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【黒ウィズ】神都ピカレスク Story1

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作成者: にゃん
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目次


Story



story1 盗賊の夜


路地の暗闇の中に、ぼんやりと人影が揺らめいていた。

足元には、尖った男物の靴の先が見える。

脇に抱えているのは、人形だろうか。いや、女である。生きている女。

それが気を失って、だらりと腕を垂らし、乱れた髪の先が地面に触れていた。

ちらり。ちらり。と。


「おや? お楽しみ中だった? 悪いがそれ以上は無理だぜ。」

男の顔は見えなかった。ちょうど、何かの影が顔にかかっていた。

「その女性を離すんだ。」

男が一歩前に出た。影を抜けて、ずいとその顔がふたりの前に現れた。

「「……ッ!!」」

一瞬、ふたりがまったく同じ幻(ヴィジョン)を見た。

影の向こうから出てきた白い顔から、動くたびにボロボロと皮膚が剥がれ落ちているのだ。

ひび割れ、剥がれ、落ちる。そのたびに、燠火(オキビ)が弾けるような音が聞こえた。

男がもう一歩近づいて、その正体をふたりはようや<理解した。

「違う……。」

「仮面か……。いやいや、びっくりさせんなよ。サーカス小屋から逃げてきたのか、あんた。」

目前の黒衣紳士は、その顔を白くひび割れた仮面で覆っていた。

言葉はない。仮面同様、黙然としていた。

「愛想はなし、っと。まあ、いいさ。何も友達になろうと思ってきたわけじゃない。

その女を離しな。何度も言わせんな。」

仮面の男は抱いていた女をゆっくりと地面に下ろした。奇妙なことに、その時乾いた音が響いた。

カツン。カツン。カンカラリン。

ケネスもギャスパーもその音につられ、男から目を離し女を見た。

おかしなところはない。金の髪をした女だった。視界の端で男が動いたのがわかる。

ふたりはすぐ視線を男に戻すが、男はいなかった。

衣が風を受けて、小刻みにはためく音が上から聞こえる。

「上?」

見上げると長身痩躯の新手の猿の如き影が、ふたりの頭上にあった。

仮面の男である。その高さは人間の仕業とは思えぬもの。見ただけでその非現実さが心胆を寒からしめた。

「危ねえ!!」

呆然と見上げるギャスパーよりわずかに早く平常心を取り戻したケネスが相棒を蹴り飛ばす。

その勢いを使い、自らも後ろに飛び去り、地面の上で身を翻し、すぐに視線を戻した。

新手の人間猿は地上へ舞い降りると、再び暗夜紳士然と背筋を伸ばして、ケネスを睨む。

「人の運動能力ではないな……。」

闇紳士の背後に、外套の汚れを払いながら立ち上がるギャスパーが見えた。

「悪いけど、使わせてもらうぜ。」

ケネスは腰に差していた拳銃を取り出し、闇紳士にその銃口を向ける。

六連発のリボルバーである。

「まあ、仕方ない。」

ギャスパーも4連発式の拳銃を構える。

「この場合は、どちらの勝ちになるんだ? 俺か、お前か?」

「勝負は持ち越しだ。当然な。」

ふたりがニヤリと笑い、引き金を引いた。1発、2発、3発、それ以上。

むせるほどのガンパウダーの焼けた臭いと白い煙が目の前に広がっていた。

ゆっくりと煙が消えていく。そこには哀れな男の亡骸があるはずだ。

「冗談じゃねえぜ……!」


普通なら倒れているはずの男は、普通であることを受け入れなかった。平然と立っていた。

「――バケモノか……!」

再び、仮面の男は飛び上がる。今度はまっすぐにケネスに向かった。

ひらりと、男はケネスの前に降り立った。目前に迫った白い仮面からパラパラと何かが剥がれ落ちる。

『……。』

叡気命のやり取りをする距離。男の手がケネスの首に伸びる。

強張ったケネスの顔が一瞬綻んだ。

「へへ。」

数度、破裂音がして、ふたりの間に白い煙があがった。

「あいにく、生まれつき手癖が悪くてね。お前が、余裕かましてる間に、弾を込めるくらいわけないね。」

ほんのわずかな瞬間に、銃に弾を込め、超至近距離で撃ち放ったのだ。

地面に小さな金属片の落ちる音が聞こえた。妙だと思ったのはケネスだった。

視線を落とすと、へしゃげた弾丸らしきものが、仮面の男の足元にあった。

「この距離で、なんともないィ!?」

俯いたケネスの顔が持ち上がる。自分で上げたのではない。喉に喰い込んだ仮面の男の掌がかち上げたのだ。

「が……はっ……!」

大きく跳ねあがり、ケネスは地面に落ちた。

追い打ちに動くわけでもなく、仮面の男は呆然と立ったままだった。

それが余計に、この状況が戦いではなく、圧倒的な暴力を行使される場なのだ、とギャスパーに理解させた。

すぐに彼は行動に出た。そびえ立つビルディングに向けて、袖の下からグラップルフックを射出する。

同時に、吹き飛ばされたケネスの方へ走り出す。

「ケネス! 手を出せ!」

ケネスが差し出されたギャスパーの手を握り返す。

すぐにギャスパーはグラップルフック射出器を操作し、ロープを巻き上げる。

みるみるうちに、ふたりは黒い空の中に吸い込まれていった。


「追いかける素振りすらない。」

「このクソ野郎! おぼえとけよ!」

一番上まで上がると、悪態をつき続けるケネスを屋根の上に投げ捨てる。

軽業的な身のこなしで着地すると、今度はケネスがギャスパーを引っ張り上げた。

ひとまずの安全を確保したふたりは、置き去りにしてきたはずの仮面の男を探した。

「去ったようだな。」

ギャスパーは咎めるような視線をケネスに送る。

「あんな言葉使いはやめろ。立ち振る舞い全てに、気を使え。泥棒にも品性が必要だと何回も……。」

「はいはいはい。あいにく、生まれも育ちも悪いもんでね。」

減らず口で返す自分を見るギャスパーの目が、大きく見開き、瞳孔が収斂した。

さして特別なやり取りをしていたわけではない。ふたりにとってはいつものこと。挨拶にも似た言葉であった。

いつもと違うギャスパーの目が教えてくれることに、ケネスの背筋が冷えた。

彼の顔の真横に白い仮面がにゅっと現れる。剥落した仮面の破片が肩にいくつか乗った。

「伏せろ、ケネス!!」

ケネスが地べたに伏せたのに合わせて、ギャスパーの4連発銃が炎を吐いた。

弾丸が仮面を直撃する。わずかにのけぞるがすぐさま男は片方の手で足元のケネスを持ち上げる。

「おあ! おわわわ! ちょ、ちょっと待てって!」

その腕力はサーカス小屋のゴリラのようである。ケネスを道具の如く、その相棒に向けて投げつけた。

「バカ! こっちに来るな!」

もちろんそんなことは、この世の原理、法則といったものが認めるわけはなかった。

白と黒の若者ふたりは激しくぶつかり、勢いそのまま、不安定な屋根の上から転がり落ちる。

絡まり合いながら、ふたりは斜面を滑っていく。屋根の終端が迫っていた。

「……っ! この!」

激突の衝撃で、意識は薄弱。朦朧模糊(もうろうもこ)としつつもケネスは雨どいの小悪魔の彫像に手をかけた。

辛うじて小悪魔にぶら下がる形で、落下をくい止めることが出来た。

もう片方の手にはギャスパーの手を握りしめている。

ほとんど気を失っていたギャスパーが、一連の刺激的な展開のおかげで、意識だけは取り戻した。


「……お、おい……。今どうなってる?」

「俺が片手でぶら下がってる。あとは、想像できるよな。」

「つまり……私が何とかしなければいけないということか……。」

「出来るか?」

「ああ、体が動いてくれたらな。今のところその気配はないなあ……。」

「おい、長くはもたないぜ。」

必死のケネスを見下す石造りの小悪魔は笑ったような表情だった。

「なに、笑ってんだよ……。見てるだけじゃなくて助けろよ。」

小悪魔が悪態をつくケネスにとっておきの返事をする。自分の体にヒビをいれてみせたのだ。

「へ? いや、ちょっと待て……。」

さらに亀裂は深まる。まるで小悪魔が笑うような音が続けざまに鳴った。

「待て待て待て待て!」

「何があったぁー?」

必死のふたりを見下す小悪魔は、とどめとぱかりにポッキリと我が身を折ってみせた。

「あー……ちょっと下に降りることにしてみた。心の準備しておけよー。」

「はあ?」

「「うわあああああ!」」


 ***


そこは小さな新聞社「カイエ・デ・ドロウポー」がビルに間借りした一室。

――雑然とした様は、そこがまさに仕事のためにある場所だと教えてくれる。

だが、働く者はいない。

今、いるのは、夜を待つためにここを宿り木と決めた夜行性の二羽の鳥だけである。

「君子危うきに近寄らず。」

来客用のソファに両足を投げ出したケネスが、天井を眺めながら呟いた。

「何が言いたい?」

ギャスパーはデスクに両肘をついて、手を組んだままである。だが黙っているのをやめた。

もう何度もソファ付近から同じ言葉が聞こえていたのだ。

言葉に合わせて、伏せた目をあげ、ケネスを睨んだ。

「君子危うきに近寄らず。ただそれを言いたいだけ。」

「それなら、私には無関係だな。私は泥棒だ。」

「えらそうに言ってるけど、せっかく奪った機密情報とやらを無くしたまぬけな泥棒だろ?」

「いや。落としたとすれば、屋根の上でお前とぶつかった時だ。だが、なかった……。」

「てことは、あの変なヤローが奪って行ったってことか? 最悪だな。あの煙館はどうなんだ、あそこにはないのか?」

「俺たちが落ちた所か……。」


彼らが落下したのは偶然にも、喫茶喫煙を楽しむ社交場〈煙館〉の上であった。

もちろん屋根を突き破ったが、その下にある柔らかく巨大な寝台の上に落ちた為、命を失うことはなかった。

「ごほっ! ごほっ! なんだこりゃ!? なんつー煙だ!!」

何が起こっていたのか、そこには前も見えないほどの煙が充満していた。

「水はないか? 外套に水を含ませるんだ。これ以上煙を吸うのは危険だ!ごほっ、ごほっ!

「水だ、冦があった!」


「あの場所については部下が妙なことを言っている。そんな場所などない、とな。」

「なんだよ、そりゃ? 俺たちは打ちどころが悪くて、幻でも見てたのかよ?」

「ふたり同時に同じものを見たとすれば、ずいぶん仲がいいな俺たちは。」

「そりゃそうだ。昨日は仲良く心中しかけたんだからな。」

ケネスは両手を頭の下に持ってきて、ふて寝の体勢である。

実はそんな簡単な仕草だけでも全身に痛みが走る。かたや、デスクから動こうともしないギャスパーも同様である。

「ケネス、立て。……先生がいらっしゃった。」

階段を昇ってくる靴音が聞こえる。

ケネスは痛みにあえぎながら立ち上がり、来客用のソファを整えた。靴音が部屋の前で止まる。

ベルがジリリリリリと鳴るのを待ってから、ケネスはドアを開けた。

「おはようございます。今久留主先生。」

「ええ。おはようございます。ケネスさん。」

迎え入れたのは、年の頃は12、13といった所の少年であった。

だがこの少年こそが海を隔てた帝政T国において、複雑怪奇、奇妙奇天烈な難事件をいくつも解決した素人探偵。

今久留主好介、その人であった。

「ギャスパーさん、こちらが依頼された旅行記です。

以前堪能させて頂いたこの街が誇るシアターRの様々を、拙文ながら、したためさせて頂きました。お納めください。

謙遜はやめてください。先生の旅行記のおかげで、我がカイエの部数は好調ですよ。

私の拙い訳の方が申し訳ないくらいです。ただ、先生……。旅行記はこれで最後にしましょうか。」

「おや? なぜですか?」

「先生の記事はいつも女性の描写に偏り過ぎているんです。旅行記というには相応しくないという投書もいくつかありました。」

「そんなバカな? 取り立てて女性を書いたつもりはないのですが……。」

「いえ、本当です。店の内装と料理の話が1だとすると、女性については4くらい書いてますね。」

「なるほど。どうやら筆が乗り過ぎたのでしょうね。でもそれはしょうがないのですよ。

何故なら僕は……。

助平ですから。

「先生、まだお昼っすよ。」

「おや、これは勘違いさせてしまいましたね。言葉の選択を間違ってしまいました。

僕は、ど助平です。」

「先生、何も変わってないっす。よりひどくなりました。」

「だからしょうがないのですよ。

(人としてどうなんだろう……)

「いま、何か言いかけましたか、ケネスさん。」

「いえ、何も。」(なんでわかった?)

「先生、いま頂いた原稿にざっと目を通したのですが、シアターの男性俳優のことがほとんど書かれていませんね……。

「オスはいりません。」

(お前もな)

「ケネスさん、いま何か言いましたか!?」

「いいえ、何も!」(だからなんでわかるんだ?)

「ともかく、旅行記は今回でおしまいです。次は別の連載を始めましょう。先生、何かアイデアはありますか?

「ふむ……新連載ですか、なかなか難しいですね。

「大陸列女伝」というのはどうでしょうか?大陸の歴史に残る戦う女性たちの生涯を描くんです。」

「先生がやると嫌な予感しかしないので、やめておきましょう。」

カイエ社内では、さっそく今久留主の新たな新連載について、あーでもないこーでもないと案出しをしていた。

しかし議論は、どうしても女性関連に持っていこうとする今久留主。

それを阻止せんとするカイエ社側とのせめぎ合いが続いていた。

入り口の方から、コッコッとドアがノックされる音が聞こえた。

それはドアの外というより内側からの音だ。一同が目をやると、少女が立っていた。

「おはよーございまーす。新聞貰いにきました。あら? 若先生もいたんだ。おはようございます。」

少女の名はヴィッキー・ワン。カイエ社の入るビルディングの上階に間借りする、E王朝の映画会社〈華様影業公司〉の専属女優である。

といっても、まだまだ駆け出しのニューフェイスである。

彼女の一日はカイエ社に新聞を受け取りに来ることから始まる。

「おはよう、ヴィッキーさん。もちろん用意していますよ。」

「おはよう、つっても、もう昼だぜ。」

「うるさいなー。あたしはいま起きたの。だから「おはよう」で間違いないの。」

彼女が昼前に現れ、少し遅れた朝の挨拶を交わすのも、もはやカイエ社での定番と言ってよかった。

「あと、食べるものも朝食になるのよ。これもらっていい?」

ギャスパーの机の上の菓子皿に盛られたプリオッシュをつまみあげる。

ギャスパーの「どうぞ」という仕草を待って、ヴィッキーはひとくち留った。

受け取った新聞を開くと、すぐに演劇と映画の紙面へと向かう。

彼女にとっては、この街が各国の銀行が集う国際金融都市であろうが――

政治的な危うさを秘めている大陸の火薬庫であろうが関係ない。

A連合とU連邦と共和F国などの列強の文化と風俗が混在した、華やかな国際文化都市であることの方が重要だった。

週末から「魔詞魔詞紳士」観に行かなきゃ。

上映されるんだ。D王国の表現主義とやらの傑作と聞きますね。

ええ、奇妙な夢を見続けた男が怪人となって、美女をさらい、自分と同じ夢を見るように強要するっていう筋で――怪奇趣味の映画のようでも、主人公デュラとヒロインの危うい恋愛映画のようでもあるみたい。

本国では大ヒットしたみたいね。いまウチの撮影所の監督たちはこのフィルムの話ばっかりしてるわ。

「なんだか辛気臭い映画だな。そんなのが話題なのか?

「あれ、ケネスはこういった映画は嫌い?

「あんまりピンと来ないね。

「そもそもお前は映画館よりも競馬場の方が好みだろ。

「ええ、馬が好きですから。あと、犬も好きです。

ですが、こういう怪奇譚というのは、人の興味を強く引きます。当日のシアターRは盛況となるでしょうね。

「若先生の言う通りね。ああいう怖い話つてやっぱりみんな大好きだもん。

あ、そうそう。いま、巷じゃ「アベニューDの赤いドレスの怪人」……って都市伝説が流行ってるのよ。

「ほう、それは気になりますね。どんな話ですか?

「若先生、食いつくねえ。それはね……ある夜の話なの……。


「とし君です!

「でん君です。

「せっちゃんでーす!

「3人合わせて――ディザスター・ミッドナイトエンジェルズーウォ――

「なんかねー、「赤いドレスの怪人」っていう都市伝説が流行ってるんだってー。

「えー、聞きたーい。聞きたーい。せっちゃん、聞きたーい。

「欲しがり屋さんだなー、せっちゃんは。

「それではものは試し。その都市伝説を再現してみよー!

「じゃ、せっちゃん。怪人役を僕とでん君のどちらにするか選んで。

「いいわよー。ど・ち・ら・に・し・よ……とし君!!

「えー、いまのちゃんと選んでないじゃないかー。

「どうしてー、ちゃんと選んだわよー。そんなこというでん君、嫌い! 死ねばいいのに!

「それは言い過ぎだろー。

「でん君、選ばれなかったからって、言いがかりは止めなよ。死ねばいいのに!

「とし君もそれは言い過ぎだろー。なんだよー、あいつらー、デキてんのかなー?

「そこはアベニューD……。夜、ひとりの女性が歩いていました。

「夜道怖いわー、夜道ホント怖いわー。背後から声かかったらホント怖いわー。

「おぜうさん……。

「ドキッ!

「おぜうさん、ってのはお嬢さんのことだね。

「おぜうさん……。

「ドキッドキッ!な、なんでしょうか?

(なんで、おぜうさんっていうんだろう……)

「おぜうさん、あなたのドレス濡れていますよ。

「え? そんなことないわ、濡れていませんわ。

「濡れていますよ……。

「どこが?わたし全然濡れてませんわ。

「濡れていますよ……血で、真っ赤にね! おぜうさん――!!

「きゃあーーーー!!!

「という話。どうだった?

「おぜうさんが気になって気になって内容が頭に入って来なかったよー。

「ガッデーーーム!


「つまり、ドレスが濡れてますよ~って声をかけられた女性が夜な夜な行方不明になっているという話。

女性たちはその後、殺されたとか、海外に売られたとか、結末は色々あるけど共通するのはひとつ。

どれもドレスが濡れていますよ、こわーい怪人が登場するの。」

声をかけるその話を聞いて、ケネスとギャスパーは秘密裏に視線を交わした。

アベニューDは、昨日ふたりが仮面の男とひと悶着を起こした場所だった。

「アベニューDなら宝石店の取材で行く予定だ。ついでに調べてみてもいいかもな。」

「〈蚩尤の首飾り〉の取材っすね。そういや、あそこはアベニューDだ。」

「え? え? え?〈蚩尤の首飾り〉って国宝の? 見たい見たい! あたしもついて行っていい?」

「僕もその都市伝説の現場には興味があります。同行させて頂きますよ。」

かくして、一同は取材へと向うことになった。





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