【黒ウィズ】幻魔特区スザクⅢ ~ ソムニウムの輝き~ プロローグ
2016/05/31 |
プロローグ
「では、次の依頼の件だが――」
君は、魔道士ギルドでいつものように、バロンから依頼の説明を受けるところだった。
……だが。
『カムラナ技研工業より特殊認証コートを受信しました。ご返答をお願い致します。
カムラナ技研工業より特殊認証コートを受信しました。ご返答を……。』
「にゃにゃ!?」
懐に忍ばせておいた機械――フォナーが、音声を発信し始めた。
「うおっ、なんだ? それはあのときの箱……この箱、しゃべるのか!?」
ちょっと失礼、と言って、君は部屋を辞す。
「あ、おい!」
そして誰もいない手近な部屋に駆け込み、フォナーの画面を見た。
==============
〈10‐XX スザクロッド 10‐XX〉
〈承諾〉〈拒否〉
==============
君はためらいもなく、〈承諾〉の文字に触れた――
***
目を開くと、見覚えのある光景が広がっていた。
以前にも訪れた、スザクロッドの地下施設だ。
ただ、そのなかに見慣れないものがある。
「あのロッドみたいなのはなんにゃ?」
「あれは、移送用のロッドです。よく来てくださいましたね、お二方。」
「おひさし、おひさし!」
微笑をたたえたアサギと嬉しそうなミュールが、真っ先に君に気づいて、声をかけてきた。
自分が呼ばれたということは――
「アッカを助ける準備ができたってこと。
俺と兄ちゃんが組み立てた、あの移送用ロッドでな!」
『こーのうすらとんかち。アンタたちだけでやったわけじゃないでしょ。』
「そうそう。みんなが手伝ってくれたおかげよ、スミオ。」
「わかってるって!でも、いちばんがんばったのは、やっぱ俺と兄ちゃんだろ?」
君は改めて、移送用ロッドを観察してみる。
何十人という人がロッドに群がり、何やら機械の操作や接合を行っていた。
「にゃにゃ?あそこにいる人たちは、もしかして……。」
「人間さ。スザク大ロッドのな。」
にやりと笑うトキオに、君は驚きの表情を浮かべる。
キワムたちガーディアンは、これまで、ほとんど人間と関わりを持たずにいたはずだ。
『ギシシ……驚くと思った。詳しいことは、キワムに聞いてよ。』
いたずらげに笑って、アッカの姿をしたロッカが一方を指差す。
そこには――
「魔法使い! 来てくれたんだな!」
「ワンワン! クゥーン、ワウッ、ハッハッハッハッ……!」
笑顔で駆け寄ってくるキワムにクロ、そして、見覚えのない青年がいた。
「君が魔法使いか。私はアーノルド。スザク大ロッドの評議会の者だ。」
「大ロッドの、偉い人にゃ!?」
「それほど上の立場じゃない。せいぜい、移送用ロッド完成のために人員を割く許可を出せる程度だ。」
「じゅぶん偉いだろ、それ。」
キワムは屈託なく笑っている。
「キワムが提案したんだよ。収穫者とやり合うなら、人間と協力するべきだ、ってな。」
「正直、無理だって思ったけど。なんでもやってみるもんね。」
いつの間にかやってきていたアトヤとコベニが、朗らかに笑って言った。
「事情は聞いている。収穫者の狙いはスザク大ロッドの破壊――人類にとって看過すべからざる問題だ。
我々の力だけでは対抗できない。キワムたちが全力で戦えるよう、準備を整えるのが、私にできるすべてだ。」
なら――と君が目線を向けると、キワムは、しっかりとうなずいた。
「ああ。移送用ロッドが完成したら、月に乗り込んで、アッカを助け出す。」
「いっしょに戦ってくれ――魔法使い!」
目次
幻魔特区スザク | |
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幻魔特区スザクⅡ 外伝 | 06/30 |
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