【黒ウィズ】続アルティメットサマーガールズ! Story2
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「わはは!」
その声がするほうに進むと、そこにはレナと住民だけがいた。
この島に住む方々は、レナさんの魔法に興味を示し、今のところ関係は悪くありません。
ただその……。
エリスが頭を抱えながら走りだしたのを見て、君はそのあとをついていくことにした。
***
魔道士……あのお方を縛りつけただけでは飽きたらず、よりにもよってこの島ごと……。
させない。させないわよ……。あのお方が目覚めるそのときまで、我々はここを守らなければいけないの!
アリエッタたちは、ミツボシの報告どおり、島の人たちを追い回していた。
スイカを抱えたまま走る姿は、少し滑稽でもあった。
君たちは先回りして、向かってくる住民を待つ。
あれ?黒猫の魔道士さん。
突然、木陰から飛び出してきたのはレナ。確か、住民と接触したと聞いていたけど。
島の中心に眠る古代都市トランディアを崇めてて、毎日祈りを捧げてるって情報を聞き出したの。
あそこに見える巨像。あれはトランディアを模したものらしいわね。
でも今ほら、あの真っ先に逃げてる女性。あの人が長になってから、それも少しおかしくなってきたって聞いて。
だからアリエッタたちが追いかけているんだ。
追いかけ、追いつけないリルムが、しびれを切らしたように杖を投げつけた。
だがそれは、住民たちの間をすり抜け、よりによって君たちのほうへと飛んでくる。
それをレナが蹴り返し、再びリルムの元へ……。
新魔法書2万とんで32頁。大魔法――杖返し!
どこかの空間から現れた巨大な本が、アリエッタとリルムを守るように立ち塞がる。
そこにエターナル・ロアがぶつかり、3度彼はどこかへと飛んでいってしまう。
投げられ、蹴り飛ばされ、挙げ句、本をぶつけられ……。
なんて可哀想な杖だろう……。
吹き飛ばされたエターナル・ロアは、巨像に激突し……。
勢いを殺せなかったエターナル・ロアが、像を……破壊してしまった。
皆が招いた悲劇であることは否定のしようがない。
大丈夫?と君はエリスに訊く。
怒号が飛んできて、君は咄嵯に身構えた。
許さん……魔道士どもめッ!お前たち、魔道士の連中を囲んでボッコボコにしなさいッ!
魔道士協会が派遣した2名も、彼女たちに捕えられてると見ていい。だからまあ、つまりそういうことね。
ここの住民も力づくで従わされていたみたい。助けてくれって泣きつかれたわ。
どのみち戦闘は避けて通れなかった、と。なんだか溜め息が出る話ね。
像を壊したのは問題だけど、理由があるなら戦うしかない。
世界広しといえども、魔道士協会が把握していない魔法に見える。
ここの魔道士――いわゆる大魔道士と呼ばれる連中にも負けず劣らずといった魔法だが……。
どこで魔法を学んだのだ?
まあ、田舎の出だから……と君は言葉を濁す。
今、君たちの前で縄に縛られている、島の住民とその長。
忌々しげにアリエッタを睨みつけている。
確かに、普通に暮らしていた住民も、驚いて腰を抜かすかもしれない、と君は思う。
どうやら人間を貢物にしようとしていることに憤ったリルムと、それについていったアリエッタ。
自分たちの悪さを知られ逃げ出した住民という、そんな構図だったようだ。
イーニア先生が杖を振るって、捕らえた住民を眠らせる。
イーニア先生が小さく呟く。
その言葉は何か、イーニア先生と古代都市トランディアの、不思議な因緑を感じさせた。
***
エターナル・ロアは今、土にずんと突き立てられていた。
ところどころ汚れが目立つが、怪我、いや、破損?はないようだ。
この機会を逃してはならないかと。やはりトランディアを叩くなら今しか……。
匣の中から現れた異形が、アリエッタに襲いかかる。
何度見ても不気味だ。
魔物が棲みつき、島の住民でさえ近づくことができないようです。
やはり?その言葉に疑問を覚え、君はそれを問いかけてみた。
ミツボシの言葉に頷いて、君たちは森へと足を踏み入れた。
道中、ソフィが物珍しそうに木々を眺めていた。
どうしたの?と君は問いかける。
ここを作った人たちは、悪い人だったのかもしれないけど、そういう強い思いを持ってたんだなって思って。
魔法の才能に溢れるリルムちゃんが近くにいるし、アリエッタちゃんみたいに、ソフィよりも年下なのに天才って呼ばれる子もいるから。
だからもっともっと頑張って、もっともっと皆に喜んでもらえるような魔法を覚えなきゃ!
ソフィはいい子だ、と君は思った。
そして、ソフィなら大丈夫だよ、と告げる。
ありがとう、と言ってその薬を見た。
胃薬!?
古代都市の調査という名目があるのに、すっかり忘れてしまってそうな……。
古代都市ももちろん大事だけど、楽しいと思えることに興味を示すのも、魔道士として大切なことだしね。
それとも黒猫の魔道士さんの国では、魔道士としての知識欲を深めるのは、ダメって言われてたりする?
いや、そんなことはないよ、と君は言った。
あまり緊張しっぱなしじゃ、いざというときに体が強張るかもしれない。
逆にアリエッタたちのようにお気楽すぎると、そのいざというときがきた際に何もできないかもしれないけど……。
やばかったら逃げればいいし、やばくなかったら戦おう!
やけにポジティブなリルムに何故か励まされ、君たちは森の奥へ奥へと進む。
道すがら、声をあげたアリエッタとリルム。
君も立ち止まり、彼女たちの視線のほうへと目を向けた。
それは、手で扶り取ったのか、あるいは口で噛み千切ったのか、どちらにせよ異様な切り取られ方をしていた。
ミツボシも魔物がいると言っていた。
あと全力で魔法を使われると私たちが巻き添えになるかもしれないから、仲間とも言い難いかもしれない。
みんな言いたい放題だ。
レナだって大魔道士なんだから、アリエッタの魔法ぐらい防げるだろうに……。
たとえば正面から魔法を撃ち合う、いわゆる殴り合いみたいな状態になったら間違いなく押し切られちゃうわ。
大魔道士レナをして、そこまで言わせるとは。アリエッタ・トワという女の子だけは、敵に回してはいけないのかもしれない。
ま、戦いに正面からってルールはないし、それなりに策を立てれば、全然勝てるけど。アリエッタって気分によっては魔法使わないし。
むちゃくちゃすぎる……。
そうみたいだね、と君は言う。
スケールが大きすぎて、何がなんだか……。
そうみたいだね、と君は言う。
突如、どこからか現れた巨大な魔物が、アリエッタをぺろりと平らげてしまった。
アリエッタを返しなさい!今なら許してあげるわ!
それもそうね。行きましょ。
丸呑みにされたアリエッタを放って、先へ進もうとする魔道士たち。
君は頷く。暴走すると手がつけられなくて、勝手気まま、自由な子だけれど大事な仲間だ。
そんな仲間を見捨てて先に行くなんて、絶対にできない――!!
上空からゆっくりと降りてきたのは、イーニア先生とミツボシだった。
ほらお前らも遊んでないで、魔物退治だ。
イーニア先生の言葉に反応して、苦笑しながら魔道士の皆が振り返る。
呑気というか、遊び心に溢れているというか……。
***
ゆけ、従僕。我と汝の敵――歪み穢れを全て喰らい尽くせ!
大気をどよもし現れた異形が、巨大な魔物に襲いかかる。
それは一瞬の出来事だった。空気を喰らい、魔物を喰らい……そして匝へと戻っていった。
するとどこからともなく拍手がわき起こり……。
えっ、ちょっ……やめてよ、恥ずかしいから!だいたい何よ、今さら……何回も聞いてるでしょ!
詳しいんだね、と君は言う。
まるで抜け殻のようなアリエッタが、そこに立ち尽くしていた。
でもかける言葉も見つからず、君はそっと土汚れを落とすための布を手渡した。
そんなに信頼されても……と君は口にした。
魔物や悪い住民を倒したのは事実だが、島で暴れまわっているのはほとんど彼女たちだ。
むしろ気圧されているぐらいだった。
けど……アリエッタが少し大人しくなったのは、もしかしたら不幸中の幸いだったかもしれない。
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重苦しい空気が漂っていた。
言葉では言い表せないほどの不穏さがある、君はそう思った。
だけどそれならどうして辿り着けたのだろう?
魔道士の魔力は、感覚的にわかりやすくて、ピリピリと来るような感じでぼんやり理解できる。
特に魔道障壁以前の結界は仕組みが杜撰で、周囲の人に与える影響が取り沙汰されていた。
集中力を乱す、魔力を奪う、空気を重くするなど、様々な懸念点を抱え続けていた。
この結界は、懸念、不安を持ちながら、改善案、対策を講じなかった魔道士の怠慢であり、前時代的な魔法の、憐れな末路であるといえる。
学者然とした語り口は、普段のアリエッタからは想像できなかった。
***
イーニア先生は何か言いたげに再び口を開いたが、諦めたようにかぶりを振るだけだった。
禍々しい気配は、進むにつれ強くなっている。
アバド・ピジェックと戦ったときや、エターナル・ロアと戦ったときの、あの空気にとてつもなく似ていた。
…………。
あれは痛かった。
あらゆる魔法を防ぎ、強大な魔法で君たちを苦しめたエターナル・ロア。
しかしその魔杖も、あのときのことを思い出して、沈鬱な表情を浮かべていた。いや……杖なので、表情はわからないが。
遺跡の形から察するにそろそろ中央部につく頃かと思われます。
数々の罠を潜り抜けると、不意に低くうねるような声が聞こえてきた。
あまりにも強い悪の気配に、君たちは息を呑む。
イーニア先生が言ったように、古代都市トランディアはここにいて、禍々しい魔力を宿しているようだった。
まさか既に目覚めているとはな……島で散々、こいつらが暴れたせいか?
なんだ羊か……。
君は、何でもないよ、と首を振って、ウィズから目をそらした。
イーニア・ストラマー。そうだ思い出した。愚かな魔道士、イーニア。そこにいるのか?ふふ、いるんだな?
奥からゆっくりと気配が近づいてくる。
そうして君たちの前に現れたのは、女性の姿をしたものだった。
みんなの困惑はよく理解できた。
凶悪そうな魔力を宿しているようだが、外見は古代都市からは程還い。
しかし、悪の魔力を吸い上げ、都市として力を膨れ上がらせていく中で、人の姿を模した個体として活動を始めた。
「島には古代都市の、わるーい魔道士がいるんだって。」
失態……君はイーニア先生とトランディアの関係が気になった。
数百年も前のことですが、先生以外の魔道士は皆、トランディアに敗れ、倒れてしまったのです。
先生は最後の力を振り絞って、封印ではなく深海へとトランディアを叩き落としました。
けれどトランディアも、ただやられるだけではありませんでした。
沈むその寸前、先生に呪いをかけたのです。
……体が幼くなる呪いを。
あれ呪いだったんだ……君は驚きのあまり聞き返してしまった。
もちろん、しっかりとした考えを持つ、立派な大魔道士だということは、君も十分に理解していた。
私は違う。貴様らから魔力を奪い、より強大な都市へと変貌を遂げるのだ。
あれは悪いやつだ。
あいつを倒して大きいイーニアに戻ってもらう!
トランディアの魔力は確かに強大だけど、皆がいるから負ける気はしない。
***
戦いは熾烈を極め、遺跡の中で様々な魔法が飛び交った。
雷が落ち、炎で燃え、濁流で流され、しかしそれでもトランディアは屈しない。
我が寝床を、ここまで破壊した罪は重いと知れ!
君は、エリスに封印の魔法は?と訊ねた。
皆も疲弊してきている。
このままでは押し切られてしまうかもしれない。
これだけの魔法を撃ちこんでも、トランディアは屈しなかった。
はっ!?あった!!
アリエッタが頭を悩ませていたが、何か思いついたように顔を上げた。
ずん、とトランディアの頭に落ちたのは、それは立派で、巨大なスイカだった。
古典的に目を回しながら、トランディアがその場に倒れ伏した。
そしてスイカは割れることなく、アリエッタのもとへと転がってくる。
溜め息混じりにイーニア先生が言う。
……あれはやはりスイカではなかったのでは?
確かめようとアリエッタが持ち上げたそれに手を伸ばしたが――。
触れることはかなわなかった。
アリエッタの言葉が号令となったのか、トランディアがいた場所が一気に崩れ落ちた。
このままではこの中全てが崩壊する……。
そんな、これだけ魔法を使ったあとなのに……。
そんなことを言う暇を与えないためなのか、頭上から瓦礫が降り注いだ。
逃げるしかない――!
全く大変な目に遭った。
黒猫のひとも走って!壊しちゃったし怒られる前に逃げる!
君はアリエッタたちが全速力で走るのを見ながら、イーニア先生同様、溜め息をついた。
うん、と君は返答して、走り出す。
帰るのは、いつかと同様、まだ少し先のことになりそうだ。
そんなことを考えながら……。
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