「降り注ぐ慈雨」リュンリー

主人公「リュンリーさんも仲間になってくれたことだし、今日から出発だな……。」

主人公「って、おっとっと……。」

メルク「主人公さん、大丈夫なのですよ？この間から、風邪のひきはじめのような症状なのです。もしかして、本格的に風邪をひいてしまったのでは……、」

主人公「大丈夫、大丈夫！ちょっとめまいがしただけ。」

主人公「それに、仲間になってくれたばかりのリュンリーさんに心配をかけたくないしさ。」

メルク「たしかに、リュンリーさんは弓の名手とはいえ、とても優しそうな方なのです。」

メルク「主人公さんが風邪をひいたと知れば、心配で倒れてしまいそうなのですよ……。」

主人公「だろ～？だから……、」

メルク「って、かといって主人公さんが無理していいことにはならないのですよ！」

主人公「そう言われても、もうリュンリーさんと待ち合わせの時間だし……、」

リュンリー「お待たせしました、主人公さま。本日から出発ですね、よろしくお願いしま……、」

リュンリー「あの、なんだか、顔色がよくないのではありませんか……？」

主人公「いえ、大丈夫ですから！」

メルク「大丈夫じゃないのですよ！リュンリーさん、申し訳ないのですが、主人公さんがちょっと体調を崩していて……、」

主人公「ちょっ、メルク！」

メルク「貧弱な主人公さんが、このままやせ我慢して旅の途中で倒れるよりかは、今、迷惑をかけたほうがマシなのですよ！」

主人公「ても、本当に大丈夫なんだって！むしろ、なんだか体がぽかぽかして、絶好調っていうか！」

メルク「って、それ……、妙に、いつもの主人公さんらしくないと思ったら熱でハイテンションになってるだけなのですよー！」

主人公「今ならなんでもできるかも！さあ、冒険に出発だ～っ！」

メルク「だ、誰か主人公さんを止めてほしいのですよ～！」

主人公「無駄だ！今の俺は誰にも止められな……、」

メルク&主人公「ひっ……！」

メルク「ややや、矢が目の前を……！」

リュンリー「さあ、お部屋に戻りましょう、主人公さま。」

主人公「リュ、リュンリーさん……？」

リュンリー「休むべき時に休まずに、健康を損なうなど、私には見逃せません。」

主人公「い、いやでも……、元気100%だし、大丈夫っていうか……、」

リュンリー「生まれた時から病弱で、風邪をひいた回数は３桁を越える……、」

リュンリー「風邪の達人である私の忠告をどうかお聞きになってくださいませ。」

リュンリー「健康は、失ってからそのありがたみがよくわかるのです。今、無理をなさって、後で後悔をされるのは主人公さまなのですよ。」

主人公「は、はい……、」

リュンリー「では、メルクさま。主人公さまの宿を教えて頂いてもよろしいでしょうか？」

リュンリー「私が責任をもって主人公さまに、しかるべき休息をとっていただきますから。」

メルク「は、はい……。」

リュンリー「ふふふ、そう不安に思わずとも大丈夫です。この私がいるからには、勝手に部屋を抜け出そうともしても必ずや阻止してみせます。」

リュンリー「旅に出る前に、この弓の腕を見せることになるとは思いませんでしたが……。」

主人公「お、大人しく寝てます……。」

メルク「健康のありがたみを知っている経験者は、気迫が違うのですよ……。」

主人公「仕事に没頭しちゃうユージアさんにはぴったりかもしれないな……。」