「花托愛す術士」ラフル

ラフル「よしっ、準備はいいか、主人公。おいしい木苺ジャムを作るぞ！ レッツ・クッキング！」

主人公「は、はい。レッツ・クッキング……。」

ラフル「主人公が木苺好きで、さらにジャム作りを手伝ってくれるって言ってくれたから おれ、すげー嬉しくなっちゃってさ。」

ラフル「早起きして全力で木苺を摘んできたぞ！ 朝摘みの木苺がこの世で１番うまいからな。最高の木苺で最高のジャムを作ろう！ おーっ！」

主人公「お、おー。」

ラフル「主人公、なぜテンションが低い！？ もしかしてあれか、今日のジャム作りが楽しみすぎて、昨日眠れなかったのか！？」

ラフル「ははっ。お祭り前の子どもみたいだな！」

主人公「いや、寝たことは寝たんですけど……。」

主人公「ラフルさんが朝からあまりにも元気でびっくりしたと言いますか……。」

ラフル「ああ、おれの元気のパワーの源は全部木苺だからな！ 主人公も木苺を主食にすると今よりもっと元気になれるぞ！」

主人公「あはは、検討します。」

主人公「（仲間になってくれたお礼に、ジャム作りを手伝うって軽いノリで言ったけど、ちょっと後悔してきた……）」

主人公「（それに木苺が好きっていっても、別にラフルさんほど熱意があるわけじゃなくて、そこそこ好きって意味だったんだけど……）」

主人公「（今さらこれを言ってラフルさんをがっかりさせるのもな……）」

ラフル「実はな、おれが木苺について語ると、なぜかみんな笑顔で遠慮がちに去っていくんだよ。どうしてだろうなあ……。」

ラフル「おれはこんなにも木苺のことを愛しているというのになあ……。」

ラフル「もしかして、おれと木苺の恋路をあえて見守ってくれてるのか……？ ただ、それだったらなにか言ってくれてもいいよな……？」

主人公「（い、言いたい……！ 木苺への愛が暴走気味だから、みんなついてこられないんですよって言いたい……！）」

ラフル「でも、主人公が手伝ってくれるって聞いた時は本当に嬉しかったぞ！」

主人公「それならよかったです……。」

ラフル「よし、この嬉しさを胸に、今から円陣を組もう！」

主人公「話が急すぎません……！？ それにふたりで組んでも円にはなれないですよ。」

ラフル「ふむ。じゃあ、おれと主人公のあいだに椅子でも置くか？ 人の代わりになるだろ？」

主人公「なんだか悲しいのでそれはやめましょう！ わかりました！ ふたりで組みましょう、円陣！」

ラフル「おお、その勢い、木苺を愛するものにふさわしいぞ、主人公！」

主人公「（もうこのまま流れに身をゆだねよう……）」

主人公「あ、ありがとうございます。えっと、円陣のかけ声はどうしますか。」

ラフル「ああ、それならもう決めてあるから安心してくれ。おれのかけ声に主人公は元気よく『おー！』と返事をしてくれればいい。」

主人公「（なんだか嫌な予感しかしない……）」

主人公「わ、わかりました。」

ラフル「……よし、ではいくぞ。」

主人公「（ごくり）」

ラフル「声出して行くぞォ！」

主人公「お、おー！」

ラフル「木苺好きかァ！」

主人公「おー！」

ラフル「木苺最高ッ！」

主人公「お、おー……。」

ラフル「木苺と結婚したいかァ！」

主人公「待ってくださいラフルさん！」

ラフル「む、なんだ。せっかく士気が高まってきていいかんじだったのに。」

主人公「俺の士気が高まってなかったです……。それに、木苺と結婚したいかって聞かれると、ちょっとそれは考えさせてほしいっていうか……。」

ラフル「おれは、木苺と結婚したい。新婚旅行だって行きたいし、病める時も健やかなる時も一緒にいられる自信がある。」

主人公「木苺への愛は充分わかりましたって。一体、木苺の何がラフルさんをそこまで突き動かしてるんですか……。」

ラフル「……そうだなあ、あれは小さな頃、おれが熱を出したとき、母親が、育てていた木苺を食べさせてくれてだな、その時の味が……、」

<時間経過>

ラフル「……そもそも木苺の実っていうのは、粒のかたまりに見えるんだが、その粒は雌蕊（しずい）って言ってだな……、」

主人公「ラフルさん、ノリノリで話してもらってるところ悪いんですけど、もうお昼はとっくに過ぎてます……。」

ラフル「ああ、悪い悪い。せっかく朝摘んだ木苺の鮮度が落ちてしまうな！ よし、いまからジャムを作るぞ！」

主人公「は、はあ……。」

ラフル「じゃ、円陣を組むところからやり直しだな！」

主人公「そこからですか！？」