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CHUNITHM【チュウニズム】攻略wiki

ヴァン

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【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN )】【マップ一覧( NEW / SUN )】


Illustrator:夢ノ内


名前ヴァン・マベリック
年齢5歳
職業腕利きのパイロット

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1コンボエクステンド【SUN】×5
5×1
10×5
15×1
25限界突破の証×1
50真・限界突破の証×1
100絆・限界突破の証×1

  • コンボエクステンド【SUN】 [COMBO]
  • 一定コンボごとにボーナスがあるスキル。
  • コンボエクステンド【NEW】と比較すると、同じGRADEでもこちらの方がボーナス量が多い。
  • SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
効果
100コンボごとにボーナス +????
GRADEボーナス
1+3000
2+3005
3+3010
101+3500
▲NEW PLUS引継ぎ上限
推定データ
n+2995
+(n x 5)
シード+1+5
シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係
開始時期所有キャラ数最大GRADEボーナス
SUN561+3300
~NEW+0161+3800
2022/10/13時点
GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
  • ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
  • 水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。
GRADE5本6本7本8本9本10本11本
16121824324050
146121824324049
176121824323949
216121824313949
266121824313948
286121823313948
336121823313848
376121723313848
406121723313847
416121723303847
506121723303747
546121723303746
566111722303746
646111722293746
686111722293645
766111622293645
836111622293644
876111621283544
996111621283543
1076111621283443
1136111621273443
1166111621273442
1215101520273442
1295101520273342
1335101520273341
1405101520263341
1515101520263240
1595101519263240
1695101519253240
1715101519253239
1735101419253239
1765101419253139
1915101419253138
筐体内で入手できる所有キャラ
  • 登場時に入手期間が指定されていないマップで入手できるキャラ。
CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
Verマップエリア
(マス数)
累計*1
(短縮)
キャラクター
SUNep.Ⅰ3
(105マス)
255マス
(-20マス)
ヴァン
期間限定で入手できる所有キャラ
  • カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。

※1:同イベント進行度2までの全てのエリアをクリアする必要がある。

▲ ページトップ

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

STORY

EPISODE1 傭兵部隊エアフォックス「試作機のパイロット? 面白そうな話じゃないか」

 戦闘機乗りによる傭兵部隊『エアフォックス』。

 空で戦う者の中でこの名前を知らない者はいない。

 味方となり勝利へ導き、時に敵となり恐怖を与える。


 そして、部隊を率いる隊長『ヴァン・マベリック』。

 死神ヴァン、ストーム・フォックス、空戦の風雲児、彼を指す異名は数多くあるが、その中でも連中が必ずこう口にした――


 『空でヴァン・マベリックに勝てるやつはいない』


 ……だが、それはもう昔の話。

 今の俺は『ただのヴァン・マベリック』なんだ。


 「おいおい、それはなんの冗談だよ」


 戦場を離れて、故郷のイバラキに戻ってきていた俺のもとに現れたのはサラリーマン風の妙な男だった。


 「いえいえ、冗談などではありませんよ。ぜひとも、力を貸してはいただけないでしょうか」

 「俺みたいな一般人になにをさせようっていうんだ」

 「なにを仰るのですか。あなたはあの有名な『エアフォックス』の隊長ではありませんか」

 「……元だ」

 「とにかく、こちらを御覧ください」


 男はそう言いながら、俺のデスクの上に次々と資料を並べ始めた。


 「お、おい、これは……」


 説明を受けるまでもなく、ひと目見ただけでわかった。

 こいつは戦闘機の設計図だ。


 「ナカシマ重工で現在、制作中の飛行機なのですが。ああ、勘違いなさらないでください、こちらは民間機、あくまで娯楽用なのですから」

 「ふん、俺を騙せるとでも思ってるのか。娯楽用にこんなジェットエンジンを積む必要はない。こいつは戦闘機だろ」

 「……ですから、勘違いなさらないでくださいとお伝えしたのですよ」

 「どういうことだ」

 「機体のパフォーマンスが高ければ、より良いエンターテイメントをお客様に提供できるのです」


 そういうことになってるわけか、金持ちの考えることはわからないな。


 「そして、この機体の他にももう一台用意されてあります」

 「ほう、これだけの機体を二機か。それはまた太っ腹だな」

 「ですが、ナカシマ様の財力も無限ではありません。なので、今回はコンペを行うことになったのです」

 「……なるほど、そのための俺か」

 「ご理解が早くて助かります。ナカシマ様はどちらがより優れた機体かを決め、そちらを量産する予定なのですよ」

 「どちらにしろ、俺には関係ない。さっさと帰りな、今は空へ行く気分じゃないんでね」

 「おや、それは残念です。トネール様は了承いただけたのですが」


 男が口にした名前に俺は思わず、相手の胸倉を掴んで声を荒らげてしまう。


 「おい! 今、トネールって言ったか! あの『雷撃の貴公子』の!?」

 「え、ええ……」

 「生きてやがったのか、あいつ……」


 その名前を忘れるわけがない。

 あいつは……トネールは俺の戦友だったんだから。

EPISODE2 棒とご対面か。どんなかわいこちゃんが待っているんだろうな」

 俺達にとって、いつもと変わらない一日が始まる。

 戦場での一日が。


 「ヴァン、なにやってるの、早く準備してー!」

 「ホントだぜ、隊長なんだからしっかりしてくれよ」


 俺のことを急かすエルーカと、それを笑いながらファルケが見ている。


 「はぁ、貴方がしっかりすればいいだけの話なんですけどね」

 「どいつもこいつも、うるさい連中だ……」


 呆れたようにため息をつくラヴィ。そして――


 「ふん、貴様はいつもそうだな。実力と人格が伴っていないいい例だ」

 「おいおい、副隊長なら少しは庇えよ、トネール」

 「断る」


 堅苦しくて、クソ真面目な副隊長、トネール。


 「まったく、今日も平和だな、うちの部隊は――」

 「司令部より連絡。出撃準備が整った部隊から随時出撃を」

 「来たか」


 さっきまでの空気とは打って変わって、仲間の空気と顔つきが引き締まる。


 「よし! 行くぞ、エアフォックス! 空が俺たちを待ってる!」


 俺は愛機『ライオット』に触れる。

 だが、その機体からは感じるはずの鉄の冷たさはなかった。


 「――ああ、そういうことか。これは」


 もう戻ってくることのない、遠い過去の夢だ。


 「マベリックさん、起きてください」


 男の声で俺は目覚める。

 ああ、そういえば、車で移動中だったな。


 「着いたのか?」

 「ええ、こちらのドックに貴方が乗る機体がありますよ」


 俺はナカシマ重工と契約を結ぶことにした。

 理由は最新鋭の機体に多少なりとも興味があったことと、もう一つは相手がトネールだからだ。


 「もう一度確認するが、本当にトネール本人なのか」

 「ええ、もちろんです」

 「……そうか」

 「ですが、最初にお伝えした通り、相手の方と直接会うのはお控えください。お互いの機体の情報が相手に漏れてしまうと……」

 「言われなくてもわかってる。あいつとやり合うのは空って決めてるからな」


 聞きたいことがあるんだ。

 なんでお前が生きてるのか、ってな。


 「では、機体の説明を始めさせていただきますね」

 「ああ、頼むよ」


 俺が乗る機体について、男の話をまとめるとこうだ。

 こいつの名は『クサナギ』。

 でもって、俺の新しい相棒。つまりは俺が乗るかわいこちゃんだ。

 翼端が付け根部分よりも前に位置した前進翼の機体で白く尖ったデザインになっている。

 相手側の機体に勝つためだけに調整されたらしく、どうやらかなりのジャジャ馬になってるとのことだ。

 他のパイロットが試しに乗ったらしいが、操縦もろくにできず、本当にただ飛んだだけらしい。

 常人ではまずコントロールできないほどピーキーなセッティングがされている。

 最新の機体だけあって、スペックは異常に高い。

 なんだって、こんなものを作ろうと思ったのか。


 「……で? それくらいやらないと勝てないトネールの機体ってのはなんだ?」

 「機体名称は『ウミネコ』。あれは……現在の技術の粋を集めた機体です」

 「どういうことだ?」

 「パイロットの脳波を測定して、操縦桿(かん)を握らずに機体を自在に操ることができるのです」

 「おいおい、なんだそれは。それじゃ、パイロットは座ってるだけじゃないか」

 「ですが、操縦するには技術ではなく、経験が生かされます。そのため、機体を操れる人は限られているのですよ」

 「フン、それならアイツは適役だろうな」


 しかし、アイツはなにを考えてるんだ。

 戦闘機乗りが舵を握らないなんて、それじゃあ機体の流れがわからないだろうに。

 だが、これは――


 「面白いじゃないか」

 「なにがでしょう?」

 「トネールのセンスと俺の操縦技術。どっちが上か競える機会なんて、なかなかあることじゃないからな」


 いいぜ、戦おうじゃないか、トネール。

 今度は味方としてじゃなく、敵としてな。

EPISODE3 コンペ開始!「コンペだろうがなんだろうが、この空で俺が負けるわけないのさ」

 今日から機体のコンペが始まる。

 つまり、やっとアイツの顔を拝めるということだ。


 「トネール……」

 「貴様が遅れずに来るとは、珍しいこともあったものだ」


 間違いない、俺の目の前にいるのはトネールだ。

 久しぶりに会ったが、あの時となにも変わっていない。

 でもなぜだ、こいつは三年前の戦闘中に消息不明になったはず。


 「……」

 「どうした。俺が幽霊にでも見えるのか?」

 「おいおい、ふたりとも何を喋っているのかね。早く機体に乗ってくれないかな」


 俺とトネールの間に割って入ってきた小太りの男、こいつが今回のスポンサー、ナカシマだ。

 見るからに不機嫌そうなのは、ただでさえ機体の開発が遅れてるからだろうな。


 「ああ、わかってる」

 「高い金で雇ってるんだ、結果を残してくれよ」


 とりあえず、気持ちを切り替えて俺はクサナギに乗り込む。

 そこで俺は改めて、トネールの乗るウミネコを見る。

 見た目は普通の戦闘機にしか見えない。

 だが、2つほど違う点があった。

 ひとつ目は、異常にエンジン部分が大きいことで、あそこまでのものを付ける必要があるのかという点。

 もう一つはあのコックピットだ。

 トネールも同じように乗り込んでいるが、体中にコードを付けられてコックピットに横たわっている姿はまるで患者かミイラだな。


 「では、最初は上昇能力の検証から!」


 高高度の飛行とタイムを競うらしいが、こんな勝負はわかりきっている。


 「まずはウミネコからタイムを測る!」


 トネール、見せてもらうぞ、今のお前の実力を。

 合図と共にトネールが乗るウミネコがみるみるうちに空へと上がっていく。


 「すごいな、あの機体は」


 俺のライオットを遥かに凌駕する速度。

 空から離れて数年しか経たないが、技術の進歩ってやつは本当、馬鹿にできない。


 「次はクサナギ、ヴァン発進を!」

 「了解!」


 俺は操縦桿を強く握りしめ、システムを起動させる。

 『ENGAGE』と画面に表示されたあと、機器が起動し始める。

 準備は整った、俺はクサナギを発進させた。


 「……ッ! ハハ」


 身体に掛かるGが懐かしい。

 一気に加速させ、機体は空へ空へと上昇していく。


 「こいつは、早すぎる!」


 クサナギはあっという間に空の更に上の空まで飛ぶ。


 「空力限界高度までたったの48秒か。なかなかやるじゃないか、かわいこちゃん!」

 『おい、どこまで行ってるんだ!』

 「悪いな、こいつが止まってくれなくてな」


 クサナギの新型エンジンの性能は想像以上だ。

 ついつい、試してみたくなってしまった。


 「必殺、白鳥飛び……なんてな」

 『いつまでそこにいるつもりだ。早く降りてこい、次のコンペが始まる時間だぞ』

 「おいおい、タイムで負けたからってひがむな。すぐに降りていってやるよ」

 『まったく、昔から口だけは……』

 「まあ、これでも見て落ち着けよ」


 そう言いながら、飛行機雲でトネールに見えるよう大きく『ノロマ』と書いてやった。


 『貴様ぁ!』

 「おお、やるのか!」

 『ふたりとも、なにをしている! 今はコンペ中だ、集中したらどうだ!』

 「チッ……」


 次に競うのは、いかに指定されたルートを正確、かつ早く飛べるかというものだった。

 ルートの通りに飛ぶだけだが、どうもこういう決められた道を飛ぶのは苦手だ。


 「貴様は俺には勝てんよ」

 「なんだと!?」


 ……と言ってみたものの結果は明らかだ。

 アイツらしい、正確で無駄のない動き。

 それを可能としているウミネコの操縦方法はあまりにも噛み合っていた。


 「初日は1勝1敗か。だがまあ、始まったばかりだからこんなもんだな」

 「決められたことが守れない貴様をコンペのパイロットに選ぶとはオーナーは見る目がないらしい」

 「脳みそガチガチで堅物なお前の脳波を測定するなんて、機体が気の毒でならないよ」

 「なに!?」

 『なにをやっているんだ、あのふたりは……』


 通信機から聞こえてくる呆れ声も俺たちには届かない。

 その後、どっちが多く背後を取れるか追いかけっこを始めた結果、陸に戻った途端にこっぴどく叱られてしまうのだった。

EPISODE4 相棒「俺にとっての相棒はかわいこちゃんと、もうひとり……」

 目の前に広がっているのは黒と赤。

 戦場から上がった黒い煙と、炎で赤く燃えている。


 「クソっ! ここは地獄か! おい、返事をしろ! ファルケ、エルーカ、ラヴィ!」


 共に戦っていた仲間たちから通信は返ってこない。

 どこかで生きているはず、そう思いながら俺はトネールと共に戦い続ける。


 「ヴァン、どうするつもりだ。これでは我々も遅かれ早かれああなるぞ!」

 「ここで逃げるわけにはいかない。ライオットはまだ飛べる!」


 こう話している間にも敵の戦闘機が次々と俺たちを襲撃してくる。

 今はまだ返り討ちにできているが、これがどこまで保つのかは分からない。

 トネールだけでも逃がすべきか――


 「うおおおっ!?」

 「トネール! うわっ!?」


 トネールの叫びに気を取られ、敵の攻撃をもろに受けてしまった。

 当たりどころが悪かったのか、ライオットの操縦が思うようにいかない。


 「トネール、俺はもう無理だ! お前だけでも撤退しろ!」

 「……」

 「おい、トネール!」


 通信機にいくら呼びかけても、トネールからの返事はない。

 慌てて辺りを見回しても、アイツの機体はどこにもなかった。


 「クソおおおおおっ!」


 これが傭兵部隊エアフォックス、最後の出撃だった。


 ――コンペ2日目。

 目覚めは最悪としか言いようがない。

 昔の夢を見るなんて、これもすべてトネールと会ったせいだ。

 あのあと、不時着した俺だけが生き残り、他の仲間たちは消息不明という扱いになった。

 戦場での消息不明、それは死亡扱いと同じだ。

 俺はそのあとすぐに故郷へと戻った。

 たったひとりの傭兵部隊なんて聞いたことない。

 かといって、仲間を集めようとも思わなかった。

 だから俺は空を離れたってのに。


 「……またこうして戻ってきちまうとはな」


 かといって、空で戦いたいわけではない。

 素直に言えば、あの空を忘れられなかった。

 もう一度、思い切り飛んでみたかっただけだ。


 「疲れた顔をしているな。それで本来の性能が出せるのか」

 「……」

 「おいおい、会わないうちにおはようの挨拶もできなくなったのか、お前は」

 「ふん……」


 俺の返しで明らかに不機嫌になったトネールが離れていってしまう。

 しかし、ついつい昔のノリで突っかかってしまうが、アイツはあそこまで喧嘩腰だったか?

 なにより、俺に対して恨みがあるような節もある。


 「はぁ、早く終わらせて話がしたいもんだ」


 俺とトネールはアブクマ谷を沿うように飛んでいる。

 今日のコンペは低空飛行を行うことになっている。

 一定高度以上は上げてはいけないというものだが、そんなものは戦場で何百回とやってきた。


 「こんなのがコンペになるのかね。普通に飛んでるだけじゃ、つまらないな」


 なによりも地上スレスレを飛んでいるせいか、ずっと『CAUTION PULL UP』の文字が画面に表示されていて鬱陶しい。


 「口を慎め、貴様は昔から口数が多い」

 「……そういうお前はやたらと攻撃的になったよな。いったいなにがあった」

 「白々しい男だ。貴様が俺になにをしたのか覚えて――」


 次の瞬間、トネールの声をかき消すようにしてアラート音と『WARNING』の赤い文字がモニターに映し出された。


 「ロックオン!? どこからだ!」

 「トネール、後ろだ!」


 いつの間にか俺たちを追ってくるように何機かの機体が現れていた。


 「おいおい、どこのバカだ! ここは戦争地域でもなんでもないぞ!」

 「待て、あの機体は……まさかドローンか!」

 「ドローンだと!?」

 『ふたりとも聞こえているかな』

 「この声、ナカシマか! こいつはいったい、どういうお遊びだ!」

 『ただ飛ぶだけではつまらないだろう。だから、条件を追加したんだよ』

 「なに!?」

 『条件はわが社が作ったドローン機の追撃を振り切ること。君たちならば余裕だろう?』

 「ふざけやがって!」

 『ふん、臆病風に吹かれたか。振り切る自信がなければ、ここで降りるといい』

 「はっ! この俺が逃げるわけないだろ。いいぜ、振り切ってやるよ!」


 俺の言葉が合図になったのか、ドローン機は一斉に俺たちに向かってきた。

 だが、所詮はドローンだ。空を愛してる俺たちについてこられるわけがない!


 「……の、はずだったんだがなぁ」

 「貴様、ボヤいてる場合か」


 俺の思ってた以上に、ドローン機とやらはねちっこい奴のようだ。


 「トネール、どうする。このまま背後をチラチラされるのは、気分が悪いよなあ?」

 「お前と同意見なのは気に食わないが……同感だ。しかし、手があるのか?」

 「決まってるだろ。アレだよアレ。覚えてるか? 弾切れになって俺たちが逃げてる時にやったこと!」

 「待て、アレは!」

 「コンペ中に起こった事故だ。サプライズには、サプライズだろ!」

 「まったく……貴様は本当に変わらないな。この先にいい場所がある、そこまで持ちこたえろ」

 「誰に向かって言ってんだよ!」


 俺たちはあえて、ドローン機が追いつきやすいよう速度を落として距離を縮める。

 相手は制御されたドローン、接触は避けたまま後ろをピッタリとくっついてきていた。


 「見えたぞ――今だ!」


 トネールの合図に合わせて、俺たちは機体をギリギリのところで急上昇。

 俺たちの後ろをぴったりくっついて来ていたドローン機は岸壁に激突し、爆発と共に燃え上がった。


 「はっ、作戦通りだな。あとは目標地点まで飛んでいけば――」

 『おい、なにをやっている!』


 通信機から聞こえてきたのは、コンペの監督をしている男からだった。


 「ドローン機のことか? それなら事故だ、俺たちのせいじゃ――」

 『違う! お前、自分の高度を確認しろ!』

 「……は?」


 俺は自分の高度を確認すると、今回のコンペで決められていた高度を遥かに超えてしまっていた。


 「あっ!?」

 『今回のコンペはトネール君の勝ちだな。まったく、なにをしているんだ……』


 言われて確認してみると、トネールの機体は俺のずっと下に見える。


 「トネール! お前、自分だけ高度を抑えたな!」

 「俺に文句を言ってどうなる。ミスをしたのは貴様だろう」

 「くっ……」


 言い返す言葉がなかった。

 だが、負けて悔しいという思いと同じくらい、あいつと戦えたことが嬉しいとも思ってしまう。


 「それにしても……俺はいったい、お前になにをしたんだ?」


 アイツが言いかけた言葉が、いつまでも頭の中で反芻していた。

EPISODE5 空中サーカス「魅せてやらないとな、ヴァン・マベリックの空戦技術を!」

 コンペ三日目が来た。

 本来のコンペなら加速度、つまり最高速になるまでを競い合うはずだったのだが。


 「聞いてないぞ、なんだそのコンペ内容は! それにどうしてクサナギに武器が付けられてるんだ!」

 「ですから説明をした通り、自動追尾のペイント弾を回避していただくだけですよ。その中で余裕があれば、相手を撃ち落として――」

 「そうじゃない、これは民間機の開発だったはず。昨日のコンペといい、これはまるで」

 「戦闘機のコンペだな」


 俺に合わせるようにトネールが入ってくる。

 ただでさえ、内容に違和感はあったが、今回の件でそれが決定的になった。

 こいつらが作りたいのは戦闘機だ。


 「何度も言いますが、これは民間機。娯楽を楽しむために、必要な項目なのですよ」

 「お前たち……」

 「俺は問題ない。貴様は抜けるというのなら勝手に辞めてしまえ」

 「なんだと!」

 「そもそも、俺が勝ち越しているんだ。貴様がいようがいまいが、結果は同じ」

 「言わせておけば! いいぜ、受けてやるよ! お前に負けるわけないからな!」


 このコンペでなにを企んでるかなんて、俺には知ったことじゃない。

 大事なのは、トネールに勝つこと。

 そして、こいつになにがあったのかを聞き出す。


 「まずトネールのウミネコから。準備ができ次第、始める!」


 準備が整い、ついにウミネコが空へ向かう。


 「ペイント弾だが、当たれば当然衝撃がある。機体制御を怠るなよ! では、始め!」


 スタートの合図が上がると、ウミネコへ向けてペイント弾が撃たれる。

 空と地上に配備されたドローン機から狙われるがその全てをウミネコは回避していく。


 「なんだ、あの動きは。まるで曲芸だな」


 ターンや宙返り、急停止など、普通ならありえない動きを次々と披露する。

 あの動きは確かに人の手では無理だ。

 ウミネコだから、いや、トネールだからこそできる芸当なのかもしれない。

 ただそれ以上に、アイツはアイツなりに口ではああ言いながらも、このコンペに納得がいってないんだろう。

 その証拠に、ウミネコに搭載された武器を一度も使用していない。

 ナカシマはそのデータも欲しがっていただろうにそれを与えないでいるんだからな。


 「被弾数0。これは想像以上の結果ですね!」


 トネールが叩き出した結果に、ウミネコ側の開発者たちは声を上げて喜んでいる。

 一発や二発の被弾は想定していたのだろう。

 まさか、それを0で終わらせるとは。


 「さてと、次は俺の番か。アイツができたんだ、俺もできるさ」


 クサナギに乗り込んで、定位置へ向かおうとするが途中でチラッとトネールの姿が見える。

 その顔は満足げで、俺を挑発するように笑ってみせやがった。

 いいぜ、その喧嘩、買ってやるよ。


 「では、クサナギ。始めますよ!」

 「ああ、こい!」


 トネールの時と同様、四方八方から弾が飛んできてそれが正確にクサナギを追尾してきた。

 正直、俺にはウミネコのような動きはできないが、このかわいこちゃんなら避け方はいくらでもある。

 ペイント弾は思っていたよりも速いが、避けられない速度ではない。

 俺はペイント弾が当たるか当たらないかという、紙一重のところで避ける。

 これならいける――そう思っていたが、ペイント弾は

さらに増していき、逃げ場が無くなっていく。


 「なに弱気になってるんだ! 勝手に増えてくなら、減らしゃいい!」


 俺はあえてペイント弾へと向かっていき、なんとか窮地を脱した。

 だが、その刹那。

 俺の視界いっぱいにペイント弾が迫っていた。


 「……クソ」


 ――コンペ終了後。

 俺はペンキまみれになったクサナギの前にたたずんでいた。

 今回も俺はトネールに破れ、これで通算3敗目。


 「俺の腕が足りなかった。汚して悪かったな、かわいこちゃん」


 クサナギを前に俺はため息をついてしまう。

 コンペは終わりに近い、もう次はないんだと。


 「帰るか……」

 「待て」


 帰ろうとした時、俺を呼び止めたのは意外にもトネールだった。


 「なんだ、笑いに来たのか」

 「……ナカシマに頼まれたんだ。お前を連れてこい、とな」

 「ナカシマが?」

EPISODE6 勝敗の行方「こんな結果、納得行くわけがない。俺たちの戦いは終わっちゃいないんだよ!

 「どういうことか、ちゃんと説明しろ!」


 俺は目の前の机を思い切り殴ってしまう。

 手の痛みなんてどうでもいい、それ以上に今の状況が許せないでいた。


 「何度も言わせないでほしいものだな。このコンペは中止だと言ったのだ」

 「私も納得が行きません。これだけの結果を残しているのですよ!」


 同じように話を聞いていたトネールも俺と同じくらい声を荒らげている。

 ナカシマに呼び出されたと思ったら、急にこんな話を聞かされたんだ、許せるわけがない。


 「実はね、もう採用される機体が決まったんだよ。だから、続けてもコストが掛かるだけなんだ」

 「おい、待て! 確かに俺は負けてるが、まだ巻き返せる!」

 「私も納得がいかない。最後まで戦わずに勝利を掴むなど!」

 「バカなのか、君たちは。私が採用したのはクサナギでも、ウミネコでもないよ」

 「……は?」


 ナカシマの言葉が理解できなかった。

 コンペでテストしていたのは俺たちの機体、2つだけのはずだ。

 まさか、他の場所で同じことをやっていたのか?


 「……いったい、どの機体を採用したのですか」

 「いいだろう、君たちには特別に、採用した機体を見せてあげるとしよう」


 そう言うとナカシマは手元の端末を操作すると、俺たちに一つの映像を見せた。

 そこに映っていたのは、俺たちの前に何度も現れたドローン機に似た機体。

 画像では大きさはわからないが、そこそこの大きさはあるだろう。

 それにこの二重の四枚羽はなんだ!?


 「無人飛行機『スペクター』だ。君たちのおかげでいいテストができたよ。改善点も見つかって仕上がりが楽しみだ」

 「待ってください、これは無人機のはず! 必要なのは有人機ではなかったのですか!」

 「私はそんなこと一言も言っていないよ。優れた機体を採用すると言っただけだ」


 俺もそうだが、さすがのトネールもナカシマの言葉に唖然としてしまう。

 つまり、俺たちが今までやってきたことは全て無駄になったということだ。


 「スペクターはチンチラランドで行うイベントのひとつ、遊覧飛行で盛大に発表する予定だ。なんなら、君たちも招待してあげようか」

 「……いや、結構だ」


 ここに居たら、俺はナカシマを殴りかねない。

 俺は歯を食いしばって、その場を離れることにした。


 「本当に悪い冗談だぜ。俺たちは金持ちの道楽に振り回されたわけか」


 ――そして、イベント当日。

 今日はナカシマがスペクターのお披露目をする日だ。


 「やっぱり、全員出払ってるな」


 俺は誰もいない格納庫に来ている。

 まだ権限が生きていたのか、ここまで入ってくるのにそう苦労はしなかった。

 ここにいるのは俺とクサナギ、ウミネコだけだ。


 「悪かったな、かわいこちゃん。ちゃんと勝たせてやれなくて」


 俺はそっとクサナギに触れる。

 クサナギが採用されていた未来があれば、もしかしたら、いい相棒になれたかもしれない。

 そう思うと悔しさがこみ上げてくる。


 「――貴様もここにいたのか」


 声がする方を向くと、トネールが立っていた。

 少し驚いたが、べつに予想外でもない。

 アイツはアイツなりにウミネコのことを気にいってるようだったからな。


 「堅物のお前がここに来るなんてな。俺たちはもう部外者、立派な不法侵入だぞ?」

 「まだ入れるように権限を残していたあちらの落ち度だ」

 「おやおや、それは立派な考えで……」


 同じように自分の相棒を2人で眺める。


 「本当に、こんなんで終わりなのかね……」


 絞り出したような俺の言葉に、トネールはフンと鼻を鳴らしたかと思うと、こちらに振り返って言った。


 「この三年で、お前はずいぶんと大人しくなってしまったようだな」

 「なんだと? 俺のどこが――」

 「あの頃のお前なら、しみったれた考えを吐くよりもまず、“行動”してただろ?」

 「お前、まさか……! いいのか? こんなことしたら、俺たちは……」

 「愚問だ」

 「ハ、そうかよ」


 話したいことはたくさんあったが、俺の口から出たのはまったく別の言葉だった。


 「飛ぶか?」

 「ああ……!」


 多くのことは語らず、俺たちは機体に乗り込んだ。

 向かう先はもう決まっていた。

 俺も、トネールも、少なからずパイロットとしての誇りやプライドは残っている。

 そしてなにより、自分の相棒が最も優れているのだと自信を持っていた。

 だからこそ、空を知らない無人機(しろうと)に教えてやらないといけない。


 空で俺に、いや、“俺たち”に勝てるやつはいない、ってな。

EPISODE7 地に墜ちろ、幽霊「なにがスペクターだ。魂の無い箱が、俺たちの空を飛ぶんじゃねえ!」

 俺とトネールはチンチラランドへ機体を並べて飛ばしていた。

 昔は当たり前だったのにこうしてトネールと並んで飛ぶことに懐かしさ以外の他に不思議な感覚がある。


 「時間まで、まだあるようだな。早く自慢のスペクターとやらと戦いたいところだ」

 「……なあ、いい機会だから聞いてもいいか。なんで俺を目の敵みたいに嫌ってるんだ?」

 「突然、なにを言い出すんだ」

 「部外者が試作機を勝手に乗り回してるんだぞ。それ相応の罰が待ってる。最悪、お前とはもう話ができないと思ってな」

 「……」

 「だから、聞かせてくれ。俺はお前になにかしちまったのか?」

 「なにをしたか、だと? 貴様は俺たちを捨てたことを覚えていないというのか!」


 声を荒げるトネールに少し驚いてしまう。

 ここまでこいつが怒るのはいつ以来だ。


 「お、おい、捨てたってなんだ! 俺はお前たちと最後まで戦ったじゃないか!」

 「なにを言っている。俺は見たんだ、貴様が戦場から飛び去る姿を!」

 「あれは被弾して、操縦が効かなくなったんだ!」

 「それを信じろと言うのか。貴様は証明できないだろうが、俺はこの目で見ている!」

 「証拠、証拠ってな。お前は昔からそうやって――」


 俺が言い掛けたとき、花火の音が聞こえてきた。

 これはお披露目が始まったという合図。


 「……この話は終わりだ、行くぞ」


 トネールに続くように俺はチンチラランドへと飛ぶ。

 俺の言葉が信じてもらえないのなら、ここで共に戦う仲間だと改めてトネールに見せてやる。


 「……見えたぞ!」

 「アレはナカシマか」


 ナカシマがステージに立ち、なにやら演説しているが内容なんて俺たちにはどうでもいい。

 今はスペクターがどこにいるのかを把握しないと。


 「ヴァン、あそこだ。滑走路の先を見ろ!」


 トネールが言う通り、お目当てのスペクターは飛び立つのを今か今かと待っていた。

 画像で見てはいたが、俺たちの機体の倍くらいの大きさはある。


 「では皆さん、御覧ください。これが我が社が開発した最新鋭の飛行機。スペクターです!」


 ナカシマの演説が会場に響く中、その合図とともにスタンバイしていたスペクターが出撃する。


 「今だ!」


 スペクターが飛び立った瞬間、俺は上空からペイント弾を浴びせてやる。

 だが、スペクターはそれを驚異的な動きで回避してみせた。


 「おお、その図体で今のを避けるのか。さすが、最新鋭機は伊達じゃないな!」

 「喜んでいる場合か! 来るぞ!」


 スペクターは俺たちを敵と認識したのだろう、凄まじい速度で飛んでくると思ったら、こちらに向かって攻撃を仕掛けてきた。

 俺たちはそれをすんでのところで回避する。


 「おいおい、武装してるのかよ!」

 「いや、よく見ろ。ペイント弾だ。式典でのパフォーマンス用に積んでいたんだろう」

 「じゃ、こっちと条件は一緒だな。一方的に撃つなんて、イジメみたいで嫌だからな!」

 『お、お前たち、なにをやっている!』


 ナカシマから緊急の通信が入ってくる。

 だが、そんなものに構っている余裕なんて、こちらにはない。


 「さあ、始めようか。パイロットのプライドを賭けた戦いを!」


 俺とトネールが先に仕掛ける。

 ペイント弾を上からスペクターに向けて撃つが、その全てを回避しながら、俺たちのすぐそばまで迫ってきた。


 「どこにそんな機動性があるんだ、この四枚羽!」

 「まだこちらが有利だ。このままアイツの後ろを取るぞ!」


 俺とトネールがスペクターの後ろを取るが、ロックオンさせまいとスペクターが急旋回を加える。


 「ドッグファイトで俺たちに勝てると思うなよ、素人が!」


 だが、有利を取れていたのは最初だけだった。

 こいつは本物のバケモノかも知れない。


 「ヴァン、このままでは後ろを取られるぞ!」

 「わかってんだよ、そんなことは!」


 スペクターは普通のパイロットじゃ耐えられないようなGでも、宙返り、急上昇、急停止となんでも使ってくる。

 それに、こいつはまるで俺やトネールの動きを学んで成長してるようにさえ感じた。


 「さっさと決着をつけないと、いよいよまずいな!」

 「作戦はあるのか!」

 「そんなものが俺にあると思うのかよ。考えるのはいつもラヴィやお前の仕事だろ!」

 「脳筋が!」

 「お前のほうこそ、いつも、もしかしたらって作戦の内容を渋りに渋りやがって! 身体に対して、肝が小さすぎるんだよ!」

 「それは貴様がいつも後先考えずに戦うからだろう! 尻拭いをしていたのはいつも俺たちだ!」

 「お前たちのケツモチをしてたのは――」


 俺たちが言い合いする中、スペクターは意外な行動に出た。

 それには、俺だけでなくトネールすら反応することができない。


 「なに――うわあああっ!?」

 「トネール!?」


 先頭を飛んでいたスペクターはあろうことか、自身の燃料タンクを切り離し、ウミネコの軌道上にドンピシャでぶつけてきやがった。

 こんなこと、常識で考えればまずしない。

 だが、その常識外をスペクターはやってみせた。


 「機体の損傷は!」

 「飛べる、だが長くはない!」

 「そうかよ! じゃ、お前は――」

 「待て、俺が隙を作る。貴様はそこを狙うんだ。チャンスは一度きり」

 「おい、なにを?」

 「見せてやろう、これがウミネコの奥の手だ!」


 次の瞬間、ウミネコが燃料タンクだけではなく、機体のあらゆる部分を切り離していき、最終的には翼まで短くしてしまった。


 「なにをやってんだ、そんなことをしたら!」

 「時間がない! 行くぞ、ヴァン・マベリック!」

 「ッ! 分ぁーったよッ!」


 軽くなったウミネコはまるで弾丸のようにスペクターへと突撃し、その翼に直撃した。


 「く……ハハハっ! 機体にぶつけるつもりだったがスペクターに挟まってしまうとはな! だが、これでもうこいつの機動力は失われた!」

 「ったく、脳筋はどっちだ!」

 「いいから、やれ!」

 「ああ、わかってる! こいつだけは墜とす!」


 俺はクサナギをあのコンペのときのように上昇させる。

 スペクターの機体を貫くには、それだけの加速と威力が必要だから。


 「お前がやってくれたこと、百倍にして返してやるよ!」


 スペクターの真上につけた俺は、下降の加速に機体の重量を乗せ、そして――


 「空で俺たちに勝てると思うな!」


 切り離した燃料タンクで、スペクターの装甲をぶち抜いてやった。

EPISODE8 最後の決着「これが俺たち流の決着のつけかただ。そうだろう、相棒!」

 スペクターに勝利した俺とトネール。

 だが、俺たちもクサナギたちも満身創痍だった。

 今はナカシマ重工の格納庫に捕まっている。


 「どうなるのかね、俺たち」

 「雇い主に無断で試作機を動かした挙げ句、看板だったスペクターを落としたんだ。言うまでもなく牢屋行きになるだろうな」

 「獄中生活か、それも悪くないか」


 状況ははっきり言って最悪だ。

 だが、俺もトネールも口には出さないが、強敵を打ち破った高揚感で満たされていた。


 「またお前と戦えて嬉しかったよ」

 「ふん……」


 そこへナカシマが慌てた様子で駆けつけてくる。

 まあ、当然といえば当然だ。


 「き、君たち、無事でよかったよ!」

 「……え?」


 俺とトネールは思わず気の抜けた声が出てしまう。

 開口一番、怒鳴り散らされるかと思っていたのに、ナカシマからは予想外の言葉が出たからだ。


 「い、いや、俺たちはスペクターを落としたんだぞ。他に言うことがあるんじゃないのか」

 「おお、そうだ。本当に素晴らしい戦いだったよ! あんなに手に汗を握った5秒はない、伝説の5秒だ!」

 「ど、どういうことだ」

 「私はね、自分の考えがどれほど愚かだったのか、気づいたのだよ。それも全部、君たちのおかげだ」

 「私たちがなにを……」

 「あの戦いだよ。あんな素晴らしい戦いは、人間でなくてはできない。決してAIにはできないものだ」


 確かにアレは、あまりにも無謀なイチかバチかの戦いだった。


 「実は私も昔は飛行機乗りでね。あの戦いを見て、昔の血と魂が騒いでしまったよ」

 「元パイロットだったのか、あんた」

 「ああ、だからこそ気づけた。飛行機には魂のあるパイロットが必要なのだと。君たちが思い出させてくれた」

 「ええっと、それはわかった。それで、俺たちの処分はどうなるんだ?」

 「処分どころか、改めて正式にパイロットとして君たちを採用したいと思っている」

 「本当かよ」

 「ああ、そしてこの二機を正式採用することにした。なにせスポンサー依頼が殺到していてね。それも君たちのおかげだ」

 「つまり、金の心配が無くなったのか。で、俺たちの処分もなしと……」

 「ああ、そうだ。だから――」

 「なら話は早いな。わかってんだろ、トネール?」

 「ふっ、やることは決まったようだな」


 俺とトネールは立ち上がり、お互いに拳を構えて向き合う。


 「き、君たちなにを!?」

 「悪いがナカシマ、これが俺たち流の決着の付け方なんだよ」

 「ああ、貴様とこうして殴り合うのも――」


 俺はトネールが言い終わる前に拳を腹に向かって打つ。


 「ぐっ、貴様!?」

 「おいおい、ここにゴングはないんだぜ。卑怯なんて言う――」


 今度はトネールの拳が俺の顔面にヒットする。

 一歩引きそうになるが、耐えてそのまま次の攻撃へと向かう。


 「や、やめないか、君たち! おい、誰か止めろ!」

 「この戦いを止めたら俺はこの件から降りるぞ!」

 「私もです!」

 「なっ!? そ、そんなめちゃくちゃな!」


 最初は戸惑っていた回りの奴らも、俺たちの熱気につられて、歓声が上がり始める。


 「逃げ出した腰抜けが!」

 「俺は逃げてねえ! あれは被弾したからだって何度言えばわかる!」

 「ふざけるな! 貴様ほどの腕があれば、操縦不能くらいなんとかしろ!」

 「むちゃくちゃ言うんじゃねえ、バカが! だいたいお前は昔から頭脳派を気取ってるが、俺と同じ脳筋だろうが!」

 「イノシシのお前と同じにするな! 4年前の山頂での作戦もお前の単独行動でどれだけ迷惑したと思っている!」

 「元々単独任務だったのを、お前が勝手についてきただけだろ! それに悪かったって飯をおごってやったじゃないか!」

 「貴様はそれを合わせてもたったの3回だ。俺は金が無いからと15回も奢らされた!」

 「なに数えてんだ! そういう細かいところがお前の悪いところなんだよ!」

 「必ず返すと言って、返さなかった貴様が言えたことか!」

 「返したくても返せなかったんだ! お前が……お前たちがいなくなったから!」

 「ぐっ!」


 お互いに拳と言葉をありったけ叩き込む。

 飾り気なんてなにもない、本気と本音のぶつかり合いだった。


 「俺たちは貴様の背中に憧れ、空の果てだろうとついていくと決めた! なのに、なぜ空から降りた!」

 「俺は空で負けなしだった。だけどそれは、お前や仲間がいてくれたからだ! 1人で強かったわけじゃない!」

 「ふざけるな! なら、なぜ俺たちを捨てた!」

 「捨てたんじゃない! 救えなかったんだと何度言えばわかるんだ!」


 お互いの拳が目の前に迫る。

 これがきっと最後の一撃に違いないとそう確信した。


 「俺はお前が生きていてくれて、涙が出るほど嬉しかったんだぞおおお!」

 「――っ!?」


 俺の拳がトネールの顔面に叩き込まれる。

 アイツの拳は――俺に届かなかった。


 「ぐっ……」


 その場に倒れ込むトネール。

 俺も力尽きて、同じように倒れ込んでしまう。


 「ここでも勝てないのか……」

 「空で俺に勝てるわけないだろ」

 「ここは地上だろ……」

 「俺がいる場所、戦う場所は全部、空なんだよ」

 「ふっ、また訳のわからないことを……」


 少しの沈黙のあと、トネールがその沈黙を破った。


 「ライオットはどうした……」

 「ぶっ壊れたよ、損傷が酷すぎたらしい。基地まで飛べたのが奇跡だって言われたよ」

 「そうか……」


 倒れていたトネールが起き上がり、俺に手を差し伸べてくる。

 だが、俺はそれを断り、自力で立ち上がった。


 「信じてもらえたか?」

 「ああ、貴様の口から泣いたと聞かされたらな。泣くなんて昔は死んでも口にしなかっただろう」

 「たしかにな……」

 「それにしてもひどい顔だ……」

 「お互い様だろ」


 ボロボロになったお互いの顔を見て、思わず2人揃って笑い始めてしまう。


 「すまなかった、俺はどうやら勘違いを……いや、思い込みをしていたらしい」

 「思い込み?」

 「空で貴様が負けるはずがない。だから、あれは逃げたのだと……」

 「俺が逃げる情けない男に見えるかね」

 「まったくだ……」

 「……これからどうする?」

 「正式なパイロットとして雇ってくれるらしいし、また空に戻るよ。他の仲間もどこかで生きているかもしれない。そいつらを探しに行かないとな」

 「探してどうする」

 「決まってるだろ」


 格納庫の隙間から見える空を俺は見上げる。


 「また飛ぶんだよ、俺たちの空を」

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■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧

脚注
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