「光護る純闇」ナイト

パン屋のおやじ「パン屋のおやじの！」

パン屋のおやじ「はじめてのお料理教室～！」

パン屋のおやじ「今日のゲストは、エレキの国出身のナイト。最近主人公たちの仲間になってから、故郷でやっていなかった料理に挑戦中……だそうだな。」

ナイト「さ、最近はジャムトーストに挑戦しました。よろしくお願いします……。」

パン屋のおやじ「ジャムトースト……。焼いて塗るだけだな。」

ナイト「け、結構難しいです……」

パン屋のおやじ「で、そんな坊ちゃんは今日何に挑戦したいんだ？」

ナイト「ぼ、僕が挑戦したいのは……、」

ナイト「チョコレート……、です……！」

パン屋のおやじ「なるほど、手作りチョコレートか……。作るだけなら初心者でも難しくないが、その分気持ちがこもってるかどうかもすぐ分かる。」

ナイト「気持ちのことなら……、大丈夫です。」

ナイト「僕の主人公さんへの気持ちは、本物だから……。」

パン屋のおやじ「お、おう……。」

パン屋のおやじ「そ、それじゃさっそく！　チョコ作りを始めるぞ！」

パン屋のおやじ「まずは、この市販のチョコを細かく刻むんだ。怪我しねえように気を付けてな。」

ナイト「はい……！　怪我しないように気を付けながら、チョコを……、」

ナイト「刻む！」

パン屋のおやじ「と言いながら槍を構えるんじゃねえ！」

ナイト「だめでしたか……？」

パン屋のおやじ「お前が怪我人出しかねねえだろ！」

ナイト「でも、細かくチョコを刻むんですよね……？」

パン屋のおやじ「それじゃまな板も木っ端みじんだろ！」

ナイト「た、確かに……！　そんなことになったら、せっかくのチョコにいらないものが……。」

ナイト「す、すみません……。ちゃんと刻むことを考えすぎて、つい一番チョコを刻めそうな槍を手に……。」

パン屋のおやじ「包丁貸してやるから、槍は置いてこい！」

ナイト「は、はい……。えっと、これでチョコを細かく……。」

パン屋のおやじ「おぉ、いい感じだな。じゃあ次は、このお湯で温度を調節しながらチョコをなめらかに溶かしてくれ。」

パン屋のおやじ「簡単な作業だが、ここで手間暇かけることで出来上がったチョコの舌触りが違ってくる。」

ナイト「せ、繊細な作業なんですね……。」

パン屋のおやじ「ああ、だがそう気張ることはねえ。」

パン屋のおやじ「一番大切なのは気持ちを込めることだ。うまいお菓子を食べてもらいてえっていう思いを込めて、チョコを溶かすんだぞ！」

ナイト「僕の、主人公さんへの思い……。」

ナイト「主人公さんに、おいしいって思ってもらいたい……。笑顔になってもらいたい……。」

パン屋のおやじ「隠し味が溢れそうなくらいだだ漏れてやがる！？」

ナイト「主人公さんの役に立ちたい……。主人公さんをいろんなものから守って、主人公さんをいつも支えたい……。」

ナイト「主人公さん……。ずっとずっと、ずっと一緒、ですからね……。」

パン屋のおやじ「つ、次！　次は冷めないうちに溶かしたチョコを型に流し込むぞ！」

ナイト「え、ええと、型はどこでしょうか……。」

パン屋のおやじ「そいつはこっちで用意させてもらったぜ。丸、四角、星、セレスちゃん！　好きなのを選んでくれ！」

ナイト「……。」

パン屋のおやじ「どうした？」

ナイト「え、えっと……、僕、どうしても作りたい形があるんですけど……。」

ナイト「……ハート型が、２つ繋がっている形なんです。」

パン屋のおやじ「うーん、その形の型は用意してないな……。」

ナイト「そ、そうですか……。」

ナイト「……なら、この型を……！」

パン屋のおやじ「ん？　その型はただの丸型……、」

ナイト「はあ……っ！」

パン屋のおやじ「を自力で変形させただとぉ！？」

ナイト「じ、事件屋の皆さんに鍛えてもらってよかった……。」

ナイト「主人公さんのためなら……。これくらい、何でもありません……。」

パン屋のおやじ「何でもあるだろそれは！？」

ナイト「えっと……、この型にチョコを流して……。その後は、どうすればいいんでしょうか……。」

パン屋のおやじ「こ、このフェンリクの作った氷の箱に入れて、冷えて固まるまで待つんだ。それまでは一旦休憩だな。」

ナイト「は、はい……。」

パン屋のおやじ「……ん？　何か外が騒がしいな。」

ラビューン＆ラビューン＆ラビューン「きゅいぃ〜っ！」

ナイト「あれは……、ラビューンの大群？」

パン屋のおやじ「まさか、チョコの匂いにつられてきたのか！？」

パン屋のおやじ「くっ、まずい！　あいつらが暴れたら、冷えかけのチョコが崩れちまう！」

「……このチョコは、あげられません。」

ナイト「僕は、主人公さんをあらゆるものから守るために強くなったんです。だから、その力で無暗にあなたたちを傷つけたくない……。」

ナイト「僕に……、戦わせないでください。」

ラビューン＆ラビューン＆ラビューン「きゅい！？」

パン屋のおやじ「ラビューンたちが……、ビ、ビビって震えてやがる……！」

ナイト「あっ……。」

ナイト「……その……、これは、僕が主人公さんに伝えたい大切な気持ちなんです。だから、あなたたちにはあげられない……。」

ナイト「おなかが空いているなら、後でチョコを作ってあげますから……。これだけは、食べないでくれませんか。」

ラビューン「きゅ、きゅぃ……。」

パン屋のおやじ「そ、そうだぜ。腹が減ってるなら、俺の店のパンを食わせてやる！　チョコパンもあるぞ！」

ラビューン＆ラビューン＆ラビューン「きゅ……、」

ラビューン＆ラビューン＆ラビューン「きゅいっ！」

主人公「おやじさん！　さっきこっちに癒されたラビューンが来ませんでしたか？」

ナイト「主人公さん！」

主人公「えっ、ナイト！？　何でここに……。」

パン屋のおやじ「……その様子を見ると、主人公には何も言ってなかったらしいな。」

パン屋のおやじ「坊ちゃん、最後の仕上げだ！　固まったチョコをチョコペンで飾って、渡したい相手に渡すんだ！」

主人公「チョコ？　それにあの形って……。」

パン屋のおやじ「今は何も言わずに見ててやれ、主人公。」

ナイト「……主人公さんっ！」

ナイト「主人公さんが、ディベールテスマーでチョコをくれた時……、僕、すごく感動して……、あなたに憧れました。」

ナイト「僕のチョコは、あのチョコより美味しくないかもしれないし世界中を旅している主人公さんには、とてもありふれたものかもしれません。」

ナイト「でも……、これが、僕の気持ちです！　よかったら、う、受け取ってください……！」

主人公「ナイト……。」

主人公「……ありがとう。」

ナイト「……！」

主人公「なあ、もしよかったら俺と一緒に食べてくれないか？　折角、半分こにしやすい形だから俺一人で食べるのはもったいないなってさ。」

ナイト「主人公……、さん……！」

パン屋のおやじ「……。」

パン屋のおやじ（……よかったな、ナイト）

「……じゃあ、そーっと口を開けてください。」

パン屋のおやじ「えっ。」

ナイト「僕、主人公さんの役に立ちたいんです。だから僕が、主人公さんにチョコを食べさせてあげます。」

ナイト「僕の混じりけのない、純粋な主人公さんへの気持ち……。ひとかけひとかけ味わってください……。」

ナイト「そうしたら、僕の純粋な気持ちが主人公さんと溶けあって……、いつでもどこでも、ずっとずっと一緒になれますよね……。」

パン屋のおやじ「……。」

パン屋のおやじ「い……いやナイト、チョコ食べるくらい主人公一人でも……、な、なぁ？　主人公？」

主人公「ナイトに食べさせてもらいます。」

パン屋のおやじ「主人公ーっ！？」

主人公「気にしないでください、おやじさん。これ、いつものことなので。」

パン屋のおやじ「この流れが日常茶飯事かよ！？」