【非人類学園】Eii・ミッション-Ep3
デジタルシティ
チームEiiが臨む初めての戦い!急ごしらえで寄せ集めなこのチーム、果たしてトーナメントへ進出出来るか!?
Code:【光斬り】ゲームコンテスト。
それは、弱肉強食というゲーム競技の法則を破りかねない戦いである。そのチャンピオンを勝ち取ったチームに用意される戦いの舞台と賞品は、『凡人』が一夜にして名声を得るに足る。
デジタルシティ・【カンマク】のメインコンテンツとして、無数のゲーム項目を誇るこのコンテストは、様々なプレイモードと戦いを通し、プレイヤーたちのゲーム意識と総合能力を計測することが出来る。
ずば抜けた才能の持ち主を集め、彼らに試練を与えることで己を超えてもらう……
自らの限界の探究と、その突破。無限の可能性を導く遊戯こそが、ゲームコンテストである――
〔超・流光の巓 バトルフィールド〕
〈ゲームコンテスト、スタート〉
激しいリズムの電子音に導かれ、Eiiチームは案内通りに射出パネルに乗る。
猫島アリーナの弾射ボードに劣らぬ勢いで弾き出された一同は、上空から見下ろす街の全貌に息を呑んだ。見渡す限りに立ち並ぶビル群。その隙間にべっとりと張り付く暗い影と、それを焼き尽くさんばかりに揺らめく青い電子の炎――
果たして、彼らが着地したのはビルの屋上ではなく、その上空に形成された光のタイルだった。
WU:NPC「皆様、Code:【光斬り】ゲームコンテストへようこそ!この試合でNPCチームに勝利すれば、次の段階へ進めます。夢の商品目指して頑張ってくださいね!」
どこからともなく響くNPCのボイスは、朗々とゲームのルールを説明していく。
WU:NPC「さて、皆さんに【ゲームライブラリ】をご紹介します。20種のゲームをランダム融合させて生成される、何百ものプレイモード。それが【ゲームライブラリ】です。皆さんに楽しんで頂くべく、試合ごとに抽選で2種のゲームが選ばれ、ゲームルールが生成されます!というわけで、抽選開始!」
空に出現した大型ビジョンの中で、ゲームライブラリのルーレットが回り始める。
謎解き、カード、パルクール、育成、バトロワ、射的、その他もろもろ……回転はすぐに止まり、二つのゲームジャンルが表示された。
WU:NPC「今回のテーマは『パルクール×音ゲー』です!おおお!」
テーマが公開されると同時に、超・流光の巓から光のレールが伸びてきて、一同の乗る光のタイルへ接続された。
WU:NPC:「今回の対戦では、光のレール3つで競争を行います。つまり、各チーム3人ずつ参戦するわけです。音楽が始まったら、レールに沿ってビル群の中をパルクールで進んで行きますが――無論、それだけではありません」
WU:NPCが一呼吸置くと共に、空の大型ビジョンに追加ルールが表示された。
WU:NPC「レール上には、音楽と共に動く音符が現れます。走りながら音符に触れてクリアすると追加ポイントが入り、さらに曲のテンポも上がっていきます。つまり、リズムに乗れば乗る程、速さと得点を両立できるわけです!突っ走るだけじゃ勝てませんよ!詳しいデータはデバイスからご確認を~」
レム「よく分かんないけど、速いに越したことはないでしょ。機動力重視のメンバーで行こう!」
大鵬「跳び回りながら走るのか?ダサっ!」
レム「へえ?走りたくないなら、哮天に代わってもらう?」
哮天「ワンワン!」
大鵬「いや、それには及ばない……」
WU:NPC「さて、出場メンバーを決めてください。先ほどお伝えした通り、チームごとに3人しか出られませんよ!」
銀角はすぐさま手を挙げた。レムと大鵬もそれに続く
楊戩「あー、3人しか出られないもんなあ」
彼の声に、レムと大鵬が同時に振り向いた
レム「パルクールも音ゲーも、あたしの得意分野だもん!」
大鵬「だがヘルメットを被っている誰かさんにとってはどうかな、ちゃんと聞こえているか不安じゃないか?」
楊戩「わかったよ、俺はパスで構わない。時にレム、本当に――」
楊戩の話も聞かず、3人は我先にとスタートラインへ駆けだした。
置いて行かれた警官は、仕方ないと言いたげに額に手を押し当てる。しばらくそうして、観衆の目が外れた頃に、彼はふらりと夜の闇へ歩き出した。
楊戩「ま、仕事はちゃんとしないとな」
WU:NPC「それでは、選手の入場です!」
レム「って、師匠が相手なの!?しかも一緒に居るの、取引所の占い娘と任務ホールのヘルメット男!」
夸父:NPC「いや、お嬢ちゃん。俺が光追任務ホールのリーダーなんだがな」
3人のNPCは一息にレーンに飛び出した。だが準備万端かと言えばそうでもなく、夸父はバイクのエンジンをしきりに確かめ、百目は呑気に周囲を見回し歩いている。逆にWUこと八戒は、興奮のせいかその場でスピンしていた。
同様にレーンに並んだ銀角は左右を見回す。大鵬とレムも、臨戦準備は整っていた。
〈3〉 〈2〉 〈1〉
〈ミュージックスタート!〉
合図のドラムロールの後に、軽快な電子音楽が流れ始めた。戦いが始まるやいなや、レムと大鵬は猛ダッシュしながら、それぞれのレーンの音符をクリアしていく。銀角も二人に追走し、どうにか音符をクリアしていった。
スコアに比例し、徐々に加速していく音楽。しかし突然、それを抉る駆動音がレーンを揺らす。振り向けば、NPCチームは3人で1つのレーンを爆走していた。夸父が全力でバイクを飛ばし、その後ろからWUのメカがバイクを押して、無理やり加速を続けている。
後部座席に悠然と座る百目は、目にも止まらぬ速さで念動力を操り、左右のレーンの音符を次々にクリアしてポイントを確保していた。スキル【ブースター】を身体ではなく思考に使っているのかと思うほどの技巧は、バイクとBGMが最高速に達してもなお淀みない。
とそのとき、前方に長押し音符が現れた。NPCチームは即座に作戦を変える。WUがチームメイトを放り投げたかと思えば、ハイレベルな高速滑走で見事に全レーンの音符をクリアしてみせた。
レム「ちょっ……バイクとかメカとかずるくない!?」
NPCチームがレーンの2/3を過ぎた頃、Eiiは未だ1/2の位置にいた。ラストスパートを掛け始める敵チームに対し、Eiiは別のアプロ―チを試みる。
大鵬「レム、ノーツ任せた!僕が奴らを止める!」