【黒ウィズ】幻魔特区スザク Story3
story3 上級 いびつなる希望
アッカから聞くことが出来たのは。ロッドを狙う「収穫者」という者達の存在だった。
彼らは世界中にあるロッドをすべて破壊することを目的としているらしく……。
その最初の標的として選ばれたのが、キワムたちの住む「第333号ロッド」だった、ということらしい。
t「……それで、君が逃げてきた理由を聞かせてくれるか?」
「ロッドを壊すのってすっごく大変なの。ロッカにもすごく無理させなきゃいけないし。
それに、スザク大ロッドを折るのはもっと大変だと思うからさ。」
『キシシシ……。』
アッカの言葉に、そのガーディアンであるロッカも笑って同意を示す。
「だからね、逃げて来ちゃった。」
k「ど、どういうこと……?なんか微妙に物騒な単語出てきたけどさ……。」
「うん。私、スザク大ロッドを壊すために作られたんだけど……それが嫌で逃げて来ちゃった。」
t「待て、スザク大ロッドを壊すだと?お前一体……!」
アッカの言葉に、皆がざわつく。なぜなら……。
それは、今から君たちが「ロッドが破壊された」という報告をするために。向かう場所でもあったからだ。
そして、その気付きとほぼ同時に列車が急激に速度を増す。
k「な、なんだよ急に……!?いったい何が……。」
y「……嫌な予感が当たったみたいね。廊下にも車内にも、敵がわんさかいるわ。
s『ったくもぉぉ……なんなのよ今日は!』
悪態をつくシキの頭に、トキオはそっと手を置き撫でる。
t「お前とノイズはアッカを頼む。ここはお前たちに任せたぞ。」
彼はそう言うと、君に向き直り鋭い視線を向けてくる。
「……おい、黒猫の。お前は俺と、屋根伝いに先頭車両へ行くぞ。」
「ま、待ってほしいにゃ!こんなスピードの出てる場所で、しかも外で戦うだなんて……。」
慌てるウィズだが、トキオはそれを全く意に介していない様子だ。
「時間がない、このまま突き進めば、事故は避けられん、俺とお前で止めるんだ。
……いいな。」
鋭い彼の視線に、君は一瞬迷うが、すぐに力強くうなずく。
「行くぞ、グレイ。」
続けて、トキオは腕に巻き付く骨の蛇に向かって話しかけた。
返事の代わりに、グレイはカラカラと音を立てる。
「……我が心から這い出でよ、月白の蛇骨!“エクスアルバ”!」
声に合わせ、彼の腕に巻き付いていた骨の蛇が紫色の炎に包まれる。
次の瞬間には、6つ耳の巨大な蛇骨のガーディアンヘと姿を変えていた。
「頬むぞグレイ。さあ行くぞ、黒猫の!」
体にぶちあたる風を引き裂きなから、君とトキオは走った。
***
***
「もうじき先頭車両だ、大丈夫か、黒描の!」
君は風に逆らいながら、なんとか前に進みつつトキオに頷く。
懐から顔を出したウィズも、強烈な向かい風に顔をしかめていた。
「でも、こんな大きなものどうやって止めるにゃ!?」
「動力を止めれば列車は止まる!そのためには……!」
と、言葉を止めたトキオの視線の先に、黒い影が3つ。
キウムたちの故郷のロッドを襲った、ヴィルゴという機械に身を包んだ男。そして、眼鏡をかけた長髪の女性。
さらにその背後にも、得体の知れない男がひとり居た。
「……貴様達が『収穫者』とやらか。列車を止めさせてもらうぞ。」
「そうはいきません。あなた方にはここで「終わって」頂きます。
ヴィルゴ、これを。」
言いながら、長髪の女性は、ヴィルゴに何かコインのようなものを手渡した。
「フフ……これで私もガーディアンが使えるということですな、トキモリ女史。」
「……さあ、それはどうかしら。」
トキモリと呼ばれた女性は、そう言うと静かにヴィルゴから離れていき、そして――。
「なっ……!と、飛び降りただと!?」
そう、トキモリは飛び降りたのだ。凄まじい速度で走る列車から。
だが、驚く君とトキオに対し、ヴィルゴは嫌に冷静につぶやく。
「……貴様たちには煮え湯を飲まされたからな。たっぷりお返しをさせていただこう!」
瞬間、黒いオーラが彼の持つコインからあふれた。
そのオーラをひと目見た瞬間、君の背筋に一瞬冷たいものが走る。
あれは、良くないものだ。君の魔法使いとしての直感がそう告げている。
しかし、それをトキオたちに告げようとした時。ふと背後から誰かの声が聞こえてきた。
君が振り返ると、そこには……!
「お、おーーい!大丈夫かー!?」
「き、キワム、どうしてここに……!?」
君は強風に腰が引けているキワムを、なんとか助け起こす。
彼は服の内側にクロを隠していたようで、クロは立ち上がったキワムの懐からびょこんと顔を出した。
「お前たちが心配で……あっちはどうにか片付いたから。」
「おい、おしゃべりは終わりだ。……奴の様子が変だぞ。」
トキオの声にハッと君は振り返る。その先では、何故かヴィルゴが苦しみに悶えていた。
「……く、あ……は、話が進うではないか……こんな……!
あああ……食われる……!!私が、私が……!」
ヴィルゴの悲痛な叫びと共に、黒いオーラか爆発的にコインから溢れ出る!
そして――!
『ロォォォオオォ……!!』
人外のモノに成り果てたヴィルゴが、そこにいた。
「あのコインが原因なのか?一体なにが……。」
「考えるのは後にゃ。……今は、降りかかる火の粉を払うことだけを考えるにゃ!」
唸りながら、ヴィルゴは君たちへと敵意に満ちた視線を向けてくる。
『ロォォォ……!!』
「来るにゃ!」
***
BOSS ヴィルゴ
***
『グオオ……!!』
「ぐあっ!?」
「トキオさん!」
瀕死のヴィルゴの一撃は、トキオをガーディアンごと後部車両へと吹き飛ばした。
なんとかトキオは無事のようだが、これ以上の戦闘は恐らく望めないだろう。
そして君も同様、慣れない場所での戦いで、大きく体力を削られていた。
『グオオォ……オォ……!』
もう一撃が、足りない……!
「スミオたちに、助けを呼びにいくかにゃ……?」
ウィズの言葉に、君は首を横に振る。目的地である大ロッドは既に目前に迫っている。
恐らくスミオやヤチヨを呼びに行く時間は無いだろう。
それに、今ここを離れれば、キワムとクロを危険に晒してしまう。
君はキワムをかばうように、咄嗟にヴィルゴの前に立ちはだかった。
「ご、ごめん、俺がこんな所まで来なきゃ……!」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないにゃ!……とにかく、考えるにゃ。
どうすれば、コイツと列車をとめられるか……!」
だが、そうしている間にも、ヴィルゴは君たちへと一歩一歩近づいてくる……!
諦めるしか無いのか……と、君は膝を折りそうになる。
その時。ふと、君の背中からキワムの言葉が聞こえてきた。
「俺が、戦えれば………
俺に、戦う力があったら……みんなみたいに、みんなみたいに……!!」
恨みや憎しみとも取れる、自分の無力を嘆くキワムの言葉。
そして、それと同時だった。
君の背後に、寒気を伴った強烈な殺気が大きく立ち上がったのは。
w「な……!?」
『グオー―ガッ……!?』
その殺気の塊は、背後から君の肩越しにヴィルゴを一瞬で「噛みちぎる」と――。
走る列車から、勢い良くそれを吐き捨てた。
死戦は予期せぬ形で終わり、あとには列車の走る音だけが残される……。
振り返れば、そこにはクロを抱きかかえたキワムの姿。
w「……今のは……?」
k「な、何が……起きたんだ……?」
t「……立て、黒猫の。当座の脅威は去った。列車を止めるぞ。」
君は唖然としているキワムを置いて、先頭車両へと進むトキオを追いかける。
「待つにゃトキオ、今のは一体……!?」
「わからん。だが――。
『アレ』はヴィルゴが怪物になった時の『黒いオーラ』と……よく似ていた気がする。」
君が背中で感じた、強烈な殺気。そして、『収穫者』という者達の影……。
様々な謎を抱えたまま、君たちは目的地へと到着する。
スザク大ロッドへ……。
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