【百鬼異聞録】「蜃気楼大航海」ストーリーまとめ【イベントストーリー】
前編
三つ目 『今日も同じか。』 いつも賑やかなタヌキ居酒屋は、今日も相変わらず繁盛しているが、妖怪たちの間ではどこか不穏な空気が漂っている。 普段はのんびりとサボる方法を考えているあのオレンジ色の猫も、今日はなんだか思い悩んでいる様子で、ヒゲですら元気なさそうに垂れている。 かぐや姫 『そうですね……実生活に影響はないとはいえ、やっぱり気になりますね……』 かぐや姫 『あの場所は一体どこにあるのか、どうして私たちには見えるのでしょうか……』 三つ目 『僕にも見えるのなら、みんなの力になれるのに……』 かぐや姫 『最初は藤姫さんと荒様だけが異様に気づいたのです……』 かぐや姫 『そのうち夢の世界に入れる、未来を占いできる、あるいは時空を超える能力を持つ妖怪たちもあの情景が見えるようになりました。』 かぐや姫 『霜の色をした霧に埋もれながらも美しい色彩に彩られていた、浮世離れしたようで、周りはいくつもの時空が流れているあの場所が。』 かぐや姫 『どこにも繋がっているようで、どこにも繋がっていないような……不思議ですね。』 縁結神は隣でうんうんと頷いている。 縁結神 『初めて見えた時はびっくりしたのじゃ。変な呪術にかかったのか、毒キノコでも食したかと思ったのじゃ。』 縁結神 『直感で、危険な場所や良からぬ場所ではないような気がしたのじゃが……』 縁結神 『でも、我からしても確かに気になるのじゃ、こうなんというか、誘われているような、操られているような感覚がするのじゃ……』 縁結神 『藤姫は?』 藤姫は軽く首をかしげ、しばらく考え込んでから唇を開いた。 藤姫 『かなり違いますね。でもあの場所は昔見ていた終わらない夢を思い出させます。』 藤姫 『悲しくはありませんが、ただどうしようもないっていうか……嘆きのような感じがします。』 藤姫 『しかしあまりにも遠くて儚い場所だから、私たちにとっても、あの場所にとっても、お互いがお互いを触れることのない蜃気楼みたいな印象ですかね。』 三つ目 『ふむ……このままほっといていいのかな……』 三つ目 『蜃気楼に特に影響がないなら。』 かぐや姫 『でも夢喰いさんも言いましたよ?数々の夢の中には悪夢が存在すると。』 三つ目 『悪夢……?』 かぐや姫 『はい。例えば蜃気楼が落ちた、とかですかね。』 三つ目 『それ、めちゃくちゃまずくないですか!?』 かぐや姫 『でも所詮は夢ですよ?』 かぐや姫 『あの場所が実際に存在するかどうかも分かりませんし……』 三つ目 『……』 三つ目 『僕にも見えるのならどんなによかったか……』 青行燈 『実際に見に行けばよいのでは?』 みんなが意見を言い合っているその時、ある清々しい声がこう言った。 青行燈 『これだけの人数が見えると言うのなら、たとえ存在しないとしても、何かがあるはずよ。』 青行燈 『蜃気楼はもともと五行六道の間を行ったり来たりしているし、あそこにたどり着く方法を思いつく妖怪がいても不思議じゃないと思うけど?』 青行燈 『縁結神も言った、誘っているような呼びかけの声がある、と。』 青行燈 『ここはもともと未練があるか、暫しの休息を求める妖怪に居場所を提供するためのところ。行きたければ案外サクッと行けるかもしれないわよ?』 しばらくの沈黙の後、彼女の発言がさらなる議論を引き出した。 成功できるかとか、道が険しいかとか、どんな準備が必要だとか…… しばらく沈黙していた蜃気楼が再び活気を取り戻した。 結局、妖怪たちは冒険することにした。あの不思議な場所にたどり着くことができなくても、蜃気楼の大航海を満喫するのも一興かもしれない。 |
三つ目 『甲板は木材で強化しないと!木の枝はダメ!香り付きでも木の枝はダメ!』 三つ目 『ローターは精密機材だ!これとか方向が逆だし!』 三つ目 『違う!帆は大きく作らないと、蜃気楼が六道で彷徨うことになるじゃないか……』 三つ目 『もう……なんで僕が幹事役になったんだよ……』 三つ目 『そこの君、サボらないで!僕ですら真面目に指揮を執っているっているのに!!』 三つ目 『大妖怪たちが進路を決めている間、僕たちは蜃気楼をもっと強靭でパワフルにしなきゃ!』 今の蜃気楼に普段のはしゃぎ声はなく、代わりに金づちのトントンや鋸のギーギーの音が響いている。 時空や夢を操る妖怪たちは縁結神と藤姫のもとで、あの不思議な場所を探している。 料理が上手な妖怪たちは居酒屋の厨房を借りて、差し入れを作っている。 賢い妖怪たちは船の設計や素材選びをしている。 力持ちな妖怪たちは素材を切る役割を任せられている。 妖怪たちはお祭り騒ぎのように蜃気楼大航海の準備作業を行っている。 普段は協調性の欠片もない妖怪たちが一致団結して共同作業するのはなかなか見られない光景でしょう。 三つ目 『こちらのお客さんも手伝ってくれるんですか?』 三つ目 『ありがたいです!』 三つ目 『では、恐縮ですがパーツの製作をお願いしますね。』 三つ目 『ご安心ください。猫又さんや蛙さん、化け狸さんは全員分の料理を用意してくれました。』 三つ目 『青行燈さんや他の妖怪たちも手伝いに来てくれたみんなに差し入れを持って来てくれました。』 三つ目 『みんなで力を合わせれば、きっと目標を達成できます!』 |
後編
数日間の努力の結果、蜃気楼の外観はすっかりと変わった。 分厚い帆が多く上げられている。 船の下部に航行やスライドできる羽根がしっかりと固定されている。 複数の丈夫なローターがひと組となって、巨大な船を彼方への旅路に連れて行こうとしている。 船の上、天狗駅は相変わらず混んでいて、温泉もいつものように湧き出ている。これらを見ると、蜃気楼はあの穏やかで安らぎのある場所のままだと分かる。 中庭広場で、縁結神は藤姫の手を握り、丁重に目を閉じた。 彼女を囲む赤い糸が光り始め、織りなしては漂う。まるで咲き誇る妖艶の花。 赤い糸は伸び続けるが、方向を見失ったのか、ぐるぐる回っては前へ進めない。 縁結神は眉をひそめ、神力をさらに注いだ。 赤い糸に藤色の光、優しさと強さが織り交ざり、どんどん伸びていく。 すると鈴太鼓の音が聞こえ、後ろには銀色の月が静かに輝いている。 散りばめた星たちは気づかれることを恐れ、闇夜の中で微かに光を放つ。 カラスが鳴き、美しく煌めく瑠璃宝石も縁結神の横に置かれた。 光と力がどんどん重なり、あの柔らかい赤い糸と交わろうとしている。 光が強くなるのにつれ、赤い糸が示す方向もはっきりしていく。 縁結神 『やった!』 縁結神 『見つかったのじゃ!』 縁結神 『本当に想像を絶するほど遠い場所だが、確かに繋がったのじゃ。』 藤姫 『それはつまり……』 縁結神 『うん!』 縁を司る女神は振り返り、みんなに笑顔を見せた。 縁結神 『蜃気楼、出航じゃ!』 |
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