スキンカーニバル 動物世界・ストーリー
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目次 (スキンカーニバル 動物世界・ストーリー)
①チェダーチーズ/魔を狩る獣
夜の闇の中、豪奢な馬車は路地の奥にある朽ちた鉄門の前に静かに止まり、馬車から降りたのはフードを着た男だった。
大きな宝石の指輪をつけた太い指が鎖を握りしめ、もう一方の鎖の端は少年たちの細い首に巻き付けられている。
男はニヤリと笑い、門番に「入場券」を掲げると、わくわくと暗く禁断な領域へと足を踏み入れた。
鉄門の中では、獣の遠吠えが断続的に響いている。
ここでは、貴族たちの秘密の遊びが繰り広げられていた。数人の安い奴隷を対価として支払えば、「娯楽の宴」が提供されるのだ。
当然、奴隷は宴の最も重要な調味料である。
展望台では、貴族たちが首を長くした待っていた、彼らは中央に置かれた精巧な画面を貪るように見ている。
画面に映っているのは鎖につながれ死を待つだけの子羊たち、床に散らばった白骨、そしてゆっくりと上昇する檻だ。
ゴロゴロッ――
重い鉄の檻は、無造作に地面にぶつかった。哀れな少年たちは青ざめた顔で運命の宣告を待っている。
貴族たちは興奮しながら談笑していた。
「聞いた話だが……あの獣は檻から出ると発狂するらしい、かつてたった30分で何百人もの人間を殺したそうだ」
「ああ、あの子羊たちが少しでも闘ってくれればいいのだがな、そうでなければ、わざわざ三日三晩掛けてやってきた甲斐がない……早く彼らの絶望した表情が見たいものだ」
「しかし、以前ゲームに参加した貴族たちは皆、行方不明になったそうだ」
「ふふっ、それはあの狡猾な貴族がでっち上げた嘘だ。月に一度だけ参加できるこの宴を見逃す訳にはいかないだろう?」
……
鉄の檻の扉の錆びた鍵が乱暴に蹴破られ、貴族たちの議論はピタリと止んだ。
血に飢えた「獣」の登場を心待ちにし、これから始まる残酷なゲームに戦々恐々としていたのだ。
獣の爪は刃物のように鋭く、牙は雪のように白く……そして、灰色の毛皮の下には……細い少年がいた。
貴族たちは顔を見合せた。その少年がニヤニヤしながら、鎖を拾い上げ、さりげなく2つに引き裂く。
少年は子供っぽく首を傾げながら、コロッセオの脇にある小さな半開きの扉を指差した。
「こんな弱い子どもと遊びたくない、あっち行って」
「おいっ、何してんだ?!私たちはショーを見に来たんだぞ!」
「そうだ、なんあのガキは?!」
展望台から憤慨する声が相次いだが、少年は顔を上げ、指を鳴らした。
ガチャンッ――
円形の展望台は一瞬にして天井から落ちてきた鉄格子に囲まれ、檻と化した。
怯える貴族たちは慌てて身を寄せ、遠目から見ると蠢く色とりどりの虫のように見えた。
少年は腕輪につけた光り輝く鍵を振りかざすと、そのいたずらっぽい声がコロッセオに響いた。
「アハッ、閉じ込められたの?……でも、鍵は一人にしか渡せないんだよね」
「ショーは始まったばかりだよ、みんな、頑張ってね!」
その言葉が発せられたと同時に、殺し合いが始まった。
一瞬、獣たちの慟哭、負傷した人の悲鳴……様々な音が一斉に響いた。
……
白熱灯が青白い光を放ち、血の悪臭はコロッセオの罪を洗い流してはくれない。
少年は展望台の螺旋階段を愉快な足取りで登り、裸足のつま先で辛うじて息がある人間の頬を軽く蹴った。
「……鍵をくれ……外に出してくれ……」
人間の血まみれた手が少年の細い足首をつかむと、少年は鍵を鍵穴に差し込んで鉄の檻の中に入った。
「鍵を手に入れたら外に出られると誰が言ったの?」
少年は無邪気な笑顔で傷だらけの顔に近づき、そっと頭を撫でてあげた。そして鋭い爪が伸びる。
「どうやらお前がクズの中で一番強いらしいね。俺と決闘する資格を得られたんだ、喜ぶといいよ!」
②カイザーシュマーレン/剣が峰
高いドーム状の空間の中、シャンデリアは幻のように毒蛇のような影を落とした。
月桂樹の形をした壁掛け時計が3回鳴ると、眉をひそめたメイドたちが入ってくる。
宝石がちりばめられた絹の天蓋カーテンはローズゴールドの杖で開けられ、若き君主は気だるげに身支度を整えていた。
誰にも君主の顔と、布団の下にへばりついている変なふくらみを直視する勇気はなく、メイドたちは皆神経を尖らせていた。君主の機嫌を損ねることを恐れているからだ。
真実はタブーという柔らかな絹に包まれ、全ての目と口をしっかりと塞いでいる。
時計が再び鳴った。振り子が揺れるとともに、黄金のコマドリが時を告げる。
突然、一番若いメイドの短い悲鳴が和やかな雰囲気を破った。彼女は異国の貴重な水差しを大事そうに持ち、こぼれた水で濡れた布団を不安そうに見ていた。
布団の濡れた部分から徐々に蛇の鱗のようなシルエットが現れていく。
若いメイドは恐怖で顔が真っ青になり、絨毯の上で跪いた彼女はこう懇願した。
「申し訳ございません!どうかお許しください!」
紫色の瞳は静まり返った湖のように、彼は微笑みを浮かべた。その笑顔で静かな湖にさざなみが広がって行く。
「かまわん、下がれ」
メイドたちは謹んでお辞儀をし、ぐったりとしたメイドを担いで急いで部屋から出た。
宝石がはめ込まれた扉がゆっくりと閉まり、メイドは魂が抜けたようにつぶやく。
「蛇……のようなものが……」
「マリアンヌ、お黙り!何も見なかったことにしておきなさい」
荘厳なメイド長の目は鷹のように鋭く、メイドたちは沈黙して頷いた。これは持ってはいけない疑惑だということだ。
新しい君主は、勇敢で寛大で情熱的な騎士だったという漠然とした噂を、誰も覚えていなかった。
馬に乗って森を駆け回るのが好みで、狼や熊を狩り、泥棒や強盗の首をはね、ついでにさらわれた金髪の女性を救い出すという。
ある日、彼は特別な戦利品を持ち帰った。それは大人と同じ大きさのカメレオンだった。
しかし、一人息子しかいない老王は、毎日ため息をついていた。
豊かな国に必要なのは、勇猛で戦いが上手な領主ではなく、国の未来を見据えられる国王だと。
しかし、老王がついに悩みを抱えたまま死ぬと、戴冠した新王は生まれ変わった。
彼は巧みに反体制派を粛清して権力を掌握し、多くの信者に擁護されるようになった。
ただ……
かつて馬術と剣術の達人であった彼は、寝室でくつろぎ、ベッドから離れようとしなくなった。
更に奇妙なことに、大臣や家来たちは皆、そのことを忘れているようなのだ。
かつて彼が老王から受け継いだ赤茶色の短い巻き毛が、黒曜石のように魅力的になっていたことを。
いつも優しいダークブラウンの瞳が、アメジストに変わったことを。
小麦色の頬からそばかすがなくなったことを。
筋肉質で傷だらけの体は細長くなり、そして明らかに人間の体に属さない何かが増えたことを。
でも、そんなことはもうどうでもいいのだ。
目と口を塞ぐ「タブー」は、華やかな栄光の装飾であり、首を絞めるための縄でもあるのだ。
朝の茶番はすぐに忘れ去られ、メイドたちは閨に横入りする大臣に好奇の目を向けられることもなく、機械的に宮殿内の掃除を始めた。
薄暗い寝室の中、大臣たちは帽子を脱いで敬礼し、ドームに鎮座する新君主を見上げる。
細い鋼鉄のケーブルが宙に吊るされ、薄暗いシャンデリアが青と紫の光線を、蛇の細長い尾に投げかけている。
最高権力者の象徴であるこの王冠に無関心な様子で、王はただ興味深げに尾を揺らしている。
「陛下……最近、国境で若い騎士が率いているという噂の革命軍を見かけましたが、鎮圧のために軍隊を送るべきでしょうか……」
「必要ない」
若い王は、まるで知っているかのように柔らかく微笑むと、王冠を玉座の脇にある一対の鎧の上にさりげなく置いた。
人間内部の混乱と闘争は……彼が望む以上に頻繁に起きる上に、複雑なものだった。
彼はまさにそれを利用し、暗流に隠されるしがらみを突き破ったのだ。
静まり返った紫色の湖にまた漣が広がって行く。
「もしかしたら今、新たな国が誕生しようとしているのかもしれない」
③鴨のコンフィ/絢爛なツアー
サーカスに新しいテントが建った。
血のようなルビーを散りばめたドームに、華麗なドレープが眩しい灯りに照らされて一際鮮やかに見える。
一人の美しい女性がやってきた。
整った顔立ちにライトブルーの瞳、いつも何事も無関心に見つめている。まるで白いバラのよう。
彼女は「シークレットシーカー」として知られていた。
伝説によると、シークレットシーカーはどんな秘密でも覗くことができるが、訪問者は1人につき1つの秘密しか尋ねられないという。
人々は躊躇いながらテントの外で待っているが、誰も入ろうとはしない。
夕暮れが迫る頃、ついにテントに最初の訪問者が訪れた。
ボロボロの帽子をかぶった無一文のギャンブラーだ。
「さあ、覗きたい秘密は何?」
蝋燭の炎に照らされ、シークレットシーカーと呼ばれる女性はゆっくりと語りかける。
彼女の背後には巨大な蛇が巻きついており、その白い鱗はロウソクの灯りを反射してキラキラと光っている。シルクハットを被っているせいか、可愛い紳士にも見えてくる。
ギャンブラーは唾を飲み込み、まだ躊躇している様子だ、でもすぐに決心して口を開いた。
「当、当選番号!ジャックポットの当選番号が知りたいんだ!」
「蛇の目を見てご覧、さすれば答えを得られるでしょう」
男は穏やかな声につられ、少し不安げに顔を上げた。
女性が目を閉じたと同時に、白蛇は目を開いた……星のように輝くその目には千の秘密が隠されている……女性の目と瓜二つだ。
「見えた!……見えたぞ!」
翌日、ギャンブラーの勝利の知らせは、すぐにその町に広まった。
人々は迷いを捨て去り、サーカスの前にはすぐに長い列ができた、熱狂と興奮が人々の肌の隅々まで覆っている。
「ハハハッ!あいつの弱みがわかったぞ!」
「夫は……本当に浮気をしているんだね……」
「ずっと俺を騙していたんだな、あんなに面倒を見てあげたのに」
「私の予想通りだ!祖父の遺産は私の物だ!」
驚いたり喜んだりする人がいれば、悲しんだり怒ったりする人もいる。
月が沈むと、あのギャンブラーが再びやってかた。
「次の当選番号も知りたいんだ!お願い!なんでもするから!」
ギャンブラーの欲望に満ちた表情が、女の無関心は瞳に映った。
白蛇が目を開けると、またしてもギャンブラーは自分を望みを叶えた。彼はケラケラと笑いながらテントを後にした。
そして、花屋、婦人、靴磨き、貴族……
様々な人間がギャンブラーのように、2度目の勇気を出してやってきた。蛇に見つめられた人のあらゆる秘密が根こそぎ取り除かれ、何もかもが暴露された。
「見ろ、あのギャンブラーだ!また来たのか?でも、すごい嬉しそうだ……いや待て、ピエロのように笑っているぞ!」
ギャンブラーは、人々の視線や議論も気にせず、醜悪な笑みを浮かべ、ただただ狂ったように大笑いをしていた。
「俺はもう世界一のギャンブラーなんだ!世界中のカジノを勝ち抜いて、刮目させたんだ!!彼はそう思いながら、迷うことなくテントの中に入っていった。
女は真っ白なブランケットを羽織り、まるで雪国の奥地からやってきた神のように涼しげで飄々としていた。
ギャンブラーは口を開き、また秘密を要求した。
彼は花の蜜に群がる蜂のように、恍惚とした表情で彼女の足元に跪いた。
「その望みを叶えてあげても良い、ただし対価は……」
「なんでも!なんでもする!!!」
男は狂ったように頭を縦に振る、その目からは欲望が止めどなく溢れ出した。
薄暗い光が灯り、シークレットシーカーの瞳孔は縦になった。
彼女の皮膚が引き裂かれて行き、血まみれになり、最後には脱皮したヘビのようになった。
そして白い鱗が生え、血色の唇が開き、真っ赤な舌が現れた。
テントの中から天をも貫く狂気的な笑い声が響き、そしてすぐに静寂が広がった。
明け方、ギャンブラーは疾走した。誰かがテントの外でボロボロの帽子を拾う。
人々は知らない、その夜、彼が何を見たのかを……
「次は、誰の番かしら……」
テントの奥に静寂が戻る。吊るされたルビーのカーテンは、白いヘビの影を隠す。
その瞳は未知なる遠方まで投げられ、彼女は絶えずあふれ出る渇望を見つめながら、何かがやって来るのを待った。
④バニラマフィン/禁じられた薔薇園
とある美しい花園に、やさしいテイマーが住んでいる。
雪のように白くて長い髪、細い蹄と柔らかい耳、その綺麗な顔立ちはまるでおとぎ話に出てくる天使のようだ。
毎朝、彼は花園で花々の世話をする。
時には、人間を連れ帰ることもあった。
鉄の手かせと足かせが人間たちの手足でガチャガチャと音を立てる。
葉の中に住む少女は怪訝そうに彼らを観察していた。
「何故あなたは足かせをされていないの?」男たちは驚いて少女に尋ねた。
「足かせ?……それは何ですか?生まれた時からここを離れたことがありませんので、誰もそんなことを教えてくれませんでしたわ」
こうして少女は、花園の向こうにもう一つの世界があることを初めて知った。
そこは野獣の世界であり、ほとんどの人は生まれた時から手かせや足かせをつけさせられ、獣たちの娯楽のためにサーカスに放り込まれる。
そこには、6本指のピアニスト、盲目のマジシャン、しっぽの生えたセイレーンも……
彼らは照明の下で回転しながらパフォーマンスを披露していた。最後はカーテンが血に染まるまで、笑いの中で追いかけ、互いを引き裂く。
少女は驚いて口元を覆った。
彼女はようやくわかったのだ、テイマーがどうして毎日鎖につながれ、傷だらけの人たちを連れ帰る理由を。
しかし、テイマーは四六時中休まず彼らを治療し続けた。やがて蔓の鞭は高くそびえる蔓の木と化し、その枝は癒しの光を放つようになった。
さらに、庭の真ん中には、今まで咲いたことのないバラが生えていた。
棘が生け垣のように絡み合い、固く閉ざされた蕾を守るかのように。
「もう春なのに、そのバラはどうして咲かないのかしら?」
優しいテイマーは微笑むと、クローバーの花を摘み取り、少女の掌に乗せた。
「それは……希望を育む薔薇だからです、いつか必ず綺麗な花を咲かせてくれると信じています」
温かい日差しが彼に降り注ぎ、輪郭を金色の糸でなぞる。しかし少女は彼の顔が少し青ざめていると感じた。
その後、庭はどんどん人間が増え、空気までもが血の匂いがするようになった。
ある日、バラの蕾が前より開いたようだと少女が気付く、その佇まいはまるで恥じらう乙女のようだった。
その後、さらに多くの人間が花園の存在を見つけた。
彼らは泣き叫びながら、テイマーに自分たちも入れるよう懇願した。
テイマーは頷いた。しかし、彼の目に潤んだ光が宿っていることを気づいたのは、少女だけだった。
テイマーはますます忙しくなった。かつてのように花園の手入れをすることができなくなるほどにいほがしくなったのだ。
ある夜、彼女は長い間見かけていないテイマーを見つけた。
しかし、その肩はとても細く、顔は欠けた月のように青ざめていた。
その夜、庇護を求める無数の群衆が波のように押し寄せ、花園の門と柵を壊した。
テイマーは夜中に孤立し、無限に押し寄せる潮流を痛ましそうに見つめている。
バラが咲き乱れ、その赤い花びらは燃え盛る炎となって、鮮やかに燃えていた。
「バラが咲いている!私たちにも希望が訪れるわ!」
少女は喜びの声を上げたが、テイマーは悲しげに首を振った。
「バラの花が咲くと、花園は枯れてしまうのです」
「バラの種は花園の力を維持してくれるが、その限界を超えてしまうと、花園が崩壊してしまう。バラが咲く時が、終わりが訪れる時だ」
紫色の瞳を持つカメレオンがそう言っていた。
「テイマーの力と引き換えるつもりか?」
「ええ、決めたんだ、世界が滅ぶとしても、それでも花園を作りたいんだ」
たとえそれが小さな花であっても。
砕け散る水晶玉のように、花園は崩壊し始めた。
テイマーは静かに目を閉じた、そして敢然としてバラを飲み込んだ。
バラの棘が彼の心臓を貫くと、血と涙が夜に溶け込んだ。
「私の力を捧げます!どうか、この花園を救ってください!」少女はクローバーの花を握りしめて涙を流した。
突然、群衆の声が次第に響き、一声、二声と積み上がっていく。
月光に照らされ、奇跡が起きた。
色あせたバラは、テイマーの周りで花を咲かせた。
不思議な光が彼の身に集まり、まるで命を吹き込むように。
その日以降、伝説の花園とテイマーは消えてしまった。
代わりに一人の旅人が誕生した。彼は雪のように白くて長い髪、細い蹄と柔らかい耳を持っている。
旅人が通った道には、いつもバラが咲いているそうだ。
⑤ルーベンサンド/闇喰みハンター
「バンッ!」
銃声の後、荒れ果てた通りに響いたのは、ハンターの不気味な笑い声だけだった。
「ハハッ、ユキヒョウ、捕まえたぞー!」
肩を負傷した「ユキヒョウ」は暗い路地に追い込まれ、逃げ場がなくなった。
彼の背中にはショットガンが突きつけられ、冷たい感触がする。
「ピチャッ、ピチャッ──」
血が左腕から指の先を伝って地面に滴り落ちた。
「彼らの差し金ですか?」
「ああ、だがお前には関係ない話だ。最後に何か言うことはないか、ユキヒョウよ」
「いつでも撃てるはずでしょう?何を待っているんですか?」
「一撃で仕留めるのはつまらないじゃないか?獲物が死ぬ間際ともがきと哀願を聞くのが好きなんでね」
ハンターは突然何かを思い出したように、口の端に陰険な笑みを浮かべた。
「お前の仲間たちも、そうやって俺を喜ばせてくれた」
その言葉が終わる前に、ユキヒョウは振り向き、その紫の瞳に危険信号を光らせた。
ハンターの反射神経も同様に鋭く、素早く銃を構えて引き金を引き、警戒しながら彼の心臓を狙った。
二人が向かい合うと、空気が凍りついた。
そして、ハンターの嘲笑が先に膠着状態を打破する。
「ハッ、なんだ?かつての仲間も獲物のようにからかわれ、惨殺されたと聞いて暴走したのか?……ユキヒョウよ、気持ちは十分に理解できるが……もう手遅れだ」
「……あの連中は、私を殺すために貴方を大金で雇ったのでしょう」
「自分の価値を高くみるな、俺に言わせれば、あのジジイたちにとってお前には何の価値もねぇんだ。だが、お前という存在を抹殺することは、彼らにとって非常に重要みたいだがな」
「なるほど……」
「時間だ、ゲームオーバーだ」
ハンターは躊躇う事なく、「ユキヒョウ」の心臓に向けて引き金を引いた。
その動きは、これまで行った狩りと同じように余裕だったが、何故か今回は時間の流れがとても遅く感じられた。
次の瞬間、ハンターの目の前で世界は崩壊し、果てしない闇だけが残された。
目を開けると、そこは薄暗い部屋で、彼は椅子に縛られ、身動きが取れずにいた。
目の前には、白髪でサングラスをかけた青年が立っており、手に持ったペンデュラムを巻き直していた。
「ここはどこだ?お前は何者だ!」
「貴方が知る必要はないです」
「俺を殺さないでくれ!俺は必ずあんたの役に立つ……“やつら”はきっとプロの殺し屋を送り込むだろう、あんた一人じゃ逃げられない」
「逃げる?私はいつそんなことを言いましたか?」
「なにっ?!」
「催眠の時間は終わりだ、ベイカー」
彼は短剣を抜いた。雪のような銀色のその姿は、暗闇でさえも飲み込んだ。
「わからないのか?ハンターはずっと私の方だったのだ」
「そして貴方は、私の獲物の一人に過ぎない」
⑥デビルドエッグ/奇妙なサーカス
森での掟、弱肉強食。
弱すぎる存在は、この掟から逃れられない。
そして、この森の中にいるある動物たちは、自分たちの方法でこの掟に反抗しているそうだ。
彼らはほぼ同じ時に生まれたため、互いの運命が絡み合うようになった。
彼らは最も近しい家族となり、共に森の闇に立ち向かった。
「彼らは僕の一番大事な家族だ!」
小さなリスは新しく取った松ぼっくりを持って、誇らしげに遊び仲間に言った。
家族の末っ子として、小さなリスは自由な生活を送っていた。
松ぼっくりを眺めながら、森の中を遊び歩いて、たまに誰も傷つかないようなイタズラをする──それが彼の日常だ。
森の景色は素晴らしい、まるで夢のようだ。
あまり思い出したくはないが、小さなリスははっきりと覚えている、自分の家族たちと一緒に立ち向かった絶望を。
小さなリスは痛みを恐れ、未知を恐れている。そして最も恐れていたのは、愛する兄と姉たちが苦しい表情を浮かべることだった。
自分より強く邪悪な存在に簡単に罰せられることは、とても恐ろしい事だ。
彼はどうしたら兄と姉のように強くなれるのだろう?
彼はずっとこの悩みを抱えていた、あの恐ろしい事件があった後でも、依然として答えは見つかっていない。
あの日、森の中で大雨が降った。
いつも笑顔で弟妹に接している長女は、初めて家族の前で憔悴しきった顔を見せた。
兄がいなくなったのだ。そして彼らがずっと住んでいた森ですら、人工的に作られた温室に過ぎなかった。
この温室のガラスは既に砕け散った、彼らは過去と何一つ変わらない残酷と絶望に立ち向かうこととなった。
「それで、どうなったの?」
小さなリスは話を聞いている者から松ぼっくりを受け取り、その柔らかな耳は揺れていた。
「どんな悲劇に出会っても、どんなに遠く離れていても……」
「兄さんと姉さんは、僕の大切な家族だ!」
サーカスのショーはもうすぐ幕が上がる、煌びやかな光が灯る。
小さなリスは華麗な服装に着替え、歓声を上げる群衆の前に出た。そして、イタズラっぽい可愛らしい笑顔を浮かべた。
まだ解決していない難題があるが、今みたいにイタズラで誰かを楽しませられるのなら、誰かを笑顔に出来るのなら──
それこそが今僕にできる唯一の事だ!
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