俺たちが案内しま……、」

メルク「みゅう、また行ってしまったのです……。」

主人公「……確認だけど、さっきもあの人に道を聞かれたよな？」

メルク「そ、そのはずなのです。紹介所に向かっていたはずなのに、どうして逆方向のこの場所にいるのですよ……？」

主人公「さ、さあ、なんでだろうな……。」

メルク「……あの方、無事に紹介所へたどり着けるのです？」

主人公「俺も心配だけど、教えた方向には向かってるし、ここから紹介所なら迷わないとは思う。」

主人公「……けどまあ、次で買い物は最後だし、急いで済ませて追いかけてみるか。」

メルク「なのです！　どうせ私たちも、仲間になってくれる人がいないか後で寄る予定だったのですよ。」

＜紹介所＞

主人公「もう日が暮れてきたけど、結局あの人は見かけなかったな。」

メルク「きっと入れ違いになって私たちがついたころには用が済んで帰ったのですよー。」

主人公「そうだよな。さすがにまだ迷ってるってことは……、」

ロミアチシャ「すみませんにゃ。紹介所がどこにあるのか、ご存じないですかにゃ？」

主人公「こ、ここです……。」

ロミアチシャ「なんと、つまり目的地にたどり着いたんですねにゃ！　町についてから１日でたどり着けるなんて、私にしては最良のすべりだしにゃ。」

メルク「半日ですらかかり過ぎだと思うのですよ……。」

ロミアチシャ「そんなことはないですにゃ。私にとっては２、３日かかるのが普通ですからにゃ。」

ロミアチシャ「なにはともあれ、やさしい地上の方々、ありがとうございましたにゃ。」

ロミアチシャ「……、おや、その透き通った見た目、どこかで見たような気がしますねにゃ？」

主人公「会うのはたぶん３回目です……。」

メルク「ここで会う前に２回、道を聞かれたのですよ……。」

ロミアチシャ「ああ、そうだったんですかにゃ。すみませんね、忘れっぽいものでにゃ。」

ロミアチシャ「道順をこうして張り付けておいても、その順序が分からなくなる始末ですからにゃ。」

主人公「ああ、そういう理由で迷ってたんですね……。」

ロミアチシャ「ところで、ここにいるということは、お二人も仲間探しですかにゃ？」

メルク「みゅ？　お二人もということは……。」

ロミアチシャ「はい、私も仲間を探しに来ましたにゃ。地上を案内してもらいたくてにゃ。」

ロミアチシャ「実は、私が仕えている方の妹のマギナアリス様が家を飛び出して行ってしまったのですにゃ。」

メルク「なんと！　それは一大事なのですよ！」

主人公「俺たちの旅は目的地が決まってないですし、よかったら協力させてください。」

ロミアチシャ「それは助かりますにゃ！　私はロミアチシャですにゃ。よろしくお願いしますねにゃ。」

メルク「こちらこそなのです！　私はメルクで、こっちは主人公さんなのですよ。」

メルク「……、ところでロミアチシャさん、確認したいのですが、ロミアチシャさんの出身は空の国でいいのです？」

メルク「私を見たときの反応はまさに空の国の方なのですが、しっぽがあって、動物の国の方なのかとも思うのですよ。」

ロミアチシャ「ああ、このしっぽは偽物ですにゃ。ちょっとした事情があって、こうなっていますが、私は空の国から来ましたにゃ。」

メルク「そうだったのですね～。」

主人公「あの、ちょっと失礼かもしれないんですけど、もう一ついいですか？」

ロミアチシャ「なんですかにゃ？」

主人公「その……、ロミアチシャさんにはあまり人探しは向いてなさそうというか、むしろ普段は探されてる人っぽいというか……。」

ロミアチシャ「間違ってないですにゃ。私も最初は探しに行かずに待っていろと言われていましたにゃ。」

ロミアチシャ「ですがなかなか見つからないこともあって、頼み込んで私も探しに出たんですにゃ。」

ロミアチシャ「マギナアリス様が外へと飛び出してしまうきっかけを作ってしまったのは、他ならぬ私ですからにゃ……。」

主人公「ロミアチシャさん……。」

主人公「必ず見つけましょうね！」

ロミアチシャ「はい、それまでどうかよろしくお願いしますにゃ！」

ロミアチシャ（……私が星空を描いてしまったから、星々の物語を聞いて、外の世界を知ってしまったからもう、我慢できなくなったのですよねにゃ……）

ロミアチシャ（マギナアリス様、どうかご無事でいてくださいにゃ……）

ロミアチシャ（お帰りになったらその時は、今度はちゃんとお許しをもらって、一緒に本物の星空を見上げましょうにゃ）