「差し添えの萼」バンバーニャ

「らっぱっぱ～！らっぱっぱ～！ぱふっと奏でるらっぱのぱ～！」

主人公「ん？何だか愉快な声と楽しげなラッパの音が遠くの方から……、」

紹介所のお姉さん＆パン屋のおやじ「ひいいいいっ！」

主人公「悲鳴と共に聞こえてきた！」

バンバーニャ「ぷっぷくぷ～！」

紹介所のお姉さん「や、やめて～！タネを吹きつけないで～！」

パン屋のおやじ「こらっ！　バンバーニャ！いたずらばっかりしていると、いいかげん怒る……、」

バンバーニャ「ぷくぷくぷっぷっぷ～！」

パン屋のおやじ「ほがっ！」

主人公「た、大変だ……。パン屋のおやじさんの鼻の穴に、大きなタネがすっぽりと！」

バンバーニャ「にっししっ！　めんごめんご～！でもでもね、そのタネをとっちゃダメなのだあ！」

主人公「ダメって、どうして？」

バンバーニャ「おもしろいから！」

主人公「無邪気すぎる理由だった！」

紹介所のお姉さん「私もさっき尋ねてみたんだけど、まったく同じ反応だったわ……。」

紹介所のお姉さん「はあああ……。走り回ったりしたから、また熱があがってきたかも。」

主人公「あれ？　もしかして体調が優れないんですか？ちょっと顔色が悪いような……。」

紹介所のお姉さん「ええ、実は昨日から熱っぽくて。それで、お医者さんに行こうとしたところを、不思議なラッパで吹かれたというわけなの。」

パン屋のおやじ「俺なんてな、パン生地を練っていた時に腰を痛めたから振動が腰に響かないようにゆっくり歩いていたら！　パッパーと！」

主人公「ひぃっ！　怒りの勢いで鼻に詰まっていたタネが飛んできた！」

パン屋のおやじ「ったく、やっとスッキリ……、」

パン屋のおやじ「ん？　腰が痛くねぇ。」

バンバーニャ「にゃししっ！」

紹介所のお姉さん「あら、そういえば私も体が楽になってきたわね。」

紹介所のお姉さん「えっ、紹介所のお姉さんまで？」

バンバーニャ「庭園のタネは力の塊～！らぱっと吹けば、らんらんぱ～！」

主人公「庭園のタネ？ええっと、君は一体……。」

バンバーニャ「バンバーニャなのだあ！バンバーニャは付き人で植物の国からおさんぽに来て～！」

主人公「植物の国！？それはもう、おさんぽという距離じゃないような……。」

パン屋のおやじ「わけがわかんないだろう？庭園とか付き人とか意味不明な情報が多すぎて、頭がパンクしそうだから俺は……。」

パン屋のおやじ「考えるのをやめた。」

主人公「……清々しいですね。」

主人公「でも、俺としては、もう少し詳しく聞いてみたい気が……、」

バンバーニャ「おーけ－いっ！」

主人公「いいのか！？」

バンバーニャ「何をかくそう、バンバーニャは、永遠の箱庭からラッパを吹き吹きやってきたのだあ！」

バンバーニャ「そこは祭司の力の根源たる原初の森と同じで時間が意味をなさなくて～。」

主人公「情報量がすごすぎる！」

バンバーニャ「箱庭の前には双子の門番がいて、選ばれた者だけ通してもらえるのだ！」

バンバーニャ「その双子の名前はロワローゼンとメルローゼンで、決着のつかないチェスを繰り返しているのであ～る！」

主人公「……へえ、それで？」

バンバーニャ「うーん、それで～！それで～！　そーれそれそれ！ぷっぷくぷ～！」

主人公「うわっ！　タネが飛んできた！というか、どうして途中でラッパを吹いたんだ？」

バンバーニャ「あきちゃったから！」

主人公「……素直だな。」

紹介所のお姉さん「でしょ？自分のやりたいことに素直すぎるから、紹介所でも、ずっとこの調子なのよね。」

主人公「紹介所？ということはバンバーニャは、旅の仲間を探しているのか……。」

バンバーニャ「そうなのだあ！後継者とバンバーニャは別々に旅をして、どっちがおもしろ体験をしたかくらべることにしたのであ～る！」

主人公「なぁ、さっきから何度も登場しているけど、その後継者って誰なんだ？」

バンバーニャ「後継者はティルセプスで、ティルセプスがバンバーニャを選んだのだ！」

主人公「さっぱりわからん……。」

バンバーニャ「にゃししっ！　おっと、そうだ！　そうなのだ！いたずらばっかりしてる場合じゃないぞ～！」

バンバーニャ「バンバーニャが寄り道している間に、ティルセプスは仲間を見つけて、すっごいいたずらをしかけているのだあ！」

主人公「仲間になった人が心配すぎる……。」

バンバーニャ「にゃ～し！　バンバーニャもがんばるぞお！じゃあね！　鼻風邪、腰痛、ひょろひょろ！」

主人公「体型のことを、鼻風邪や腰痛と一緒にしないでくれー！」

主人公「って、すごい速さで走ってった……。」

紹介所のお姉さん「……変わった子だったわね。」

パン屋のおやじ「ああ、それにあのタネも妙だったな。腰痛や風邪が治るなんて不思議すぎるぜ。」

主人公「バンバーニャか……。いたずらっ子で謎だらけだったけど、またどこかで会えるといいな。」

主人公「おっと、紹介所でメルクが留守番をしているからそろそろ帰らないと……。」

＜場面転換＞

主人公「メルク～！　買い出しから戻ったぞ～！そっちはどうだ？　仲間になってくれる人は誰か見つかったか？」

「みゅううう～！キラキラ輝くタネがラッパから飛び出して、とってもきれいなのですよ～！」

主人公「ん？」

「きれいなタネを、ぷっぷくぷ～！」

主人公「この声はもしかして……。」

バンバーニャ「にゃししっ！仲間を見つけて、るんるんぱ～！」

主人公「バンバーニャ！しかも仲間になってる！」

メルク「まさかの、お知り合いなのです？」

主人公「知り合いといえば知り合いで、色々知ってるといえば知ってる！」

バンバーニャ「よろしくしくよろ、らっぱのぱ～！」

主人公「ん？　ラッパから飛び出したタネが俺の靴に……。」

メルク「みゅみゅっ！？見間違えかもしれないのですが、主人公さんの身長が少し伸びたような……。」

主人公「身長が伸びるって、ひょっとして今のも不思議のタネなのか？」

メルク「不思議のタネなのですよ？」

主人公「いや、紹介所に戻る前の話なんだけど、ラッパに吹かれたパン屋のおやじさんの腰痛と、紹介所のお姉さんの風邪が治ったんだ。」

メルク「みゅ～！ラッパに吹かれただけで、そんなことが！」

バンバーニャ「この花喇叭(はならっぱ)から出てくるタネには緑精の力がいーっぱい込められてるのだあ！だからタネに触れると、すごく元気になるのであ～る。」

主人公「元気になるタネ？なるほど、そういう理由があったのか！」

メルク「ということは主人公さんにも変化が起きて……、」

主人公「ひょろひょろがムッキムキに！」

バンバーニャ「残念ながら、さっき吹いたのとはまーったく別物のタネなのだあ！」

主人公「えっ？　でも、身長は確実に伸びてるぞ。現に今も靴の裏がムズムズと……、」

主人公「って、裏？」

バンバーニャ「そうなのだ！なんとこの急成長するタネは、大男になった気分を味わえるのであ～る！」

主人公「大男……。」

主人公「って、うわあああああ！」

メルク「みゅわーっ！主人公さんの靴から根っこが生えたのです！しかもそれがグングン伸びて……。」

メルク「主人公さんごと、窓から出て行ってしまったのですよ～！」

バンバーニャ「にゃししっ！びっくりいたずら大成功なのだあ！」

＜場面転換＞

主人公「根っこの成長が、やっと止まった……。」

「見たか今の？　癒術士の坊ちゃんの背がいつもより高かったよな？」

主人公「わっ！　パン屋のおやじさんたちに見られてたのか！」

「筋肉がないことを気にしているのは知っていたけど、シークレットブーツに手を出すぐらい、身長のことも悩んでいたのね……。」

主人公「何だか誤解されてる！」

主人公「というか、いたずらはほどほどにっ！」