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幻魔特区 RELOADED Story3

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story 絶級 古の真実



君たちは大ロッドの中枢部に集められていた。

小ロッドが何者かによって襲撃される事件が続いているのだという。

次に襲われる可能性があるいくつかの小ロッドをピックアップしたので、明日からそのうちの1か所の防衛にいってほしいとのことだった。


「襲撃犯はモルブだけではなかったということですか?

「モルブは単独犯だったようです。ただ、怪しい男に会ったという話をしていました。

「ミュールも怪しさ男に会いまして。レグルとテーラと一緒のときの。

「あー、あのやべえ奴か。あいつは怪しさが服着て歩いてるような奴だったな。

「いや、服装からして怪しかったから、怪しさが怪しさを着て歩いてるというか……いやいや、歩き方も怪しかったから……。

「ややこしいよ。怪しい男でいいだろ。


「……ぅふっ。」

テーラが笑い声を漏らした。

一瞬、みなが虚を突かれたように固まった。


「なによ、あんた。なにかいいことでもあった?」

「べ、別に。」

「怪しいなー。そういや昨日、長いことアサギと喋ってたみたいだけど。」

「なんでもいいでしょ。」

「ガーディアン同士で密談ってわけ?水臭いじゃない。」

「まあまあ。ガーディアンもガーディアンでいろいろあるだろうし。」

目を伏せているテーラはやや戸惑いながらも、おずおずと喋り出す。

「アサギから、先輩ガーディアンとして、アドバイスもらってたの。あと、ウシュガ博士に会った。」

「ウシュガ博士?あたし、ちょっとファンなのよ。だって気持ち悪いじゃない、あの人。」

「僕はちょっと。確かに氏の功績は多大なものだけど、英雄かと言われるとね」

「これ、もらった。」

テーラは白い布のようなものを持っている。ウシュガのサインが入った白衣だった。

「あげる。4着あるから。」

「なによあんた、仲間想いなところあるじゃないでもこれなんて書いてあるのか読めないわね。」

「名前と、座右の銘が書いてあるって。」

「かろうじて「んんー!」だけ読めるわ。これが座右の銘ね!」

「……座右の銘ってなんだろうね。」


「魔法使い、いる?」

君は、700号ロッドの4人で着るといいよと受け取りを固辞した。

「それがよきです。ミュールもいらなく思うところがありてまして。」

「おれもいいや。」

「僕も。」

「実は私もそんなに……。」


結局、ウシュガのサイン入り白衣は4着ともファルサのものになった。


「なにかお礼をしたいけど、今は飴くらいしかないわ。とりあえず飴を舐めなさい。」

ファルサはテーラの返事を待たず、口の中に飴を放り込んだ。

「ちょっと、勝手に……ああ、甘い……おいしい……。」

「なによあんた……かわいいわね!もう1個舐めなさい。」

「やめて……おいしいと、笑っちゃうから!」

「なによこのかわいい生き物……。あたし、今日から飴紙めさせ機になるわ。」


「飴舐めさせ機ってなんだよ。」

「ミュールも飴紙めさせ機になりてます! テーラ、どうぞ、いちごの味のです!」

それからテーラは餌付けされるように、ファルサとミュールに飴を舐めさせられていた。

若干の戸惑いこそあるものの、テーラはファルサやミュールとのやりとりを楽しんでいるように見えた。


「なあ、テーラの雰囲気、だいぶ変わった気がしないか?」

レグルが君とウィズに耳打ちする。

「ちょっと柔らかくなった気がするにゃ。いい変化にゃ。

でも、妙な緊張をしてるようにも見えるにゃ。」

そんなふうには見えなかったが、よくよく注意してみると、笑顔の合間に、表情が強張る瞬間があった。

さすが師匠だ、と君は舌を巻く。

さらに観察してみると、動きにも硬いところがある。

仲間との間にあった壁を取り払ったがまだ慣れていない……。

それが答えであれば微笑ましいが、なにか不安を押し殺しているようにも見えた。


「あいつ真面目だからな。小ロッド襲撃事件を絶対解決してやるって気負ってるのかも。」

「レグルも見習うにゃ。」

「だよなあ、テーラにどんどん差ぁつけられちゃうよ。」

おどけて笑うレグルだが、一瞬、表情にかげりが見えた。

心配になった君は、なにかあった? と尋ねる。

「それも魔法か……すごいな。言ってもしょうがないことなんだけど、ちょっとした悩みがあってさ。」

君はレグルの心の内を聞かされる。

曰く、もやもやするとのこと。

少年少女特有の、漠然とした悩みなのかと思って聞いていたが、どうもそうではないらしい。


守りたい。強くなりたい。そんな強い想いがある。

そう思うに至った何かが、あった気がする。でも、思い出せない。

何を守りたいのか、なぜ強くなりたいのか。

それがわからずに、自分の気持ちが自分のものではないみたいで、もやもやする。そんな悩みだった。


「ごめんな。変なこと言って。でも、ちょっとすっきりしたよ。」


レグルは嘘をついている。全然、すっきりしていない。

それを指摘すると、レグルはまた『魔法か!』と驚く。


少しでも参考になればと思い、君はささやかな持論を述べる。

今守りたいものを一生懸命守ればいい。

大切なのは今。そう言ってしまえば月並みだ。

しかし今置かれた状況を大切にするというのは、様々な異界を冒険する君にとって、一番に心がけなけれぱならないことだ。

今守りたいものを全力で守っていれば、何を守りたかったのか、きっと思い出せるはず。

少々無責任かもしれないが、希望も込めて、そう付け足した。


「……今、守りたいものか。そっか、そうだよな。ありがとう、魔法使い!」

レグルの表情が、少し晴れた気がした。君の心も、少し晴れる。


「キミ、よくレグルの心境に気づいたにゃ。私に匹敵するくらい、ものを見る目があるにゃ。

そして、なかなかいいアドバイスだったと思うにゃ。さすが私の弟子にゃ。」


君とウィズはお互いに少し誇らしげな笑みを浮かべた。



なごやかな空気に包まれていたが、突然、アサギの顔色が変わった。

「緊急事態。既にガーディアンを増員していた8号ロッドが襲撃を受けた!

応援の要請が来ている!今すぐ急行しろ!」


 ***



君たちが8号ロッドに着いたときには、既にロッドが折られていた。


往民は既に避雛済みとのことだが、配備されていたガーディアンは重傷を負っていた。

敵は魔物を引き達れた怪しい男と奇怪な腕を持つ少女だという。

少女はガーディアン・アバターかもしれないとのこと。


「その男、あいつじゃないのか?」

「変な手の少女ってあいつじゃないかしら?」


「行こう。でも注意して。みんなで連携して、隙を作らないように。」

テーラの発言は今までとはうって変わって、仲間との協力を考えたものだった。

しかしどうしてか、その声音はなにかに怯えるように震えていた。



テーラの様子がおかしいにゃ……。


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story3-2



果たして、8号ロッドの中心、折れたロッドの根元で佇んでいたのは、君たちが大ロッドで戦ったメロウだった。

その傍らには、すらりとした長髪の男がいる。


「また会ったね。初めましてのひともいる?私はアヴリオ。この子はメロウ。」

「メロウがこの子だよ!」

「アバターとしてメロウを生み出したはいいけど、それ、ガーディアン・アーマーだっけ? うまくいかなくて。

私のせいなのかな。メロウのせいなのかな。」

「メロウはメロウのせいだと思う!あと、メロウはお腹が空いたと思う!」


「また魔法使いのカード食べさせてあげようか?」

「あれはまずいとメロウは思う!」


「お前たちがロッドを折ったのか!答えろ!」

「うん。ちょっとした遊び。歴史の模倣ってやつ?

今から200年ほど前に、収穫者を名乗ってロッドを折っている連中がいたらしいね。その名前が気に入ったんだ。

いや、気に入ったというより、ちょっと腹が立ったかな。おいおい、それは私の名前でしょう、ってね。」


「何者なんだよ、お前は。」

「勿体つけてないでさっさと言いなさいよ。あたしは勿体つけられることがこの世で一番嫌いなの!」


ファルサはアヴリオを睨みつける。

その隣で、さらに敵意をむき出しにしているのはミュールだった。


「ミュールもアヴリオ、嫌いなので。お母さん、アヴリオのこと嫌い。」

「ミュールさんのお母さんって……カリュプスのことですよね?」

「あ、あなたがカリュプスの本能を活性化していたの?」

相変わらずテーラの声は震えている。以前の毅然とした彼女からは想像もできない。


「君たちのいうカリュプスね……。もともと、あれは私たちのものなんだけどな。

それなのにひどいよ。串刺しにして、生命エネルギーを利用するなんて。

でも、許してあげる。ガーディアンという、面白い技術を見せてもらったからね。こんな使い方があったなんて驚いたよ。」

アヴリオは不敵な笑みを浮かべる。


「結局あんたたちは何者なのよ、さっさと答えなさい!」

「メロウが答えようか?メロウは、メロウだよ!」

「メロウはちょっと黙ってようか。」

アヴリオはメロウの口にそっと指をあてる。


「私は、君たちにとってなじみのある言葉で言うならば、この星にカリュプスを落とした宇宙生命体といったところかな。」

「なんだって……。」

「カリュプスは生命エネルギーを集めるための道具に過ぎず、地上の生命を喰らい尽くしたところを回収する予定だったの。

そんなカリュプスに負けないどころか、逆にエネルギーを利用してガーディアンを生み出すなんて――

この星の生命体は本当に興味深い存在だね。だからこうして、実地調査にきたというわけ。

カリュフスを刺激したのは、ちょっと状態を確認するため。迷惑をかけたのなら、ごめんね。」


君にとっても衝撃だったが、この異界の人々にとっては更なる衝撃だろう。

千年前、突如襲来した巨大生物カリュプス。

その正体を知ったばかりか、災厄の発端となった黒幕が目の前にいるのだから。


「私たちは、とにかく生命エネルギーが必要でね。いろんな星から回収してるんだけど、こんなふうに抵抗……いや。

抵抗と呼ぶにはあまりに手口が鮮やかすぎるな。我々よりもうまくカリュプスを扱ってみせた生命体は初めてなんだ。

だから、私たちの間では意見が分かれているの。この星の生命体を味方として迎え入れるか、脅威とみなして排除するか。

私は、どっちだと思う?」

「排除!メロウは排除だと思う!」

「メロウ、嘘はいけない。私は、保留派。実際に現地を訪れて、触れ合わなくちゃわからないもの。

個人的には、大好き。困難にさらされながらも、それを跳ね除けて力強く生きる生命体というのは、すごく魅力的だよ。

困難に打ち勝って輝く様を、今ここで見せてほしいな。」


アヴリオの全身に散りばめられた鉱石から、妖しい光が放たれる。


咄嵯にレグルたちはガーディアン・アーマーを展開する。

その様子を見たアヴリオは、一瞬虚を突かれたように固まった。

「ああ、今気づいたよ。君たちは、なにやら呪文のような詠唱をしているね。見よう見まねでできるかな。」


「我が心よ、私はだあれ?私は私、¨エゴイプセ¨!」

詠唱すると、メロウがまばゆい光を放ち、アヴリオと一体化する。


「……うまくいったかな。」

「うまくいってない!うまく動けない!」

アヴリオを覆うエゴイプセが暴れまわる。

「これをうまく扱うにはコツがいりそうだ。でも、あふれてくる力は素晴らしい。さあ、やろうか。」


アヴリオからは妖しくも禍々しい、瘴気のような気配が漂っている。

君は集中力を高めて、カードに魔力を込めた。



嫌な予感がするにゃ……!

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story3-3


「レベリオー、ヤムヤム!」


カリュプスを地上に落とした存在であるアヴリオに対し思うところがあるのか、ミユールは積極的に前に出ていく。

アヴリオの放つ攻撃をレベリオーが片っ端から食らい尽くしていった。

ミュールの獅子奮迅の活躍に加え、君の魔法、ガーディアン・アーマーによる多彩な攻撃がつうまくかみ合い、アヴリオを追い詰める。


「ガーディアン以外にも、たくさん面白い技術があるみたいじゃないか。」

相当な攻撃を受けたアヴリオだったが、笑って見せる余裕はまだあるようだ。

「そのレベリオーとやらは、他の個体とはどうも性質が違うようだ。

それに、奇妙な術を使うそこの君。君は根本的な何かが違っているな。」

アヴリオは君に向かって妖しく微笑む。

「しかし、一番面白いのは、やはりガーディアン。ソムニウムのー面が反映されるだけあって、精神の乱れが色濃く影響するんだね。」

アヴリオは手負いの身であることを感じさせない優雅な笑みを浮かべる。


「そんなに死ぬのが怖いの?」

その問いが誰に向けられたものなのか、君はわかってしまう。いや、君以外の皆が気づいているだろう。


テーラの様子がおかしい。

いつだって淡々と戦い続けてきた彼女だが、表情に怯えが色濃く出ていて、動きもぎこちない。

いつもの精密な射撃はなりを潜めていて、まともに戦えない状態だった。


「テーラ、無理するな。ここはおれたちにまかせろ。」

レグルが庇うようにテーラの前に立つ。


「だいじょうぶ……戦えるから。」

しかし、テーラの身体は震えていた。瞳は恐怖で塗りつぶされている。

「なにも、変わらない。今までどおりにやれば、へいき。」

自分に言い聞かせるように、消え入りそうな声でつぶやく。


「困るなあ。そういうの見せられると。」

アヴリオの身体に散りぱめられた鉱石から光線が放たれ――

「くっ!」

テーラの肩を掠めた。


「痛かった? 結構優しくしたんだけど。」

「優しくするな! 殺せ! 殺してやる!」


エゴイプセが叫び、鉱石から先ほどとは比べ物にならない凄まじい光線が放たれる。

でたらめな方向に飛散し直撃は免れたが、深く扶れた地面は死を想起させる。


「これ、うっかり殺しちゃうかも。」

「あ、ああ……あっ……。」

「ガーディアンというのは戦うために作られたというのに、戦うのが怖いなんて面白いね。

そういうの好き。なぶりたくなる。」

アヴリオが勢いよく地面を蹴って急接近してくる。


レグルがテーラの前に立ちはだかる。向かってくるアヴリオに向けて鋭い鈎爪の一撃を放つ。

それを真正面から受け止めたアヴリオは至近距離からレグルに向けて鉱石の光線を放つ。

「があああああああああっ!」

レグルが吹き飛ばされ、激しく地面に打ちつけられる。

君はすぐさま回復魔法を詠唱。淡い光がレグルを包む。


「弱いあなたが死ぬか。あなたを庇った弱い彼が死ぬか。それとも、みんな死んじゃうか。」

『テーラ、無視しろ。アヴリオの話など聞く必要ない。』

叱咤するユースティティアの声は消え入りそうだった。それだけ、テーラの心が弱っているのだろう。

「君の瞳はすごく綺麗だ。すごく綺麗に絶望している。宝石みたいで、欲しくなってしまうよ。」


そしてついに、テーラのガーディアン・アバターが消失した。


「我が心の正義よ、惑わずただ其れを為せ!¨ユースティティア¨!」

震え声の詠唱が虚しく響く。ガーディアン・アーマーは展開されない。


その時、君は見た。

恐怖にまみれ、涙を流すテーラの表情を。

そして、そんなテーラのことを見つめ、驚愕に目を見開き慄いているレグルを。


レグルは、テーラの変わりようにショックを受けているのだろうか?

このままではふたりが危ない。君がふたりを守りながらの立ち回りを頭の中で組み立てていると――


いつの間にか、レグルは笑っていた。

その笑みはどこか清々しく、自信に満ち溢れていた。

レグルは地面にくずおれているテーラに寄り添い微笑みかける。


「テーラ、あの時はありがとうな。」

「レグル……?」

「ばっちり目ェ覚めたわ。」

レグルは立ち上がって、大きく伸びをする。


「長かったよ。やっと目が覚めた。

なにを守るのか。どうして強くなりたいのか。おれは知ってたんだ。

ずっと昔から、記憶が生まれる前から知ってたんだ。」


レグルを覆うサルヴァトルの外見は変わらない。

しかし、まとう空気が、明らかに変わった。


「なんだ……なにが起きた!?」

初めてと言っていいかもしれない。アヴリオの目に、焦りが見えた。


今度はレグルが地面を蹴ってアヴリオに急接近。

「おおおおおおおおおおおっ!」

反撃の隙を一切与えない、目にもとまらぬ猛連撃を打ち込んだ。


「くそォ……よくも私にッ! 下等生物が!」

アヴリオの全身に散った鉱石が禍々しい光を放つ。

浴び続たら発狂してしまようなおぞましい瘴気はしかし、あっけなく収まった。


「すまない、取り乱してしまったよ。

実に。いや実に、この星の生命体は面白いね。まさかここまでとは。

参ったよ。私の負けだ。」

アヴリオは両手をあげて、降参の意を示す。

「ガーディアン・アーマーの使い方は、まだまだ君たちから学ぶところがありそうだ。」


「学ぶって……お前みたいなやつに教えるわけがないだろう!」

「今日のところは失礼するよ。」

「おとなしく帰してもらえると思ってんの? 帰りたいなら、命は置いていきなさい!」

アヴリオは涼しい顔でファルサの言葉を聞き流している。


「この星の生命体は、試練を乗り越えて成長する。そのあたり、もう少し勉強させてもらいたいね。

おあつらえ向きの試練でもあるといいんだけど。まあ、私は運がいいから、その機会はすぐ来るかもしれない。」


そうつぶやくとアヴリオは飛び立ち、空の彼方へに消えていった。


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story 動き出す時間



うずくまったまま動けないテーラにレグルは付き添っていた。


「無様だったでしょう? あれが本当の私。」

「無様なものかよ。ただ、びっくりはしたけど。」

「ずっと隠してた。誰にも知られないようにしてたし、自分でも向き合わないように逃げてた。

私は、誰よりも弱くて情けない、役立たずのガーディアンなの。」

テーラは自嘲的に笑った。そんな笑顔は似合わないとレグルは思った。

「今までは、我慢してたのか?」

「我慢はしてない。いろんな気持ちを捨ててたから、戦えてた。……ああ、こんなこと話しても仕方ないか。」

テーラは立ち上がろうとして、よろめく。

「聞かせてくれよ。」

再び座り込んだテーラは、子どものように目元をごしごしと腕で拭った。


「昔は、ふつうに戦えてた。戦うために生み出されたんだから、戦って死ぬことを怖いとは思わなかった。

でも、人間とー緒に生活するようになって、生きる希望っていうのかな――

そういうことを意識するようになったら、戦って死ぬことが怖くなったんだ。

自分でも驚いた。すごく怖がりになって、自分の感情なのにコントロールできなくて、そんなの初めてで。」

当時を思い出しているのか、あるいは先はどの戦闘を思い出しているのか、テーラは震えだす。

「そんなときに、私か住んでた小ロッドが魔物に襲われたんだ。

優しくしてくれたみんなを守らなくちゃいけないのに、ガーディアン・アーマーを展開できなくて、大切なひとを守れなかった。

その時からガーディアン・アーマーを召喚できなくなって、それを治すために何年かアサギのお世話になった。

蓄積思念削除。うれしかったとか楽しかったとか、たまった感情を消す感じかな。

人間と暮らすようになって、生きる希望が芽生えて、それが戦う糧ではなく伽になるなら、消してしまえってこと。

ずっと療養して役立たすのままでいるくらいなら、なんの感情も持たずに人間を守るほうがいい。そういうふうに、決めたはずなのに。」

今度は、悲しげに笑う。それもテーラには似合わない。

「ちょっとうれしくなっちゃったんだ。今も昔も、人間が、ガーディアンと共に生きていこうとしてたことが。

でも、思い上がりだったな。今なら乗り越えられるなんて、思ったのがいけなかった。

……急にいろいろ話してごめん。でも、安心して。また、元の私に戻って戦うから。」

「待てよ。蓄積思念削除って、思い出を捨てるようなものだろ?」

「でも、消すのは感情だけで、記憶自体を消すわけしゃないから。それで迷惑をかけることはないと思う。」


700号ロッドで共生していて、テーラの態度が冷たかったのは、蓄積思念削除の影響だったのだろう。

あるいは削除すべき思い出を極力作らないように振る舞っていたのかもしれない。

いずれにしても、それが戦うためにやっていたことならば。


「そんなの、寂しいだろ。おれはテーラに思い出を捨ててほしくない。」

「だけど、それだとさっきみたいに、怯えて戦えなくなる。

だから私は、思い出を捨てる。強くあるためには、そうするしかない。」

「テーラ、お前は勘違いしてる。それも、ふたつだ。

ひとつは、それは本当の強さじゃない。自分の弱さから逃げてるだけだ。誰にも頼らない強さは、きっといつか折れる。

もうひとつは……ちょっとおれの話を聞いてくれないか。」

テーラは黙ってうなずく。


「おれ、昔から「守りたい」「強くなりたい」って想いがあったんだ。

だけど、なにを守りたいのか、どうして強くなりたいのかが、わからなかったんだ。変な話だろ?

でも、さっきわかった。心の一番奥で眠ってた、最初の記憶を思い出した。

おれは昔、ガーディアンに命を救われたことがあるんだ。

魔物が襲い掛かってきたとき、ガーディアンはおれを守ってくれた。

ガーディアンは、魔物に怯えてた。死にそうなほど怖がってた。それでも、おれを庇って、魔物から守ってくれたんだ。

「それって……。」

「でも、やられちゃってさ。そのとき、おれはガーディアンのことを「守りたい」と思って、「強くなりたい」と願った。

そこで初めて『守れ』『強くなれ』という〈声〉を聞き、同時に力があふれ、ガーディアン・アバターを作り出したのだった。

アヴリオとの戦いの中で、テーラの絶望にまみれた瞳を見て、ようやくそれを思い出せた。

おれはずっとテーラのことを守りたかったんだ。そのために強くなりたいと思ったんだ。」


「……あの子は、レグルだったの?」

「ああ。きっとそうだ。」

テーラは大粒の涙を流しながら、笑う。

「生きてて、よかった。」

「思い出のせいで戦えないなら、おれがテーラのことを守る。テーラが戦えるようになるまで守る。

もしも一生弱いままなら、一生守ってやる。でも、できれば、弱さを乗り越えて今までみたいにおれを守ってくれよ。」

「どうしてかな。きっと、戦えそうな気がする。レグルが頼りないからかも。」

「よろしく頼むよ。おれ、基本的には戦わずにごろごろしてたいし。」


「……そろそろいかなくちゃ。みんな待ってる。」

テーラは立ち上がる。よろめくことなく、しゃんと立っている。

「飴舐める?」

テーラはこくりとうなずく。レグルはファルサからもらった飴を、テーラの口に入れてやる。


「……甘い。」

その笑顔だとレグルは思った。


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story



その夜、カリュプスが吼えた。

地の果てまで響き渡るような轟音だった。

カリュプスの本能が活性化しているのかと君はミュールに問う。


「いえ、カリュプス、教えてくれてます。危ないの、来たらば!」


ミュールが聞いたカリュプスの言葉は、現実のものとなった。

君たちはアサギから信じがたい事実を告げられる。


「カムナラ技研の人工衛星が、隕石を観測した。どこからともなく湧いて出たとしか言いようがない。

隕石……というのは語弊がある。減速しながら、大気圏に突入しようとしている。

今から1496年と126日前に、カリュプスが現れたときとまったく同じ状況だ。

せめてもの救いは、当時観測したカリュプスと比べると、その直径が遥かに小さいということだが。」


アサギの話によると、隕石は奇妙な落下軌道を描いているという。

引き寄せられるように、あるいは意思を持っているかのように、ガルデニアロッドに向かってきているとのことだった。


「これぞ、アヴリオの言えた試練でして?」

「やつは……カルデニアロッドの破壊……つまり、カリュプス復活を目論んでいるのかもしれない。」


「そんなのヤバすぎるしゃない!どうすりゃいいのよ!」

「英雄だったら、こういうときどうするんだ?」


そんな中、レグルとテーラに動揺は見られなかった。それどころか、自信さえ持っているかのようだ。

レグルのもやもやは、完全に晴れたようだ。

そして、それが影響を与えたのか、テーラも憑き物が落ちたように、晴れがましい表情を浮かべている。


「大丈夫だ。〈声〉が言ってた。「オレも守る」って。」

「それ、レグルが前から言ってる夢の中で聞こえる〈声〉の話?今は寝ぼけたこと言ってる場合じゃないよ!」

「寝ぼけてない。私も〈声〉を聞いた。だから、きっと昔みたいに助けてくれるん――」


テーラが突然黙り込んだ。

レグルとテーラが同時にびくりと身体を震わせる。

ふたりは視線を交わしてうなずき合い、そして、


「「オレに任せろ! 撃ち落とす!」」


口をそろえて、力強く言い切った。


「……にゃ?」

「そう言ったんだ、〈声〉が。」

「それ誰なのよ。見えない話ほど最悪なものはないわよ!わかるように説明してちょうだい!」

「ごめん、私たちにもわからない。でもきっと、助けてくれる。」


「……ん? どうした? 地下でなにかあったか?なに!? ロッドに、大量のC資源が供給されているだと!?」

アサギは地下施設から通信を受けているようだ。

「カリュプス、撃つと言っていますれば!」

「まさか……ロッド先端の映像、出るか!」



次の瞬間、ロッド全体に衝撃が走った。

君たちはその場に倒れ込む。衝撃は数秒間に渡った。

そして、君の目にはガルデニアロツドの先端から光線が放たれている様が飛び込んできた。


「なんということだ……圧縮されたC資源エネルギー砲が唄石に命中した!

ありえない……ガルデニアロッドの対空砲は実運用上の問題解決目処が立たずにシステムが凍結されたはずなのに……。」


君たちは光線が放たれた後の上空の様子を確認する。

隕石の欠片なのか、幾筋もの希星のようなものが見えた。


「人工衛星からの観測によると……隕石自体は残存している。

しかし、軌道が大幅に変わった。ガルデニアロッドから大きく外れた場所に落ちそうだ。」

「ガルデニアロッドを使った一撃……〈声〉の正体は……カリュプスなのか?」

「とりあえず、助かったにゃ。」

君たちの間に安堵の空気が漂い始めたそのとき――


”アサギ先生ー!”

アサギのもとに、ウシュガから通信が入った。


”ロッドの周りをうろつく怪しい男を見つけたよー!

ヴラフォスを撃ち落とすとはね……つくづく、この星の生命体には驚かされるよ。

そう言ってた!”

「ウシュガ!その男は今そこにいるのか!?」


”もちろん!逃げられた!

ヴラフォス落としたってタダじゃないんだ。元は取らせてもらうよ。とも言ってた!

この男がどれだけ怪しいか。動かぬ証拠がある。なんと!このウシュガ様のことを知らなかったんだよ!

んんー!大天才科学者のウシュガ様を知らないなんてッ!この世界の人間とは思え――

アサギはそこで通信を切った。


「ヴラフォスってのはさっきの隕石のことかしら?」

「話の文脈からしてそうみたいだ。そして、怪しい男とはアヴリオだろう!」


「落下したヴラフォスがロッドを襲撃に来るかもしれない。迎撃準備だ!」


ガルデニアロッドがすごいことになってるにゃ!

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story3-2



その巨大な魔物を見た君は、慄然とする。

異様に発達した巨大な口は、すべてを喰らい尽くさんとする存在であることを誇示しているようだ。

そして、これ以上に巨大だったという千年以上前に襲来したカリュプスを想像し、この異界の人類が味わった絶望に打ち震える。


「やあ、奇遇にも、また会ったね。」

巨大な魔物、ヴラフォスの上に鎮座するように、アヴリオがいた。

「やっぱりあいつにゃ!」

君は出会い頭の攻撃に備えたが、アヴリオにその意思はないらしく、妖しい笑みを浮かべるばかりだった。


「さっきのあれは一体なんだい?カリュプスのエネルギーを使った……いや、どうもカリュプスの意志が働いたように感じた。

自分の計画が阻害されたというのに、アヴリオはどこか嬉しそうに朗々と語る。

「カリュプスが私たちを裏切るような真似をするとは。

人間が……いや、人間とガーディアンの想いが、カリュプスを動かしたといったところか?」

アヴリオはヴラフォスから地面へふわりと降り立つ。

「そもそも、カリュプスは生命エネルギーを喰らおうとする本能のみの生物だった。

それが、この星で封印されている間に、理性というべき別人格が生じたようだ。」

「なに気取って演説してるのよ。悪党の演説ほど醜悪なものはないわ。死んで詫びなさい! 詫びなくていいから死ね!

アヴリオはわめくファルサさえ、穏やかな目で見つめる。


「エネルギーの回収を目的とする私たちにとっては都合が悪いが、進化の可能性という点においてみれば、ガーディアン技術同様に興味深い。

一体、この星はどうなっているんだい?魅力的にもほどがある。」

優雅とさえ言ってもいい笑みを浮かべていたアヴリオだったが、ここで態度を急変させた。


「とはいえ、私たちにも使命がある。いたずらや気まぐれで生命エネルギーを欲しているわけじゃない。」

唇が歪み、涼しげだった目元がぎらりと鋭く光る。

「人間とガーディアンを試すつもりでいたけど、ちょっとだけ、この場で潰しちゃおうかなってほうに気持ちが傾いてる。

このヴラフオスには本能しかない。理性によって人類に味方したカリュプスと違い生命を喰らおうとするのみ。

君たちの思いは通じないというわけだ。」


アヴリオは君たちに視線を走らせ、テーラのところで目を止める。

「絶望色の目をしていた君は、ずいぶんと様変わりしているじゃないか。」


「テーラ――」

庇おうと前に出ようとするレグルを手で制し、テーラは微笑んでみせる。  

「レグル、もう怖くないから、大丈夫。

私は、想いを胸に戦う。いくよ、ロイド。

我が心の正義よ、惑わずただ其れを為せ!¨ユースティティア¨!」


いつになく弾んだ声でテーラが詠唱し、ガーディアン・アーマーを展開する。

テーラらしい凛とした佇まいだが、同時に強靭な想いも伝わってくる。


「我が心に眠る戦獣よ、救世の星となれ!¨サルヴァトル¨!」

すっかり目を覚ましたと言わんばかりのレグルからは、以前のような迷いや頼りなさは感じない。

「おれは、守るために強くなった。守りたいものを知って、強くなった。」


「あんたち……なんか……見違えたわね。卑怯よ、卑怯!それどうやるのよ!」

「レグルもテーラも、英雄の風格があるじやないか!悔しいけど、仲間として誇らしいよ!」

レグルとテーラの変わりように驚くふたりも負けじと、ガーディアン・アーマーを展開させる。


「とってもヤムヤム、¨レベリオー¨!」

ミュールもレベリオーを従え、臨戦態勢に入る。



「すべてを喰らい尽くせ――と言いたいところだが、まずは吐きだせ、ヴラフォス!」


アヴリオの身体に散りばめられている鉱石が妖しい光を放つ。

すると、ヴラフォスの口から大量の魔物が吐き出される。


「この試練を乗り越える様を見るのも楽しみだし、ここで想いが潰えるという侈い結末もまたいい。どう転んでも面白い。

さあ、見せてくれ。生命の輝きを!」


大量の魔物と共に、ヴラフォスが轟音と共に嚢いかかってくる。

しかし、君の心には不思議と恐怖や焦燥はなく、勇壮な想いだけがあった。

頼もしく成長を見せた、レグルたちを信じているからかもしれない。


そんな彼らと共に闘うべく、君は想いを乗せるようにカードに魔力を込めた。


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story3-3




君とレグルとテーラはヴラフォスを――

ファルサ、タイシ、ミュールは大量発生する魔物を攻撃し続けた。


ヴラフォスが君たちへの攻撃だけではなく、居住区の建遣物への攻撃を縁り返しているのは、生命エネルギーを回収するためだろう。


人間を探しているのだ。

住民は、地下に避難している。とはいえ、そう深くはないらしい。

地下に攻撃が到達する前に、なんとしても倒さねばならない。

しかし、ガルデニアロッドからのエネルギー砲を受けても生きていたヴラフォスである。

その外殻は堅固で、君たちはなかなかダメージを与えられずにいた。

一方で、ヴラフォスが吐き出す大量の魔物も尽きることはなかった。


「いくらでも魔物出てくるわね。殺し放題ってわけ。気前がいいじゃない。」

「そういう冗談も、そろそろきつくなってきたな。」

「カリュプスの分身体と構成要素が異なるのか、レベリオーの捕食・分解機能が低下してれます。」


徐々に攻撃の芽を摘みきれなくなっている。そんな状況の中――


「遅くなった!」

ウシュガを連れたアサギが合流する。

「ひぃいいいいアサギ先生怖いよー! 僕は前線に立つタイプじゃないのにー!」

「黙れ。守ってやるから例の兵器を使え。英雄のはしくれとして、しっかりしろ。」

「はっ!ウシュガ様のファンの子もいるじゃないか!往くぞ! ウィアノーヴァ!」


ダウシュガのガーディアン・アバター、ウィアノーヴアが謎の固形物をぱらまくと、魔物たちがそれに群がる。

すると、魔物の動きがたちまち鈍化した。


「これはC資源の構成をちょっといじったものさ。ソムニウムに反応して変質する、その速度が著しく遅延するよう、情報を書き換えたんだ。

つまりこれを取り込んだ魔物は、一時的に生体活動が停滞するのだよ。名付けてウシュガ――

ああ! アサギ先生!まだ名前考えてなかったよ!」

「そんなものはなんでもいい。ウシュガ・ナンチャラでいいだろう。」


「ち・な・み・に! C資源を使用しているからこれを体内に取り入れた魔物は、レベリオーも食べやすいはず!」

「レベリオーの生体活動も一時的に停滞する、ということはありませぬので?」

「捕食・分解するには問題ないはずだ!」

「レベリオー! イッキ! イッキ! イッキ! イッキ!」


アサギの護衛を受けながらウシュガがウシュガ・ナンチャラをばら撒き――

動きが鈍化した魔物たちをファルサとタイシが叩き――

弱ったところをレベリオーが一気に食べ尽くす。そんな、見事な連携を見せていた。



「おれらもなんとかしないと。」

攻撃力の高いレグルとテーラ、そのサポート役として君。

3人が対ヴラフォスの役割を任されたが、なかなか効果的な攻撃を繰り出せずにいた。

「一般市民とやらかいないね。ヴラフォスに少し食べさせてからロッドを攻めようと思ったけど、いきなりメインディッシュにしようか。」

アヴリオの鉱石から、毒気をはらんだ光が放たれる。

それを浴びたヴラフォスが、大ロッドヘと方向転換する。


「待て! 行くんだったらおれらを喰ってから行け!」

「にゃ……レグル、ロッドを守るためとはいえ大胆な挑発にゃ!」

「君たち、しぶといからね。それに、カリュプスの封印を解いたほうが、君たちの面白いところ、見られそうだし。」

悪化する展開に対し、為す術がない。君は歯噛みする。

「キミ、レグルとテーラの様子が変にゃ!」

ふたりを見やると、どこか遠くを見つめるような目で立ち尽くしていた。

「なにか〈声〉を聞いてるのかもしれないにゃ。」


やがてふたりは、

「……飛び込め。」

「……貢け。」

そうつぶやいた。


「テーラ、いけるか?」

「私はへいき。レグルは?」

〈声〉から何か作戦を授かったのか、ふたりにはなにやら考えがあるようだ。

「この作戦には魔法使いの助けが必要だ。英雄の力、貸してくれ!」


君はレグルから作戦を聞く。危険だが、試してみる価値はあると思った。

君は3枚のカードを取り出す。

全身全霊の魔力をカードに込めて、レグルに強化魔法、防御魔法、継続回復魔法をかける。


「すっげーなこれ。負ける気がしない!」

レグルがヴラフォスめがけて飛び込んでいく。

レグルの接近を阻もうと伸びる触手は、1本残らずすべてテーラが狙撃する。


「うおおおおおおおっ!」

レグルはサルヴァトルの鈎爪を大きく振りかぶり――そのままヴラフォスにのみ込まれる。


これでいい。

君は祈りを捧げるように、魔法の効果を継続させる。それだけに集中する。


「なんだ……なにが狙いだ!」

焦りをにじませたアヴリオが、魔法を発動し続ける君へと攻撃を繰り出す。

それを君の前に立ちはだかったテーラが防ぐ。

君はレグルのことを魔法で守り、テーラはユースティティアによって君を守る。


そして――ヴラフォスが断末魔を思わせる悲鳴を上げ、狂ったようにのたうち回る。

レグルがヴラフォスの体内ですべての力を注ぎこんだ猛連撃を放ったのだ。


「クソッ、落ち着け、ヴラフォス!」

荒れ狂うヴラフォスをなだめようと、アヴリオが目を閉じて鉱石を光らせた瞬間――


「貫けええええええええええええ!」

テーラの絶叫と共に、ユースティティアが一斉射撃。

「ぬあああああああっ!」

想いを込めた銃弾が、アヴリオの全身に散りぱめられている鉱石をすべて打ち抜いた。

やがてレグルが、ヴラフォスの横っ腹を突き破って出てくる。


「危なかったー! 身体融けてない? おれ、無事?」


カリュプスの体液を思わせる、奇怪な色の血を滴らせるアヴリオは、君たちに鋭い視線を向けたかと思うと――

この期に及んで、笑って見せた。

アヴリオの意地なのかもしれない。


「君たちを仲間として迎え入れるにせよ、危険因子として潰すにせよ、本気で挑まねばならないようだ。

興味本位で関わるべき存在ではない。出直すとしよう。」


君は飛び去ろうとするアヴリオに向けて雷の魔法を放つ。

しかし、すんでのところでかわされ、逃げられてしまう。

君が一瞬垣間見た苛烈な瞳にこそ、アブリオの本心が表れているのかもしれなかった。


 ***


ヴラフォスの亡骸は、研究対象としてウシュガが引き取るとのことだった。


「やせ我慢ほど惨めなものはこの世にないわね。見た? 逃げる前のアヴリオの笑顔。お腹痛いの我慢してるみたいな間抜け面たったわね!

「僕は、いや僕たちは……英雄の仲間入りをしたんじゃないか?これ、英雄レベルの大活躍だよ!

「MVPは誰かしら?気持ち悪い謎物質を撒き散らしてたウシュガ博士かしらね?

「いや、ウシュガ博士はちょっと……。残念ながら、僕でもないな。

ヴラフォスを内側から八つ裂きにしたレグルか、それを守った魔法使いか、いや、アヴリオを血まみれにしたテーラが妥当かな。

「いや、カリュプスじゃないか?

ガルデニアロッドからビームみたいなのぶっ放したし、おれらに〈声〉でいろいろ教えてくれたし。」

ミュールは地面に耳をつけて、カリュプスの声を聞いているようだ。


「カリュプス、言ってるてまして。 みんなのおかげ! カリュプスも、〈大いなる力〉に助けられたと!」

「ありがとう、カリュプス。」


君も心の中で、カリュプスに礼を言った。

そんな日が来たのかと思うと、感慨深い。




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エピローグ



君とウィズはレグルたちと共に700号ロッドに戻ってきた。

そう時間を置かず元の世界に戻るのだろうということは、なんとなくわかっていた。

しかし、少しでも長く、新たな仲間たちとの蒔間を楽しみたかったのだ。


君は700号ロッド自警団第2小隊が無事帰還したことを祝う宴を楽しむ。

しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ去る。


「キミ、そろそろにゃ。」

ウィズがおごそかに切り出した。君も慣れたもので、体感で気づいていた。


「もしかして、元の世界に戻るのか?」

「これからは、みんなや魔法使いと仲良くしたかったのに……。」

「まだカードの魔法教えてもらってないわよ! それなのにいなくなるなんてひどいじゃない! いなくなっちゃうところは好きになれないわよ!」


「前向きにとらえようじゃないか!」

タイシが毅然とした態度で言った。


「もちろん寂しい。もっと一緒にいたい。

でも、魔法使いには魔法使いの世界がある。僕たちのことをつきっきりで助けられる立場にはない。

でも、ピンチになればまた来てくれるんだ。それは、英雄譚が証明している。

そして、こういうふうにも考えられる。

魔法使いが元の世界に帰るということは、―時的かもしれないけど、危機が去って平和が訪れたということの証拠なんだ!」

「タイシ……なんだか立派にゃ!小隊長みたいにゃ!」

「そこは英雄って言ってほしかったなあ。」

「文句なしに英雄と呼ばれるように、精進するにゃ。」


君のポケットでフォナーが振動する。淡い光が君とウィズを優しく包み込む。

「おれたち、次に会う時には立派な英雄になってるからなー!」

君はにこりと微笑み、英雄らしさを意識してビシッとカードを構えて見せた。


 ***


「ほんとに行っちゃったのね……。」


レグルはその場に横になった。

シロと並ぶようにして、だらしなくごろごろとしている。


「……英雄らしくなるんじゃないの?」

「英雄にだって、休みくらいは必要だろ。」

「まあ、一理あるね。真の平和というのは、一朝一タでどうなるものじゃない。戦いは長く続くんだ。」

「なあ、平和になったらなにがしたい?」

魔物は出ないし、アヴリオみたいなやべえ奴もこないし、カリュプスとも和解して共生してる。もう戦わなくていい。」


「僕は、英雄博物館を開きたいな。キワムたちの活躍……そして、その歴史の末席には、僕の勇姿も!」

「あたしは……ちょっと困るわ。魔物を殺せないのはすごく寂しいもの。テーラ専属の飴舐めさせ機じやあ、さすがに暇よね。」

「そんなに飴舐められない……。」

「おれは、世界一うまい果物が取れる農園を作りたいなあ。」

「あら、農作業なんてやったこともないくせに。」」

「農作業は、誰かに任せる。おれは果物を食べる。おいしくなるよう、祈るかなんかする。」

『テーラは、やりたいこと、見つかりましたかな?』

テーラは首を振った。

『実はテーラに、黙っていたことかありましてな。やりたいこと探しのー助になるやもしれません。

テーラが消去していた蓄積思念、あれは自分の中に一時保存されていまして。記憶のゴミ箱といったところですかな。

ゴミだしは、しておりません。捨てるに惜しい思い出ばかりでしたから。ゴミ箱というより、宝箱です。』

「……ちょうだい。」


ロイドとテーラが光に包まれる。

その瞬間、テーラの中にいくつもの鮮やかな思い出が浮かんでいく。テーラはそのひとつひとつをいとおしく思う。

そして、この思い出に負けないくらい鮮やかなことがこの先に待っていると思うと、自然と笑みがこぼれる。


「やりたいことは、これから考える。もし見つからなかったら、レグルの農園を手伝ってもいい。

タイシの博物館も手伝うし、飴舐めさせ機になったファルサを邪険にもしない。」


「これは、テーラの取り合いになりそうね!」

「その笑顔、英雄博物館の受付をお願いしたい!」

「いいや、テーラはおれと一緒にうまい果物を作るんだよ。テーラはうまいものが大好きだからな。」


勝手だけど温かな仲間たちに囲まれて、テーラはくすぐったそうにはにかんだ。



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