禁忌幽霊・ストーリー・贖罪1~10
報い
ナイフラスト
とある田舎
ウェルシュラビット:このお金は君たちが強制徴集された食糧と交換したんだ、持ってろ!
村人:いやはや、これは……こんなに徴収されましたか?このお金多すぎやしませんか……
ウェルシュラビット:バカな貴族に無駄遣いされるくらいなら、君たちが何か美味しいものを買って食べた方がましだ。
ウェルシュラビット:僕はお金はいらない、君たちもいらないのなら、捨てる。
村人:じゃ、じゃあ……ありがとうございます、ウェルシュ様!
ウェルシュラビット:あのな……ウェルシュ様と呼ぶな!まったく……
ウェルシュラビット:そう言えばフィービーのやつは?このお金があれば学校に行けるだろう?
村人:そうだ、フィービーは魔導学院に行きたいと言っていたし、これでやっと行けるな!
ウェルシュラビット:魔導学院?だが……ハカールがそこは良い所じゃないって……
村人:ま、まさか?あの食霊召喚の方法を発見した魔導学院ですよ!他に色々研究していますし、いかなる組織にも所属しない、研究に専念できる学び舎ですよ!
ウェルシュラビット:いや……そんな事を言われてもな……まあいいや!
ウェルシュラビット:フィービーがそこに行きたいのなら行けばいい!お金が足りないとか、イジメられたなら僕に言え!
村人:ウェルシュさ……コホンッ、ウェルシュさんにはもうたくさん助けられましたし、これ以上は迷惑じゃ……
ウェルシュラビット:何を言ってんだ?この前たくさんニンジンをくれただろう?
村人:にっ、ニンジン一箱だけなんで、畏れ多い……
ウェルシュラビット:ニンジンを育てるのがどれだけ大変か、僕はよくわかっている!それに……
ウェルシュラビット:あれは僕が食べたニンジンの中で一番おいしいニンジンだ!お返しをしなければならないくらいにな!
催眠Ⅰ
夜
宴会場
ハカール:強いショックによる記憶喪失は、催眠療法で治療できるわ、レイチェルさん、試してみない?
レイチェルサンド:催眠なら、遠慮しとくよ。
ハカール:あら?レイチェルさんは催眠に対して心当たりがあるようね。
レイチェルサンド:……他に話がないならもう行く。
ハカール:待って。
レイチェルサンド:……今度は何だ?
ハカール:レイチェルさん、アナタの家族の中で催眠ができる方がいるのに、どうして……記憶を取り戻そうと一度も考えなかったのかしら?
ハカール:「スペクター」ファミリーの関係は親密であることは知っているわ、アナタの記憶問題を放置したのは、もしかすると……
ハカール:ご家族も記憶を失っているのではなくて?
レイチェルサンド:そうだったとしても、お前には関係ない。
ハカール:フフッ、私は医者で、ケガ人を治すのはワタクシの責務だわ。
レイチェルサンド:良心なんて信じない、契約とか金銭のやり取りの方が信じられる。
ハカール:それなら、取引の話をしよう。
レイチェルサンド:……聞かせてみろ。
ハカール:フフッ……対話を続けてくれるなら、ワタクシは一人の医者として、レイチェルさんを助けるわ。
レイチェルサンド:必要ないって言っているだろう……
ハカール:戦争の最後、何があったか覚えているかしら?どうやって、戦場を離れたのか。
レイチェルサンド:……
ハカール:アナタが本当に、戦争のことを綺麗に忘れ、何の影響も受けていないのかしら?
レイチェルサンド:お前は一体何を知っているんだ?
ハカール:ここは少しうるさいわね、レイチェルさんの素敵な声すら聞き取れない、場所を変えてもいいかしら?
レイチェルサンド:……
レイチェルサンドは、この宴会で何のビジネスの話も出来ていない事を思い出す。ルーベンサンドの怒った顔が浮かび、目の前の女性の悪い笑顔を見て、どうしても逃げたくはなかった。
レイチェルサンド:……どうせ後でルーベンに叱られるだけだし、行こうか。
催眠Ⅱ
「不老不死」は人間にとっても最も魅力的な話題の一つだ。
より多くの時間を持つということは、より多くのチャンスを持っているということ⋯⋯こんな誘惑に抗える人間など、いるのかしら?
ただ⋯⋯
創世神が本当に人間に「不老不死」を与えるかしら?
人間を神と等しくする⋯⋯神はこんな気前のいい事をするはずがないじゃない。
だから⋯⋯ワタクシが人間の神になろう。
人間に、彼らが追い求め続けた「不老不死」を与える神に⋯⋯
まあ、フフッ⋯⋯こんな美味しい話はある訳がないわよねー
ハカール:幻境を通じて真相を見るのに、興味ないのかしら?
ハカールは少女を見て、勝ち誇った笑みを浮かべた。代価を払わずに未知を見られる、ある意味「不老不死」と同じ。食霊を含め、動じない者はいないはずだ。
レイチェルサンド:断る。
ハカール:あら?真相を知りたくないのかしら?
レイチェルサンド:真相なんて、過去のことだ。過ぎ去った事を、思い出すのに何の意味があるんだ?
レイチェルサンド:あたしが見た、経験したもんが、真相だって保証もないしな。
レイチェルサンド:そんなものより、今を大事にしたい……
レイチェルサンド:今、そばに大切な家族がいるからな……
ハカール:……
ハカールはこれまでにたくさん誘惑に負けた魂を見てきたが……
大切な人のためなどとは全て口先だけで、すぐに諦めて保身しか考えない……誰もが憧れた英雄も、罪のない人を犠牲にしてでも地位を守ろうとした……
ハカールはこんなにも愚かで純粋な言葉を初めて聞いた。
ハカール:面白い……もっとアナタと話たいわ……アナタの脳ミソも解剖してみたい……
レイチェルサンド:はぁ?
ハカール:フフッ……いいえ、こんな状況じゃなかったら、良いお友だちになれたかもしれないね。
ハカール:本当に残念だわ、そして……興奮するわねー
調査Ⅰ
ある日
「カーニバル」
シャンパンの指示通り、今日もポロンカリストゥスは情報を探りに「カーニバル」にやって来た。
ポロンカリストゥス:これだけ監視しているんだ、いくら慎重でも、少しぐらいは粗が見つかってもいい頃合いだろう……
キビヤック:また仕事……どうして、こんなに働いているのに、一日も休暇がないんだ?
ポロンカリストゥス:休暇?どうせ休んでもやることないし、むしろ仕事があるほうが面白い。
キビヤック:……
ポロンカリストゥス:……また何?话があるなら早く言って。
キビヤック:シェリーが、「学校」の近くにいいバーがあるって……サルミアッキも、新しいお化け屋敷が出来たって……
ポロンカリストゥス:……
キビヤック:きっと……面白い……と思う……君は休んだ方が良い。
ポロンカリストゥス:……私を言い訳にしなくても、遊びに行きたいならはっきり言えば?
キビヤック:違う!
ポロンカリストゥス:……今回は無理、今度時間が出来たらな。
キビヤック:えっ?
ポロンカリストゥス:二回は言わない……
ポロンカリストゥスは後ろで呆けている者を構わず、歩き出した。キビヤックはしばらくしてようやく我に返り、笑顔でついて行く。
レッドベルベットケーキ:あら?雪だるまちゃんとトナカイちゃん?また会ったわね、すっかり「カーニバル」の常連じゃない?
キビヤック:あっ……どうも……
ポロンカリストゥス:ふふっ、どうしたんだい、私たちに会いたくないのか?
レッドベルベットケーキ:そんなー商売人が、客に会いたくないはずないわ……金を払わない客以外、ねー
ポロンカリストゥス:あれ?確か前回の件以来、「カーニバル」のチケット価格が数倍にも跳ね上がったみたいだね。あのドアボーイの少年に聞いたら、私だけのために設定した価格らしいね。
レッドベルベットケーキ:うぅ……この値段で情報を買えたら、お得でしょう?
ポロンカリストゥス:情報?
レッドベルベットケーキ:フフーン、あの最近大活躍の「顔のない男」の情報、知りたくないの?
ポロンカリストゥス:どうせ偽情報でしょう、知らなくても結構。
レッドベルベットケーキ:えーそんなに信用ないなんて、傷つくわー
ポロンカリストゥス:……この前、グルイラオの偽「カーニバル」にかなり無駄な時間費やした。それも君の仕業じゃないのか?
レッドベルベットケーキ:やーねー今度は違うわ。あの殺し屋はあたしを怒らせたの、だから他人の手を借りてちょっと懲らしめたくてー
ポロンカリストゥス:うーん……それなら、少しくらいは信じられそうだね。
レッドベルベットケーキ:「顔のない男」の正体は黄色い髪の青年。今は邪神遺跡の方に向かっているみたい、目的地は多分その近くにある無縁墓地……
ポロンカリストゥス:情報が具体すぎて怖いな……
レッドベルベットケーキ:何しろ、あたしはどこにでもいる情報屋とは違うからねー
レッドベルベットケーキ:じゃあ、さっそく、悪者の確保をお願いするわ!あたしたちみたいな一般市民が安心して生活するようにねー
調査Ⅱ
ある日
「カーニバル」7階
キビヤック:鹿……これは……悪いことだと思う……
ポロンカリストゥス:じゃあ君は出て、私はついて来て欲しいとは言っていない。
キビヤック:だけど……
ポロンカリストゥス:……
ポロンカリストゥスはため息をついた、散らばった資料を拾い、困った顔をしているキビヤックを見た。
ポロンカリストゥス:情報はどうやって手に入ると思っているんだ?これは私の仕事だ。自分のために探っている訳ではない、帝国連邦の人間と食霊が安心して過ごせるためだ。少なくとも……エクティスみたいな、疑い深い土地にはしたくない。
キビヤック:ならどうして……直接彼らに言わないんだ?アクタックはきっと理解してくれる……こんなにコソコソしなくていい……
ポロンカリストゥス:彼を信じているんだな……
キビヤック:?
ポロンカリストゥス:なんでもない、アクタックが理解してくれても、彼の上司はそうとは限らない。
ポロンカリストゥス:去年クルーズ船で大変な目に遭ったんだ……自分の部下をあんなに放任できるジェノベーゼとやらは、まともじゃないだろうな。
キビヤック:クルーズ船?
ポロンカリストゥス:説明するのは面倒だ……とにかく、アクタックを信じていいが、「カーニバル」の他の連中には気を付けろ。バカみたいに誰彼構わず信用するな、あのオークショニアと上にいるカジノのオーナーは特にだ。
キビヤック:……鹿、あの後たくさん経験した……俺の知らない事もたくさん……
ポロンカリストゥス:……
キビヤック:だから俺が分からない事を、たくさん話す……
ポロンカリストゥス:……
ポロンカリストゥス:うるさい!だからついてくることを許しただろう?!これ以上どうしろと?
ポロンカリストゥス:面倒だ……自分だけなら、こんな事すぐに片付くのに……おや?これは……
資料を見きれない上に、ひっついて離れない者に付き纏われ、ポロンカリストゥスの苛立ちはピークに達していた。この時、彼はある袋に入った資料を見つけた。
ポロンカリストゥス:資料は全部散乱している、丸まっている物もあるのに、どうしてこれだけは袋にはいっているんだ……?ん?
ポロンカリストゥス:魔導学院……「スペクター」……?聞いた事のない名だな、もしかするとジェノベーゼと魔導学院の関係を証明できるかもしれない……無駄足じゃなくて済んだな。
キビヤック:……
ポロンカリストゥス:……何を落ち込んでいる、任務完了だ。機嫌が良いから、何か奢るよ。何が食べたい?
キビヤック:君と一緒なら、なんでもいい。
ポロンカリストゥス:チッ……じゃあ学校に戻って食堂で一番安いセットを食べよう!サルミアッキちゃんの新しいドリンク付きでな!
キビヤック:ええ!
調査Ⅲ
数日前
シャンパン執務室
コンコンッ--
シャンパン:入れ。
ポロンカリストゥス:「カーニバル」での調査に進展がありました。
シャンパン:ああ、言ってみろ。
ポロンカリストゥス:7階……つまり「カーニバル」創設者の部屋でこれを見つけました。
そう言ってポロンカリストゥスは資料をシャンパンに差し出した。
シャンパン:実験記録ノート……魔導学院のか?
ポロンカリストゥス:まさか「カーニバル」の創設者が魔導学院と関係があるとは…決定的な犯罪証拠は見つかりませんでしたが、魔導学院の尻尾をようやく掴めました。
シャンパン:……文字が多い、結論を言え。
ポロンカリストゥス:ふふっ、簡単です。魔導学院はかつて堕神武器を研究していた、そして彼らを邪神遺跡に置いて堕神の処理をさせ、一段落ついたところで、彼らを抹殺する事にしたのです。
シャンパン:意味が分からないが、魔導学院が人間の未来のために自分らの食霊を犠牲にしたとさえ言えば、責められないどころか、名声を得る事になるだろう……人間は食霊を可哀想だと思ったりはしないからな。
ポロンカリストゥス:同じく、食霊も簡単に人間を許したりはしない。
シャンパン:つまり……この食霊たちに魔導学院を対処させ、漁夫の利を得ろと?
ポロンカリストゥス:最も時間と力を節約できる方法です。結局は、魔導学院が自分で自分の首を絞めているという事でしょうか。
シャンパン:ああ……魔導学院の老いぼれたちは、本当に大人しく研究をしていればな、手を伸ばしたのなら、それ相応の代価を支払ってもらわなければ。
ポロンカリストゥス:もう一つ良いニュースがあります。指名手配犯である「顔のない男」は現在邪神遺跡へ向かっているそうです。彼のターゲットは、まさにこの対堕神武器かと。
ポロンカリストゥス:私に考えがあります。「顔のない男」は先日魔導学院の顧問を一人殺したばかりです、彼らは恨んでいるでしょう、なので……
ポロンカリストゥス:魔導学院が自ら犯人を捕まえるよう頼んで来るのを待ちましょう。そうすれば私たちが誰かを邪神遺跡に派遣しても、怪しまれる事はありません。
シャンパン:悪くない、一石二鳥だな。この件はお前に任せた。
ポロンカリストゥス:……
シャンパン:どうした?
ポロンカリストゥス:コホンッ、この件は私たちが手を出したら複雑になる可能性があります、出来れば……魔導学院のような、表面的には中立な立場の組織に任せられたらと。
ポロンカリストゥス:例えば、タルタロスはいかがでしょう?
シャンパン:功労を譲るつもりか?お前らしくないな……忙しいのか?恋人でもできたか?
ポロンカリストゥス:あはは、陛下は相変わらず冗談は上手ではないようですね。
シャンパン:フンッ、わかっている、お前は面倒を見なければいけない者がいるからな。
ポロンカリストゥス:……
シャンパン:わかった、この件はブランデーに伝えておく。キビヤックに常識の授業を続けると良い。
ポロンカリストゥス:陛下、ありがとうございます、ではお先に失礼いたします。
シャンパン:チッ、逃げ足が速いな……
妨害者Ⅰ
ある日
「カーニバル」
ブリヌイ:そもそも、グルイラオに建てた「カーニバル」はどうしたの?
レッドベルベットケーキ:はぁ……分店を作って儲けようとしたのに、むしろマイナスだわ……
ブリヌイ:ウソばっかり、「猟犬」たちの注意を分散させるために建てただけでしょう。
レッドベルベットケーキ:あはは、あのバカな男たちが手掛かりを見つけたと思い込んで、ワクワクしながらグルイラオに行ったのに何も手に入れられなかった様子は、見ていてとーーーーーっても気持ちよかったわ!
ブリヌイ:ふふっ、想像しただけで、悪くなさそうね。
レッドベルベットケーキ:でもまあ損をしたのは本当よ、ジェノベーゼが使い切れないほどのお金を持っているおかげで、アクタックにバレずに済んだけどね。
ブリヌイ:ああ……残念なのはこの前の「カケラ」じゃ大きな波風は立たなかった事ね……もう少しエサを撒いた方がいいかしら?
レッドベルベットケーキ:焦らないで、もう少し様子を見よう、それに……
レッドベルベットケーキ:面白い事なら、今は間に合っているじゃない?
ブリヌイ:ふふっ、それもそうね。
レッドベルベットケーキ:帝国連邦対魔導学院……チッチッチッ、良い茶番が見られるだろうねー
ブリヌイ:しかし、彼らは大事にしないという選択肢を取る事も出来るわ。
レッドベルベットケーキ:その時は、もう少し油を注げばいいわ!
レッドベルベットケーキ:ジェノベーゼの実験室には面白い資料がいっぱいあるからー
ブリヌイ:あら、それじゃあ……楽しみにしているわー
妨害者Ⅱ
ある日
「カーニバル」
ブリヌイ:だから、「顔のない男」の行方をトナカイちゃんに伝えたの?
レッドベルベットケーキ:あら、彼が自分でその仕事を受けたんじゃない、魔導学院と関係があるから、ちょうど良かったのよ。
ブリヌイ:ふふっ、ウォルフォード教授が魔導学院が新しく招聘した顧問だって知らない可能性もあるわ。
バンッ--
フォカッチャ:誰のことだ?!
ドアが突然開かれたが、ブリヌイは驚くことはなかった。ただお酒を一口含み、入って来た青年に向かって微笑んだ。
ブリヌイ:あら、とんでもない者に聞かれてしまったわね。
フォカッチャ:ブリヌイ、さっきウォルフォードって言ってなかったか?数か月前に屋上から飛び降りた。
ブリヌイ:あら、どうしてそんなに興奮しているの?知り合い?
フォカッチャ:あっ……いや……
レッドベルベットケーキ:確か……リアという女の子はウォルフォード教授の学校にいた気が、まさか……
フォカッチャ:少し不思議なんだ……あの教授の死には不可解な点がある。もし犯人がいるなら、早く捕まえて、リアを安心させてやりてぇんだ。
レッドベルベットケーキ:なるほどねー
フォカッチャ:……それに、事件の後にウォルフォード本人を見た人がいるって聞いたんだ……
レッドベルベットケーキ:あら!もう死んでいるんじゃないの?!
フォカッチャ:だから調べたくて……
レッドベルベットケーキ:その話で思い出したけど……ある殺し屋はターゲットにそっくりな変装をするらしいわ!
フォカッチャ:なっ……そんな事ができるのか?!
レッドベルベットケーキ:確か「顔のない男」だったかしら……これぐらいしか知らないわ、誰も「顔のない男」の正体を見た事がないみたいだからね。
フォカッチャ:……わかった、レッドベルベット助かったぜ!
レッドベルベットケーキ:いいのよー
青年が立ち去った後、ブリヌイは椅子の上で楽しそうに揺れているレッドベルベットケーキを見て、思わず笑ってしまった。
ブリヌイ:ふふっ、あなたを敵に回してはいけないみたいね。この短時間で、あの殺し屋の情報を二つの陣営に流すなんて。
レッドベルベットケーキ:ウフフ、事態は混乱すればするほど楽しいじゃない!
レッドベルベットケーキ:そうだ、トナカイちゃんが盗みに来たことをジェノベーゼに教えないと!また今度お酒に付き合って!
ブリヌイ:ふふっ、わかったわー
妨害者Ⅲ
「カーニバル」
7階
レッドベルベットケーキ:ジェノベーゼ!大変よ!泥棒がいたの!
nil:ああ……このお金を貴方にあげる、補填したらいい。
レッドベルベットケーキ:あら……えへへ、盗まれたのはあたしのお宝じゃないわ。シーザーちゃんが言っていたの、泥棒が上がって来たって!
nil:そう、ならお金を返してもらおう。
レッドベルベットケーキ:うん?何のお金?
nil:……いい。
嬉しそうにポケットにお金を入れたレッドベルベットケーキは、手術台の上に突っ伏して、不思議そうに蝶の標本を弄るジェノベーゼを見た。
レッドベルベットケーキ:泥棒はあなたの実験室に入ったかもしれないのよ、心配じゃないの?
nil:泥棒が僕の物を盗んだとして、その物はもうなくなっている、心配に……何の意味がある?
レッドベルベットケーキ:それもそうね、だけど……あなたの部屋の物は普段あたしたちにも触らせてくれないじゃない、何か大事な資料があるのかと思っていたわ。
nil:泥棒にとっては重要でも、僕にとってはただの資料でしかない。
nil:内容は、全てここにある。
彼はそう言いながら自分の頭を指差した。彼の目は相変わらず淡々としている、レッドベルベットケーキはつまらなそうに口を鳴らす。
レッドベルベットケーキ:どうしてこんなに紙を積んでいるんだ?足の踏み場もないわ。
nil:ここに積まないと、泥棒は何を盗んだらいいんだ?
レッドベルベットケーキ:あれ?もしかして、わざと盗ませた?
nil:そうだ、そうじゃないとこの世界は面白くならないだろう?
彼は蝶の脆い翅を撫で、慎重にそれを二つに分け、標本の紙の上に乗せた。
nil:早く……面白くなってくれ。
調査Ⅳ
ある日
「カーニバル」
ポロンカリストゥス:資料探しが出来ないのなら、入口で見張っていろ。
キビヤック:わかった……
バンッ!
実験室のドアは無情に閉められ、キビヤックは怒る事なく小さく呟いた--
キビヤック:鹿が早く自分の欲しい物を手に入れられますように……そうすれば、休める……
ジェノベーゼ:おや?貴方は確か……
キビヤック:あっ!その……あの……
ジェノベーゼ:すまない、名前を忘れた……アクタックを探しに来たのか?ここは7階だ。
キビヤック:あっ……いや……俺は……その……
ジェノベーゼ:ああ……なるほど……
キビヤック:えっ?
ジェノベーゼ:「カーニバル」の道は確かに分かりづらい、迷子になったのだろう……アクタックのところに忘れ物をしていたのを思い出した、連れて行こう。
キビヤック:うん……お願い……
ジェノベーゼ:いや、貴方への少しもの償いだ。
キビヤック:?
ジェノベーゼ:なんでもない。これから貴方の力に何かあったら、また僕に声を掛けると良い。
キビヤック:ありがとう……
ジェノベーゼ:「カーニバル」でお金を使ってくれればいい、あの……鹿さんと一緒に。
キビヤック:わかった。
青年は無意識にキツく閉ざされた実験室のドアを見た--先程までポロンカリストゥスに強く閉められていたドアだ。
キビヤックは仲間がいるのがバレないよう、一刻も早くジェノベーゼを連れてここを離れようとした、そのためジェノベーゼの意味深な視線には気付く事は出来なかった。
Discord
御侍様同士で交流しましょう。管理人代理が管理するコミュニティサーバーです
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