千秋の物語・余談1~5
余談·壱
すごく美男美女だし、まるで運命に定められたのカップルに見えるけど?
午後 弦春劇場
冬の日差しが庭いっぱいに降り注ぎ、卤煮火焼(※ルージューホーシャオ)は興味深そうに数日前に市場で買ってきた本を取り出し、隣うとうとしていいる子供に渡した。
ルージューホーシャオ:小吊梨湯(※シアオディアオリータン)、面白いものを見せてあげる。
シアオディアオリータン:うーん…「風流書生と美しい役者」?変わった名前だね。これ、何の話…?
ルージューホーシャオ:昨日、街で手に入れたんだよ。今、一番人気の本らしい!ちょっと変だけど、面白いんだ。
シアオディアオリータン:えっ、こんなに分厚い本をもう読んだの?
ルージューホーシャオ:もちろん!これが第一巻だよ。すごい才能を持った落ちぶれた書生が、劇場に拾われて、人気の役者とお互いに惹かれ合う話なんだ
シアオディアオリータン:…聞いた感じ、外の才子佳人の本みたいだね。あなた、こういうのが好きなんだ。
(※才子佳人とは才知のある男と美女。「才子」は、才知や徳の備わった人。「佳人」は、見目麗しい女性のこと。)
ルージューホーシャオ:いやいや、そうじゃないよ。もしそう思ってるなら、騙されちゃったってことだよ!
シアオディアオリータン:え…?
ルージューホーシャオ:第一巻はただの序章なんだよ。最初は軽い冗談や、ちょっとした恋愛話が続くけど、実はその中に重要なことがいっぱい仕込まれてるんだよ、先生が言ってたアレ、伏線!うん、それだよ。
シアオディアオリータン:そうなんだ、じゃあ次はどうなるの?
ルージューホーシャオ:第一巻の最後で、書生は役者のために一発大金を使って、金の部屋を建てようとするんだ。
ルージューホーシャオ:なんとその土地が不思議な怪物を呼び寄せてしまう。二人は危険を冒して、その怪物を倒しに行くことを決意するんだ。
シアオディアオリータン:それで、怪物を捕まえたの?
ルージューホーシャオ:私も気になるけど、ここで終わっちゃうんだよ。
シアオディアオリータン:うーん…この本の作者も、先生と同じように読者を引き込むのが上手だね。
ルージューホーシャオ:ほんと、昨日徹夜して読んだら、余計に気になっちゃって…でも、今市販の後半部分はどこも売り切れなんだよ。
シアオディアオリータン:…待って…この本に出てくる書生と役者、ちょっと変だと思わない?
ルージューホーシャオ:え?すごく美男美女だし、まるで運命に定められたのカップルに見えるけど?
シアオディアオリータン:違う…彼らの姿、なんか現実の誰かに似てない?
ルージューホーシャオ:……
ルージューホーシャオ:…まさか、先生がこの本を…
オシドリ粥:何を話してるんだ?
ルージューホーシャオ:わあ、先生、びっくりした!
オシドリ粥:ふふ、わってそんなに怖い顔してる?
ルージューホーシャオ:ち、違う!先生は綺麗だし、まさに絵に描いたような人だよ。
オシドリ粥:今日はどうしたんだ?何か隠してることがあるのか?
ルージューホーシャオ:何もないよ!
オシドリ粥:そうか?それじゃあ、その手に隠してるものは何だ?
ルージューホーシャオ:な、何でもない!くだらない本だよ!
オシドリ粥:驚きだな、君も本を読むなんて…見せてみろ。
ルージューホーシャオ:えっと…そんな下品な本、先生に見せるわけにはいかないよ!それじゃ、俺は監督の仕事に行かないといけないから、先に行くね!
オシドリ粥:ふふ、気をつけて、柱にぶつからないように。
余談·弐
「モデル」さん、思ったよりいい体してるね。
午後
金必多デザイン室
富豪スープ:じゃあ、服脱いで~!
白酒:?
富豪スープ:え、そんなに後ろに下がるの?私、君を食べたりしないから。
白酒:何のつもりだ。
富豪スープ:もちろん、君の体測って、服選んであげるんだよ!他に何すんだって?
白酒:……
富豪スープ:緊張しないで、一分で終わるから!私の目でサイズなんてすぐわかるよ。
白酒:わかった。
富豪スープ:え、ちょっと待って――上着だけ脱げばいいんだよ!
白酒:……早く言ってよ
富豪スープ:あ、すまん、初めて「モデル」やるんだし、言い忘れてた。
富豪スープ:でも……「モデル」さん、思ったよりいい体してるね。
白酒:……
白酒:一分って、こんなにかかるの?
富豪スープ:はいはい、終わったよ~。じゃあ、君にぴったりな服見つけてくるから、ちょっと待ってて。
嬉しそうに歌いながら、少女は内室に入っていき、小山みたいな服を抱えて戻ってきた。
富豪スープ:ほら、気に入ったのある?どれから試してみる?
白酒:……
白酒:これ?ドレス?でも、なんで……透けてる?
富豪スープ:なかなか目がいいね!これは特製の天蝉布(※蝉の羽のように薄く透けるように織られた夏用の着物、蝉衣(セミゴロモ)とも呼ばれます。)で作った朝用のローブなんだ、すごく手間かかるものだよ。まずこれ、試してみる?
白酒:……大丈夫、もう少し見てみる。
富豪スープ:じゃあ、このグレイロシー風の西洋ドレスどう?黒系で、ちょっと禁欲的な感じで、君にぴったりだと思う。
白酒:うん、それにする。布が多そうだし。
富豪スープ:よし!でもその前に、この服に合うメイクをしてあげるよ。
白酒:それ、また何?
富豪スープ:いいから座って、私に任せて~
白酒:……
白酒:ちょっと待って、化粧の物か?そんなの使わないよ。
富豪スープ:動かないで、じゃないとやり直すのが面倒だから。
白酒:おい、また髪をいじるの?
富豪スープ:ちょっと待って、かっこいい髪型にしてあげるから!
白酒:私、いつ帰れるんだ……
富豪スープ:焦らないで~、これがまだ一着目だよ~。
余談·参
私の心の中にはひとつの結末しかありません。
夜
竹の影が窓を通して差し込み、部屋中にいるみんなは手に持った台本を真剣に読んでいる。
明四喜:先生の劇は展開がとても巧妙で、構成も素晴らしいですね。さすがです。
オシドリ粥:お褒めいただきありがとうございます。今のところこの台本はまだ初稿で、細かい部分はみんなで一緒に詰めていくつもりです。
オシドリ粥:皆さん、この劇について何か質問はありませんか?
羊散丹:先生…「危険な状況が起こるかもしれない」と書いてありますが、どういう意味ですか?
オシドリ粥:リアルな演技が必要だから、もしかしたら実際に刀を使った戦いが必要になるかもしれない。
羊散丹:私は大丈夫ですが、小吊梨湯(※シアオディアオリータン)はまだ子供ですので…
シアオディアオリータン:心配しなくて大丈夫です。必要な時には私がしっかり対処しますから。
オシドリ粥:心配しないで、すべて計画通りになるはず。
羊散丹:…それなら安心です。
羊散丹:でも、私たち以外の人は、一緒に稽古をしなくていいのでしょうか?
オシドリ粥:それは、私がわざとそうした。
オシドリ粥:それぞれに合った役柄があり、演じ方も違うから。
シアオディアオリータン:ああ、その役は面白そうですね。
オシドリ粥:偽物の中に本物があり、本物の中に偽物がある、そして多くの人々がそれに似ているということだ。
シアオディアオリータン:先生、またわけがわからないことを言っていますね…。
オシドリ粥:ふふ、気にしないで、ちょっと思ったことを言っただけだ。
シアオディアオリータン:…先生は私が鈍いと思っているのでしょうか?
オシドリ粥:そんなことはないよ、小吊梨湯はすごく賢くて、今のままでちょうどいいんだ。
シアオディアオリータン:へへ…そんなに褒めないでください。私はそんなにすごくないです。
シアオディアオリータン:ところで、先生、ひとつ疑問があります。さっき台本を読み終わったのですが、結末が書いてありませんでした。先生、まだ結末を書いていないのですか?
オシドリ粥:結末はひとつだけじゃないかもしれない。
シアオディアオリータン:え?
オシドリ粥:いくつかの結末を考えているけれど、実際どうなるかは、皆さんの演技次第だ。
明四喜:ふふ、私の心の中にはひとつの結末しかありません。先生、お楽しみにしてください。
余談·四
見た感じ……真珠みたいだね。
夜
廃れた寺
明四喜:どうしたんだ、具合が悪いのか?
白酒:大丈夫、心配しなくていいよ
ルージューホーシャオ:え、やっぱりもっと休んだほうがいいよ。さっき倒れた時、本当にびっくりしたんだから!
明四喜:そんなにひどかったのか?本当に大丈夫か……
白酒:ただ水に落ちてから悪夢を見ただけで、たいしたことない。
ルージューホーシャオ:ああ、白酒がそんなに泳げないなんて思わなかったよ……もし知っていたら、あの盗賊たちに口を挟まなかったのに。
白酒:君のせいじゃないよ。あいつらは狡猾で、罠も仕掛けていたんだ。どうやら最初から準備してたんだよ。
白酒:残念だけど、逃げられたな……黒幕が誰なのか、全然分からないな。
明四喜:それは後で追跡すればいい。一番大事なのは……みんなが無事だったことだ。
白酒:うん、渊客……今日は君のおかげで、無事に助かったんだ。
(渊客:人魚のこと。明四喜のことを指しています。)
ルージューホーシャオ:そうだね、お前は知らないだろうけど、渊客はお前を救うためにすごく頑張ったんだ!水に溺れてなかなか目を覚まさなかったから、みんな心配していたし、渊客は涙を流しそうになるくらいだったんだよ……
明四喜:けほっ……無事でよかった、もうそれは言わなくてもいい。
ルージューホーシャオ:えへへ、そうだよ!水の中でどうしても網から抜け出せなくて、もう諦めようと思ったんだ……でもぼんやり見えた大きな魚が近づいてきたと思ったら、よく見るとそれが渊客だったんだ!本当に嬉しかった!
白酒:……
白酒:そういえば、私も夢の中で魚を見た気がする。
ルージューホーシャオ:本当に?その魚は大きくてきれいな尾を持ってた?
白酒:……覚えてない。
明四喜:……さあ、もう話してばかりいないで、小吊梨湯(※シアオディアオリータン)が君たちの上着を乾かしてくれたから、早く着なさい。夜は寒くなるから、気をつけて。
ルージューホーシャオ:あ、忘れてた!ありがとう、小吊梨湯。
小吊梨湯はおとなしくみんなに服を渡していく。白酒の服を取り出すと、何かがカチカチと転がり落ちる音がした。
シアオディアオリータン:え……白酒、これは君のもの?
白酒:違う……
ルージューホーシャオ:キラキラしていて、なかなかきれいだね。芝居服に付いている飾りに似てるけど……名前なんだっけ?
羊散丹:見た感じ……真珠みたいだね。
ルージューホーシャオ:そう、それだ!でも、どうして真珠が白酒の服に付いてるんだろう?
明四喜:もしかしたらさっき水の中から持ち帰ったんじゃないか。
ルージューホーシャオ:え、先生は真珠が海でしか見つからないって言ってたよね……?それに……
明四喜:そうか……やはり君たちの先生が高額で買ったその土地には、何か理由があった。つまり隠された宝物がたくさんあるってことだね。
ルージューホーシャオ:え、渊客、お前も外の人達のように信じてるのか?これは噂だよ!噂!
明四喜:ふふ……まあ、君も早く上着を着なさい。
余談·五
……白酒が危ない!
朝日
冥界
瑪瑙つみれ:ちびっ子、久しぶりだね!
猫耳麺:……え、お二人様?どうしてここに?すぐに中に知らせてくる!
瑪瑙つみれ:うん、お願い。
猫耳麺は門に入って行き、すぐに戻って案内してきた。門の中は静かで、ひんやりとした雰囲気が漂っていた。
高麗人参:……まさかこんなに早く来るとは思わなかった。
瑪瑙つみれ:昨晩、山河陣に何かあるという連絡が来て、今人手が足りないだろうと思ったんだ。それで金髄煎と一緒に来たんだ。
瑪瑙つみれ:どうだ、眠っているところを起こしてしまったか?
高麗人参:いいえ、まだ寝ていない。
瑪瑙つみれ:どうやら、今回はかなり厄介なことが起きたようね?
高麗人参:うん……
金髄煎:山河陣のことに関わるなら、やはり聖教の連中が絡んでいるだろう。
高麗人参:まだはっきりとは分からない……数日前、白酒が情報を探るために出かけたが、まだ帰ってこない。彼に何かあったのではないかと心配だ。
瑪瑙つみれ:あいつあんなに強いから、きっと大丈夫だろう。
高麗人参:そう言っても、心配が尽きない……
瑪瑙つみれ:お前は心配しすぎだよ。
金髄煎:うん、私たちが瑪瑙魚丸(※瑪瑙つみれ)の動きにいつも気を使っているのと同じだ。
瑪瑙つみれ:それは杯弓蛇影だよ、心配するのにちゃんとした理由があるんだ。
(杯弓蛇影とは杯に映った弓が蛇の姿に見え疑い深くなり、疑心暗鬼になること。)
金髄煎:そうか……でも、確かに君が私たちに見張らせたじゃないか
瑪瑙つみれ:あの時は気づかなかった。でも周りの人があまりにも従順すぎるのも問題だってことだな。
高麗人参:……
高麗人参:待って……。
その時、黙っていた人参が急に眉をひそめ、まるで何かを感じ取ったかのように目を伏せた。
瑪瑙つみれ:どうした?体調悪いのか?
高麗人参:いや……何か起きた。
瑪瑙つみれ:……?
高麗人参:さっき、強い力を感じた……それって「龍脈」か?いや……白酒だ……
瑪瑙つみれ:え、何?!どこにいる?すぐに探しに行く!
高麗人参:今、弦春劇場にいる……
瑪瑙つみれ:弦春劇場?分かった、任せておけ!
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