「謹語の弓士」メイレット

主人公「えーっと……、名前はメイレットであってるよな。」

メイレット「……！」

メルク「私たちの仲間になってくれるというのもあってるのです？」

メイレット「……！」

メルク＆主人公「……。」

主人公「な、なんでしゃべってくれないんだろう。」

メルク「表情が豊かな方なのでどうにかイエスかノーかはわかるのですが……。」

主人公「……ご趣味は？」

メイレット「……。」

メイレット「……、……！」

主人公「えっ、今のなに！？」

メルク「なにやら手を動かしていたのですよ！」

メイレット「……、……！」

主人公「ぱん？」

メルク「な？」

主人公「こった？」

メルク＆主人公「パンナコッタ？」

メイレット「……。」

メルク「しょ、しょんぼりしてしまったのですよ。」

主人公「当然のように解釈が違ったみたいだな……。」

メイレット「……！」

主人公「と思ったら、顔を輝かせたぞ！？」

メイレット「……。」

メイレット「……！」

メルク＆主人公「いきなり踊りだした！？」

メイレット「……。」

主人公「そして何事もなかったかのように戻った……。な、なんだったんだ。」

メルク「まいったのです。これほどまでに話してくれないとなるとこれからの意思疎通が大変そうなのです。」

主人公「そうだ、文字はどうだ？」

メイレット「……！」

メルク「みゅ、書いてくれたようなのです！」

主人公「……。」

主人公「き、汚くて読めない。」

メイレット「……！」

メルク「ショックを受けた顔に！」

主人公「感情はわかりやすいんだけどなあ。」

メイレット「……！」

主人公「満点の笑顔だけど、感情以外もわかりたい……！」

「フフフ、お困りのようね。」

主人公「その声は！」

メルク「紹介所のお姉さん！」

紹介所のお姉さん「違うわ！ジェスチャーマスターと呼びなさい。」

主人公「ジェ、ジェスチャーマスター？」

紹介所のお姉さん「そう、紹介所のお姉さんとしてメイレットちゃんが何を言っているのかわからないままではいけない。」

紹介所のお姉さん「そう思って、メイレットちゃんのジェスチャーを解析し、学んだのよ！」

主人公「えっ、普通にすごい！」

紹介所のお姉さん「そう、実は私はすごいのよ！だてに紹介所のお姉さんをやっていないわ！」

メルク「では先ほどのメイレットさんの手振りはどういう意味だったのですよ？趣味はなんなのかと尋ねたのですが……。」

メイレット「……、……！」

紹介所のお姉さん「なるほどね。メイレットちゃんの趣味は、人を驚かせること、よ！」

メイレット「……！」

メルク「笑顔になったのですよ。」

主人公「おお、ほんとにわかるんですね！じゃあ趣味は踊りじゃなかったのか。」

メルク「あれで驚かせようとしてたのですね～。でもどうしてそもそも話してくれないのですよ？なにか理由でもあるのです？」

メイレット「……、……。」

紹介所のお姉さん「……、……？」

メイレット「……！」

紹介所のお姉さん「……、……！？」

メイレット「……、……！」

主人公「紹介所のお姉さん、意味が分かるだけじゃなくて自分でも身振り手振りができるのか！」

メルク「紹介所のお姉さんにこんな才能があったとは……。」

主人公「で、でもだんだん手の動きが速くなってきたな。」

メルク「まるで戦っているようにも見えてきたのです！」

メイレット＆紹介所のお姉さん「……、……！」

メルク「みゅわーっ！もう手の動きがみえないのですよ！」

紹介所のお姉さん「ふう、わかったわ。メイレットちゃんの一族では言葉が神聖なものみたい。だから気軽に口に出していいものではないそうよ。」

メルク「そうだったのですよ！」

主人公「それならしゃべらないのもうなずけるな。よし、それじゃあ代わりに俺がそのジェスチャーを勉強するか。」

メルク「私もメイレットさんの伝えたいことがわかるようになりたいのです！私も勉強するのですよ～！」

メイレット「……、……！」

紹介所のお姉さん「ふふふ、お礼を言っているわね。どうやら意思疎通ができないせいで、今まで誤解を受けたり、困ったことがあったみたい。」

紹介所のお姉さん「だから主人公くんたちがジェスチャーを覚えようとしてくれるのが嬉しいそうよ。」

主人公「そっか。できるだけ早くわかるようになるからな。」

紹介所のお姉さん「修行はつらいわよ？」

主人公「ど、どれだけパターンが多くても覚えてみせます！」

メルク「頑張るのですよ！」

(暗転)

主人公「腕がぁ、腕がぁ！」

メイレット「……、……っ！」

主人公「うう、湿布ありがとう。」

紹介所のお姉さん「だから言ったでしょ、つらいって。」

メルク「まさかジェスチャー修行の難関が筋肉痛だとは思いもよらなかったのですよ……。」