「愛逢の裁縫箱」メルレッティ_include

紹介所のお姉さん「ふんふーん。」

主人公「あれ、何やってるんですか？」

紹介所のお姉さん「ああ、主人公くんたち！そろそろ雪の国じゃ、冬想祭の時期でしょ。だから紹介所でも、と思って飾り付けしてるのよ。」

メルク「そういえばそうだったのです！赤と緑が素敵なのですよ～！」

紹介所のお姉さん「そういえば知ってるかしら？雪の国にはミルカという民族衣装があって、冬想祭ではそれを着て踊る風習があるのよ。」

メルク「みゅ、前に雪の国へ行ったとき、冬想祭に参加したので知ってるのです！」

メルク「ミルカを渡すことは愛の告白･･････、家族や恋人と輪になって町中の人々が踊る、素敵な一夜だったのですよ～。」

主人公「そういえば、前に紹介してもらった人がミルカデザイナーでしたよね。この間、仲間になってもらって･･････。」

メルレッティ「･･････。」

メルク「みゅ、噂をすればなのですよ！メルレッティさん！」

メルレッティ「ん？用？」

主人公「あ、いえ、ちょうどミルカの話になったので。あれ？もしかして仕事中でしたか？」

メルレッティ「もう終わった。」

メルク「みゅわ～、素敵なデザイン画なのですよ～！新作のミルカなのですよ？」

メルレッティ「そ。」

主人公「そういえば、メルレッティさんのデザインするミルカってこれまで見てきたミルカとは少し違うんですね。」

メルク「たしかに、このデザインだと雪の国で着るには少し寒そうなのですよ。」

メルレッティ「それは問題ない。魔法の国から仕入れた魔導糸で縫うし、防寒の魔方陣も織り込んでるから。」

主人公「へえ、そんな工夫が･･････！」

紹介所のお姉さん「ふふふ、メルレッティちゃんはミルカのデザインに革命を起こしたと言われてるのよ。ブランドコンセプトは･･････、」

メルレッティ「人を傷つけない限り、服は自由だ。」

メルク「おお～！か、かっこいいのですよ！」

紹介所のお姉さん「それまでの伝統的なミルカを踏襲しつつ、だけど、他国の技術も取り入れたりもして編み出された、斬新なデザインで有名なのよ。」

メルク「みゅ、そうなのですね～！どうしたらそんな発想が生まれるのですよ？」

メルレッティ「･･････実体験、かね。」

主人公「実体験？」

メルレッティ「･･････。」

メルク「みゅ！？メ、メルレッティさんが遠い目に！」

メルレッティ「ぐすっ･･････。」

主人公「あのメルレッティさんが泣いてる！？」

メルレッティ「あの、ってなにさ･･････、ぐすん。」

紹介所のお姉さん「メルレッティちゃんがミルカデザイナーになったのは語るも涙の過去があるのよ･･････。」

メルク・主人公「えっ！」

紹介所のお姉さん「あれはメルレッティちゃんがまだ少女だった頃。ある冬想祭の夜に想い人に告白したのよ。お母さんからのおさがりのミルカを着て･･････。」

紹介所のお姉さん「その告白は受け取ってもらえて、晴れて２人はお付き合いをすることに。しかし悲劇は起こってしまったの。」

　メルク・主人公「ごくっ。」

紹介所のお姉さん「当時のメルレッティちゃんはトゲトゲした服が好きだったの！そう、手首や首につけてるアクセサリーみたいな！つけられていたあだ名は、鉄のつらら系女子！」

　メルク・主人公「えっ。」

紹介所のお姉さん「相手の男の子は、冬想祭でしかメルレッティちゃんと会わなかったから、フワフワのミルカを着た姿しか知らなくて･･････。」

紹介所のお姉さん「悲しいかな、メルレッティちゃんはフラれてしまったのよ。」

メルク・主人公「そんな過去が･･････。」

メルレッティ「若かったよ、２人とも･･････。」

メルレッティ「付き合ってのち、あたしは浮かれきってて、後ろから抱き着いてはトゲが刺さり、手をつないではトゲが刺さってるのにも気づかなかった。」

主人公「それ、デートの後は服が血だらけになってるんじゃ･･････。」

メルレッティ「あいつもあいつで、我慢強い性格だったから、しばらく包帯まみれになって、それを耐えていた。誤解してオッケー出した手前、フることもできずにね。」

メルク「さすがに包帯まみれなのは気づくのでは･･････？」

メルレッティ「斬新なおしゃれだと思っていた。」

主人公「浮かれすぎですよ！」

紹介所のお姉さん「この出来事をきっかけにメルレッティちゃんは思ったわ。こんな悲しいことが起きないように、淑やか可愛い系以外のミルカもあるべきだと･･････！」

メルレッティ「初めからトゲトゲのミルカを着ていれば、あいつも誤解させずにすんだし、あたしもぬか喜びせずにすんだ。」

メルレッティ「あたしのブランドコンセプトはそういう理由さ。」

主人公「人を傷つけない（物理的に）っていう意味だったのかあ。」